人材開発支援助成金「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」とは|令和8年度末で終了

人への投資促進コースと事業展開等リスキリング支援コースは、人材開発支援助成金にある7コースのうち、令和4年度から令和8年度までの期間限定で設けられた2コースです。「高度デジタル人材の育成」「サブスクリプション型の研修サービス」「新規事業展開やDX・GX化に伴う訓練」など、他のコースでは対象になりにくい訓練を助成対象にしているのが特徴です。
- 令和8年度末(2027年3月)で終了する時限措置です。訓練開始日の1か月前が計画届提出の実質的な締切のため、年度末ぎりぎりでは間に合いません
- 人への投資促進コースは5つのメニュー(高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練・情報技術分野認定実習併用職業訓練・定額制訓練・自発的職業能力開発訓練)の総称で、メニューごとに助成率・対象訓練が異なります
- 事業展開等リスキリング支援コースは経費助成率75%(中小企業)。新規事業展開・DX/GX化・社内の人事異動計画のいずれかに関連する訓練が対象です
- 労働保険料の未納・労働関係法令違反があると、そもそも支給対象外になります
いずれも人材育成支援コースと同じ人材開発支援助成金の一部で、要件や様式の一部が共通します。まずは全体像を知りたい方は制度概要の記事から確認してください。
この2コースが必要になる場面
人材育成支援コース(人材開発支援助成金のもっとも基本的なコース)は10時間以上のOFF-JTを幅広く対象にしますが、次のような訓練は対象になりません。この隙間を埋めるのが今回の2コースです。
| こんな訓練をしたい | 使えるコース・メニュー |
|---|---|
| ITSS・DSS-Pレベル3・4相当の高度デジタル人材を育てたい/大学院で学ばせたい | 人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練) |
| Udemy・Schoo等のサブスクリプション型研修サービスを契約している | 人への投資促進コース(定額制訓練) |
| 従業員が自発的に申し込んだ研修の費用を会社が負担している | 人への投資促進コース(自発的職業能力開発訓練) |
| 新規事業の立ち上げ、DX・GX化に伴う知識・技能を学ばせたい | 事業展開等リスキリング支援コース |
| 社内の人事異動・配置転換に備えて、異動後の職務に必要な訓練をしたい | 事業展開等リスキリング支援コース |
人への投資促進コース:5つのメニューと助成率
| メニュー | 対象訓練 | 経費助成率(中小企業/大企業) | 賃金助成額(1人1時間) | 受講回数の制限(1人1年度) |
|---|---|---|---|---|
| 高度デジタル人材訓練 | ITSS・DSS-Pレベル3・4相当の訓練 | 75%/60% | 1,000円/500円 | 3回まで(成長分野等人材訓練と合算) |
| 成長分野等人材訓練 | 海外を含む大学院での訓練 | 75% | 1,000円(国内大学院のみ対象) | 3回まで(高度デジタル人材訓練と合算) |
| 情報技術分野認定実習併用職業訓練 | IT分野未経験者へのOJT+OFF-JT(大臣認定が必要) | 60%(+15%)/45%(+15%) | 800円(+200円)/400円(+100円) | 1回まで |
| 定額制訓練 | サブスクリプション型研修サービス | 60%(+15%)/45%(+15%) | 対象外(賃金助成なし) | 3回まで |
| 自発的職業能力開発訓練 | 労働者が自発的に受講した訓練の費用負担 | 45%(+15%) | 対象外(賃金助成なし) | 3回まで |
※(+15%等)は、賃金要件・資格等手当要件(賃上げ計画の策定・表明や資格手当の新設など)を満たした場合に加算される率です。高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練はあらかじめ高率のため、この加算はありません(厚生労働省「人材開発支援助成金〔人への投資促進コース〕のご案内〔詳細版〕」令和8年8月3日版)。
情報技術分野認定実習併用職業訓練には、上記の経費助成・賃金助成とは別にOJT実施助成があります。1人1コースあたり中小企業20万円(賃金要件等を満たすと+5万円)、大企業11万円(同+3万円)です。
1事業所1年度あたりの上限額は2,500万円(成長分野等人材訓練を除く。自発的職業能力開発訓練のみ内数で300万円が上限)、成長分野等人材訓練は別枠で1,000万円です。受講者1人あたりの経費助成の上限額はメニューごとに大きく異なります。高度デジタル人材訓練・情報技術分野認定実習併用職業訓練は実訓練時間数が長いほど高くなる体系(100時間未満15万〜30万円、200時間以上50万円)ですが、自発的職業能力開発訓練はこれより低い7万〜20万円、成長分野等人材訓練は時間数ではなく1年あたりの上限額(国内150万円・海外500万円)で決まります。
情報技術分野認定実習併用職業訓練は、訓練開始日の30日前までに厚生労働大臣の認定申請を行い、認定を受ける必要がある点に注意してください(他のメニューより手続きが1段階多い)。
事業展開等リスキリング支援コースとは
新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、労働者に新たな分野の知識・技能を習得させる訓練を実施した場合に助成する制度です。OFF-JT(座学等)のみが対象で、OJTと組み合わせた訓練は対象になりません。次の①〜③のいずれかに当てはまる訓練が対象です。
| 区分 | 対象になる訓練 | 期間の条件 |
|---|---|---|
| ①事業展開 | 新規事業の立ち上げなど事業展開にあたり、新たな分野で必要となる専門知識・技能の習得 | 訓練開始日から3年以内に実施予定、または6か月前までに実施したもの |
| ②DX・GX化 | 企業内のデジタル化・DX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める上で必要な業務に従事させるための知識・技能の習得 | 規定なし |
| ③人事・人材育成計画 | 企業内の人事・人材育成計画に基づき、今後従事することが予定される職務に必要な専門知識・技能の習得 | 訓練開始日から3年以内に従事予定の職務に限る。他社に雇用されることが前提の職務は対象外 |
(出典:同コース「ご案内〔詳細版〕」令和8年8月3日版・Ⅱ-1)単にデジタル機器で文章・数値を入力する程度の初歩的操作のみの訓練は、①〜③いずれに該当しても対象になりません。
助成率は経費助成75%・賃金助成1,000円/時間(いずれも中小企業)です。大企業は経費助成60%・賃金助成500円/時間。中小企業はさらに、要件を満たすと設備投資加算(導入費用の50%、1人15万円・1事業所150万円が上限)が上乗せされます。実訓練時間数に応じた経費助成の上限額は、中小企業で10時間以上100時間未満30万円・100時間以上200時間未満40万円・200時間以上50万円です。
対象になりにくい/対象外になる典型パターン
この2コースを検討する前に、次のパターンに当てはまらないか確認してください。
- 労働保険料の未納・労働関係法令違反(申請前1年以内)・不正受給歴(5年以内)がある事業主は対象外です(人材開発支援助成金の共通要件)
- 人への投資促進コースは、基準期間(計画届提出日の前日から6か月前〜支給申請日まで)に事業主都合で従業員を解雇した事業所、または特定受給資格者(離職区分1A・3A)の離職者数が被保険者数の6%を超える事業所は対象外です(3人以下の離職者数の場合を除く)。事業展開等リスキリング支援コースの詳細パンフレットにはこの規定が明記されていませんが、同じ人材開発支援助成金の共通要件として同様の取り扱いになる可能性が高いため、直近に事業主都合の離職があった場合は申請前に必ず所轄労働局へご確認ください
- 社内会議・自社製品説明・業績報告会・人事制度の説明・QCサークル活動などは「通常の事業活動」とみなされ、OFF-JTとして対象になりません(人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースとも共通)。自社データを使った訓練でも、「分析手法を学ぶ」段階までは対象、「学んだ手法で自社の改善計画を策定する」段階は対象外という線引きがあります
- 接遇・マナー研修などの共通スキル訓練、趣味教養目的の講習、法令で実施が義務付けられている講習(安全衛生の特別教育等)は対象外です
- 事業展開等リスキリング支援コースの③(人事・人材育成計画に基づく訓練)は、異動後に他社に雇用される前提の職務では使えません。自社内での配置転換に限られます。加えて③は、管理職研修・マネジメント研修・リーダーシップ研修等「役職として求められる知識・技能の習得を目的とするもの」、資格試験(講習を受講せず単独で受験できるもの)・適性検査、認定経営革新等支援機関またはその関連者が実施する訓練も対象外です。中小企業が③を使う場合は、訓練開始前に人事・人材育成計画について認定経営革新等支援機関の確認を受ける必要があります(大企業は不要)。また、計画に基づく人事の実施で生産性向上を名目とした人員削減・労働者の意向を無視した配置転換など不利益な取扱いが確認された場合は、不支給決定または支給決定取消の対象になります
- 人への投資促進コースの定額制訓練は、同じサービスを重複契約している期間は支給対象外です
- 事業展開等リスキリング支援コース自体にも、助成対象となる訓練等の受講回数の上限(1労働者1年度3回まで)があります。令和8年8月3日以降に提出する計画届に基づくeラーニングによる訓練は、この中でさらに1労働者1年度1回までに制限されます
- 定額制サービスによる訓練の受講回数には、コースをまたいだ上限があります。人への投資促進コースの定額制訓練・自発的職業能力開発訓練、事業展開等リスキリング支援コースの定額制サービスによる訓練は、両コース合わせて労働者1人につき1年度3回までです(メニューごとの上限とは別に、この合算上限がかかります)
- 事業展開等リスキリング支援コースは、1事業所が1年度(支給申請日を基準に4月1日〜翌年3月31日)に受給できる助成額の上限が1億円です
- 両コースとも、同一の経費・賃金・訓練実施を対象に他の助成金や補助金等を申請する場合、どちらか一方しか支給されない場合があります(併給調整)
手続きの流れと「実質的な締切」
計画届は、訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に労働局へ提出します(両コースとも共通)。この提出期間を過ぎると、原則として助成の対象になりません。
- 職業能力開発推進者の選任・事業内職業能力開発計画の策定(未実施なら計画届提出までに行う)
- 情報技術分野認定実習併用職業訓練のみ:訓練開始日の30日前までに厚生労働大臣の認定申請
- 職業訓練実施計画届(様式第1-1号)の提出(訓練開始日の6か月前〜1か月前)
- 訓練の実施(訓練期間中は所定内賃金を適正に支払う)
- 支給申請(訓練終了後。経費を全額負担したことが分かる書類が必要)
- 事業展開等リスキリング支援コースの③(人事・人材育成計画)を使った場合は、訓練終了後に「計画の実施状況報告書」も提出
令和8年度末までの時限措置なので、訓練開始日を遅くとも令和9年3月末までに設定する必要があります。計画届の提出期間(1か月前まで)から逆算すると、訓練を開始できる最終ラインは実務上さらに手前になります。年度末に近づいてから検討を始めると、計画届の準備(職業能力開発推進者の選任・計画策定・カリキュラム作成)が間に合わない可能性が高いため、活用を検討している場合は早めに動いてください。
令和8年8月3日から、不正受給を行った場合の公表に関する特例が新たに設けられました。支給申請を行った事業主に不正が認められた場合、支給決定前であっても、自主申告をしていなければ原則として事業主名等が公表対象になります(支給決定取消・不支給決定に係る支給申請額の合計が100万円未満で、事業主が不正受給に関与していないことが明らかな場合を除く)。この特例は令和8年8月3日以降の支給申請から適用されます。
同じ令和8年8月3日以降に事業展開等リスキリング支援コースで提出する計画届からは、対象訓練の範囲にも変更があります。普通自動車運転免許の取得や接遇・マナー講習等、もともと対象外とされてきた訓練は、DX・GX化に関する内容であっても対象外になりました。また、同コースのeラーニングによる訓練の受講回数は1労働者につき1年度で1回まで(通常の訓練は3回まで)に制限されています(いずれも令和8年8月2日以前に教育訓練機関と契約・申込済みの訓練には経過措置があります)。この2点は事業展開等リスキリング支援コース固有の変更で、人への投資促進コースの受講回数制限(メニューごとに1人1年度1〜3回。前掲の表を参照)に変更はありません。助成率・助成額そのものに変更はありません(令和8年8月3日版の詳細パンフレットで確認済み)。
よくある質問
Q. 人材育成支援コースとは何が違いますか?
人材育成支援コースは10時間以上のOFF-JTなら比較的幅広く対象になる基本コースで、令和8年度末という期限もありません。一方、人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースは、高度デジタル人材育成・サブスクリプション研修・新規事業展開など特定の目的に絞った訓練だけが対象で、令和8年度末までの時限措置です。両方に該当する訓練がある場合は、助成率が高いこちらの2コースを優先的に検討する価値があります。
Q. 定額制の研修サービス(サブスクリプション型)はどのコースになりますか?
人への投資促進コースの「定額制訓練」が対象です。1人1月あたり2万円が経費助成の上限で、中小企業は助成率60%(賃金要件を満たすと75%)です。ただし修了した訓練の標準学習時間が支給申請時点で合計10時間以上になっている対象労働者のみが支給対象です。同じサービスの契約期間が重複している部分は対象外になる点にも注意してください。
Q. 個人事業主本人の訓練にも使えますか?
対象労働者は「雇用保険被保険者」に限られます。個人事業主本人や、雇用保険が適用されない家族従業員などは対象になりません。従業員(雇用保険被保険者)を訓練させる場合の制度です。
Q. キャリアアップ助成金と同時に使えますか?
人への投資促進コースの修了後に対象労働者を正社員化した場合、キャリアアップ助成金 正社員化コースの加算対象になり得ます。ただし助成金ごとに独自の要件があるため、両方の要件を満たすかは個別に確認が必要です。
Q. 令和9年度以降はどうなりますか?
本稿執筆時点で、令和9年度以降の継続・後継コースの有無は公式に発表されていません。人材育成支援コースなど期限のないコースは継続しますが、この2コースを検討している場合は令和8年度中の訓練開始を前提に計画してください。
まとめ
- 人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースは令和8年度末までの時限措置。訓練開始日の6か月前〜1か月前が計画届の提出期間で、年度末ぎりぎりでは間に合わない
- 人への投資促進コースは5メニューの総称で、高度デジタル人材育成は経費助成75%、定額制訓練・自発的訓練は45〜60%とメニューごとに助成率が異なる
- 事業展開等リスキリング支援コースは経費助成75%(中小企業)。新規事業展開・DX/GX化・社内の人事異動計画のいずれかに関連する訓練が対象
- 社内会議や自社製品説明など「通常の事業活動」とみなされる内容は対象外。基準期間内に事業主都合の解雇があると対象外になる場合もある
- 令和8年8月3日から、不正受給時の事業主名公表に関する特例が追加された(助成率・助成額・対象訓練の要件に変更はない)
高度デジタル人材の育成やDX関連の訓練を計画している場合、要件確認や計画届の準備は早めに始めるほど選択肢が広がります。人材育成に関する制度全般の相談はLINEで当社にお気軽にご相談ください。
参考(一次情報)
- 人材開発支援助成金(厚生労働省)——制度概要・各コースの詳細版パンフレットへのリンク一覧(2026年8月27日確認)
- 人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のご案内(詳細版・令和8年8月3日版)——5メニューの助成率・助成額表、OJT実施助成額、限度額、対象となる事業主・対象とならない事業主、対象とならないOFF-JTの一覧、メニュー別の受講回数の制限(2026年9月2日確認。令和8年5月14日版から助成率・助成額の変更なし)
- 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版・令和8年8月3日版)——対象となる訓練の3区分、助成率・助成額、支給対象事業主要件、受講回数の上限、1事業所の支給額の制限、手続きの流れ(2026年9月2日確認。令和8年5月14日版から助成率・助成額の変更なし)
- 人材開発支援助成金の申請書類一覧(令和8年8月3日以降提出分)——令和8年8月3日以降に計画届を提出する場合の様式一覧(2026年8月27日確認)
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