補助金の加点項目は、大きく分けると「実績に該当すれば書類だけで取れるもの」「今日から数日で終わるもの」「1〜3か月かかるもの」「半年〜年単位かかるもの」の4種類です。申請を決めてからでは間に合わないものがある一方、賃金台帳を確認するだけで取れるものもあります。

この記事の要点を先にまとめます。

  • 加点は「準備期間」で4つに分けて考えると、いま何をすべきかが決まる
  • 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)の加点は全17項目。すべて申請締切日時点で満たしている必要がある
  • 小規模事業者持続化補助金(第20回)は重点政策加点5種+政策加点11種から計2種類までしか選べない
  • 賃上げ系の加点には未達なら交付決定後でも補助金が交付されない「返還リスク付き」のものがある
  • ネットに多い旧ものづくり補助金(〜第22次)の加点一覧は、現行制度と構成が別物。現行の公募要領で確認しないと危ない

なお、加点を取れば採択されるわけではありません。審査の中心は事業計画の中身であり、加点はあくまで同じ土俵に立ったときの差です。その前提でお読みください。

先に結論:加点は「4つの時間軸」で考える

時間軸代表的なもの目安
準備期間ゼロ(該当確認だけ)再生事業者・事業場内最低賃金引上げ・地域別最低賃金引上げ・研究開発費の計上実績が要件を満たしていれば書類提出のみ
今日〜数日省力化ナビ・デジwith・成長加速マッチング登録・パートナーシップ構築宣言オンラインで完結
1〜3か月事業継続力強化計画・経営力向上計画・経営革新計画・DX認定審査あり。締切から逆算が必要
半年〜年単位健康経営優良法人・えるぼし認定・くるみん認定年1回の申請サイクル、または実績の積み上げが必要

※「今日〜数日」はGビズIDプライムをすでに持っている前提です。未取得なら発行におおむね2週間かかるため、まずそこから始めてください。申請全体の準備順は補助金申請の流れ5ステップで確認できます。

「準備期間ゼロ」の枠は見落とされがちです。認定を取りに行く前に、まず自社がすでに該当している加点がないかを確認する——これが最初の一手です(詳細は次の章)。

そして、制度によっては申請時に使える加点の本数に上限があります。小規模事業者持続化補助金は重点政策加点1種+政策加点1種の計2種類まで(各区分から2種類以上を選ぶと加点審査の対象外になります)。取得は多くても、申請では「どれを出すか」を選ぶ場面が来ると理解しておいてください。

準備期間ゼロ:該当すれば書類だけで取れる加点

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)には、新たに何かを取得しなくても、過去の実績や現在の状態が要件に当てはまっていれば取れる加点が複数あります。2026年8月時点の公募要領から、該当確認だけで済むものを整理します。

加点該当する条件確認するもの
事業場内最低賃金引上げ2025年7月と応募申請直近月を比較し、事業場内最低賃金を全国目安の額(63円以上)引き上げている賃金台帳
地域別最低賃金引上げ2024年10月〜2025年9月の間で、地域別最低賃金以上〜2025年度改定の地域別最低賃金未満で雇用する従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある賃金台帳・指定様式
研究開発費・試験研究費の計上申請締切の前期までに、会計上の研究開発費または税務上の試験研究費を定められた書類で計上している決算書・税務申告書類
再生事業者中小企業活性化協議会等の支援で再生計画等を策定中、または策定済かつ成立から3年以内再生計画関係書類

当社が申請サポートで感じるのは、この4つは「気づいた者勝ち」に近いということです。特に最低賃金まわりの2つは、直近の賃上げで意図せず要件を満たしている会社が珍しくありません。認定の取得計画を立てる前に、まず賃金台帳と決算書を確認してみてください。

細かい様式・証憑の指定があるため、該当しそうな場合は必ず公募要領の該当ページで要件の原文を確認してください。

今日から数日でできる加点

省力化ナビの活用(中小機構)

サイトで業種と悩みごとを選び、「解決策」のPDFをダウンロードするだけで完結します。無料と明記されています。

デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠では、公募要領 3-3(2)①13)に「交付申請締切日時点において、中小機構『省力化ナビ』を活用し、『解決策』のPDFをダウンロードすることにより生産性向上の知見を確認していること」とあります。2026年5月15日の改訂で「PDFをダウンロードすること」という具体的な行為に要件が明確化されました。以前の記述で覚えている方はご注意ください。

この加点は中小企業省力化投資補助金(一般型)でも使えます(第7回公募要領の加点8)。名前のとおり相性がよい制度です。

見落とし注意:GビズIDを合わせること
省力化ナビを使うときは、補助金の申請に使うGビズIDプライムと同じIDを入力する必要があります。別のIDで実施すると加点になりません。

デジwith「IT戦略ナビwith」/IT経営サポートセンター

中小機構のデジタル化支援ポータルで、公式サイトに「5分で見える化!」とあるとおり、オンラインで完結します。デジタル化・AI導入補助金の加点項目で、交付申請の前に実施しておく必要があります(公募要領 3-3(2)①9)。実施後に出る結果画面は、交付申請時に添付します。

2026年8月28日の改訂で、同じ加点項目9)にもう1つの選択肢が追加されました。中小機構「IT経営サポートセンター」(1回60分の無料オンライン相談窓口)の利用でも加点対象になります(第6回公募回より加点措置を実施)。ただし2026年8月1日以降に利用申込を行うこと交付申請日以前かつ各公募回の交付申請締切日の前月末日までに利用が確認できることが条件です。IT戦略ナビwithとIT経営サポートセンターの両方を利用しても、加点は重複せずいずれか一方のみです。IT戦略ナビwithと異なり、こちらは交付申請時に添付する結果書類の指定はなく、申込内容(法人名・住所・法人番号等)を事務局側で確認する形です。

成長加速マッチングサービスへの登録

GビズIDプライムで会員登録し、自社の「挑戦課題」を登録します。公式サイトに「本サービスの利用は無料」と記載があります。

注意点は、マイページで「掲載中」と表示された状態になっていることが条件である点です。登録しただけで掲載中になっていないと、加点の要件を満たしません。この加点はデジタル化・AI導入補助金だけでなく、ものづくり・省力化投資・事業承継M&Aなど複数の制度で使えます。

パートナーシップ構築宣言

ひな形をダウンロードして宣言文を作り、登録フォームからPDFをアップロードします。

ここに落とし穴があります。新事業進出・ものづくり補助金の第1回公募では「令和8年1月1日に更新されたひな形を利用して宣言を公表している事業者」と限定されています。数年前に宣言したまま更新していないと加点されません。自社の宣言がいつのひな形か、一度確認しておくことをおすすめします。

なお、この宣言はデジタル化・AI導入補助金2026の加点項目には入っていません。制度によって効いたり効かなかったりします。

輸出支援プログラムへの登録(グローバル枠のみ)

新事業進出・ものづくり補助金のグローバル枠に申請する場合に限り、「新規輸出1万者支援プログラム」「日本の食輸出1万者支援プログラム」への登録が加点になります。いずれもポータルサイトへの登録完了が要件です。グローバル枠以外の枠では対象にならないため、枠選びとセットで判断してください。

一般事業主行動計画の公表 ← 加点どころか「必須要件」の制度あり

この記事でいちばんお伝えしたいのがここです。次世代法にもとづく一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」に公表する手続きは、制度によって扱いがまったく違います。

制度扱い
新事業進出・ものづくり補助金全申請者の必須要件(公表していないと申請できない)
中小企業省力化投資補助金(一般型)従業員21名以上は必須要件
小規模事業者持続化補助金従業員100人以下なら加点
事業承継・M&A補助金従業員100人以下なら加点

つまりものづくり系を狙うなら、これは「やっておくと有利」ではなく「やらないと土俵に上がれない」手続きです。しかも「両立支援のひろば」への掲載には1〜2週間程度かかり、公募要領には遅れによる申請期限の延長は認められないと明記されています。締切間際に気づいても間に合いません。

そのうえで、後述するくるみん認定は2年以上かかりますが、その第一歩がまさにこの行動計画の公表です。1〜2週間の手続きが、ものづくり系では申請の入場券になり、持続化・事業承継M&Aでは加点になり、2年後にはくるみん認定につながる——もっとも費用対効果の高い一手だと考えています。

1〜3か月で取れる加点

事業継続力強化計画(通称ジギョケイ・簡易BCP)

自然災害などに備えた事業継続の計画を作り、経済産業大臣の認定を受ける制度です。近畿経済産業局は「不備が無い状態で、認定日までに45日程度要します」と案内しています。

さらに、申請は電子申請システムからでGビズIDアカウントが必要、そして「アカウントの取得には2週間程度かかります」とあります。つまりGビズIDを持っていない場合、そこから数えて実質2〜3か月です。

見落とすと致命的な注意点
同ページには「補助金の申請時点までに事業継続力強化計画の認定を受けていないと加点を受けることができません」と明記されています。申請中・審査中では加点になりません。持続化第20回の公募要領も、締切日より後に認定を受けた事業者・認定申請中の事業者・実施期間が終了している事業者は対象外と明記しています。「認定済み・かつ実施期間内」の状態で締切を迎える必要があるということです。補助金の締切から逆算して、最低でも2か月前には動き出してください。
補助金オタクメモ:当社も取得しています
当社(株式会社CAREARC)は本計画の認定を受けています(認定番号 20240425関東第56号)。実際にやってみた感想としては、ハザードマップで自社の立地を確認し、初動対応と「ヒト・モノ・カネ・情報」の対策を書くという構成で、事業計画書ほどの重さはありません。防災の棚卸しとしても有益でした。認定を受けると税制優遇・金融支援もついてきます。

この計画は本記事で扱う5制度のうち4制度(ものづくり系・持続化・省力化投資・事業承継M&A)で加点になる横断的な項目です(デジタル化・AI導入補助金2026の加点項目には入っていません)。中小企業省力化投資補助金(一般型 第7回)では「複数回の認定を取得することにより加点が上乗せされます」という規定まであります。

申請の手順・必ず不備になる記載漏れ・認定番号の見方までは事業継続力強化計画の取り方で詳しく解説しています。

経営力向上計画

生産性向上のための計画を作り、主務大臣の認定を受けます。標準処理期間は約30日(複数省庁にまたがる場合は約45日)ですが、経営力向上計画申請プラットフォームで電子申請すれば約14日(休日等を除く)と大幅に短縮されます(経済産業部局宛の申請に限る)。急ぐなら電子申請一択です。

計画期間は3年・4年・5年のいずれかを選びます。認定を受けると中小企業経営強化税制(即時償却等)、金融支援、そして補助金における優先採択の対象になります。

小規模事業者持続化補助金では【政策加点】の1つになっています。また事業承継・M&A補助金でも、経営革新計画と並ぶ加点事由です。

経営革新計画

新事業への挑戦を都道府県知事等に承認してもらう制度です。申請手数料は不要(広島県の案内に「手数料:不要」と明記)。

ただし所要期間は都道府県によって3倍近い差があります。公表値ベースで最短1か月、実務上は2〜3か月、余裕を見るなら4〜6か月前に着手するのが安全です。お住まいの都道府県の産業労働部の案内で標準処理期間を確認してください。

ものづくり系と事業承継系の補助金で加点になります。デジタル化・AI導入補助金2026と小規模事業者持続化補助金 第20回の加点項目には入っていません——ここは間違えやすいところです。

都道府県ごとの所要期間の違いと、計画期間の起点の落とし穴は経営革新計画の取り方で詳しく解説しています。

DX認定(IPA)

デジタルガバナンス・コードに対応した企業を国が認定する制度で、ものづくり系の加点になります(デジタル化・AI導入補助金2026の加点項目には入っていません。名前から誤解されやすい点は後述)。

取得プロセスの要点は次のとおりです(2026年8月時点・IPAの案内より)。

  • 申請はIPAのWebサイトから電子申請します
  • 審査の標準処理期間は60営業日。暦日ではないため、実質3か月前後の逆算が必要です
  • 認定の有効期間は2年。継続して使うには更新申請が必要で、有効期限の60日前までに手続きします

「1〜3か月」枠の中ではもっとも時間がかかる部類です。ものづくり系の締切に合わせるなら、公募スケジュールの発表を待たずに動き始めることをおすすめします。

半年〜年単位で見るべき加点

健康経営優良法人(中小規模法人部門)

調べた5制度すべてで加点対象になる、もっとも横断的に効く認定です。その分、取得のハードルも時間もかかります。

  • 申請は年1回だけです。2027年認定の申請期間は2026年8月17日(月)〜10月16日(金)17時、認定発表は2027年3月。締切を過ぎると次は1年後になります
  • 保険者(協会けんぽ・健康保険組合など)の健康宣言事業への参加が前提になります。まずここから始める必要があります
  • 認定申請料がかかります。中小規模法人部門は15,000円(税込16,500円)/件です
  • 申請書に書けるのは「申請日までに実施済み」の取り組みだけ。予定では書けません

つまり「申請直前に思い立って取る」ことは構造的にできません。詳しくは健康経営優良法人の取り方で解説しています。

えるぼし認定(女性活躍推進法)

女性活躍の取り組みを厚生労働大臣が認定する制度で、5つの評価項目のうちいくつを満たすかで1段階目〜3段階目に分かれます。

すでに基準を満たしている企業なら認定申請に進めますが、審査期間は公式に公表されていません。一方、基準を満たしていない場合は実績値の改善が必要になるため、年単位を見込んでください。まずは自社が何項目を満たしているか確認し、取得時期は申請先の都道府県労働局へ確認してください。

くるみん認定(次世代育成支援対策推進法)

これが最も時間がかかります。制度の構造上、最短でも2年以上です。

理由は認定基準にあります。次世代法にもとづく一般事業主行動計画の計画期間は2年以上5年以下と定められており、その計画を実際に走らせて目標を達成してから申請する仕組みだからです。つまり、計画開始から最短でも2年+申請審査期間(書類審査は1か月程度)がかかります。

さらに、認定基準の労働時間は「計画期間の終了日が属する事業年度」で算定するため、その事業年度の実績が固まるまで申請できません。準備期間と審査を足すと、思い立ってから実質2年半〜3年を見ておくのが安全です。

2025年4月の基準改正に注意
くるみんの男性育休取得率の基準は10%から30%へ引き上げられました(トライくるみんは7%→10%、プラチナくるみんは30%→50%)。ネット上に残る「くるみんは男性10%」という記述は旧基準です。取得期間についても「数か月で取れる」とする記述を見かけますが、上記のとおり計画期間2年以上が認定要件に組み込まれているため、数か月での取得は制度上あり得ません。現実的には、まずトライくるみん(10%)を取り、その後くるみんを狙う設計になりました。
なお2027年3月31日までは旧基準での申請も可能ですが、付与されるのは「旧基準達成」版のマークです。

くるみん・えるぼしはいずれも、デジタル化・AI導入補助金では「くるみん・えるぼしのいずれか」で1項目の扱い、ものづくり系・省力化投資では別項目として並列に加点されます。どちらから狙うべきかはくるみん・えるぼし認定と補助金の加点で整理しています。

【制度別】新事業進出・ものづくり補助金の加点17項目

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)の公募要領には、17の加点項目が並んでいます。公募要領は「加点項目は申請締切日時点で満たしている必要があります」と明記しており、「申請中」「手続き中」では1つも認められません

全17項目を、準備のタイプ別に整理します(並びは当社の整理で、公募要領の番号順ではありません。各項目の詳細条件は公募要領でご確認ください)。

加点項目タイプポイント
パートナーシップ構築宣言宣言(数日)令和8年1月1日更新のひな形での公表が条件
成長加速マッチングサービス登録(数日)「掲載中」表示になっていること
新規輸出1万者支援プログラム登録(数日)グローバル枠のみ。ポータル登録完了が要件
日本の食輸出1万者支援プログラム登録(数日)グローバル枠のみ
事業継続力強化計画認定(45日程度〜)認定済みであること。申請中は不可
経営革新計画承認(1〜3か月)都道府県により所要期間に差
DX認定認定(約3か月)標準処理期間60営業日・有効期間2年
技術情報管理認証認証(機関による)認証機関の審査が必要。費用・期間は各機関へ確認
健康経営優良法人認定(年1回)申請は年1回サイクル
くるみん認定認定(2年以上)行動計画2年以上が認定要件
えるぼし認定認定(状況による)基準充足済みなら申請可
J-Startup / J-Startup地域版選定該当選定されている事業者が対象(詳細は公募要領)
アトツギ甲子園出場実績ピッチ大会に出場した事業者が対象。エントリー時期に依存
再生事業者実績該当(期間ゼロ)再生計画を策定中、または策定済かつ成立から3年以内
研究開発費・試験研究費の計上実績該当(期間ゼロ)申請締切の前期までに会計上・税務上の計上実績
地域別最低賃金引上げ実績該当(期間ゼロ)2024年10月〜2025年9月の間で、最賃近傍の従業員が30%以上の月が3か月以上
事業場内最低賃金引上げ実績該当(期間ゼロ)2025年7月比で63円以上の引上げ

旧ものづくり補助金の「加点一覧」は現行制度に使えない

検索すると、旧ものづくり補助金(〜第22次)の加点一覧(15項目前後)を解説した記事が今も多数ヒットします。しかし2026年の新制度(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金)では構成が大きく変わりました。

  • 賃上げは「加点」ではなくなりました。新制度では賃上げが基本要件(未達なら返還義務あり)と上乗せの特例に組み込まれています。「賃上げ加点で差をつける」という旧制度の発想のままだと、要件そのものを読み違えます
  • 旧制度の一覧にあった項目のいくつかは、第1回公募要領の加点一覧には見当たりません。逆に研究開発費・アトツギ甲子園・輸出支援プログラム・最低賃金引上げ系など、旧一覧に無い項目が新設されています
  • パートナーシップ構築宣言も、上述のとおりひな形の版まで指定される運用になりました

古い一覧を前提に準備すると、取れるはずの加点を落とし、無い加点を追いかけることになります。必ず現行の公募要領の加点一覧を原文で確認してください。制度全体の解説は新事業進出・ものづくり補助金の記事にまとめています。

【制度別】小規模事業者持続化補助金 第20回の加点

持続化補助金(第20回)の加点は【重点政策加点】5種と【政策加点】11種の2区分です。選べるのは重点政策加点から1種類+政策加点から1種類の計2種類まで。各区分から2種類以上を選ぶと、その区分の加点審査の対象外になります。

重点政策加点(5種から1つ)

加点概要
赤字賃上げ加点賃上げに取り組む赤字事業者向け(詳細要件は公募要領)
事業環境変化加点物価高騰等の影響を受けている事業者向け(同上)
東日本大震災加点被災地域の事業者向け(同上)
くるみん・えるぼし加点くるみん認定またはえるぼし認定の取得事業者
健康経営優良法人加点認定情報とGビズIDの登録情報で自動判定される

健康経営優良法人加点は、公募要領に「GビズIDに登録された情報と『健康経営優良法人』の認定情報を基に自動判定します」とあり、証明書類の添付ではなくGビズID側の情報で機械的に判定されます。GビズIDの法人情報が最新か、認定名義と一致しているかを確認しておいてください。

政策加点(11種から1つ)

加点概要
賃金引上げ加点1人あたり給与支給総額を年平均2.0%以上引上げ。未達なら不交付(後述)
地方創生型加点地域資源活用等の取り組み(旧回次の「パワーアップ型」系から改称。詳細は公募要領)
経営力向上計画加点経営力向上計画の認定事業者
事業承継加点基準日時点で代表者が満60歳以上かつ後継者候補が補助事業を中心に行う場合。商工会・商工会議所発行の事業承継診断票が必要
過疎地域加点過疎地域の事業者(詳細は公募要領)
一般事業主行動計画策定加点従業員100人以下で行動計画を公表している事業者
後継者支援加点アトツギ甲子園のファイナリスト等が対象
小規模事業者卒業加点雇用拡大により小規模事業者の従業員数を超える計画。未達なら不交付(後述)
事業継続力強化計画策定加点認定済み・かつ実施期間が終了していないこと。締切後の認定・申請中・期間終了済みは対象外
令和6年能登半島地震等に伴う加点被災地域の事業者向け(詳細は公募要領)
地域別最低賃金引上げ加点直近の地域別最低賃金の改定で、直近の改定での最低賃金額以下で雇用していた従業員(連続3か月以上)がいる事業者

「返還リスク付き」の加点が2つある

政策加点のうち賃金引上げ加点と小規模事業者卒業加点は、他の加点と性質が違います。公募要領は賃金引上げ加点について「本要件を満たさない場合は、交付決定後であっても、補助金は交付されません」と明記しており、小規模事業者卒業加点にも同様の規定があります。

つまりこの2つは「書類を出せば得する加点」ではなく、将来の達成を約束する契約に近い加点です。採択後に未達だと、事業を実施し終えていても補助金を受け取れません。達成の見込みを冷静に確認してから選んでください。

くるみん・えるぼし加点と行動計画加点の重複ルール

もう1つ、公募要領に明記されている割に見落とされがちなルールがあります。重点政策加点の「くるみん・えるぼし加点」と、政策加点の「一般事業主行動計画策定加点」の両方に該当して両方選んでも、加点されるのは重点政策加点分のみです。

くるみん認定企業は行動計画も公表しているため両方に該当しますが、政策加点の枠を行動計画加点に使うのは損になります。該当する場合は、政策加点には別の項目(経営力向上計画や事業継続力強化計画など)を充てるのが正しい選び方です。

どの補助金で何が加点になるか

主要5制度を公募要領で照合しました(2026年8月時点)。

記号の意味:◯=加点/必須=加点ではなく申請の必須要件(満たさないと申請できない、または返還対象)/—=該当なし

項目デジタル化AI導入ものづくり系持続化省力化投資事業承継M&A
健康経営優良法人
くるみん・えるぼし認定
事業継続力強化計画
成長加速マッチング登録
省力化ナビの活用
デジwith「IT戦略ナビwith」/IT経営サポートセンター
経営革新計画
経営力向上計画
パートナーシップ構築宣言
DX認定
賃上げ計画の策定・表明◯※必須必須
一般事業主行動計画の公表必須必須(21名以上)

※デジタル化・AI導入補助金2026では、賃上げ目標が加点扱いになるのは補助金申請額150万円未満の新規申請者のみ。補助金申請額150万円以上の場合、およびIT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者の場合は、加点ではなく必須要件です(通常枠公募要領の補足)。

この表でいちばん大事なのは「必須」のマスです。ものづくり系では賃上げ計画も一般事業主行動計画も加点ではなく基本要件で、賃上げは未達なら補助金の返還義務が生じます。「加点じゃないなら関係ない」と読み飛ばすと、申請そのものができません。

補足の注意:

  • 制度名は通称です。「ものづくり系」は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を指します。同制度の全17項目は上の章、持続化の全16種は前の章にまとめています
  • 事業承継M&Aの列は事業承継促進枠を基準にしています。同補助金は枠ごとに加点事由が異なり、廃業・再チャレンジ枠は加点が3項目のみです
  • 持続化は加点を2種類までしか選べません(重点政策加点1+政策加点1)。一方、持続化と異なり、ものづくり系の第1回公募要領には選択本数の上限は明記されていません
  • 加点項目は公募回ごとに変わります。申請前に必ず最新の公募要領でご確認ください

横断的に効くのは健康経営優良法人とくるみん・えるぼし(5制度すべて)、次いで事業継続力強化計画(4制度)。一方、デジwithはデジタル化・AI導入補助金だけ、省力化ナビはデジタル化・AI導入補助金と省力化投資補助金の2制度です。狙う制度が決まっているなら、その列だけ見て準備を絞るのが効率的です。

費用はどれくらいかかるか

「加点のために持ち出しがいくら必要か」もよく聞かれます。一次情報で確認できる範囲では次のとおりです(2026年8月時点)。

  • 無料と明記されているもの:省力化ナビ、成長加速マッチングサービス、経営革新計画(申請手数料不要)
  • 有料と確認できるもの:健康経営優良法人の認定申請料(中小規模法人部門 15,000円・税込16,500円/件)
  • 認証機関・支援機関により異なるもの:技術情報管理認証(認証機関の審査費用が発生します。金額は各認証機関の公表料金でご確認ください)

多くの加点はオンライン手続きのみで費用がかからず、コストよりも時間(準備期間)がボトルネックというのが実態です。社労士・コンサルタントに認定取得を依頼する場合の報酬は別途かかりますが、事業継続力強化計画や経営力向上計画のように書式が定まっているものは自社作成も十分現実的です。

間違えやすい4つのポイント

1. SECURITY ACTIONは「加点」ではなく「要件」

デジタル化・AI導入補助金では、SECURITY ACTIONの★一つ星または★★二つ星の宣言は全枠共通の申請要件です(公募要領 2-1-1(2)申請要件)。加点ではありません。宣言していないと、そもそも申請できません。

★★二つ星の宣言が加点になるのはセキュリティ対策推進枠のみです。「二つ星を取れば通常枠でも加点」ではないので注意してください。宣言自体はオンラインで完結しますが、宣言済みアカウントIDの発行に時間がかかる場合があるため、締切間際は避けてください。

2. DX認定はデジタル化・AI導入補助金の加点ではない

名前から誤解されやすいのですが、DX認定が加点になるのはものづくり系のみで、デジタル化・AI導入補助金2026の加点項目には入っていません。取得に約3か月かかる認定なので、効かない制度のために取りにいくのはもったいない話です。

3. インボイス登録は「未登録の人だけ」の加点

インボイス枠(インボイス対応類型)の加点項目は「交付申請時点でインボイス登録を行っておらず、実績報告日までにインボイス登録を行うこと」です。つまりすでに登録済みの事業者は、この加点を取れません。逆張りの設計になっている珍しい加点項目です。

そしてこの加点を選ぶとリスクも背負います。登録年月日が交付申請日以前(交付申請日当日を含む)だった場合や、実績報告日までに登録できなかった場合は、原則として交付決定が取り消されます。「加点だから取っておこう」と軽く選べる項目ではありません。

4. 「申請中」は加点にならない

事業継続力強化計画・経営革新計画・各種認定に共通する原則です。ものづくり系の公募要領は「申請締切日時点で満たしている必要があります」と明記しており、持続化も事業継続力強化計画について認定申請中は対象外としています。「いま申請していますので加点でお願いします」は通りません。締切から逆算した着手が全てです。

加点より怖い「減点」

準備の話をするなら、減点にも触れないとフェアではありません。加点を積む前に、自社に減点要素がないかの確認をおすすめします。

デジタル化・AI導入補助金の減点

  • 過去に同系統の補助金で交付決定を受けている事業者は減点の対象です(2022〜2025年の交付決定者に拡大されました)
  • 賃上げ加点を受けたのに未達だった場合、18か月間のペナルティがあります。しかもこれは1つの補助金の未達が他の補助金にも波及します

詳しくは再申請と減点の記事賃上げ加点と返還リスクの記事で解説しています。

新事業進出・ものづくり補助金の減点等

第1回公募要領には、審査上マイナスに働く事項として次の5つが挙げられています(適用条件の詳細は公募要領の原文でご確認ください)。

  1. 過去の賃上げ加点の未達(未達成の場合、以後18か月間の減点)
  2. 過剰投資の抑制——公募要領には「類似のテーマ・設備等に関する申請が集中してなされている場合には、一時的流行による過剰投資誘発の恐れがあるため、別途審査を行います」とあり、流行テーマへの相乗り申請は大幅な減点対象になり得ます
  3. 過去の補助事業の事業化状況が低い(事業化段階が一定以下)
  4. 過去3年間に交付決定を受けている
  5. 過去の補助事業で基本要件を達成できなかった(ものづくり補助金・新事業進出補助金の第1回公募以降に交付決定を受けて事業を実施したものの、賃上げ要件・事業場内最賃水準要件を達成できなかった事業者)

特に2つ目の「過剰投資の抑制」はあまり知られていません。当社の実務感覚でも、話題の設備・AIツールに「みんなが出すから」と同じテーマで申請するのは逆効果になり得ます。自社の経営課題から説き起こした計画かどうかが、加点の数以上に問われます。

「加点◯個で採択率◯%」という数値について

「加点を4つ取ると採択率8割」といった数値を載せた記事を見かけます。出どころは旧ものづくり補助金の公式データポータルで、そこには「加点項目の数」別の申請・採択状況データが公表されています。ただし、これは制度が再編される前の旧制度の実績であり、現行制度の採択率を約束する数字ではありません。当記事では、一次情報の文字データとして検証できない具体的な割合の引用は控えます。傾向を確認したい方は、公式データポータルを直接ご覧ください(記事末尾にリンクがあります)。

何から手をつけるか(当社のおすすめ順)

  1. 前提:GビズIDプライムを取得する(未取得なら発行におおむね2週間。以降のほぼ全部がこれを使います)
  2. 今日:「準備期間ゼロ」の該当確認(賃金台帳で最低賃金系2つ、決算書で研究開発費、再生計画の有無)。次に省力化ナビ(デジタル化・AI導入/省力化投資に効く)・デジwith・成長加速マッチング登録。いずれも申請に使うGビズIDプライムと同じIDで実施すること
  3. 今週:一般事業主行動計画の公表(掲載に1〜2週間。ものづくり系は必須要件なので最優先)、パートナーシップ構築宣言(ひな形が令和8年1月1日版か確認)
  4. 今月中に着手:事業継続力強化計画(認定まで45日程度+GビズIDがなければさらに2週間)。防災の棚卸しにもなります
  5. 狙う制度が決まったら:経営力向上計画(持続化なら)/経営革新計画・DX認定(ものづくり系なら。DX認定は標準処理期間60営業日)
  6. 半年先を見て:健康経営優良法人の次回申請に間に合うよう保険者の健康宣言事業に参加
  7. 長期の投資として:一般事業主行動計画を2年以上走らせてくるみん認定へ
当社の実例
当社は事業継続力強化計画の認定(20240425関東第56号)、パートナーシップ構築宣言、次世代法にもとづく一般事業主行動計画の策定・届出を実際に行っています。また、デジタル化・AI導入補助金のIT導入支援事業者として登録している当事者(申請番号 ITP04-0002803)でもあります。「制度を紹介する側」ではなく「使う側・支援する側」の両方の立場から書いています。詳しくは運営者情報をご覧ください。

よくある質問

Q. 加点を取れば採択されますか?

いいえ。審査の中心はあくまで事業計画の中身です。加点は同程度の計画が並んだときに効くもので、加点があっても不採択になることはあります。逆に、加点が少なくても計画が優れていれば採択されます。加点は「やらない理由がない準備」と捉えるのが実情に合っています。

Q. 加点は何個くらい取ればいいですか?

取れるだけ取って損はありませんが、制度によっては「申請で出せる本数」に上限があります。持続化は重点政策加点1+政策加点1の計2種類まで。一方、ものづくり系の第1回公募要領には選択本数の上限は明記されていません。旧制度の実績では加点項目数と採択状況のデータが公式に公表されており、加点が結果に影響していたことはうかがえますが、具体的な割合は制度再編前の数字です。「何個」よりも、必須要件の充足→減点要素の排除→取れる加点の上限までという順番で考えてください。

Q. どれか1つだけやるとしたら何ですか?

一般事業主行動計画の公表です。ものづくり系では必須要件、持続化・事業承継M&Aでは加点、そしてくるみん認定の第一歩にもなります。1〜2週間で終わるのに効き先がもっとも広い手続きです。

制度が決まっているなら、デジタル化・AI導入補助金は省力化ナビとデジwith(当日中に終わります)、省力化投資も省力化ナビが効きます。判断に迷う場合は補助金かんたん診断で候補制度を絞ってからでも遅くありません。

Q. 加点はいつまでに満たせばいいですか?

ものづくり系は申請締切日時点、デジタル化・AI導入補助金の省力化ナビ・デジwithは交付申請(締切)までが原則です。事業継続力強化計画のように「認定済み・かつ実施期間内」まで求められるものもあります。共通するのは、どの制度も「申請中」「手続き中」は認めないことです。締切日ではなく、そこから審査期間ぶん手前を自社の締切として設定してください。

Q. 賃上げ系の加点はリスクがありますか?

あります。持続化の賃金引上げ加点と小規模事業者卒業加点は、未達の場合は交付決定後であっても補助金が交付されないと公募要領に明記されています。デジタル化・AI導入補助金でも賃上げ加点の未達には18か月間のペナルティがあります。一方、ものづくり系では賃上げは加点ではなく基本要件(未達で返還義務)です。いずれの制度でも、賃上げ関連は「加点だから気軽に」ではなく達成できる計画かどうかで判断してください。

Q. 認定の取得を専門家に頼むべきですか?

事業継続力強化計画や経営力向上計画は、書式が定まっているため自社で作成される方も多くいます。一方、経営革新計画は数値目標の設計が必要で、都道府県との事前相談も含めると手間がかかります。商工会議所・商工会や経営革新等支援機関が申請をサポートする仕組みもあるので、まず窓口に相談するのが費用的にも現実的です。

Q. 加点に使う認定はいつまで有効ですか?

制度によります。経営革新計画は計画期間(3〜5年)が終われば承認の効力も終わり、DX認定の有効期間は2年で更新は期限の60日前まで、健康経営優良法人は年度ごとの認定なので毎年申請し直します。補助金側は「申請締切日時点で有効」を求めるものが多いため、取得日だけでなく失効日も管理してください。

Q. 昔のものづくり補助金の加点一覧を参考にしてもいいですか?

おすすめしません。旧ものづくり補助金(〜第22次)と現行の新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、加点の構成が別物です。賃上げは加点から基本要件に移り、研究開発費・アトツギ甲子園・最低賃金引上げ系などが新設され、パートナーシップ構築宣言はひな形の版まで指定されるようになりました。検索上位の記事でも旧制度の一覧のまま更新されていないものがあるため、必ず現行公募要領の原文で確認してください。

Q. 加点項目は毎年変わりますか?

変わります。デジタル化・AI導入補助金2026では、2026年5月15日の改訂で省力化ナビの要件が具体化され、デジタル化セカンドオピニオンが第3回公募から新設されるなど、公募回の途中でも変更が入っています。申請前に必ず最新の公募要領と加点項目一覧をご確認ください。当サイトでは公式情報を毎朝自動で確認し、変更があれば記事に反映しています。

まとめ

  • 加点は「準備期間ゼロ(該当確認だけ)」「今日〜数日」「1〜3か月」「半年〜年単位」の4つの時間軸で考える
  • 最初の一手は賃金台帳・決算書での該当確認一般事業主行動計画の公表(ものづくり系では必須要件・掲載に1〜2週間)
  • ものづくり系の加点は全17項目・申請締切日時点で充足が条件。旧制度の加点一覧は現行制度に使えない
  • 持続化は重点政策加点5種+政策加点11種から計2種類まで。くるみん・えるぼし加点と行動計画加点の重複ルールに注意
  • 賃上げ系の加点は未達なら不交付・返還のリスク付き。達成見込みで選ぶ
  • 加点より減点のほうが影響が大きい場合がある(過去の交付決定歴・賃上げ未達・過剰投資の抑制)

「自社ならどれを準備すべきか」の個別のご相談は公式LINEでどうぞ。デジタル化・AI導入補助金(通常枠・インボイス枠)の補助額は見積もりシミュレーター(無料・30秒)で試算できます。

参考(一次情報)