雇用関係助成金に共通の要件|受給できない事業主12項目と廃止された生産性要件

目次9章
雇用関係助成金の共通要件とは、厚生労働省の雇用関係助成金すべてに共通して適用される要件です。キャリアアップ助成金・両立支援等助成金・トライアル雇用助成金など、どの助成金を申請する場合にも適用されます。各助成金の解説ページに書かれた要件とは別に定められています。各助成金のページでは「このほかにも、雇用関係助成金共通の要件などいくつかの支給要件があります」と一言触れられるだけの部分です。
当社が提携の社会保険労務士と連携して助成金の申請をご支援する中でも、個別の助成金の要件は満たしているのに、この共通要件で引っかかる例があります。この記事は、厚生労働省の「令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」(令和8年4月8日時点)と「雇用関係助成金共通要領」にもとづいています。受給できない事業主を先に整理し、そのあと中小企業の範囲や、廃止された生産性要件の扱いを説明します。
- 受給できない事業主は12項目です。労働保険料の未納入、労働関係法令の違反、倒産、支給申請書等への事実と異なる記載などが含まれます
- 不正受給があると、不支給決定日または支給決定取消日から5年間、雇用関係助成金は支給されません
- 調査への協力や、不正受給時の事業主名等の公表などに承諾していない事業主は、それだけで受給できません
- 助成額を割増する仕組みだった生産性要件は、2023年3月31日で廃止されました
- 同一の雇入れ・訓練に2つ以上の助成金を同時に申請すると、双方の要件を満たしていても一方しか支給されません

雇用関係助成金を受給できない事業主:12項目
雇用関係助成金は、受給対象の事業主であっても、次の1〜12のいずれかに該当する事業主には支給されません。表は、厚生労働省のパンフレット(令和8年4月8日時点)が挙げる12項目を番号順にまとめたものです。
| 内容 | |
|---|---|
| 1 | 不正受給による不支給決定または支給決定の取消を受け、その日から5年を経過していない事業主。5年を経過しても、不正受給による請求金を全額納付していない事業主(時効が完成している場合を除く)も含みます |
| 2 | 1の事業主の役員等として不正受給に関与した役員等がいる事業主 |
| 3 | 支給申請した年度の前年度より前のいずれかの年度の労働保険料を納入していない事業主(支給申請日の翌日から起算して2か月以内に納付した事業主を除く) |
| 4 | 支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反を行った事業主 |
| 5 | 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業、またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主 |
| 6 | 事業主または役員等が暴力団と関係を有している事業主 |
| 7 | 事業主または役員等が、破壊活動防止法第4条に規定する暴力主義的破壊活動を行ったまたは行う恐れがある団体に属している事業主 |
| 8 | 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主 |
| 9 | 審査・調査への協力、書類の保管と提出、不正受給時の事業主名等の公表、請求金の返還などについて、承諾していない事業主 |
| 10 | 「役員等一覧」を提出していない事業主 |
| 11 | 厚生労働省が定める助成金の支給要領に従うことを承諾していない事業主 |
| 12 | 支給申請書等に事実と異なる記載または証明を行った事業主 |
表の項目には、共通要領で範囲が細かく定められているものがあります。
- 1の期間は、共通要領では、平成31年3月31日以前の支給申請に係る不正受給なら3年間とされています
- 4の「労働関係法令の違反」は、労働基準監督署などから送検された場合などを指します
- 12からは、労働局長が認めた軽微な誤りが除かれます
5には例外があります。これらの営業を行っていても、接待業務等に従事しない労働者(事務、清掃、送迎運転、調理など)を雇い入れるときです。その雇入れについては、特定求職者雇用開発助成金とトライアル雇用助成金の受給が認められる場合があります。この2つ以外の助成金でも、接待飲食等営業で次のどちらかに当たる場合は対象外になりません。
- 許可を得ているのみで接待営業が行われていない場合
- 接待営業の規模が事業全体の一部である場合
なお雇用調整助成金は、接待飲食等営業(その接客業務の受託を含む)を行う事業主なら対象外になりません。性風俗関連特殊営業は対象外です。
9の承諾は見落とされやすい要件です。不正を行う意図がなくても、承諾しない限り支給されません。承諾の対象には、調査の際に従業員へのヒアリングや、取引先・金融機関・税務署などへの照会が行われる場合があることも含まれます。
「不正受給」とは、偽りその他不正の行為により、本来受けることのできない助成金を受け、または受けようとすることです。厚生労働省のパンフレットは、代表者だけでなく役員・従業員・代理人など、支給申請や書類作成に関わった者の不正も含むとしています。従業員や社会保険労務士が不正を行った場合も、不正受給に当たります。
雇用関係助成金を受給できる事業主:3つの要件
雇用関係助成金を受給するには、各助成金の個別の要件に加えて、次の1〜3のすべてを満たす必要があります。
- 雇用保険適用事業所の事業主であること(支給申請日と支給決定日の時点で、雇用保険被保険者が存在する事業所の事業主であること)
- 支給のための審査に協力すること
- 審査に必要な書類を整備・保管すること- 都道府県労働局・ハローワークなどから書類の提出を求められたら応じること- 都道府県労働局・ハローワークなどの実地調査に応じること
- 期間内に申請を行うこと(支給申請期間は、原則として各助成金の支給要領に定める日の翌日から起算して2か月以内)
2のとおり、書類の整備・保管と実地調査への協力も受給要件に含まれます。厚生労働省のパンフレットは「適正支給の観点から積極的な調査を行っています」とし、調査に協力することが支給要件になっていると明記しています。
不正受給があった場合の措置:5年間の不支給と請求金
雇用関係助成金を不正に受給すると、請求金の納付を求められ、その後5年間は雇用関係助成金を受けられません。厚生労働省のパンフレットと共通要領Q&Aが示す措置は次のとおりです。
- 不正受給に係る助成金は、不支給決定または支給決定取消となります
- すでに支給された助成金は、返還額に延滞金などを加えた請求金の納付が必要です
- 不支給決定日または支給決定取消日から5年間、すべての雇用関係助成金を受給できません
- 一定の基準に該当すると、事業主名や代表者名等が公表されます
- 詐欺、脅迫、贈賄等刑法に触れる行為があった場合は、刑事告発されることがあります
公表の基準は共通要領に定められています。不正受給に係る額が100万円以上で、返還を命じた日から1か月以内に請求金が全額納付されない場合などです。不正の態様などから特に重大・悪質と認められる場合も、公表の対象です。
請求金は、次の3つを合計した額です。
- 不正受給により返還を求められた額
- 不正受給の日の翌日から納付の日まで、年3%の割合で算定した延滞金
- 不正受給により返還を求められた額の20%に相当する額
雇用関係助成金の中小企業の範囲(資本金・労働者数)
雇用関係助成金の中小企業とは、原則として「資本金の額・出資の総額」か「常時雇用する労働者の数」のいずれかを満たす企業です。助成内容が中小企業と中小企業以外で異なる助成金があるため、申請前に自社の区分を確かめておきます。産業分類ごとの基準は次の表のとおりです。
| 産業分類 | 資本金の額・出資の総額 | 常時雇用する労働者の数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
医療法人などで資本金・出資金を有している事業主についても、この表で判定します。
このほか、範囲が異なる助成金が2つあります。
- 人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース):上の表に加えて、次の業種も中小企業者として扱われます。ゴム製品製造業(自動車・航空機用のタイヤ、チューブ製造業や工業用ベルト製造業を除く)は3億円以下/900人以下です。ソフトウェア業または情報処理サービス業は3億円以下/300人以下、旅館業は5,000万円以下/200人以下です
- 両立支援等助成金:「特定事業主」の範囲が別に定められています。資本金の額・出資の総額は上の表と同じで、常時雇用する労働者の数は業種にかかわらず300人以下です
生産性要件とは:2023年3月31日で廃止された割増の仕組み

生産性要件は、2023(令和5)年3月31日で廃止されました。労働生産性を向上させた事業所が一部の雇用関係助成金を利用する場合に、助成額や助成率を割増する仕組みでした。厚生労働省は、雇用関係助成金の申請にあたってのページで「生産性要件は、2023(令和5)年3月31日で廃止されました」と案内しています。
廃止前の取組には、経過措置が適用される場合があります。厚生労働省のリーフレットは、2023年3月31日までに助成金の対象となる取組を行った場合などを挙げています。詳細は、改正後の各助成金の支給要領で確認するよう案内されています。
廃止前の生産性要件は、直近の会計年度の「生産性」が3年度前より6%以上伸びていることなどを条件としていました。生産性は「付加価値÷雇用保険被保険者数」で計算します。古い資料やWebページには、この割増の説明が残っていることがあるので注意してください。
「解雇していないこと」は共通要件ではありません
事業主都合の解雇をしていないことは、すべての雇用関係助成金に共通する要件ではありません。廃止前の生産性要件には、算定期間中に事業主都合の解雇等(退職勧奨を含む)をしていないことという条件がありました。この条件も、生産性要件とともになくなっています。受給できない事業主の12項目にも、解雇の項目は含まれていません。
ただし、各助成金が独自に解雇要件を定めている場合はあります。たとえば特定求職者雇用開発助成金には「採用日前後6か月間に事業主都合による解雇(勧奨退職を含む)をしていないこと」という要件があります。トライアル雇用助成金の支給要領にも、事業主の都合で被保険者を離職させていないことという要件があります。申請の際は「共通要件」と「その助成金独自の要件」を分けて確認してください。
その他の留意事項:書類の5年保存・同一の雇入れでの重複申請など
雇用関係助成金の共通要件には、申請手続きや書類保存についての留意事項もあります。なかでも書類の5年間保存と、同一の雇入れ・訓練で2つ以上の助成金を申請したときの扱いは、申請前に知っておきたい内容です。
- 「支給要件確認申立書」は、申請の都度、提出する必要があります
- 事実と異なる記載や添付書類がないか、記入誤りや添付書類の不足がないかを、提出前に確認します
- 提出した支給申請書や添付書類の原本または写しは、支給決定日の翌日から起算して5年間保存しなければなりません。社会保険労務士などに申請を依頼した場合も、書類の原本または写しを受け取って保存します
- 同一の雇入れ・訓練、または同一の経費負担を対象として2つ以上の助成金が同時に申請された場合は、双方の要件を満たしていても一方しか支給されません
- 支給・不支給の決定、支給決定の取消しなどは、行政不服審査法上の不服申立ての対象とはなりません
- 国、地方公共団体(地方公営企業法第2条の適用を受ける企業を除く)、行政執行法人、特定地方独立行政法人には支給されません
- 申請は、電子申請・郵送・助成金申請窓口への持参のいずれかで行えます。郵送の場合は、簡易書留等、必ず配達記録が残る方法で送付し、支給申請期間内に到達している必要があります
- 過去5年以内に他の不正受給に関与した社会保険労務士または代理人(弁護士を含む)が申請を代わって行った場合も、受給できません。該当者は各都道府県労働局が公表しており、厚生労働省ホームページからも確認できます
- 訓練の実施が要件となっている助成金では、過去5年以内に他の不正受給に関与した訓練実施者が行った訓練について申請した場合も、受給できません
よくある質問
Q. 過去に人員整理をしましたが、雇用関係助成金は申請できませんか?
共通要件には「解雇をしていないこと」という項目はありません。受給できない事業主の12項目にも、解雇は含まれていません。解雇等をしていないことを条件にしていた生産性要件も、2023年3月31日で廃止されました。ただし各助成金が独自に解雇要件を定めている場合があるため、申請する助成金の支給要領を個別に確認してください。
Q. 生産性要件を満たさないと、雇用関係助成金は受給できませんか?
いいえ、生産性要件は2023(令和5)年3月31日で廃止されました。一部の助成金で、助成額の割増などに使われていた要件です。古い資料に生産性要件の記載が残っていても、申請する助成金の最新の支給要領で要件を確認してください。
Q. 労働保険料を滞納しています。納付すれば申請できますか?
納付の時期によっては、受給できない事業主から除かれます。受給できない事業主の3は「支給申請した年度の前年度より前のいずれかの年度の労働保険料を納入していない事業主」です。そのうえで、支給申請日の翌日から起算して2か月以内に納付した事業主は除くとされています。具体的な取扱いは管轄労働局にご確認ください。
Q. 同じ従業員の雇入れで2つの助成金を申請できますか?
同時に申請した場合は、双方の要件を満たしていても一方しか支給されません。厚生労働省のパンフレットは、同一の雇入れ・訓練または同一の経費負担を対象に2つ以上の助成金が同時に申請された場合について「一方しか支給されません」と明記しています。ただし、組み合わせによって扱いは異なります。たとえばトライアル雇用助成金で雇い入れた母子家庭の母等を、終了後も継続して雇用する場合は、特定求職者雇用開発助成金の一部を受給できる場合があります(トライアル雇用助成金)。組み合わせごとの扱いは厚生労働省の「併給調整早見ツール」で確認し、申請前に管轄の労働局へ相談してください。
Q. 不支給の決定に納得できない場合、不服申立てはできますか?
いいえ、行政不服審査法上の不服申立てはできません。厚生労働省は「支給・不支給の決定、支給決定の取消しなどは、行政不服審査法上の不服申立ての対象とはなりません」としています。
Q. 書類はいつまで保存すればよいですか?
支給決定日の翌日から起算して5年間です。厚生労働省のパンフレットは、都道府県労働局に提出した支給申請書や添付書類の原本または写しを、この期間保存しなければならないとしています。社会保険労務士などに申請を依頼した場合も、提出した書類の原本または写しを受け取って保存してください。
まとめ:個別要件の前に共通要件を確認する
- 受給できない事業主は12項目です。労働保険料の未納入、労働関係法令の違反、倒産、支給申請書等への事実と異なる記載などが含まれます
- 不正受給があると5年間支給されません。請求金には年3%の延滞金と20%相当額が加算されます
- 生産性要件は2023年3月31日で廃止されました。古い資料の割増の説明と、現在の要件を混同しないよう注意します
- 同一の雇入れ・訓練で2つ以上の助成金を同時に申請すると、一方しか支給されません
- 書類は支給決定日の翌日から起算して5年間保存します
個別の助成金についてはキャリアアップ助成金とは、両立支援等助成金とは、人材開発支援助成金とは、トライアル雇用助成金、特定求職者雇用開発助成金で解説しています。自社が使える制度の整理は補助金かんたん診断やLINEでの無料相談をご利用ください。
参考(一次情報)
- 令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)(PDF・令和8年4月8日時点)|厚生労働省——受給対象となる事業主(雇用保険適用事業所・期間内の申請・審査への協力・支給申請期間)/中小企業事業主等の範囲(人材確保等支援助成金〔中小企業団体助成コース〕と両立支援等助成金〔特定事業主〕の範囲)/不支給要件1〜12と不正受給・請求金の定義/申請にあたっての留意点(請求金・5年間の不支給・事業主名等の公表、5年間の書類保存、一方しか支給されない場合、行政不服審査法の対象外、国等への不支給、申請方法と郵送時の配達記録、支給要件確認申立書、不正に関与した社会保険労務士等・訓練実施者)(2026年10月12日確認)
- 雇用関係助成金共通要領(PDF・令和8年4月8日現在)|厚生労働省——0202中小企業事業主/0205不正受給の定義と請求金/0301支給対象事業主/0302不支給要件(労働関係法令の違反の範囲、風俗営業等関係事業主とその例外、事実と異なる記載からの軽微な誤りの除外)/0303国等に対する不支給/0304併給調整/0404申請書類等の保存/0702不支給措置(平成31年3月31日以前の支給申請は3年間)/0705不正受給事案の公表の基準(2026年10月12日確認)
- 雇用関係助成金共通要領Q&A(PDF・令和8年9月14日)|厚生労働省——Q19申請した書類の保存、Q25不正受給した場合の措置(一定の基準に該当した場合の公表・刑事告発)(2026年10月12日確認)
- 雇用関係助成金で設定されている「生産性要件」は2023年3月31日で廃止されます(リーフレット・PDF)|厚生労働省——廃止日と、2023年3月31日までに対象となる取組を行った場合などの経過措置(2026年10月12日確認)
- 労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます|厚生労働省——「2023(令和5)年3月31日で廃止されました」の記載と、廃止前の生産性要件の概要(2026年10月12日確認)
- 各雇用関係助成金に共通の要件等(PDF)|厚生労働省——生産性要件の廃止前に作成された旧版の資料。廃止前の生産性要件の内容(6%以上の伸び、生産性の計算式、解雇等をしていないこと)の確認に使用(2026年9月28日に原文を確認、2026年10月12日に旧版であることを確認)
- 事業主の方のための雇用関係助成金|厚生労働省——お知らせ「生産性要件は廃止になりました」(2026年10月12日確認)
- 雇用関係助成金の申請にあたって|厚生労働省——共通要領(令和8年4月8日現在)・共通の様式・生産性要件の廃止の告知・併給調整早見ツール・共通要領Q&A(2026年10月12日確認)
- トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)のご案内(リーフレット・LL080408企02)PDF|厚生労働省——トライアル雇用で雇い入れた対象者を終了後も継続雇用する場合に、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コースまたは生活保護受給者等雇用開発コース)の一部を受給できる場合があること(2026年10月12日確認)
補助金の採択実績800件以上(2020年以降)「補助金オタク」運営
助成金は、まず自社が対象になりそうかを知るところから。8つの質問に答える約2分の無料診断で、国と都道府県の制度から候補を確認できます。申請は提携の社会保険労務士と連携してご支援します。
2分でわかる 補助金・助成金かんたん診断(無料)LINEで制度について質問する補助金のご質問はLINEでも受け付けています。

