キャリアアップ助成金 賞与・退職金制度導入コースとは【令和8年度】|1事業所40万円〜56.8万円

目次14章
キャリアアップ助成金の賞与・退職金制度導入コースとは、有期雇用労働者等の賞与・退職金制度の新設を支援する厚生労働省の助成金です。パート・契約社員などの有期雇用労働者等に、賞与または退職金の制度を新たに設けて支給・積立てを実施した事業主に支給されます。制度は就業規則または労働協約で設けます。支給額は1事業所あたり中小企業40万円で、賞与と退職金を同時に導入すると56万8,000円になります。同じ処遇改善系の賃金規定等改定コースや賃金規定等共通化コースは「基本給」が対象です。本コースは「賞与・退職金」という別の処遇項目を対象にします。全体像は次の3点でつかめます。
- 支給額は、対象人数に関係のない1事業所あたりの定額です。1適用事業所につき1回限りの一時金になります
- 対象労働者の全員に、賞与なら6か月分相当で5万円以上、退職金なら6か月分相当で1万8,000円以上を支給・積立てする必要があります。一部の労働者だけを対象にする制度設計は不支給になります。いちばん見落としやすい落とし穴です
- 手順は「賞与・退職金制度を就業規則等に新設・適用 → 初回支給(積立て)後6か月運用 → 賃金支払日の翌日から2か月以内に申請」です。退職金は、積立て・拠出費用を事業主が全額負担する制度でなければ対象になりません
この記事は、厚生労働省のパンフレット(令和8年度版)・支給要領(令和8年4月8日付け)・Q&A(令和8年度版)の原文にもとづいています。対象外になるケースから、支給額・要件・退職金の定義・必要書類・申請の流れまでを、この記事だけで判断できるように整理しました。制度全体(全6コース)の位置づけはキャリアアップ助成金とは|全6コースの支給額一覧をご覧ください。当社は助成金の申請を提携の社会保険労務士と連携してご支援しており、ご相談の多いつまずきポイントも織り込んでいます。

まず確認:対象外・不支給になる典型パターン
賞与・退職金制度導入コースでは、支給額より先に、そもそも申請できないケースを確認しておく必要があります。当社がご相談を受けるなかでも、賞与・退職金制度の対象を一部の有期雇用労働者等に限っていないかは、最初に確認する点です。
事業主として受給できないケース(全コース共通)
- 支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主(滞納の通知はされないため、申請前に自社で確認が必要です)
- 支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反を行った事業主
- 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主
- 暴力団と関わりのある事業主、暴力主義的破壊活動を行った・行う恐れがある団体等に属している事業主
- 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主
- 支給申請時または支給決定時に雇用保険適用事業所の事業主でない事業主(雇用保険被保険者数が0人の場合や事業所が廃止されている場合を含みます)
雇用関係の助成金に共通するこれらの要件は、雇用関係助成金に共通の要件で詳しく解説しています。
手順・運用で不支給になるケース(本コース固有)
- 合理的な理由なく、一部の有期雇用労働者等だけを対象とするように賞与・退職金制度を就業規則等に規定もしくは運用している場合は、支給対象外です(Q&A④Q2)。社外積立型の退職金制度に、一部の労働者のみが加入対象となる条件がある場合も含みます。ただし「勤続1年以上経過した者」といった著しく長くない一定の勤続年数を加入要件にすることは、退職金の功労報償的性格から合理的な理由と認められ、対象になり得ます
- 対象労働者要件を満たすすべての者のうち1人でも基準額に届かなければ、その事業所全体が支給対象外になります(Q&A④Q4)。基準額は、賞与なら6か月分相当で5万円、退職金なら6か月分相当で1万8,000円です。査定の結果で一部の対象者が基準額に届かなかった場合も同様です。ただし在籍期間が算定期間より短い者は、在籍期間の割合に応じて按分した金額以上であれば対象になり得ます
- 退職金制度が、積立て・拠出費用を事業主が全額負担するものと就業規則または労働協約に規定されていない場合(定義の章を参照)
- 賞与・退職金制度の適用を受ける全ての対象労働者について、制度導入前と比べて基本給や定額で支給されている諸手当を減額した場合。実費弁償的な手当や毎月変動する手当も含めて、減額はできません
- 支給申請の期限(初回支給・積立て後6か月分の賃金支払日の翌日から2か月)を過ぎた場合
対象労働者として数えられないケース
- 継続して雇用されている期間が足りない有期雇用労働者等。賞与・退職金制度を新たに設けた日(新設日)の前日から起算して、3か月以上前から新設日以降6か月以上の継続雇用が必要です(勤務をした日数が11日未満の月は除く)
- 制度新設・初回支給(積立て)後6か月間、その事業所において雇用保険被保険者でない人
- 制度を新たに設け適用した事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族
- 支給申請日において離職している人(本人都合の離職、天災等で事業継続が困難になった場合、本人の責めに帰すべき理由による解雇を除く)
正社員化コースにある「転換の前後に事業主都合の解雇があると不支給」という要件は、本コースの支給要領(5000番台)とパンフレットには規定されていません(当社で本文を確認)。ただし、対象労働者本人が支給申請日に離職していないことは要件です。
他の助成金との併給調整
- 65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)の支給を受けた事業主は、同一の対象労働者について本コースの支給を受けられません
- 廃止済みの旧諸手当制度共通化コースまたは旧諸手当制度等共通化コース(諸手当制度を新たに設けて適用した場合の助成)の支給を受けた事業主も、本コースの支給を受けられません。健康診断制度の新設・実施のみで支給を受けている場合は除きます
- 賃金規定等改定コースや賃金規定等共通化コースとの併給を制限する規定は、支給要領の併給調整には記載がありません(当社で本文を確認)。ただし、対象労働者・対象経費が重複しない設計は必要です
支給額はいくら?1事業所40万円・同時導入で56万8,000円
賞与・退職金制度導入コースの支給額は、1適用事業所あたりの定額です。他のコースの多くは「対象労働者1人あたり」で計算されますが、本コースは人数に関係なく決まります。次の表は、企業規模と導入する制度ごとの支給額をまとめたものです。
| 企業規模 | 賞与または退職金いずれかを導入 | 賞与および退職金を同時に導入 |
|---|---|---|
| 中小企業事業主 | 40万円 | 56万8,000円 |
| 大企業事業主 | 30万円 | 42万6,000円 |
(出典:キャリアアップ助成金支給要領〔令和8年4月8日付け〕5004、パンフレット令和8年度版P.50)
- 支給は1適用事業所あたり1回限りです。何人の有期雇用労働者等に適用しても、支給額は変わりません
- 同時導入の加算を受けるには、賞与・退職金の両制度を同時に新たに設けて適用する必要があります。賞与を先に導入し、後日あらためて退職金を導入したような場合は「同時の導入」に当たらず、加算の対象外です(Q&A全コース共通事項Q11)
- 中小企業の範囲は、業種ごとに「資本金の額・出資の総額」または「常時雇用する労働者の数」のいずれかで判定します(支給申請時点)。小売業(飲食店を含む)は資本金5,000万円以下または50人以下、サービス業は5,000万円以下または100人以下です。卸売業は1億円以下または100人以下、その他の業種は3億円以下または300人以下です
定額支給なので、対象となる人数が多い会社ほど「1人あたりの実質単価」は下がります。すでに一部の有期雇用労働者等に慣例的な賞与を出している会社が、制度として明文化する場合に着手しやすいコースです。対象人数が多い会社は、賃金規定等改定コース(対象人数分の支給・上限100人)との比較検討もおすすめします。
「賞与」「退職金」の定義:退職金は事業主の全額負担が条件
賞与・退職金制度導入コースでいう賞与・退職金には、それぞれ支給要領上の定義があります。とくに退職金は、費用を事業主が全額負担する制度でなければ対象になりません。
賞与
企業規模や職種、地域の賃金水準等を勘案した、通常の正規雇用労働者の労働条件として妥当な額であることが前提です。名目が「賞与」でなくても、支給要領の要件に該当する制度であれば対象になり得ます。
退職金
退職金とは、在職年数等に応じて支給される退職金(年金払いによるものを含む)を積み立てるための制度です。積立金や掛金等の費用を全額事業主が負担することが就業規則または労働協約に規定され、実際に全額を事業主が負担するものをいいます(事業主が拠出する掛金に上乗せして従業員が掛金を拠出する場合を含む)。従業員に費用を負担してもらう制度はこの定義から外れ、対象になりません。
- 社外積立型の退職金制度(中小企業退職金共済、確定給付企業年金、確定拠出企業年金、生命保険契約に基づく退職金等)も、事業主が費用を負担していれば対象になり得ます(Q&A④Q1)
- 添付書類として、退職金規程・対象者名簿・積立てが確認できる書類が必要です。確定給付企業年金なら規約や厚生労働大臣の承認通知、中退共なら加入証明書と掛金納付の記録などです(Q&A④Q5)
対象となる事業主の要件

賞与・退職金制度導入コースの支給対象事業主は、全コース共通の要件に加えて、次の表の全てに該当する必要があります(支給要領5002)。全コース共通の要件は、①雇用保険適用事業所の事業主、②キャリアアップ管理者の配置、③キャリアアップ計画の作成・提出、④労働条件等を明らかにする書類の整備です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① 制度の新設 | 就業規則または労働協約により、雇用する全ての有期雇用労働者等に関して、賞与もしくは退職金制度またはその両方を新たに設けている |
| ② 支給・積立額の基準 | ①の制度に基づき、対象労働者1人につき賞与は6か月分相当として5万円以上、退職金は1か月分相当として3,000円以上を6か月分(または6か月分相当として1万8,000円以上)を積立てている |
| ③ 全員への適用 | ①の制度をすべての有期雇用労働者等に適用させている |
| ④ 運用期間 | ①の制度を初回の賞与の支給または退職金の積立て後6か月以上運用している |
| ⑤ 減額の禁止 | ①の制度の適用を受ける全ての有期雇用労働者等について、適用前と比べて基本給および定額で支給されている諸手当を減額していない |
| ⑥ 積立て確認への同意 | 退職金の積立てで支給を受ける場合、支給決定後に積立金等が確認できる書類を提出することに同意している |
対象となる労働者の要件
賞与・退職金制度導入コースの対象労働者は、次の4つ全てに該当する有期雇用労働者等です(支給要領5003)。
- 賞与・退職金制度を新たに設けた日(新設日)の前日から起算して、3か月以上前の日から新設日以降6か月以上の期間継続して、支給対象事業主に雇用されている(新設日以降について勤務をした日数が11日未満の月は除く。有給休暇等の労働対価が全額支給された日は出勤日とみなす)
- 賞与・退職金制度を新たに設け、初回の賞与の支給または退職金の積立てをした日以降の6か月間、雇用保険被保険者である
- 制度を新たに設け適用した事業所の事業主または取締役の、3親等以内の親族以外の者
- 支給申請日において離職していない者(本人都合の離職、天災等で事業継続が困難になった場合、本人の責めに帰すべき理由による解雇を除く)
対象労働者に該当する場合、定年の適用を受けない有期雇用労働者には、原則として年齢にかかわらず退職金制度を適用している必要があります(ごく短期間の雇用契約である場合を除く)。定年の適用を受ける無期雇用労働者については、当該雇用区分における定年年齢までです。
制度を「新たに設けた」と認められる条件
賞与・退職金制度導入コースで「新たに設けた」と認められるかどうかは、すでにある制度の扱いで分かれます。パンフレットは、次のようなケースの扱いを明記しています。
- 既に一部の有期雇用労働者等に賞与を支給している(就業規則上も制度の規定あり)状態から、すべての有期雇用労働者等に一律支給するよう就業規則を変更した場合です。これは「対象を拡大した」と解され、賞与制度を「新たに設けた」とはいえないため、支給対象外になります
- 他方、就業規則等に規定がなく、慣例的に支給していた賞与制度を就業規則等において規定した場合は、支給対象となり得ます(退職金制度も同様)
- 就業規則等を改定して有期雇用労働者等に賞与・退職金制度を新設・適用した場合は、正規雇用労働者が1人も存在しない事業所でも支給を受けられます(Q&A④Q3)。本コースの趣旨が、有期雇用労働者等の処遇改善そのものにあるためです
申請の流れと支給申請の期限【スケジュール例つき】

賞与・退職金制度導入コースの手順は「制度の新設・適用 → 初回の賞与支給または退職金積立て → 6か月運用 → 支給申請」です。支給申請の期限は、6か月分の賃金支払日の翌日から2か月以内です。
STEP1:キャリアアップ計画を作成し、制度の新設日の前日までに労働局へ提出
- キャリアアップ管理者を決め、3年以上5年以内の計画期間を定めます
- 提出期限は制度の新設日の前日までです。前日が行政機関の休日に当たる場合はその翌日までです
STEP2:就業規則または労働協約に賞与・退職金制度を新設し、全ての有期雇用労働者等に適用
- 常時10人以上を雇用する事業所は、就業規則の改定後速やかに(遅くとも支給申請前に)所轄の労働基準監督署へ届け出ます
STEP3:初回の賞与支給または退職金積立てから6か月分の賃金を支払う
- 賞与・退職金を同時導入する場合は、初回の賞与支給または退職金積立てのいずれか遅い方の日を起点に6か月を数えます
STEP4:6か月分の賃金支払日の翌日から2か月以内に支給申請
次の表は、パンフレットP.52の例(賃金締切日が月末・翌月15日払いの企業)を日付順に並べたものです。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 4月1日 | 賞与・退職金制度の導入日 |
| 6月15日 | 初回の賞与支給日(例) |
| 6か月目の賃金支払日 | 例:初回支給日が6月15日なら12月15日 |
| 6か月目の賃金支払日の翌日から2か月以内 | 支給申請期間(上記の例では12月16日〜2月15日) |
- 支給申請期間は、就業規則上の支払日ではなく、実際に賃金・賞与が支給された日を起点に数えます
- 対象労働者のうち1人でも、初回支給後6か月の間に勤務日数11日未満の月があった場合は、その分だけ申請期間の始期が後ろにずれます(Q&A④Q7)。制度が適切に運用されていることが前提です
支給申請の必要書類
賞与・退職金制度導入コースの支給申請時に提出する主な書類は、次の表のとおりです(支給要領5006)。
| 書類 | 主な確認事項 |
|---|---|
| キャリアアップ助成金支給申請書(様式第3号) | 記入漏れがないか |
| 賞与・退職金制度導入コース内訳(様式第3号・別添様式5) | 同上 |
| 管轄労働局長に受理されたキャリアアップ計画書(写) | 制度新設日の前日までに受理されているか |
| 制度新設前後の就業規則または労働協約(写) | 新設前の規定が無かった場合は、常時10人未満の事業所はその旨の申立書 |
| 対象労働者全員の制度新設前後の雇用契約書または労働条件通知書等(写) | 有期雇用労働者等であるか、賞与・退職金制度が確認できるか |
| 対象労働者全員の初回支給・積立て前後および賞与支給月分の賃金台帳等(写) | 基準額以上の支給・積立てが確認できるか |
| 事業主による確認書 | 適用後6か月分の賃金が支給されていることの確認 |
| 退職金制度に係る積立金等が確認できる書類(退職金を導入する場合) | 積立金等の金額・対象労働者への適用が客観的に確認できるか |
| 事業所確認票(様式第4号) | 常時使用する労働者の数で中小企業事業主に該当する場合 |
添付書類は原本の写しでなければなりません。見やすいように加工・転記して別途作成した書類は認められません。
一部の制度だけ要件を満たさなかった場合の扱い
賞与・退職金の同時導入で申請し、片方の制度だけが支給要件を満たしていなかった場合は、要件を満たした制度の分だけ助成を受けられます。Q&A(全コース共通事項Q11)には、次のように明記されています。
なお、賞与・退職金制度導入コースについて、賞与及び退職金制度を同時に導入したとして支給申請を行った場合、かつ、いずれか片方の制度のみ要件を満たす制度であった場合は、要件を満たしていた片方の制度に対してのみ、助成を受けることができます(同時の導入には該当しないため、加算の対象外です)。
「両方導入したつもりが、退職金の積立て要件を満たしていなかった」という場合でも、賞与制度の分は助成を受けられます(56万8,000円ではなく40万円)。全額不支給になるわけではありません。
本コースは、賃金規定等共通化コースと並んで、規定不備の救済規定の対象でもあります(Q&A全コース共通事項Q11)。支給申請時点で要件を満たしていなければ、原則は不支給です。ただし、キャリアアップ計画期間内に新たに設けた制度が要件を満たしていなかった場合に限り、救済があります。都道府県労働局の助言指導を受けつつ要件を満たす制度に改定すれば、改定日を新たな措置日(要件を満たす制度導入日)とみなします。改定日以後の規定の適用から6か月分の賃金を支給した日から2か月以内に、あらためて支給申請ができます。一度失敗しても使えなくなるわけではないので、要件を満たしているか不安な段階で、労働局・社会保険労務士に確認しながら進めると安全です。
他のコース・制度との関係
賞与・退職金制度導入コースは、賃金規定等改定コース・賃金規定等共通化コースと支給要領上の併給制限がありません。一方で、65歳超雇用推進助成金の一部のコースとは併給調整があります。
- 賃金規定等改定コース・賃金規定等共通化コースは、いずれも「基本給」を対象にする処遇改善系コースです。本コースは「賞与・退職金」という別の処遇項目を対象にする点が違います。3コースとも支給要領上、相互の併給を制限する規定はありません(当社で本文を確認)。ただし、対象労働者・対象経費が重複しない設計は必要です
- 65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)の支給を受けた事業主は、同一の対象労働者について本コースの支給を受けられません
- 賃金体系の整備とあわせて人材育成に取り組む場合は、人材開発支援助成金が候補です。雇用系助成金の使い分けはキャリアアップ助成金と人材開発支援助成金の違いにまとめています
- キャリアアップ助成金は雇用保険法に基づく「助成金」で、事業計画の審査で採否を競う「補助金」とは性格が異なります。両者の違いは補助金と助成金の違いで解説しています
実務でつまずきやすいポイント
賞与・退職金制度導入コースについて、当社がご相談を受けるなかで最初に確認するのは次の4点です。
- 全員に基準額以上を支給・積立てできているか。「業績評価で一部の人だけ5万円未満だった」というケースが、最も多い落とし穴です。査定結果しだいで基準額を下回る人が出ないか、制度設計の段階でシミュレーションしておきます(Q&A④Q4)
- 対象を「一部」に限定していないか。特定の部署・雇用区分だけを対象にする制度は、合理的な理由(勤続年数など著しく長くない条件を除く)がない限り不支給です(Q&A④Q2)
- 退職金は「事業主が全額負担」になっているか。従業員が掛金の一部でも負担する制度は、この助成金の「退職金」の定義から外れます
- 賞与・退職金の同時加算を狙う場合、本当に同時導入か。片方を先に導入し、後日もう片方を追加したような設計は「同時」に当たらず、加算対象外です(Q&A全コース共通事項Q11)
助成金は後払いです。制度整備や賃金体系の見直しにあわせて設備投資などの資金需要があれば、募集中273件の制度から自社に合うものを補助金かんたん診断で絞り込めます。申請は提携の社会保険労務士と連携してご支援します。「自社の制度設計で要件を満たすか」といった助成金のご質問は、公式LINEでも受け付けています。
よくある質問
Q. 一部の有期雇用労働者等だけに賞与・退職金制度を導入することはできますか?
原則できません。合理的な理由なく一部の労働者だけを対象にする制度設計は不支給になります。Q&A④Q2は「勤続1年以上」といった著しく長くない勤続年数を加入要件にすることを合理的な理由と認めていますが、これは退職金制度についての扱いです。理由づけも「退職金の功労報償的な性格」という退職金特有のものです。賞与制度について同様の勤続年数条件が認められるかは、Q&Aに明記されていません。賞与で対象者を勤続年数によって絞りたい場合は、事前に管轄の労働局にご確認ください。
Q. 退職金は中小企業退職金共済(中退共)のような社外積立でも対象になりますか?
はい、対象になり得ます。退職金は「積立て・拠出費用を事業主が全額負担する」制度であることが条件です。中退共・確定給付企業年金・確定拠出企業年金・生命保険契約に基づく退職金なども、事業主が費用を負担していれば対象です(Q&A④Q1)。
Q. 対象労働者のうち1人だけ、6か月分の賞与額が5万円に届かなかった場合はどうなりますか?
事業所全体が支給対象外になります。対象労働者要件を満たすすべての者のうち1人でも、基準額(賞与6か月分相当5万円、退職金6か月分相当1万8,000円)に届かなければ不支給です。他の人が届いていても同じです。ただし在籍期間が算定期間より短い人は、在籍期間の割合に応じた按分額以上であれば対象になり得ます(Q&A④Q4)。
Q. 賞与と退職金を同時に導入したつもりが、退職金の積立て要件を満たしていなかった場合は?
賞与の分だけ助成を受けられます。同時導入の加算(56万8,000円)は受けられませんが、要件を満たしていた賞与制度の分(40万円)は支給対象です(Q&A全コース共通事項Q11)。
Q. 正社員が1人もいない会社でも申請できますか?
はい、申請できます。就業規則等を改定して有期雇用労働者等に賞与・退職金制度を新設・適用した場合は、正規雇用労働者が1人も存在しない事業所でも支給を受けられます(Q&A④Q3)。
Q. 制度に不備があって不支給と判定されたら、もう申請できませんか?
いいえ、改定すれば申請し直せる余地があります。対象は、キャリアアップ計画期間内に新たに設けた制度が要件を満たしていなかった場合です。都道府県労働局の助言指導を受けつつ要件を満たす制度に改定すれば、その改定日を新たな措置日とみなします。改定後の規定の適用から6か月分の賃金を支給した日から2か月以内に、あらためて支給申請ができます。
まとめ
- 賞与・退職金制度導入コースは、有期雇用労働者等に賞与または退職金制度を新たに設け、適用した事業主への助成です。1事業所あたり中小企業40万円(同時導入56万8,000円)、大企業30万円(同時導入42万6,000円)の定額支給で、1回限りです
- 対象労働者全員が基準額(賞与6か月分相当5万円以上、退職金6か月分相当1万8,000円以上)を満たす必要があります。1人でも満たさなければ事業所全体が不支給です
- 退職金は、積立て・拠出費用を事業主が全額負担する制度であることが定義上の条件です。社外積立型でも対象になり得ます
- 一部の労働者だけを対象にする制度設計は、原則不支給です。「対象を拡大した」場合も「新たに設けた」とは扱われません
- 片方の制度だけ要件を満たさなかった場合や、規定に不備があった場合の救済規定があり、全額不支給になるとは限りません
自社の賞与・退職金制度の設計で要件を満たすか不安な場合は、公式LINEでもご質問を受け付けています。制度整備とあわせて使える補助金は、募集中273件から絞り込める補助金かんたん診断でご確認ください。
参考(一次情報)
- キャリアアップ助成金(厚生労働省)——制度の総合案内ページ・各種様式のダウンロード(2026年9月6日確認)
- キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)パンフレット(令和8年4月8日現在)——Ⅱ-4賞与・退職金制度導入コース:支給額・対象労働者/事業主の要件・退職金の定義・申請期間の例(P.50〜52。2026年9月6日確認)
- キャリアアップ助成金支給要領(令和8年4月8日付け)——5000番台(賞与・退職金制度導入コース)の概要・支給対象事業主・対象労働者・支給額・支給申請期間・添付書類、併給調整のうち5001に関する規定(2026年9月6日確認)
- キャリアアップ助成金Q&A(令和8年度版)——④賞与・退職金制度導入コースについて(Q1〜Q7:社外積立型退職金・一部限定の不可・正社員不在でも対象・全員基準額必須・積立て確認書類・申請期間の考え方・勤務日数不足時の扱い)、共通事項Q11(規定不備からの救済規定・同時導入の片方のみ要件充足時の扱い)(2026年9月6日確認。共通事項Q11の救済の条件「キャリアアップ計画期間内に新たに設けた制度」は2026年10月12日確認)
- 雇用関係助成金ポータル(厚生労働省)——電子申請の窓口
補助金の採択実績800件以上(2020年以降)「補助金オタク」運営
助成金は、まず自社が対象になりそうかを知るところから。8つの質問に答える約2分の無料診断で、国と都道府県の制度から候補を確認できます。申請は提携の社会保険労務士と連携してご支援します。
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