キャリアアップ助成金と人材開発支援助成金の違い・併用ガイド|訓練から正社員化までの流れ

キャリアアップ助成金は「非正規雇用労働者の正社員転換」に、人材開発支援助成金は「従業員研修の経費・賃金」に対して支給される、どちらも厚生労働省の雇用関係助成金です。名前が似ているため混同されがちですが、助成の対象になる取り組みがまったく異なります。
- 正社員にしたい → キャリアアップ助成金 正社員化コース(1人あたり最大80万円)
- 研修を受けさせたい → 人材開発支援助成金(経費助成率 最大75%〜100%)
- 研修してから正社員にしたい → 両方を併用できます。人材開発支援助成金の特定の訓練を修了した労働者を正社員転換すると、キャリアアップ助成金の重点支援対象者として2期分(中小企業・有期雇用労働者で80万円)の助成対象になります
この記事では両制度の違いを比較表で整理したうえで、併用ルートの条件と手続きの流れ、見落としやすい「計画届の一本化」の注意点まで解説します。
両制度の違い【比較表】
| キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 人材開発支援助成金(人材育成支援コース) | |
|---|---|---|
| 何に対して支給されるか | 有期雇用労働者等の正社員転換 | 従業員への職業訓練(10時間以上のOFF-JT等) |
| 対象労働者 | 有期雇用・短時間・派遣などの非正規雇用労働者 | 雇用保険被保険者(正社員も対象になる) |
| 支給されるもの | 転換1人あたりの定額(中小企業・有期・重点支援対象者で80万円) | 訓練経費の一部(助成率45%〜100%〔中小企業〕・30%〜〔大企業〕)+訓練期間中の賃金助成(中小企業で1人1時間あたり800円等)+OJT実施助成 |
| 事前に出す計画 | キャリアアップ計画(転換の前日まで) | 職業訓練実施計画届(訓練開始日の6か月前〜1か月前) |
| 支給申請の期限 | 転換後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内 | 訓練終了日の翌日から2か月以内 |
| 賃金の増額要件 | 転換後6か月の賃金を転換前6か月より3%以上増額(必須) | 修了後に5%以上賃上げ等で助成率が上がる(任意の加算要件) |
(出典:キャリアアップ助成金「正社員化コース」リーフレット〔令和8年4月8日版〕・人材開発支援助成金〔人材育成支援コース〕のご案内〔令和8年8月3日版〕)
賃金まわりの数字は「キャリアアップ=3%増が受給の必須条件」「人材開発=5%増等は満たせば助成率が上がる任意要件」と、位置づけがまったく違う点に注意してください。
先に確認:この併用ルートを使えないケース
併用の中心になる有期実習型訓練(人材育成支援コースのうち、正社員転換を目的にOJTとOFF-JTを組み合わせて2か月以上実施する訓練)は、対象者・訓練内容の要件が細かく定められています。公式パンフレットの対象外規定から、検討前に確認すべきものを挙げます。
- 雇用保険適用事業所でない場合は、両制度とも申請できません
- すでに正社員転換を実施した後では、キャリアアップ助成金は間に合いません(キャリアアップ計画は転換の前日までに提出が必要。後述の一本化を使う場合も転換前の手続きが前提です)
- 対象労働者がキャリアコンサルティング実施日前の過去5年以内に通算おおむね3年以上正規雇用されていた場合、有期実習型訓練の対象になりません(1年未満の離転職を繰り返して通算3年以上になる場合などを除く)
- 医師・歯科医師・弁護士・税理士等の資格を持つ人や1級技能検定の合格者は、その資格の分野では有期実習型訓練の対象になりません
- 転換時の年齢が事業所の定年を超える訓練計画は対象外です
- 訓練実施期間2か月以上・総訓練時間425時間以上(6か月あたり換算)・OJT割合1〜9割などの訓練要件を満たせない場合も対象外です
- 有期実習型訓練は同一の事業主が同一の労働者に実施できるのは1回までです
- 雇入れ時点で「訓練修了後は正社員として雇用する」ことを約束して採用した労働者は、有期実習型訓練の対象になりません(この記事が想定する「まず育ててから、様子を見て正社員にする」計画のように、訓練修了後の評価結果に基づいて転換を検討する予定で雇い入れた場合は対象外にはなりません。募集・雇入れの段階で転換を確約する求人票・雇用契約にしないよう注意してください)
- 人材開発支援助成金には、支給対象事業主の基準期間要件があります。計画届提出日の前日から起算して6か月前〜支給申請日までの間に事業主都合で雇用保険被保険者を離職させている場合、または特定受給資格者・特定理由離職者の離職率が雇用保険被保険者数の6%を超える場合(被保険者数3人以下の事業所を除く)は、支給されません
これらに当てはまる場合でも、「研修だけ」なら人材開発支援助成金の他メニュー、「転換だけ」ならキャリアアップ助成金を単独で使える場合があります。それぞれの単独の要件は人材開発支援助成金の解説記事・正社員化コースの解説記事で確認してください。
使い分けの判断
研修だけ実施したい → 人材開発支援助成金
正社員への研修も対象になるのは人材開発支援助成金だけです。10時間以上のOFF-JTであれば人材育成訓練が基本形で、経費助成率は中小企業の場合、正規雇用労働者等を訓練するなら45%、有期契約労働者等を訓練するなら70%です(賃金要件・資格等手当要件を満たすとそれぞれ+15%)。この70%に正社員転換は条件として付いていませんので、「転換までは決めていないがパート・契約社員に研修を受けさせたい」という段階でも高い率で使えます。
正社員転換だけしたい → キャリアアップ助成金
訓練をせずに転換する場合はキャリアアップ助成金のみが対象です。重点支援対象者(雇入れから3年以上の有期雇用労働者など)なら訓練なしでも2期分80万円(中小企業)の対象になります。
訓練してから転換したい → 併用ルート
「採用したパート・アルバイトを、研修で育ててから正社員にする」計画なら、訓練に人材開発支援助成金、転換にキャリアアップ助成金をそれぞれ受給できます。助成の対象になる措置(訓練と転換)が別であるためで、キャリアアップ助成金の公式Q&Aも、正社員化コースの申請時に人材開発支援助成金の支給決定通知書を添付する手順を明記しています(つまり両方の受給が制度上想定されています)。
さらに、人材開発支援助成金の特定の訓練(令和5年度以降は人材育成支援コース・人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースの訓練)の修了者を正社員転換すると、キャリアアップ助成金の重点支援対象者に該当し、1期分ではなく2期分(中小企業・有期雇用労働者で40万円×2期=80万円)の助成対象になります。
併用ルートの流れ【時系列】
有期実習型訓練→正社員転換のケースで、手続きを時系列に並べると次のようになります。
| 時期 | 手続き | 根拠制度 |
|---|---|---|
| 訓練開始の6か月前〜1か月前 | ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティング→職業訓練実施計画届を労働局へ提出 | 人材開発 |
| 転換の前日まで | キャリアアップ計画を提出(紙媒体なら計画届に併記して一本化可・後述) | キャリアアップ |
| 訓練実施(2か月以上) | OJT実施状況報告書の作成、訓練終了後にジョブ・カードで能力評価 | 人材開発 |
| 訓練終了日の翌日から2か月以内 | 人材開発支援助成金の支給申請(支給申請日までに転換していることが必要) | 人材開発 |
| 転換後6か月の賃金支払い | 転換前6か月より3%以上増額した賃金を6か月分支払う | キャリアアップ |
| 賃金支払日の翌日から2か月以内 | キャリアアップ助成金の支給申請(人材開発支援助成金の支給決定通知書を添付) | キャリアアップ |
有期実習型訓練は、支給申請日までに正規雇用労働者等への転換を行わなかった場合、有期実習型訓練としての助成(経費助成75%・OJT実施助成)は受けられません(令和7年度以降、助成メニューを正規雇用労働者等に転換した場合に限定したうえで経費助成率が引き上げられたため)。また訓練計画上、転換の時期は合理的な理由なく「訓練修了後2か月以内」から外れた設定にできません。「訓練だけ受けさせて、転換はゆっくり検討する」という使い方はできない設計になっています。
ただし転換が流れても、助成がゼロになるとは限りません。パンフレットは、転換等が実施されなかった場合でも、支給決定時までに①職業能力開発推進者の選任 ②事業内職業能力開発計画の策定・周知 ③定期的なキャリアコンサルティングの機会の確保等の定め——の3つを満たしていれば、「人材育成訓練」により助成対象となる場合があるとしています(OJT実施助成は対象外)。有期実習型訓練ではこの3つが申請要件になっていないため未整備のまま進みがちですが、転換が確実でない計画ほど、計画届の段階で整えておく価値があります(詳細は人材開発支援助成金の解説記事)。
計画届の一本化と、電子申請の落とし穴
紙媒体で人材開発支援助成金の職業訓練実施計画届を提出する場合、計画届内の記入欄に「キャリアアップ管理者」「キャリアアップのために講じる予定の措置」を併記すれば、キャリアアップ計画の届け出を省略できます(有効期間は提出日から5年以内)。
ただし公式Q&Aには重要な例外が2つ明記されています。
- 雇用関係助成金ポータルから電子申請でキャリアアップ助成金を申請する場合は、一本化によらず、キャリアアップ計画を電子申請で届け出ている必要があります
- 予定変更などで特定の訓練を修了せずに正社員化のみ申請する場合は、別途、転換日の前日までにキャリアアップ計画の提出が必要です
「紙の計画届に併記したから大丈夫」と思い込んで電子申請に進むと、キャリアアップ計画が未提出扱いになるおそれがあります。当社が補助金・助成金の申請支援でよく見るのは、こうした制度をまたぐ手続きの継ぎ目での抜け漏れです。併用時は「どちらの計画を・どの媒体で・いつまでに出すか」を最初に一覧にしておくことをおすすめします。
併給調整の正しい理解
人材開発支援助成金のパンフレットには「同一の経費、賃金、訓練実施を対象として他の助成金や補助金等を申請する場合、どちらか一方しか支給されない場合があります(併給調整)」とあります。
ポイントは「同一の措置」に対する二重取りが調整対象になるという点です。キャリアアップ助成金(転換への助成)と人材開発支援助成金(訓練経費・訓練期間中の賃金への助成)は対象になる措置が別なので、この併給調整の趣旨に触れずに両方を受給する道が公式に用意されています。一方、たとえば同じ研修の経費を人材開発支援助成金と他の補助金の両方に計上する、といった使い方が調整の対象です。
よくある質問
Q. 訓練修了者ならどんな訓練でも「重点支援対象者」になりますか?
なりません。対象は人材開発支援助成金の特定の訓練で、令和5年度以降に計画届等を提出して開始した訓練では、人材育成支援コース・人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースの訓練が該当します。訓練ごとの詳細要件は厚生労働省の人材開発支援助成金ページで必ず確認してください。なお人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースは令和8年度末までの時限措置です。
Q. 勤続5年超のパート従業員は併用ルートの対象になりますか?
キャリアアップ助成金では、雇用された期間が通算5年を超える有期雇用労働者は「無期雇用労働者」とみなされます。ただし公式Q&Aは、その場合でも特定の訓練修了者に該当すれば「無期雇用労働者かつ重点支援対象者」になり得るとしています(中小企業で20万円×2期=40万円の区分)。有期区分の80万円にはならない点に注意してください。
Q. 有期契約から無期契約への転換でも両方もらえますか?
人材開発支援助成金(有期実習型訓練)の「転換等」には無期契約労働者への転換も含まれますが、キャリアアップ助成金の正社員化コースは正規雇用労働者への転換が対象です。無期転換のみの場合は訓練側の助成は受けられても、正社員化コースの対象にはなりません。
Q. 大企業でも併用できますか?
できます。ただし支給額・助成率は中小企業より低くなります(正社員化コースは有期・重点支援対象者で60万円、人材育成訓練の経費助成率は30%など)。企業規模は人材開発支援助成金では支給申請時点で判定されます。
まとめ
- キャリアアップ助成金は転換、人材開発支援助成金は訓練への助成。賃金要件も「3%増が必須」と「5%増等で加算」で位置づけが異なる
- 特定の訓練の修了者を正社員転換すると重点支援対象者として2期分(中小企業・有期雇用労働者で80万円)の対象になる
- 有期実習型訓練は支給申請日までの転換が高い助成率の条件。ただし転換できなくても、3要件を満たせば「人材育成訓練」として助成対象になる場合がある
- 計画届の一本化は紙媒体のみ。電子申請の場合はキャリアアップ計画の電子届け出が別途必要
- 併給調整は「同一の経費・賃金・訓練」への二重申請が対象。措置が別なら併用ルートが公式に用意されている
自社のケースでどちらが(または両方が)使えるかは、補助金かんたん診断(無料・3分)で確認できます。個別のご相談は公式LINEからどうぞ。雇用・人材まわりの他の支援制度は目的から探すでまとめて確認できます。
参考(一次情報)
- キャリアアップ助成金(厚生労働省)——制度の総合案内ページ
- キャリアアップ助成金「正社員化コース」リーフレット(令和8年4月8日版)——支給額表・重点支援対象者の定義・受給条件(2026年8月24日確認)
- キャリアアップ助成金Q&A(令和8年度版・令和8年7月29日)——特定の訓練の範囲(Q26・27)・計画届の一本化と電子申請の例外(Q28)・支給決定通知書による証明(Q29)・無期みなしと重点支援対象者の関係(Q13)(2026年8月24日確認)
- 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内(令和8年8月3日版)——助成率・助成額表、有期実習型訓練の要件・対象外規定、併給調整の記載(2026年8月24日確認)
- 人材開発支援助成金(厚生労働省)——特定の訓練の詳細・各コースのパンフレット
補助金・助成金サポート実績800件以上「補助金オタク」運営
まずは「自社に使える制度があるか」を知るところからどうぞ。3分の無料診断で候補がわかります。
3分でわかる 補助金かんたん診断(無料)LINEで気軽に質問する新着公募・締切前リマインドもLINEでお届けしています。
TikTok最新の補助金情報を毎日発信中
@hojokinotaku

