持続化補助金の賃金引上げ特例・インボイス特例|使える人・計算例・未達で全額不交付【第20回】

目次13章
小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)第20回には、補助上限を引き上げる特例が2つあります。賃金引上げ特例は上限を150万円、インボイス特例は50万円上乗せし、両方なら上限は250万円になります。賃金引上げ特例の対象者のうち業績が赤字の事業者は、補助率も2/3から3/4に上がります。
ただし、どちらの特例も「選べば上限が上がる」制度ではありません。特例を希望して要件を1つでも満たせないと、上乗せ部分だけでなく補助金の全体が交付されません。賃金引上げ特例は、2027年4月から2028年3月までの1年間の給与で達成を判定するため、申請の時点では結果が分かりません。
この記事では、第20回の公募要領 第9版(2026年11月5日改版)の原文をもとに、2つの特例を使える人・使えない人、給与の計算例、必要な書類と期限、未達のときの扱いを整理します。第20回の全体像(スケジュール・対象経費・加点)は持続化補助金 第20回のガイドにまとめています。
要点は次のとおりです。
- 特例の前に、通常枠そのものの対象者か確認してください。従業員数の上限、過去の受給歴、創業型との重複などで申請できない事業者がいます(先に確認)
- インボイス特例は、2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間に一度でも免税事業者だった事業者か、2023年10月1日以降に創業した事業者が対象です。ずっと課税事業者だった事業者は使えません(インボイス特例)
- 賃金引上げ特例は、従業員がいない事業者は使えません。比べるのは2026年4月〜2027年3月と2027年4月〜2028年3月の「1人あたり給与支給総額」です(賃金引上げ特例)
- 赤字の判定は、法人は法人税申告書の別表一・別表四、個人事業主は確定申告書第一表の「課税される所得金額」がゼロ以下かで行います(赤字事業者の3/4)
- 賃上げが未達だと、その回の補助金が交付されないうえ、18か月間は中小企業庁所管の補助金で大幅に減点されます(未達のとき)

先に確認:特例の前に、通常枠の対象者か
特例は通常枠に上乗せする仕組みなので、通常枠の要件を満たさない事業者は特例も使えません。特例を検討する前に、次の点を確認してください(詳細は第20回ガイドの対象外の章)。
- 小規模事業者であること。常時使用する従業員数が、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は5人以下、宿泊業・娯楽業と製造業その他は20人以下です。会社役員と同居の親族従業員は数えません。補助事業の終了まで小規模事業者である必要があります(小規模事業者卒業加点を希望する事業者を除く)
- 医師・歯科医師・助産師、医療法人、社会福祉法人、一般社団法人・公益社団法人、協同組合等の組合(企業組合・協業組合を除く)などは補助対象になりません
- 過去に持続化補助金(一般型 通常枠・コロナ特別対応型・低感染リスク型ビジネス枠・創業型)で採択され補助事業を実施した事業者は、事業実施期間終了日の属する月の翌月から1年が経過し、様式第14「事業効果および賃金引上げ等状況報告書」の提出を完了している場合に申請できます
- 一般型の卒業枠、または通常枠の小規模事業者卒業加点で採択を受けて補助事業を実施した事業者は対象外です
- 創業型に申請中、または創業型で採択を受けている事業者は申請できません
- 第20回で採択され補助事業を実施すると、次に申請できるのは、事業実施期間終了日の属する月の翌月から1年が経過し、報告書の提出を完了した後、さらに1年が経過してからです
なお、賃金引上げ特例でいう「従業員」は、上の「常時使用する従業員」とは数え方が違います。小規模事業者かどうかの判定と、特例の計算は別々に行ってください(従業員の数え方)。
2つの特例の早見表
インボイス特例は「インボイス登録の状況」で、賃金引上げ特例は「将来の賃上げの実績」で判定します。要件の性質がまったく違うため、まず表で全体を比べてください。
表は左右にスクロールできます
| 項目 | インボイス特例 | 賃金引上げ特例 |
|---|---|---|
| 上乗せ額 | 補助上限に50万円(上限100万円) | 補助上限に150万円(上限200万円) |
| 両方を使う場合 | 上乗せ200万円(上限250万円) | 同左 |
| 補助率 | 2/3 | 2/3。赤字事業者は3/4(インボイス特例の上乗せ部分も3/4) |
| 対象になる事業者 | 一定期間に免税事業者だった、または2023年10月1日以降に創業し、適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者 | 従業員1人あたり給与支給総額を3.0%以上増やす事業者 |
| 判定の時点 | 補助事業の終了時点で登録を受けているか | 2027年4月1日〜2028年3月31日と前年同月の12か月の比較 |
| 使えない事業者 | 過去にインボイス特例・インボイス枠で補助事業を実施した事業者 | 算定対象となる従業員がいない事業者 |
| 自動で付く加点 | なし | 賃金引上げ加点(赤字事業者は赤字賃上げ加点も) |
| 要件を満たせないと | 補助金の全体が交付されない | 補助金の全体が交付されない。18か月間の減点もある |
上限額は「補助金の額」の上限です。上限まで使うのに必要な補助対象経費は、通常枠のみが75万円、インボイス特例が150万円、賃金引上げ特例が300万円(赤字事業者は約267万円)、両特例が375万円(赤字事業者は約333万円)です。いずれも上限を補助率で割り戻した当社の計算です。
インボイス特例:上限+50万円
インボイス特例は、免税事業者から適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)になった事業者などの補助上限を、一律50万円上乗せする特例です。公募要領は目的を「免税事業者が適格請求書発行事業者への転換に伴う事業環境変化に対応すること」への政策支援と説明しています。
対象になる事業者
補助事業の終了時点で「適格請求書発行事業者」の登録を受け、かつ次のいずれかに当てはまる事業者が対象です。
- ① 2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間で一度でも免税事業者であった事業者
- ② 2023年10月1日以降に創業した事業者
登録は申請の時点で終わっていなくてもかまいません。ただし、補助事業の終了時点でこの要件を満たさない場合、補助金は交付されません。
使えない事業者
次のどちらかに当たる事業者は、インボイス特例の申請対象外です。
- 一般型 通常枠で「インボイス特例」を活用して補助事業を実施した事業者
- 一般型で「インボイス枠」(「インボイス特例」を含む)で採択を受けて補助事業を実施した事業者
また、①と②の書き方から、2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間を通じて課税事業者だった事業者(2023年10月1日以降の創業者を除く)は、対象になりません。
申請時と実績報告時の手続き
申請時は、電子申請システムで「インボイス特例の希望」にチェックし、宣誓・同意画面の「インボイス特例の申請に係る宣誓・同意書」(様式9)にチェックします。応募者概要(様式2)の画面では、次の3つの課税売上高を入力します。
- 2019年9月30日の属する事業年度の課税売上高
- 2020年9月30日の属する事業年度の課税売上高
- 2021年9月30日の属する事業年度の課税売上高
登録の状況に応じて、提出する書類が変わります。
表は左右にスクロールできます
| 申請時の登録の状況 | 申請時に出す書類 | 実績報告時に出す書類 |
|---|---|---|
| 登録済み | 適格請求書発行事業者の登録通知書の写し | なし |
| 電子申告(e-Tax)で登録申請中 | 登録申請データの「受信通知」画面の写し | 登録通知書の写し |
| 郵送(紙)で登録申請中 | 提出不要 | 登録通知書の写し |
| 登録申請がまだ | 提出不要 | 登録通知書の写し |
登録申請の手続きは国税庁の案内を参照してください。補助事業の終了時点で登録が済んでいないと補助金の全体が交付されないため、未登録の事業者は申請と並行して登録を進めてください。
賃金引上げ特例:上限+150万円

賃金引上げ特例は、従業員1人あたり給与支給総額を3.0%以上増やす事業者の補助上限を150万円上乗せする特例です。上乗せ額は2つの特例のうち大きい方ですが、達成の判定は補助事業の最後(2028年3月)まで続きます。
要件:1人あたり給与支給総額を3.0%以上増やす
要件は次の4つです(公募要領の文言に沿って整理)。
- 補助事業終了予定日を、補助事業実施期限日(2028年3月31日(金))に設定する
- 補助事業実施期限日を終点とした連続する12か月とその前年同月の12か月を比較し、従業員1人あたり給与支給総額を3.0%以上増加させる
- 自社で「1人あたり給与支給総額目標値」を設定し、採択後交付決定までに、全ての従業員又は従業員代表者、役員に対して表明する。そのうえで、実績報告時点で目標値を達成する
- 比較する2つの12か月で、支給している事業場内最低賃金が地域別最低賃金以上である
比べる期間を日付にすると、次のとおりです。
表は左右にスクロールできます
| 期間 | 日付 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 前年同月の12か月 | 2026年4月1日〜2027年3月31日 | 比較の基準 |
| 補助事業実施期限日を終点とする12か月 | 2027年4月1日〜2028年3月31日 | 3.0%以上の増加を判定する期間 |
基準の期間は2026年4月から始まっています。第20回の申請受付が始まった2026年11月5日の時点で、2026年4月から10月までの7か月分は、すでに基準の期間に入っています。公募要領は「年平均とは連続する12か月の平均のことを指します」としています。
従業員の数え方:申請要件の「従業員」とは違う
特例でいう「従業員」は、非常勤を含み、代表者・役員・専従者は含めません。申請要件の「常時使用する従業員」とは異なると、公募要領が注意しています。数え方のルールは次のとおりです。
- 算出に含めるのは、2つの期間それぞれで、全月分の給与等の支給を受けた従業員です。中途採用や退職等で、いずれかの期間に全月分の支給を受けていない従業員は、その期間の算出対象から除外します
- 産前・産後休業、育児休業、介護休業など、事業者の福利厚生等で時短勤務をしている従業員は、算出対象から除くことができます
- パートタイム従業員は、正社員の就業時間に換算した人数で数えます。正社員が1日7時間・週35時間の事業者で、1日3時間・週15時間勤務のパートは0.42人(3÷7の小数点以下第3位を切捨て)です
- 給与支給総額は、給料・賃金・残業代・賞与等を含み、福利厚生費・法定福利費・退職金は除きます。手当も含みますが、福利厚生を目的とした手当(通勤手当・家族手当・住宅手当等)は含みません(第9版で追記)
- 昇給・減給や残業時間の増減で給与が変動する従業員も、算出対象に入ります
計算例:正社員1人とパート1人の場合
次の例は、正社員1人(1日7時間)とパート1人(1日3時間、0.42人)を雇う事業者についての当社の試算です。2人とも、2026年4月から2028年3月まで全月分の給与を受け取る前提です。
表は左右にスクロールできます
| 項目 | 基準の期間(2026年4月〜2027年3月) | 判定の期間(2027年4月〜2028年3月) |
|---|---|---|
| 正社員の給与支給総額(年) | 360万円 | 370万円 |
| パートの給与支給総額(年) | 100万円 | 103.8万円 |
| 給与支給総額の合計 | 460万円 | 473.8万円 |
| 従業員数(換算後) | 1.42人 | 1.42人 |
| 1人あたり給与支給総額 | 約323.9万円 | 約333.7万円 |
| 増加率 | 約3.0% |
この例では、2人の年間給与を合わせて13.8万円(月あたり約1.15万円)増やすと、3.0%の増加にほぼ届きます。ぎりぎりの目標は、残業代の減少や賞与の変動で下回るおそれがあります。目標値は余裕を持って設定してください。
人の入れ替わりがあると、計算が想定どおりにならないことがあります。たとえば2026年10月に入社した人は、基準の期間に全月分の給与がないため基準から外れ、判定の期間だけに入ります。入社時の給与が既存の従業員より低いと、判定の期間の1人あたり給与支給総額が下がります。採用・退職の予定がある事業者は、両方の期間で誰が算出対象になるかを先に書き出してから試算してください。
事務局は、達成を確かめるための「賃金引上げ特例・加点達成判定シート」とそのマニュアルを2026年10月22日に公開しています(商工会議所地区・商工会地区の各事務局サイト)。正確な計算は、このシートと第20回の参考資料で確認してください。
使えない事業者と、途中で使えなくなる場合
賃金引上げ特例は、次の場合に対象外になります。
- 従業員がいない事業者。比較する2つの期間のいずれかの月で算定対象となる従業員が存在しない場合は、1人あたり給与支給総額を算出できないため、本特例の対象外です。代表者だけ、または役員・専従者だけで営む事業者は使えません
- 途中で算出できなくなった場合。申請時点では要件を満たしていても、実績報告時までに従業員が退職する等で、1人あたり給与支給総額の年平均上昇率を算出できなくなった場合は、補助金は交付されません
従業員が1人だけの事業者は、その1人が退職すると算出できなくなります。申請する前に、2028年3月まで雇用が続く見込みかを考えてください。
赤字事業者は補助率3/4
賃金引上げ特例に取り組む事業者のうち、直近1期または直近1年間の課税所得金額がゼロ以下の事業者は、補助率が2/3から3/4に上がります。インボイス特例も使う場合は、その上乗せ部分も3/4です。判定に使う金額は次のとおりです。
表は左右にスクロールできます
| 区分 | 判定に使う金額 | 申請時に出す書類 |
|---|---|---|
| 法人 | 直近1期分の法人税申告書の別表一・別表四「所得金額又は欠損金額」欄の金額 | 直近1期に税務署へ提出した、法人税申告書の別表一・別表四の写し |
| 個人事業主 | 直近1年間の「所得税および復興特別所得税」の確定申告書第一表「課税される所得金額」欄の金額 | 直近1年に税務署へ提出した、確定申告書第一表の写し |
個人事業主の「課税される所得金額」は、所得から所得控除を差し引いた後の金額です。売上や事業所得が黒字でも、この欄がゼロになる場合があります。手元の確定申告書第一表で欄の金額を確認してください。
赤字事業者として申請すると、重点政策加点の「赤字賃上げ加点」と政策加点の「賃金引上げ加点」が自動的に選択され、公募要領は「優先採択を実施します」としています。補助率が上がる分、自己負担は減ります。一方で、赤字のなかで3.0%以上の賃上げを2028年3月まで続ける計画になるため、資金繰りの見通しとあわせて判断してください。
必要な手続きと期限
賃金引上げ特例の手続きは、申請時・採択後交付決定まで・実績報告時の3回に分かれます。
表は左右にスクロールできます
| 時期 | やること |
|---|---|
| 申請時 | 電子申請システムで「賃金引上げ特例の希望」を選択する。宣誓・同意画面の「賃金引上げ特例・賃金引上げ加点の申請に係る誓約・同意書」(様式7)にチェックする。赤字事業者は「賃金引上げ特例(赤字事業者)」を選び、別表一・別表四または確定申告書第一表の写しを出す |
| 採択後交付決定まで | 「給与支給総額基準値算出表」の画面に給与支給総額・従業員数等を入力し、1人あたり給与支給総額目標値を設定する。賃金引き上げ計画の表明書を確認してチェックする。採択発表日の属する月を終点とした連続する12か月分の賃金台帳の写しと、雇用条件(1日の所定労働時間、年間休日)が分かる書類の写しを出す |
| 実績報告時 | 補助事業実施期限日を終点とした連続する12か月分の賃金台帳の写しと、賃金引上げ後の雇用条件が分かる書類の写しを出す |
賃金台帳と雇用条件の書類は、役員・専従者従業員を除く、補助事業実施場所の全従業員分が必要です。雇用条件の書類の例は、雇用契約書・労働条件通知書です。第20回の採択発表は2027年3月頃の予定です。予定どおりなら、採択後に出す賃金台帳は、ちょうど基準の期間(2026年4月〜2027年3月)に当たります。今の時点で賃金台帳を整え、所定労働時間と年間休日を書面にしておいてください。
従業員への表明の方法は、採択発表時に公開される「補助事業の手引き」で案内されます。
両方の特例を使う場合
インボイス特例と賃金引上げ特例は、両方の要件を満たせば併用でき、補助上限は250万円になります。赤字事業者の追加要件を満たせば、補助率は全体で3/4です。
ただし、両方を希望した場合、通常枠・インボイス特例・賃金引上げ特例の要件を1つでも満たさないと、補助金は交付されません。公募要領は「特例による上乗せ部分のみではなく全体が交付対象外となります」と書いています。インボイス登録は確実にできても、賃上げが届かなければ全額が出ません。要件を満たせる見込みが低い特例は、最初から選ばないのが安全です。
特例と賃金引上げ加点の違い
賃上げを伴う制度には、特例のほかに政策加点の「賃金引上げ加点」があります。加点は上限を上げず、採択審査で点数を加えるだけですが、必要な賃上げ率は特例より低めです。
表は左右にスクロールできます
| 項目 | 賃金引上げ特例 | 賃金引上げ加点(政策加点) |
|---|---|---|
| 効果 | 補助上限+150万円(赤字事業者は補助率3/4) | 採択審査での加点 |
| 1人あたり給与支給総額の増加 | 3.0%以上 | 年平均2.0%以上 |
| 比べる期間 | 2027年4月1日〜2028年3月31日と前年同月の12か月 | 同左 |
| 従業員への表明 | 採択後交付決定までに表明 | 採択後交付決定までに表明(第8版の「交付申請時まで」から第9版で変更) |
| 未達のとき | 補助金の全体が交付されない | 交付決定後であっても、補助金は交付されない |
| 18か月間の減点 | 対象 | 対象 |
賃金引上げ特例を希望すると、賃金引上げ加点は自動的に選択されます。どちらも、未達なら補助金が出ないという点では同じです。「加点だけなら気軽に選べる」わけではありません。
加点は【重点政策加点】と【政策加点】からそれぞれ1種類、合計2種類まで選べます。公募要領は、【重点政策加点】【政策加点】のどちらかから2種類以上を選択すると、加点審査の対象とならないと注意しています。賃金引上げ特例で自動的に付く賃金引上げ加点が「政策加点の1種類」に数えられるかは、公募要領に明文がありません。特例を希望しつつ地方創生型加点などほかの政策加点も選びたい場合は、申請前に事務局か、様式4を発行する商工会・商工会議所に確認してください。加点の全16種類は補助金の加点準備ガイドの持続化補助金の章にまとめています。
未達のとき:全額不交付と18か月の減点
賃上げの要件を満たせないと、その回の補助金が交付されないだけでなく、その後の補助金の申請にも影響します。公募要領「13.その他」の定めは次のとおりです。
- 賃金引上げ特例での申請、または賃金引上げ加点を受けて採択されたのに、申請した賃上げ要件を達成できなかった場合が対象です
- 様式第14「事業効果および賃金引上げ等状況報告書」で未達が報告されてから18か月の間、中小企業庁が所管する補助金への申請で、正当な理由が認められない限り大幅に減点されます
- 公募要領第9版が例示する対象(2026年10月時点)は、デジタル化・AI導入補助金、小規模事業者持続化補助金、事業承継・M&A補助金、成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)、成長加速化補助金、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、中小企業省力化投資補助事業です
- 災害を受けて事業で著しい損失を受けたと認められる場合等、やむを得ず達成できなかった場合は、報告書の提出時に理由を説明します。やむを得ない理由と認められた場合に限り、減点は免除されます
補助事業の終了から1年後の状況は、様式第14で報告します。賃上げを計画しているなら、補助金の申請とは別に、2028年3月までの人件費の資金計画を立てておいてください。
特例を選ぶと、使う経費も増える
特例で補助上限が上がっても、広報費とウェブサイト関連費の上限は変わりません。どちらも補助金交付申請額の上限は30万円で、単独では申請できません。上乗せされた上限まで使うには、機械装置等費・展示会等出展費・新商品開発費など、ほかの経費を計画に入れる必要があります。
次の例は、賃金引上げ特例(赤字でない事業者・補助率2/3)で上限の200万円まで使う場合の当社の試算です(課税事業者・税抜き)。
表は左右にスクロールできます
| 経費 | 区分 | 補助対象経費 | 補助率2/3を掛けた額 |
|---|---|---|---|
| 新商品の製造に使う機械装置 | 機械装置等費 | 210万円 | 140万円 |
| 新商品のチラシ・看板 | 広報費 | 45万円 | 30万円(広報費の上限) |
| 新商品の紹介ページ | ウェブサイト関連費 | 45万円 | 30万円(ウェブサイト関連費の上限) |
| 合計 | 300万円 | 200万円(賃金引上げ特例の上限) |
補助金は後払いなので、300万円(税込みではさらに消費税分)はいったん自社で支払います。消費税・地方消費税は原則として補助対象外です。ただし公募要領は、消費税等を含めて交付申請し、その内容で交付決定を受けた「免税事業者・簡易課税事業者・2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の申請者」を例外としています。インボイス特例で登録した事業者が2割特例を使う場合は、この例外に当たるかを交付申請の前に確認してください。対象経費の区分ごとの条件は持続化補助金の対象経費一覧をご覧ください。「上限が上がるから経費を増やす」のではなく、販路開拓に必要な経費が75万円を超えるときに特例を検討する順番が自然です。
当社がご相談を受けるなかで多い誤解
当社がご相談を受けるなかでは、特例について次のような誤解をよく見かけます。
- 「第19回と同じく最低賃金+50円で足りる」:第19回の賃金引上げ特例は、事業場内最低賃金を申請時より50円以上引き上げる要件でした。第20回は1人あたり給与支給総額の3.0%以上の増加に変わっています。第19回の時点で書かれた解説を読んで準備している場合は、要件を確かめ直してください(第19回からの変更点は第20回ガイド)
- 「達成できなければ上乗せ分がなくなるだけ」:特例の要件を満たせないと、通常枠の部分も含めて補助金の全体が交付されません
- 「役員に給与を払っているから従業員がいる」:特例の従業員から代表者・役員・専従者は除かれます。代表者・役員・専従者だけで営む事業者は、算定対象の従業員がいないことになります
- 「インボイス登録をすれば誰でも使える」:一定期間に免税事業者だった事業者か、2023年10月1日以降に創業した事業者に限られます。過去にインボイス特例・インボイス枠で補助事業を実施した事業者も使えません
申請までの準備の順番

第20回の申請受付締切は2026年12月15日(火)17:00、事業支援計画書(様式4)発行の受付締切は2026年12月4日(金)です。様式4の発行を受けるときに、商工会・商工会議所が、特例の要件を満たしているかも含めて確認します。特例を希望する場合は、次の順で準備してください。
- 通常枠の対象者か確認する(従業員数・法人の種類・過去の受給歴・創業型との重複)
- インボイス特例:2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間に免税事業者だったか、または創業日を確認し、登録通知書か受信通知を用意する。未登録なら登録申請を始める
- 賃金引上げ特例:2026年4月以降の賃金台帳を整え、算出対象の従業員と換算人数を書き出し、判定シートで目標値を試算する。赤字かどうかを申告書の欄で確認する
- 電子申請システムに経営計画・補助事業計画を入力し、特例の書類を添付して、地域の商工会・商工会議所に様式4の発行を依頼する
- 様式4の発行を受けてから、電子申請で申請する
商工会地区と商工会議所地区で窓口とサイトが違います。見分け方は第20回ガイドの地区の章を、申請書類の一覧は持続化補助金の必要書類一覧をご覧ください。
よくある質問
Q. 従業員がいない個人事業主でも賃金引上げ特例は使えますか?
いいえ、使えません。比較する2つの期間のいずれかの月で算定対象となる従業員が存在しない場合は、1人あたり給与支給総額を算出できないため、特例の対象外です。代表者・役員・専従者は特例の従業員に含まれません。インボイス特例は、従業員の有無にかかわらず要件を満たせば使えます。
Q. 賃金引上げ特例は、いつの給与で判定されますか?
2027年4月1日〜2028年3月31日の12か月と、前年同月の2026年4月1日〜2027年3月31日の12か月を比べます。補助事業終了予定日は、補助事業実施期限日の2028年3月31日(金)に設定します。実績報告では、2028年3月までの12か月分の賃金台帳の写しを提出します。
Q. 賃上げの目標を達成できなかったら、上乗せ分だけ減るのですか?
いいえ、補助金の全体が交付されません。公募要領は、特例の要件を1つでも満たさない場合は「特例による上乗せ部分のみではなく全体が交付対象外」としています。さらに、未達の報告から18か月間、中小企業庁所管の補助金への申請で大幅に減点されます。災害等のやむを得ない理由が認められた場合に限り、減点は免除されます。
Q. 黒字の事業者でも補助率3/4になりますか?
いいえ、3/4になるのは、賃金引上げ特例に取り組む事業者のうち、直近1期または直近1年間の課税所得金額がゼロ以下の事業者だけです。黒字の事業者が賃金引上げ特例を使う場合の補助率は2/3です。
Q. 申請時にインボイス登録が済んでいなくても、インボイス特例を選べますか?
はい、選べます。郵送で登録申請中の事業者や登録申請がまだの事業者は、申請時の書類提出は不要です。ただし、補助事業の終了時点で登録を受けている必要があり、実績報告時に登録通知書の写しを提出します。登録が間に合わないと、補助金の全体が交付されません。
まとめ
- 賃金引上げ特例は補助上限+150万円、インボイス特例は+50万円、両方で上限250万円です
- 特例の要件を1つでも満たせないと、補助金の全体が交付されません
- インボイス特例は、一定期間に免税事業者だった事業者か2023年10月1日以降の創業者で、補助事業の終了時点で登録を受けている事業者が対象です
- 賃金引上げ特例は、2026年4月〜2027年3月と2027年4月〜2028年3月の1人あたり給与支給総額を比べ、3.0%以上の増加が要件です。代表者・役員・専従者は従業員に入らず、従業員がいない事業者は使えません
- 赤字(課税所得金額ゼロ以下)の事業者は補助率3/4ですが、賃上げが未達だと18か月間の減点も受けます
持続化補助金を含め、自社が使える補助金を確かめたい方は補助金かんたん診断をご利用ください。補助金のご質問はLINEでも受け付けており、どの制度が該当するか、申請条件に合うかをご提案します。
参考(一次情報)
- 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第9版・2026年11月5日)(2026年11月7日、リポジトリ保存の原文で確認。2.補助対象者、3.補助対象外となる事業者、6.補助率・補助上限額〔(2)インボイス特例・(3)賃金引上げ特例・(4)両特例〕、7.補助対象経費、8.申請手続、11.申請に必要な書類〔特例・加点で追加となる書類〕、12.採択審査〔加点審査〕、13.その他〔(15)(16)〕の根拠)
- 商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>事務局(2026年11月5日確認。第20回のスケジュール、2026年10月22日の参考資料・申請時によくあるご質問・賃金引上げ特例・加点達成判定シートの公開)
- 商工会地区 小規模事業者持続化補助金【一般型・通常枠】申請について(2026年11月5日確認。第20回の参考資料・よくあるご質問・賃金引上げ特例・加点要件達成シート)
- 国税庁「インボイス発行事業者登録申請手続」(公募要領が案内する登録申請手続のページ)
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