社員研修の費用に使える制度の中心は、厚生労働省の「人材開発支援助成金」です。10時間以上の研修(OFF-JT=通常の業務を離れて受ける研修)を計画どおりに実施すると、研修経費の一部と、研修を受けている時間の賃金の一部が助成されます。「研修 補助金」で探す方も多いのですが、研修費そのものを対象にする国の制度は助成金が中心です。助成金は、審査で採択を競う補助金と違い、要件を満たして手続きをすれば予算の範囲内で支給されます(両者の違いは補助金と助成金の違いで解説しています)。

  • 研修の目的で使うコースが変わります。一般的な職務研修は人材育成支援コースで、中小企業の経費助成率は45%(パート・契約社員などの有期契約労働者等は70%)です。DX・AI活用・新規事業のための研修は、事業展開等リスキリング支援コース(同75%)を使います
  • 事業展開等リスキリング支援コースと人への投資促進コースは、令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置です。また事業展開等リスキリング支援コースでは、2026年8月3日以降に提出する計画から、汎用的な生成AI研修やDXの概念を学ぶだけの研修が対象外です
  • 1コース10時間未満の短い研修は、国の人材開発支援助成金では原則として対象になりません。東京都内の中小企業なら、東京しごと財団のスキルアップ助成金・DXリスキリング助成金が、3時間以上10時間未満の研修の受け皿です。ただし、同じ研修で国と都の両方を受けることはできません
  • 研修費を会社が全額負担していることが必須です。「助成金で研修が実質無料」という勧誘に乗って返金や協力金を受け取ると要件を満たさず、不正受給として扱われるおそれがあります

この記事では、研修の目的別に使える制度を早見表で示します。そのうえで、申請前に確認したい対象外のパターン、人材開発支援助成金のコースの選び方、AI・DX研修の注意点、東京都などの制度、申請の流れを整理しました。根拠は、厚生労働省・東京都の公式資料(2026年10月1日確認)です。

金額・助成率は、特に断りがない限り中小企業の場合です。中小企業の範囲は、支給申請時点の主たる事業ごとに、資本金・出資総額または常時雇用する労働者数のどちらかが基準以下かで決まります。

  • 小売業(飲食店を含む):5,000万円以下または50人以下
  • サービス業:5,000万円以下または100人以下
  • 卸売業:1億円以下または100人以下
  • その他の業種:3億円以下または300人以下

個人・医療法人・社会福祉法人・一般社団法人などは、労働者数だけで判断します。

社員研修に使える助成金・補助金【2026年】の記事でわかる3つのこと:研修の目的別に使える助成金・補助金と助成率の目安、2026年8月改正で対象外になったAI・DX研修の例、10時間未満の研修に使える東京都の助成金と申請の流れ
図解:社員研修に使える助成金・補助金【2026年】で最初に押さえたい3つのポイント

研修の目的別:使える助成金・補助金の早見表

社員研修に使える助成金・補助金を、研修の目的別に一覧にしたのが次の表です。助成率の加算条件や上限額は、後の各章で公式資料の区分どおりに示します。

研修の目的使える制度助成の目安(中小企業)
職務に必要な知識・資格の研修(10時間以上)人材開発支援助成金 人材育成支援コース(人材育成訓練)経費45%(有期契約労働者等は70%)+賃金800円/時
新卒者等へのOJT+OFF-JT(大臣認定の実習併用職業訓練)同コース(認定実習併用職業訓練)経費45%+賃金800円/時+OJT実施助成20万円
パート・契約社員の正社員化を目的とした訓練同コース(有期実習型訓練)経費75%+賃金800円/時+OJT実施助成10万円(正社員化した場合)
45歳以上の社員の実践的なスキル習得同コース(中高年齢者実習型訓練)経費60%+賃金800円/時+OJT実施助成10万円
DX・AI活用・新規事業のためのリスキリング人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース経費75%+賃金1,000円/時(令和8年度末まで)
ITSS・DSS-Pレベル3・4の高度デジタル人材の育成人材開発支援助成金 人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練)経費75%+賃金1,000円/時(令和8年度末まで)
サブスク型の研修サービス(新入社員の動画研修など)同コース(定額制訓練)経費60%(賃金助成なし)
有給の教育訓練休暇制度をつくる人材開発支援助成金 教育訓練休暇等付与コース30万円(1事業主1度限り)
建設業の特別教育・安全衛生教育・技能検定の事前講習人材開発支援助成金 建設労働者技能実習コース賃金9,500円/日(被保険者20人以下)+経費の一部(1人1技能実習10万円まで)
3時間以上10時間未満の短い研修(東京都内の中小企業)東京しごと財団 事業内/事業外スキルアップ助成金・DXリスキリング助成金800円×時間×人数、または経費の1/2〜3/4(1人1研修ごとの上限あり)
在籍型出向で他社の実務を経験してもらう産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)出向中の賃金負担額の2/3(1人1日9,110円まで)
AIツール・社内向け研修ツールの導入デジタル化・AI導入補助金2026研修費ではなくツール費が対象。通常枠の補助額は5万円〜450万円

大企業は、人材開発支援助成金の多くのメニューで助成率・助成額が低く設定されています。東京しごと財団の助成金は、中小企業等だけが対象です。多くの制度に共通するのは、研修を始める前に手続きが必要という点です。人材開発支援助成金は訓練開始日の6か月前から1か月前までに計画届を、東京しごと財団の助成金は研修開始予定日の1か月前までに交付申請を出します。研修を終えてから制度を探しても間に合いません。

申請前に確認:研修費の助成が受けられない典型パターン

研修費の助成が受けられない典型例の図解。主な項目:受講者が雇用保険の被保険者でない(社長・個人事業主本人など)、趣味・教養や講演会・見学会など、対象外とされる研修内容、計画届を訓練開始日の1か月前までに出していない、研修費を会社が全額負担していない(返金・協力金を受けた)
図解:研修費の助成が受けられない典型例で押さえたいポイント

研修費の助成は、会社・受講者の条件、研修の中身、手続きやお金の流れのいずれかで対象外になることがあります。研修の内容や手続きの順番だけで対象外になるケースが多いため、制度を選ぶ前に、次のどれかに当てはまらないかを確認してください。

会社・受講者の条件で対象外になるケース

  • 受講者が雇用保険の被保険者でない:人材開発支援助成金の対象労働者は、申請する事業主の雇用保険被保険者です。社長や個人事業主本人など、雇用保険に加入していない人の研修は対象になりません。東京しごと財団の助成金も、代表者・個人事業主本人は対象外です。役員は、雇用保険に加入している場合のみ従業員として扱われます
  • 労働保険料の未納・労働関係法令違反・不正受給歴・倒産:支給申請をした年度の前年度より前の労働保険料が未納だと、支給対象外です。申請の翌日から2か月以内に納めれば除外されます。人材開発支援助成金の各コースのパンフレットは、次の場合も支給対象外としています。支給申請日の前日から過去1年間の労働関係法令違反、不正受給から5年以内、支給申請日または支給決定日時点での倒産です。性風俗関連営業・接待を伴う飲食等営業を行う事業主や暴力団関係事業所なども対象外です(雇用関係助成金に共通の要件もあわせて確認してください)
  • 基準期間内の事業主都合の解雇:人材育成支援コース・人への投資促進コース・教育訓練休暇等付与コースでは、事業主都合の解雇等で被保険者が離職した事業主は対象外です。3コースの各パンフレットが定めています。期間は、計画届の提出日の前日から起算して6か月前の日から支給申請書の提出日までです。同じ期間に特定受給資格者(離職区分1A・3A)の離職者数が被保険者数の6%を超える場合も対象外です(3人以下の場合を除く)。事業展開等リスキリング支援コースの詳細版パンフレットの支給対象事業主要件には、この規定は記載されていません。直近に事業主都合の離職がある場合は、計画届の前に管轄の労働局へ確認してください
  • 東京都の助成金は所在地・納税の要件がある:都内に本社または主たる事業所があること、都税の未納付がないこと、過去5年間に重大な法令違反等がないことが必要です。受講者が都内の事業所に常時勤務していることなども求められます(ほかに労働関係法令の遵守などの要件もあります)

研修の中身で対象外になるケース

まず時間の要件です。人材育成支援コースでは、通学制・同時双方向型の通信訓練は1コースの実訓練時間数が10時間以上必要です。eラーニング・通信制は、標準学習時間が10時間以上または標準学習期間が1か月以上であることが必要です。一般教育訓練等の指定講座の訓練は、eラーニング・通信制のこの要件が不要です。

そのうえで、人材育成支援コースと事業展開等リスキリング支援コースのパンフレットは、次のような研修を「対象とならないOFF-JT」としています。研修の一部に含まれる場合は、その時間を除いたうえで10時間以上が必要です。

  • 職務に間接的にしか関係しない内容(例:普通自動車運転免許の取得講習)
  • 職種を問わず社会人に共通して必要な内容(例:接遇・マナー講習)。新入社員向けのビジネスマナー研修が典型です。ただし人材育成支援コースでは、支給要領の特例により、この内容がOFF-JTの実訓練時間数に占める時間数の半分未満なら助成対象です。認定職業訓練(普通学科を含む)では、時間数の割合にかかわらず助成対象です。事業展開等リスキリング支援コースには、この特例はありません
  • 趣味・教養が目的の内容(例:日常会話程度の語学、話し方教室)
  • 通常の事業活動として行う内容(例:コンサルタントによる経営改善の指導、自社の経営方針・業績報告会、社内制度の説明、QCサークル活動、自社で使う機器の操作説明、自社製品の説明)。なお、自社の財務諸表やデータを題材に分析手法を学ぶだけの研修は、事業外訓練であれば対象になり得ます。学んだ手法で自社の経営改善計画などの成果物を作る段階は対象外です
  • 自社内のOJT(現場実習・営業同行トレーニング)や、生産ライン・営業中の職場で行う研修。OJTが助成されるのは、OFF-JTと組み合わせた認定実習併用職業訓練・有期実習型訓練・中高年齢者実習型訓練に限られます。OJT単独では助成対象になりません
  • 労働者が自発的に受ける研修、専らビデオを視聴するだけの講座(受講の進捗を管理できるeラーニング・通信制は除く)
  • 法令で事業主に実施が義務付けられている講習(例:労働安全衛生法に基づく特別教育)。ただし資格を取るための法定講習は除かれます。建設業の技能実習コースは、特別教育も対象にしています(後述)
  • 知識・技能の習得を目的としない研修(例:意識改革研修、モラール向上研修)、講習なしで受験できる資格試験・適性検査
  • 講演会・見学会・視察旅行・ビジネス交流会・オンラインサロン、海外・洋上で実施する研修
  • 人材育成支援コースでは、定額制(サブスク型)のサービスによるeラーニング・同時双方向型の通信訓練も対象外です。人への投資促進コースの定額制訓練なら対象になります

この一覧は、人材育成支援コースと事業展開等リスキリング支援コースのものです。人への投資促進コースでは扱いが異なります。たとえば定額制訓練で、新入社員層・中堅職員層・管理者層などの階層ごとに入社時や昇級時に実施する研修です。この場合は、社会人に共通するスキルの研修も助成対象になります(人への投資促進コースのパンフレット)。

手続き・お金の流れで対象外になるケース

手続きの期限切れや、研修費の負担の仕方でも対象外になります。以下は人材育成支援コースのパンフレットの記載です。他のコースにも同種の規定がありますが、細部はコースごとのパンフレットで確認してください。

  • 計画届の期限切れ:訓練開始日の6か月前から1か月前までに提出していないと対象外です。新たに雇い入れた労働者だけを対象にし、雇入れ日から訓練開始日までが1か月以内の訓練などは、訓練開始日の前日までです
  • 受講率が8割に届かない:通学制・同時双方向型の通信訓練は、実訓練時間数の8割以上の受講が必要です。eラーニング・通信制は、訓練期間中の修了が必要です。受講者は計画届に添付する対象労働者一覧に記載された人に限られるため、後から受講者を足す場合は変更届が要ります
  • 計画と違う日程で実施した:変更届を出さずに日程を変えると、計画届の日時で受講時間を数えます。そのため受講率0%で不支給になる例が、パンフレットに示されています
  • 研修費を会社が全額負担していない:受講者が一部でも負担していると、賃金助成を含めて不支給です(育児休業中訓練を除く)。親会社など申請事業主以外が支払った場合も、経費助成の対象になりません。研修会社から返金・キャッシュバック・アンケートや広告協力の謝礼・営業協力金・製品の無償提供などを受けた場合も同じです(賃金助成は対象になり得ます)
  • 申請事業主と密接な関係にある教育訓練機関への支払い:代表者・従業員・代表者の配偶者や3親等以内の親族が代表を務める機関や、親会社・子会社である機関などが該当します。こうした機関に支払う受講料は、経費助成の対象外です
  • 年次有給休暇を与えて受講した研修は対象外です。所定労働時間外・休日(振替休日を除く)に受講した時間は、賃金助成の対象外です
  • 官庁(国の役所)主催の訓練の受講料は、経費助成の対象外です。都道府県や独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の職業能力開発施設が実施する訓練の受講料も、対象外です。ただし、高度職業訓練と、生産性向上人材育成支援センターが実施する訓練は除きます
  • 同じ研修で国と東京都の助成を重ねることはできません。東京しごと財団の助成金は「国又は地方公共団体から助成を受けておらず、今後受ける予定もない」研修に限っています

「研修が実質無料になる」という勧誘に注意

厚生労働省は「訓練経費は無料になりません」というリーフレットを出しています。助成金を使って訓練経費が無料になったり利益が出たりすることは制度上できないと明示しています。パンフレットが注意を呼びかけている勧誘の例は次のとおりです。

  • アンケートへの協力金や、紹介先への営業協力の対価で研修費を実質無料にできる
  • 助成金を使えば支払った額以上に利益が出る
  • AI研修とAIツールの導入をセットにすれば、ツールの導入費用も研修費として申請できる(AI研修費用は対象経費ですが、AIツール導入費用は対象経費ではありません)

不正受給と判断されると、助成金の返還に加えて、返還額の20%の違約金と年3%の延滞金がかかります。事業主名等の公表と、5年間の雇用関係助成金の不支給という措置もあります。2026年8月3日以降の支給申請からは、不正が認められた場合、自主申告をしていなければ支給決定前でも原則として公表の対象になりました。

また、パンフレットは助成金の申請手続き(申請書の作成・提出、審査への対応)は社会保険労務士の独占業務だと明記しています。社会保険労務士でない研修会社などが報酬を得て行うことは、社会保険労務士法第27条で禁止されています。「申請手続きも無料で」とうたう研修でも、受講料にその対価が含まれていると評価されれば問題になります。

人材開発支援助成金とは:7つのコースの違いと選び方

人材開発支援助成金とは、事業主が行う社員の研修・人材育成を支援する厚生労働省の助成金で、7つのコースの総称です。社員研修で主に使うのは、次の表の上の3コースです。

コース向いている研修・制度時限措置詳しい解説
人材育成支援コース職務に関連する10時間以上のOFF-JT、OJTと組み合わせた訓練-人材開発支援助成金とは
事業展開等リスキリング支援コース新規事業・DX・GX化・社内の人事計画に伴う新しい知識の習得令和8年度末までリスキリング支援コースの解説
人への投資促進コース高度デジタル人材・大学院・サブスク型研修・社員の自発的な受講の費用負担・長期休暇制度令和8年度末まで人への投資促進コースの解説
教育訓練休暇等付与コース有給の教育訓練休暇制度(3年間で5日以上)の導入-教育訓練休暇等付与コース
建設労働者技能実習コース建設労働者の特別教育・安全衛生教育・技能検定の事前講習など-建設労働者技能実習コース・認定訓練コース
建設労働者認定訓練コース建設関連の認定職業訓練(都道府県の認定訓練助成金への上乗せ)-同上
障害者職業能力開発コース障害者の職業能力開発を行う施設の設置・運営(令和6年4月にJEEDへ移管)-後述

(出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」制度ページ。時限措置の欄は、各パンフレットの助成額表で「令和8年度末までの時限措置」と注記されているコースです)

コースは、研修の目的から順に当てはめると確実に選べます。

  1. DX・AI活用・新規事業・GX化のための研修か → 事業展開等リスキリング支援コース(経費75%)。ただし2026年8月改正の対象外ルールを先に確認します(AI・DX研修の章)
  2. ITSS・DSS-Pレベル3・4相当の訓練や大学院での訓練か → 人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練)
  3. サブスク型の研修サービスを使うか → 人への投資促進コースの定額制訓練。DX化や新規事業のための受講なら、事業展開等リスキリング支援コースの対象になる可能性があると、厚生労働省のリーフレットは案内しています
  4. それ以外の職務に関する研修 → 人材育成支援コース
  5. 研修そのものではなく休暇制度を整えたい → 教育訓練休暇等付与コース
  6. 建設業の特別教育・安全衛生教育などの技能実習 → 建設労働者技能実習コース

人材育成支援コース(時限措置のない基本のコース)

人材育成支援コースは、時限措置のない基本のコースです。4つのメニューがあり、研修の形と対象者で選びます。表の( )内は大企業です。

メニュー経費助成率賃金助成(1人1時間)OJT実施助成(1人1コース)
①人材育成訓練(正規雇用労働者等)45%(30%)800円(400円)-
①人材育成訓練(有期契約労働者等)70%800円(400円)-
②認定実習併用職業訓練45%(30%)800円(400円)20万円(11万円)
③有期実習型訓練(正社員化した場合)75%800円(400円)10万円(9万円)
④中高年齢者実習型訓練(45歳以上)60%(45%)800円(400円)10万円(9万円)

(出典:人材育成支援コースのご案内〔詳細版〕令和8年8月3日版)

  • 賃金要件・資格等手当要件を満たすと加算されます。対象は、訓練修了後1年以内に賃金を5%以上引き上げるか、資格等手当を就業規則等に定めて支払い賃金を3%以上引き上げた場合です。経費助成率は+15%(③有期実習型訓練は+25%)、賃金助成は+200円(大企業+100円)で、OJT実施助成も加算されます。割増分は通常分とは別に申請します
  • 経費助成の上限(1人1訓練):実訓練時間数が10時間以上100時間未満で15万円、100時間以上200時間未満で30万円、200時間以上で50万円です。大企業は10万・20万・30万円です。eラーニング・通信制は経費助成のみで、賃金助成はありません
  • 1事業所1年度の上限は1,000万円で、1人の労働者が支給申請できるのは1年度3回までです
  • 事前に整えること:職業能力開発推進者の選任と、事業内職業能力開発計画の策定・周知です(③有期実習型訓練を除く)。①②④では、定期的なキャリアコンサルティングの実施を、労働協約・就業規則・事業内職業能力開発計画のいずれかに定めておくことも要件です
  • ④中高年齢者実習型訓練は2026年4月の改正で新設されたメニューです。③有期実習型訓練で正社員化できなかった場合の救済ルートは人材開発支援助成金とはで解説しています

事業展開等リスキリング支援コース(DX・AI・新規事業/令和8年度末まで)

事業展開等リスキリング支援コースの対象は、次のいずれかに必要な知識・技能を、10時間以上のOFF-JTで習得する研修です。新規事業の立ち上げなどの事業展開、社内のDX・GX化、企業内の人事・人材育成計画に基づく今後の職務の3つです。

  • 経費助成率75%(大企業60%)、賃金助成1人1時間1,000円(同500円)
  • 経費助成の上限(1人1訓練):中小企業は10時間以上100時間未満30万円、100時間以上200時間未満40万円、200時間以上50万円です。eラーニング・通信制は中小企業15万円(大企業10万円)、定額制サービスは1人1月2万円です
  • 1事業所1年度の上限は1億円です。1人の労働者が助成を受けられる訓練は、1年度3回までです
  • 単に既存のアプリやシステムを購入して操作方法を習得する研修、コンサルタントによる指導は対象外です
  • 中小企業が「人事・人材育成計画に基づく訓練」を使う場合は、訓練開始前に認定経営革新等支援機関の確認が必要で、管理職研修・マネジメント研修などは対象外です
  • 中小企業が賃金要件等を満たし、訓練後に機器・設備を新たに導入した場合は、設備投資加算があります。加算額は導入費用の50%で、支給対象労働者1人につき15万円、10人以上は150万円が限度です。通学制または同時双方向型で、機器・設備を実際に使う実技を含む訓練であることなどの要件があります

同じ20時間の通学制研修でも、中小企業の1人あたり経費助成の上限は人材育成支援コースが15万円、事業展開等リスキリング支援コースが30万円です。DX・新規事業に当てはまる研修なら、まず事業展開等リスキリング支援コースの要件を確認してみてください。

人への投資促進コース(高度デジタル・サブスク・自発的な学び/令和8年度末まで)

人への投資促進コースは、高度デジタル人材訓練や定額制訓練など5つのメニューに分かれます。メニューごとの助成率は次のとおりです(表の( )内は大企業)。

メニュー経費助成率賃金助成(1人1時間)
高度デジタル人材訓練(ITSS・DSS-Pレベル3・4等)75%(60%)1,000円(500円)
成長分野等人材訓練(大学院での訓練)75%1,000円(国内の大学院のみ)
情報技術分野認定実習併用職業訓練(IT分野未経験者のOJT+OFF-JT)60%(45%)800円(400円)
定額制訓練(サブスク型研修サービス)60%(45%)なし
自発的職業能力開発訓練(社員の自発的な受講の費用負担)45%なし

(出典:人への投資促進コースのご案内〔詳細版〕令和8年8月3日版。情報技術分野認定実習併用職業訓練・定額制訓練・自発的職業能力開発訓練は、賃金要件等を満たすと経費助成率が+15%)

1事業所1年度の上限は2,500万円です(成長分野等人材訓練を除く。自発的職業能力開発訓練は300万円まで)。成長分野等人材訓練は、別枠で1,000万円です。定額制訓練の経費助成は受講者1人1月あたり2万円が上限です。

教育訓練休暇等付与コース

教育訓練休暇等付与コースは、有給の教育訓練休暇制度(3年間で5日以上取得できるもの)を就業規則等に新しく定め、実際に社員が取得した場合の助成です。助成額は30万円(賃金要件等を満たす場合36万円)で、1事業主1度限りです。既に有給・無給の教育訓練休暇制度を導入済みの事業主は対象外です。制度導入・適用計画届は、計画期間の初日の6か月前から1か月前までに提出します。

建設労働者技能実習コース・認定訓練コース

建設労働者技能実習コースと建設労働者認定訓練コースは、建設業向けの2コースです。技能実習コースは、人材育成支援コースでは対象外になる労働安全衛生法の特別教育(支給要領別表5に掲げるもの)も対象にしています。

  • 賃金助成(中小建設事業主のみ):技能実習を受講した日数×9,500円(雇用する雇用保険被保険者数が20人以下)または8,550円(21人以上)です。特定の要件で上乗せがあります
  • 経費助成:実習費用の一定割合で、1人1技能実習10万円が上限です。中小建設事業主でない事業主は、女性建設労働者の技能実習に限り対象です
  • 対象の例:労働安全衛生法に基づく特別教育・安全衛生教育・教習及び技能実習、技能検定の事前講習、登録基幹技能者講習、技能継承に係る指導者養成講習
  • 手続き:計画届は、技能実習を実施する日の3か月前から原則1週間前までに出します(登録教習機関等が実施する技能実習を受講する場合は不要)。支給申請は、終了日の翌日から2か月以内です

支給要領の原文にもとづく詳しい解説は、建設労働者技能実習コース・認定訓練コースの解説にまとめています。経費助成率の区分(被保険者数・年齢による違い)や、認定訓練コースの上乗せの仕組みも整理しています。

障害者職業能力開発コース(JEEDへ移管済み)

障害者職業能力開発コースは、一般の社員研修の費用に使う制度ではありません。厚生労働省の制度ページは、障害者職業能力開発コースは令和6年4月から独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が支給業務を行う障害者雇用納付金制度に基づく助成金へ移管すると案内しています。JEEDの助成金一覧では「障害者能力開発助成金」として案内されています。対象は、障害者の能力開発の事業を行うための施設・設備の設置や整備、能力開発訓練事業の運営を行う事業主です。

AI・DX研修に使える制度と、2026年8月改正で対象外になった研修

2026年8月改正:AI研修の対象と対象外の図解。主な項目:対象:営業担当者が生成AIで商品提案書の作り方を学ぶなど業務に直結する研修、対象外:汎用的なプロンプトの作り方やDXの概念だけを学ぶ研修、eラーニングによる訓練は1人1年度1回まで、AIツールの導入費は対象外。ツールはデジタル化・AI導入補助金で考える
図解:2026年8月改正:AI研修の対象と対象外で押さえたいポイント

生成AIの活用研修は、事業展開等リスキリング支援コースの「DX化」の区分で検討するのが基本です。ただし2026年8月3日以降に提出する計画届(経過措置あり)から、このコースのルールが2点変わりました。汎用的な内容の研修が対象外になったことと、eラーニングの受講回数が制限されたことです。

汎用的な内容の研修は対象外に(事業展開等リスキリング支援コース)

「職務に間接的に必要となる知識・技能」と「職種を問わず職業人として共通して必要となるもの」は、DX・GX化に関する訓練であっても対象外になりました。厚生労働省のリーフレットが示す判断例は、次のとおりです。

研修の内容判断理由
営業担当者が、生成AIで商品提案書の構成案作成・文章生成・修正の方法を学ぶ対象担当業務に直結し、そのまま活用できる
生成AIを使うための汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ対象外特定の業務への具体的な適用を伴わない
DXの概念・デジタル技術の概要・データ活用の考え方を学ぶ対象外共通知識の習得にとどまり、業務に直接適用されない
自社のエネルギー使用量データの収集方法・CO2排出量の算定手順を学ぶ算定業務の担当者なら対象、人事・営業の担当者なら対象外受講者の職務と研修内容が合っているかで判断

判断例を見ると、全社員向けの「生成AI入門」を一律に実施する計画は対象外と判断されるおそれがあります。職種ごとの実務に結びつけた内容と、その業務を担当する受講者の選定が前提になります。

もう1点は受講回数です。このコースで助成を受けられる訓練は、1人1年度3回までです。そのうちeラーニングによる訓練(他の実施方法との組み合わせを含む)は1人1年度1回までになりました。教育訓練機関との契約・申込みが2026年8月2日以前に行われている事業外訓練などには、経過措置があります。該当しそうな場合は、支給要領の経過措置の項で確認してください。

AIツールの費用は研修の助成金では出ない

AIツールの導入費用は、研修の助成金の対象になりません。人材育成支援コース・人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースのパンフレットは、いずれも同じ扱いを明記しています。AI研修費用は対象経費ですが、AIツール導入費用は対象経費ではありません。ツールの費用は補助金で考えます。

  • デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠):事務局に登録されたITツールの導入費が対象で、補助額は5万円〜450万円です。ツール導入時の研修は、ソフトウェアと対になって登録された役務「導入設定・マニュアル作成・導入研修」として申請できます。役務の補助対象経費は、合計200万円が上限です。階級別研修・セキュリティ研修・技術研修や、eラーニングの作成・配信機能をもつ社内向け研修ツールも、業務プロセス「共P-05」に含まれています。制度全体はデジタル化・AI導入補助金2026完全ガイド、補助額の目安は見積もりシミュレーターで確認できます
  • ChatGPT・Claudeの利用料と研修費の制度の分け方は、Claude・ChatGPTの導入に使える補助金・助成金一覧で詳しく整理しています
  • 同じ経費・賃金・訓練を対象に複数の助成金や補助金を申請すると、どちらか一方しか支給されない場合があります(併給調整)。研修費は助成金、ツール費は補助金と、経費を分けて計画します

賃上げとセットなら業務改善助成金も選択肢

令和8年度の業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金を50円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その費用の一部を助成する制度です。助成額は最大600万円です。対象は中小企業・小規模事業者で、事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満であることなどが要件です。交付要領の経費区分では、「謝金」として外部講師による従業員向けの研修や導入機器の操作研修等が対象とされ、1回10万円まで・5回までが上限です。研修単独の制度ではなく、設備投資等の計画の一部として使う制度です。要件は業務改善助成金の解説で確認してください。

当社のAI研修について

当社(株式会社CAREARC)も、事業展開等リスキリング支援コースの活用を想定したAI研修を提供しています。コースはAI業務効率化研修、AI SNSディレクター研修、AI開発・社内システム構築研修の3つで、対面または講師と同時双方向でやり取りするライブ形式です。受講企業の実際の業務を題材にする実践型です。研修内容と助成金の要件との関係は、社員のAI研修×人材開発支援助成金のページの無料相談でご説明しています(支給・不支給は労働局の審査で決まります)。

東京都の研修助成金と、国のその他の研修支援

東京しごと財団のスキルアップ支援事業(令和8年度)

東京都内の中小企業向けには、公益財団法人東京しごと財団が4つの助成金を実施しています。国の人材開発支援助成金は10時間以上の研修が対象ですが、東京しごと財団の4つの助成金のうち3つは、3時間以上10時間未満の短い研修が対象です。国と都で、研修の時間数による棲み分けができています。4つの助成金の対象・時間・助成額は次のとおりです。

助成金対象の研修研修時間助成額1社あたりの上限
事業内スキルアップ助成金自社で企画する集合研修(同時双方向のオンラインを含む)。研修ごとに2名以上が8割以上受講3時間以上10時間未満受講者数×研修時間数×800円事業外と合わせて150万円
事業外スキルアップ助成金教育機関の既存の公開研修(集合・オンライン・eラーニング)3時間以上10時間未満経費の1/2(小規模企業者、非正規雇用労働者受講加算は2/3)。1人1研修2万5,000円まで事業内と合わせて150万円
DXリスキリング助成金自社のDX推進に必要な知識・技能の研修(公開研修またはオーダーメイド研修)3時間以上10時間未満経費の3/4。1人1研修7万5,000円まで100万円
資格取得サポート助成金建設・建築・運輸分野の国家資格・免許・法定講習のための公開研修10時間以上経費の1/2100万円

(出典:東京しごと財団 スキルアップ支援事業の各助成金ページ。非正規雇用労働者受講加算は、中小企業等で非正規雇用労働者が受講者全体の2割以上を占める場合)

  • 申請のタイミング:研修開始予定日の1か月前までに交付申請します。受付期間は令和8年3月1日から令和9年2月28日までです(資格取得サポート助成金は令和8年4月30日から)。対象は、令和8年4月1日から令和9年3月31日までに始まり、令和9年8月31日までに終わる研修です。資格取得サポート助成金は、令和8年5月30日から令和9年3月31日までに始まり、令和10年3月31日までに終わる研修が対象です
  • 共通の要件:研修経費の全額を会社が負担し、業務命令として労働時間内に実施して所定の賃金を支払うこと、交付申請時の計画どおりに実施することなど
  • DXリスキリング助成金の対象外:サブスクリプション形式(定額制)の研修、通信(添削方式)の研修、国や地方公共団体が主催する研修、資本関係等のある教育機関の研修、特別教育など法令で実施が義務付けられた教育、交付決定前に実施される研修など

たとえば1日6時間の生成AI研修のように10時間に届かない研修は、国の人材開発支援助成金では原則として対象になりません。東京都内の中小企業なら、DXリスキリング助成金の要件を確認してみてください。逆に10時間以上の研修は、研修ごとに国と都のどちらの制度を使うかを決めます。

東京都のその他の制度

  • DX実践人材リスキリング支援事業(東京都産業労働局):DXコンサルタントによる課題把握とリスキリング計画の策定からDX講習までを、無料・フルオンラインで支援する事業です。支援規模は300社、1社あたり経営者・現場リーダー等3名までです(事業サイトでは、企業ごとに60時間の学習プランを提供すると案内しています)。令和8年度は2026年5月11日に募集を開始し、2026年10月1日時点の公式サイトでは「応募多数のため募集終了」となっています
  • 中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金(一般コース):日本語能力試験おおむねN2レベル以下の外国人従業員へのビジネス日本語教育等が対象です。標準プラン(50時間以上)は経費の1/2で最大25万円、短時間プラン(30時間以上)は最大15万円です。令和8年度の募集期間は令和8年4月9日から令和9年1月14日まで

東京都以外の自治体にも独自の研修助成がある場合がありますが、年度ごとの予算で内容が変わります。都道府県別の募集中の制度は都道府県から探すで確認できます。

低料金で受けられる公的研修:JEEDの生産性向上支援訓練

JEEDは、全国のポリテクセンター等に設置した生産性向上人材育成支援センターで、企業向けの「生産性向上支援訓練」を実施しています。受講料は1人あたり2,200円〜6,600円(税込)です。自社の会議室で実施するオーダーメイドのコース(訓練時間は4〜30時間で設定)と、1人から受けられるオープンコースがあります。生成AIの活用などのコースも用意されています。

人材育成支援コースのパンフレットは、都道府県やJEEDの職業能力開発施設が実施する訓練の受講料を、経費助成の対象外にしています。ただし、生産性向上人材育成支援センターが実施する訓練は、この除外から外されています。JEEDの案内にも、条件を満たす場合は人材開発支援助成金を利用できると書かれています。ただし助成金を使うには10時間以上などの要件を満たす必要があります。

在籍型出向でのスキルアップ:産業雇用安定助成金

研修ではなく、他社での実務経験でスキルアップを図る場合は、産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)があります。スキルアップを目的とした在籍型出向で、復帰後6か月間の各月の賃金を、出向前と比べていずれも5%以上上昇させることなどが要件です。2026年4月8日以降に計画届を提出した場合は、出向先事業主も対象になり得ます(企業グループ内の出向は支給されません)。助成率は中小企業2/3(それ以外1/2)です。上限は1人1日9,110円(2026年8月1日時点の雇用保険の基本手当日額の最高額)、1事業所1年度1,000万円までです。

社員個人が使う制度との違い

  • 教育訓練給付金は、働く人自身が使う制度です。一定の要件を満たす人が厚生労働大臣の指定講座を修了したときに、経費の一部が支給されます(一般教育訓練は経費の20%・上限10万円など)。支給申請はお住まいを管轄するハローワークで受け付けています
  • 経済産業省のリスキリングを通じたキャリアアップ支援事業は、在職者のキャリア相談・リスキリング講座・転職支援を一体的に行う体制を整備する事業です

いずれも会社が負担する社員研修の費用を助成する制度ではありません。会社が業務として実施する研修は、人材開発支援助成金や東京都の助成金で考えます。

申請の流れと期限(人材開発支援助成金の場合)

人材開発支援助成金の申請の流れの図解。主な項目:職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定、訓練開始日の6か月前から1か月前までに計画届を提出、計画どおりに研修を実施し、研修経費を会社が全額支払う、訓練終了日の翌日から2か月以内に支給申請(後払い)
図解:人材開発支援助成金の申請の流れで押さえたいポイント

人材開発支援助成金は、訓練開始日の6か月前から1か月前までに計画届を出し、訓練終了日の翌日から2か月以内に支給申請します。準備から割増分の申請までの流れは、次の表のとおりです。

ステップと期限やること
準備:計画届の提出まで職業能力開発推進者の選任、事業内職業能力開発計画の策定・周知(有期実習型訓練を除く)
計画届:訓練開始日の6か月前から1か月前まで職業訓練実施計画届と添付書類を管轄の労働局へ提出(窓口・郵送・電子申請。電子申請にはGビズIDが必要)
研修の実施:計画どおりに計画届の日程・内容で実施。内容を変える場合は期限内に変更届
経費の支払い:支給申請までに研修経費を会社が全額支払う
支給申請:訓練終了日の翌日から2か月以内支給申請書と添付書類を労働局へ提出
審査・支給:支給申請の後支給申請後に一括して審査され、支給・不支給が決まる(後払い)
割増分の申請:賃金を3か月継続して支払った日の翌日から5か月以内賃金要件・資格等手当要件を満たした場合に、割増分だけを別途申請

(出典:人材育成支援コースのご案内〔詳細版〕令和8年8月3日版。事業展開等リスキリング支援コースも計画届・支給申請の期限は同じです)

  • 郵送は到達日が提出日です。消印有効ではないため、期限ぎりぎりの郵送は避けます
  • 計画届を電子申請で出していない場合、その計画の変更届・支給申請は電子申請できません。電子申請に使うGビズIDの取り方はGビズIDプライムの取得方法で解説しています
  • 2026年5月14日付けの支給要領改正で、支給申請時に「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」の提出が必要になりました(厚生労働省の制度ページのお知らせ)。助成金の有無だけで受講料に差をつけている場合、その差額は支給対象になりません
  • 計画届を出しても支給は確定せず、審査は支給申請後に行われます。審査では労働局が予告なく研修の実施状況を確認することもあり、関係書類は支給決定後5年間の保存が必要です

東京しごと財団の助成金は流れが異なります。交付申請(研修開始予定日の1か月前まで)→交付決定→研修の実施→実績報告→助成額の確定→口座振替依頼→振込の順です。4つの助成金の募集要項はいずれも、交付決定前に実施される研修を助成対象外としています。

研修の助成金で実務上つまずきやすい5つのポイント

研修と助成金を組み合わせるときにつまずきやすいのは、研修の日程・内容・時間・実施時間帯・形式の5点です。当社に寄せられるご相談の傾向も踏まえて、順に挙げます。

  1. 研修会社と日程を決めてから助成金を調べ始める:計画届は、訓練開始日の1か月前までが期限です。研修の日程は、計画届の準備(推進者の選任・事業内職業能力開発計画を含む)にかかる日数から逆算して決めます
  2. 全社員一律の「生成AI入門」を予定している:事業展開等リスキリング支援コースでは、2026年8月3日以降の計画から汎用的な内容は対象外です。職種ごとに業務へ直結する内容にし、受講者の職務と研修内容の関係を説明できるようにしておきます
  3. 1日で終わる研修を国の助成金で考えている:実訓練時間数が10時間未満の通学制・オンライン研修は、国の人材開発支援助成金では原則として対象外です。東京都内なら都の助成金を検討します。国の制度を使う場合は、内容に連続性のある研修を組み合わせ、10時間以上の一連のコースとして設計します
  4. 研修を土日や終業後に実施する:所定労働時間外・休日に受講した時間は賃金助成の対象外です。業務命令で受講する以上、その時間の賃金(割増賃金を含む)の支払いも必要です
  5. オンライン研修の形式を確認していない:講師と同時双方向でやり取りするオンライン研修は、通学制と同じ扱いで賃金助成の対象になります。一方、受講の進捗を管理できる録画視聴型のeラーニングは経費助成のみです(受講管理システム等で進捗を管理できない動画視聴だけの研修は対象外です)。経費助成の上限も、事業展開等リスキリング支援コースでは中小企業15万円と通学制より低くなります。人材育成支援コースでも、標準学習時間の定めがない場合は一律で最も低い区分(中小企業15万円)になります

よくある質問

Q. 新入社員研修にも助成金は使えますか?

はい、使えます。新入社員も雇用保険被保険者であれば対象労働者になります。職務に関連する10時間以上のOFF-JTなら人材育成支援コースで、サブスク型の研修サービスなら人への投資促進コースの定額制訓練で申請できます。

接遇・ビジネスマナーなど社会人に共通する内容は、コースによって扱いが分かれます。人材育成支援コースでは、OFF-JTの実訓練時間数に占める時間数が半分未満なら助成対象です。定額制訓練では、入社時など階層ごとの適切な時期に実施する研修なら助成対象です。ビジネスマナーだけの研修は、人材育成支援コースでは原則として対象になりません(認定職業訓練の場合を除く)。新たに雇い入れた労働者だけを対象にし、雇入れ日から訓練開始日までが1か月以内の訓練は、計画届を訓練開始日の前日まで提出できます。

Q. オンライン研修やeラーニングでも対象になりますか?

はい、対象になりますが、形式によって扱いが分かれます。講師と同時双方向でやり取りするオンライン研修は、通学制と同じく経費助成・賃金助成の両方が対象です。eラーニング・通信制は経費助成のみで、賃金助成はありません。自社で企画する事業内訓練をeラーニングで行う場合は対象外です。事業展開等リスキリング支援コースでは、2026年8月3日以降の計画届に基づくeラーニングは1人1年度1回までに制限されています。

Q. 自社の社員が講師をする研修も対象になりますか?

はい、対象になり得ます。会社が企画・主催する「事業内訓練」として扱われ、講師には要件があります。社内の講師なら、その訓練の職種に係る職業訓練指導員免許を持つ人、1級の技能検定に合格した人、その分野の実務経験が10年以上ある人などが該当します。事業内訓練は通学制・同時双方向型の通信訓練に限られます。

Q. 国の助成金と東京都の助成金は併用できますか?

いいえ、同じ研修では併用できません。東京しごと財団の助成金は、国または地方公共団体から助成を受けておらず、今後受ける予定もない研修に限っています。3時間以上10時間未満の研修は東京都、10時間以上の研修は国の人材開発支援助成金というように、研修ごとにどちらか一方を選びます。

Q. 2023年度や2025年度の記事に書かれた助成率・ルールは使えますか?

いいえ、そのままは使えません。令和8年度だけでも、次のような改正が続いています。

  • 人材育成支援コースへの中高年齢者実習型訓練の新設(2026年4月)
  • 受講料の価格設定に関する疎明書の提出(2026年5月14日付けの支給要領改正)
  • 事業展開等リスキリング支援コースの対象外の拡大とeラーニングの受講回数制限(2026年8月3日以降の計画届)
  • 不正受給時の公表の特例(2026年8月3日以降の支給申請)

また、古い記事で見かける「特定訓練コース」「一般訓練コース」は、令和4年度以前に計画届を出していたコースです。厚生労働省の制度ページは、令和5年度以降に新しく訓練を行う場合は、人材育成支援コース・人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースの計画届を出すよう案内しています。必ず厚生労働省の制度ページで最新のパンフレットを確認してください。

Q. 個人事業主や社長本人の研修にも使えますか?

いいえ、個人事業主本人や雇用保険に加入していない役員の研修は対象になりません。人材開発支援助成金の対象労働者は、雇用保険被保険者だからです。従業員(雇用保険被保険者)を雇用していれば、個人事業主も事業主としてその従業員の研修で申請できます。東京しごと財団の助成金も、代表者・個人事業主本人は助成対象受講者になりません。

まとめ

  • 社員研修の費用に使う国の制度の中心は人材開発支援助成金です。10時間以上のOFF-JTが基本で、研修経費と受講時間の賃金の一部が助成されます
  • 一般的な職務研修は、人材育成支援コース(経費45%、有期契約労働者等70%)です。DX・AI・新規事業は、事業展開等リスキリング支援コース(経費75%・令和8年度末まで)を使います
  • 2026年8月3日以降の計画では、汎用的な生成AI研修・DXの概念研修は対象外です。eラーニングは1人1年度1回までです。AIツールの導入費は研修の助成金の対象外で、ツールはデジタル化・AI導入補助金で考えます
  • 10時間未満の研修は、国の助成金では原則対象外です。東京都内の中小企業なら、3時間以上10時間未満の研修に使えるスキルアップ助成金・DXリスキリング助成金があります(同じ研修で国と都の併用は不可)
  • 建設業の特別教育・安全衛生教育などの技能実習は、建設労働者技能実習コースが使えます。障害者職業能力開発コースはJEEDへ移管済みです
  • 人材開発支援助成金も東京都の助成金も研修前の手続きが必要で、研修費は会社が全額負担します。「実質無料」の勧誘は不正受給のリスクがあります
  • 接遇・ビジネスマナーなど社会人に共通する内容は、人材育成支援コースでは実訓練時間数の半分未満なら助成対象です。事業展開等リスキリング支援コースでは、2026年8月3日以降に提出する計画から、DX・GX化に関する研修でも対象外です

自社が使える制度をまとめて確認したい場合は、補助金かんたん診断(無料)で、募集中の273件から絞り込めます。制度の選び方などのご質問はLINEでも受け付けています。人材開発支援助成金の各コースの詳細は人材開発支援助成金とはで解説しています。研修と正社員化を組み合わせる場合はキャリアアップ助成金と人材開発支援助成金の違い・併用ガイド、雇用・人材まわりの他の支援制度は目的から探すで確認できます。

参考(一次情報)