特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは、高年齢者・障害者・母子家庭の母などの就職困難者を、継続雇用する労働者として雇い入れた事業主に支給される助成金です。支給額は1人あたり最大240万円で、ハローワーク等の職業紹介を受けて雇い入れることが前提になります。

金額より先に確認したいのが、採用の手順です。「採用してから助成金の存在を知った」ケースは、要件をすべて満たしていても支給されません。この記事では厚生労働省の公式情報にもとづき、受けられない雇い方を先に整理し、そのあと支給額・要件・2026年(令和8年)の変更点を説明します。

  • ハローワーク等の職業紹介による雇入れが必須です。直接募集・求人サイト経由・ハローワークのオンライン自主応募は、いずれも対象外になります
  • 対象者だと知らずに雇い入れ、あとから分かった場合も対象外です
  • 支給額は対象労働者の区分と企業規模で決まり、中小企業なら60万円・120万円・240万円の3区分です(短時間労働者は40万円・80万円)
  • 令和8年5月1日以降の紹介から、高年齢者(60歳以上)の要件が見直されました
  • 令和8年4月以降の申請分は、賃金台帳の提出が確認できないと不支給になります
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の記事でわかる3つのこと:直接募集・求人サイト経由の採用が対象外になる規定、対象労働者の区分ごとの支給額(最大240万円)、令和8年の高年齢者要件の見直しと賃金台帳の提出
図解:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)で最初に押さえたい3つのポイント

まず確認:この助成金を受けられない雇い方(直接募集・求人サイト経由など)

特定求職者雇用開発助成金の対象になるのは、ハローワーク等の職業紹介による雇入れです。自社での直接募集や求人サイト経由、ハローワークのオンライン自主応募で採用した場合は対象外になります。支給額を検討する前に、自社の採用方法がこの前提を満たすかを確認してください。次の表は、採用の仕方ごとに助成対象かどうかをまとめたものです。

採用の仕方助成対象
ハローワークの職業紹介対象
地方運輸局の紹介(船員として雇い入れる場合)対象
適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者等の紹介対象(※下記の条件あり)
自社で直接募集して採用対象外
求人サイトを利用して採用対象外
ハローワークのオンライン自主応募対象外
直接募集で応募を受けた後に、形式的な職業紹介を経て受け入れた対象外

厚生労働省のQ&Aは、直接募集・求人サイト経由について「助成対象となりません」と明記しています。その理由は、「本助成金は、事業主による就職困難者の雇入れを決定するためのインセンティブとしての効果を期待した制度」だからと説明されています。

対象者だと知らずに雇い入れた場合も、同じく対象外です。Q&Aは「本助成金の対象者であることを把握せず雇い入れ、その後、助成金の対象者であることがわかりました」という問いに対し、「助成対象となりません」と回答しています。そのうえで「ハローワーク等が本助成金の対象労働者として事業主に職業紹介し、事業主も本助成金の対象労働者を雇用することを承知していることが必要です」としています。

職業紹介事業者にも条件があります。対象になるのは、特定地方公共団体、厚生労働大臣の許可を受けた有料・無料職業紹介事業者、届出を行った無料職業紹介事業者、または無料船員職業紹介事業者です。そのうち、厚生労働省職業安定局長の定める項目のいずれにも同意する旨の届出を労働局長に提出している事業者等に限られます。紹介を受ける前に、その事業者がこの助成金の取扱いを行っているか確認してください。

最初の手続きは、求人の提出です。パンフレットも「まずは求人提出が必要です」と案内しています。採用活動を始める前に、労働局またはハローワークへ相談するのが、この助成金の正しい順番です。

対象労働者と支給額:中小企業は60万円・120万円・240万円

中小企業の支給額(対象労働者別)の図解。主な項目:高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等:60万円(1年)、重度障害者等を除く身体・知的障害者:120万円(2年)、重度障害者等:240万円(3年)、短時間労働者:40万円・80万円
図解:中小企業の支給額(対象労働者別)で押さえたいポイント

特定求職者雇用開発助成金の支給額は、対象労働者の区分と企業規模で決まります。中小企業なら60万円・120万円・240万円の3区分です。次の表は区分ごとの合計助成額・助成対象期間・支給対象期ごとの支給額で、カッコ内は中小企業事業主以外(大企業)の額と期間です。

対象労働者合計助成額助成対象期間支給対象期ごとの支給額
①高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等60万円(50万円)1年(1年)30万円×2期(25万円×2期)
②重度障害者等を除く身体・知的障害者120万円(50万円)2年(1年)30万円×4期(25万円×2期)
③重度障害者等240万円(100万円)3年(1年6か月)40万円×6期(33万円×3期。※第3期は34万円)

短時間労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の者)は、次の表の額になります。

対象労働者(短時間)合計助成額助成対象期間支給対象期ごとの支給額
④高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等40万円(30万円)1年(1年)20万円×2期(15万円×2期)
⑤重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者80万円(30万円)2年(1年)20万円×4期(15万円×2期)

「重度障害者等」とは、重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者および精神障害者のことです。

①の区分は「高年齢者・母子家庭の母」だけではありません。パンフレットは、父子家庭の父、中国残留邦人等永住帰国者、北朝鮮帰国被害者等、アイヌの人々、ウクライナ避難民、補完的保護対象者なども対象になると挙げています。自社の採用予定者が該当しないか、ハローワークで確認してみてください。

年齢の上限も確認しておきます。対象になるのは、採用日時点の満年齢が65歳未満の方のみです。ただし①の「高年齢者(60歳以上)」は、65歳以上の方も助成対象になります。

支給額が減る・支給されない場合

  • 対象労働者が支給対象期の途中に離職した場合、当該支給対象期については原則として支給を受けられません
  • 所定労働時間より著しく実労働時間が短い場合や、週当たりの賃金額が「最低賃金×30時間」を下回る場合は、支給額が減額されることがあります
  • 支給対象期ごとの支給額は、その期に対象労働者が行った労働に対して支払った賃金額が上限です
  • 最低賃金の減額の特例の許可を受けている場合は、支払った賃金に助成率を乗じた額(表の額を上限)になります。助成率は重度障害者等以外が1/3(中小企業事業主以外1/4)、重度障害者等が1/2(同1/3)です

2026年(令和8年)の2つの変更点:高年齢者の要件見直しと賃金台帳の提出

特定求職者雇用開発助成金では、2026年(令和8年)に2つの変更がありました。令和8年5月1日以降の紹介から高年齢者(60歳以上)の要件が見直され、令和8年4月1日以降の申請分から賃金台帳の提出が確認できない場合は不支給になります。

①高年齢者(60歳以上)の要件見直し(令和8年5月1日以降の紹介から)

見直し前後の要件を並べると、次のとおりです。

令和8年5月1日より前に紹介された場合令和8年5月1日以降に紹介された場合
要件雇入れ時の年齢が60歳以上の者であること雇入れ時の年齢が60歳以上の者であることに加え、紹介日においてハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けていること

厚生労働省は「原則、『特定求職者雇用開発助成金の対象労働者であること』を明示した職業紹介を行った場合のみ、支給申請を行うことが可能となります」としています。60歳以上というだけでは対象にならなくなった点が、実務上の変更です。

②賃金台帳の提出(令和8年4月1日以降の申請分から)

令和8年4月以降の申請分は、添付書類として賃金台帳の提出が確認できない場合、不支給となります。厚生労働省は「書類の不備、添付書類の不足がある場合は受理できません」とも注意しています。労働基準法で賃金台帳の記入事項として定められている項目は、厚生労働省が様式例を公開しています。

助成対象となる雇用形態:有期は「自動更新」に限られる

特定求職者雇用開発助成金の対象になるのは、正規雇用、無期雇用、有期雇用(自動更新)として採用する場合です。

有期雇用で特に確認したいのが、「自動更新」の定義です。パンフレットは「対象労働者が望む限り更新できる契約」の場合のみ助成対象としています。そのうえで「勤務成績等により更新の有無を判断する場合等は助成対象となりません」と明記しています。一般的な有期契約の更新条項では、要件を満たさないことがあります。

あわせて、雇入れ時点で継続雇用が確実であると認められることも必要です。ここでいう継続雇用とは、対象労働者を65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ当該雇用期間が継続して2年以上であることをいいます。

そのほかの主な支給要件:事業主と対象労働者

ここまでの要件に加えて、事業主と対象労働者のそれぞれに支給要件があります。事業主側の解雇・離職者数の要件は、採用日の前後6か月間が確認の対象です。

事業主に関する要件

  • 雇用保険の適用事業主であること
  • 対象労働者の賃金を支払っていること
  • 労働保険料を滞納していないこと
  • 採用日前後6か月間に事業主都合による解雇(勧奨退職を含む)をしていないこと
  • 採用日前後6か月間に、倒産や解雇など特定受給資格者となる理由で離職した被保険者の数が、対象労働者の採用日における被保険者数の6%を超えていないこと(特定受給資格者となる離職者が3人以下の場合を除く)
  • 対象労働者の雇入れ日よりも前に本コース等の支給決定がなされた者を、支給申請日の前日から過去3年間に、その助成対象期間中に事業主の都合により解雇・雇止め等をしていないこと
  • 高年齢者雇用確保措置を講じていないことにより、高年齢者雇用安定法第10条第2項に基づく雇用確保措置の勧告を受けていないこと(適切な高年齢者就業確保措置を講じていないことにより第10条の3第2項に基づく勧告を受けた場合も同様)。いずれも支給要領0205で不支給とされています。高年齢者を雇い入れる事業主は、特に確認してください

雇用関係助成金すべてに共通する要件(労働保険料の納入や労働関係法令の違反など)は、雇用関係助成金に共通の要件で解説しています。

対象労働者に関する要件

  • ハローワークなどの職業紹介以前に採用に向けた選考を開始した者でないこと
  • 職業紹介時点で、在職者でないこと(重度障害者、45歳以上の障害者、精神障害者を1週間の所定労働時間が30時間以上で雇い入れる場合は、在職者であっても助成対象)
  • 採用した事業所と関係のあった者でないこと(過去3年間に事業所で就労させたことがある場合、事業主と3親等以内の親族である場合など)
  • 助成対象期間の途中などにおいて離職した労働者でないこと(労働者の責めに帰すべき理由による解雇などは除く)
  • 性風俗関連営業などを行っており、接待業務などに従事する労働者でないこと

他の助成金との関係も確認しておきます。パンフレットは「他の助成金の支給を受けている場合は、支給対象とならない場合があります」としています。キャリアアップ助成金の各コースでは、本助成金の支給を受けた(または受けようとする)労働者の扱いに個別の規定があります。併用を検討する場合は、両方の要領を突き合わせてください。

また、国・地方公共団体・行政執行法人などの機関は、支給対象とならない場合があります。これらの機関からの委託事業を実施している事業主で、対象労働者が当該委託事業に従事する場合も含みます。

支給申請の流れと期限:各支給対象期の末日の翌日から2か月以内

特定求職者雇用開発助成金は、ハローワーク等からの紹介と雇入れを経て、支給対象期ごとに支給申請します。申請期限は、各支給対象期の末日の翌日から2か月以内です。

  1. ハローワーク等からの紹介(求人提出が先です)
  2. 対象者の雇入れ
  3. 第1期の支給申請
  4. 支給申請書の内容の調査・確認
  5. 支給・不支給決定
  6. 助成金の支給

支給対象期とは、起算日から6か月ごとに区切った期間です。起算日は次のとおりです。

  • 賃金締切日が定められていない場合:雇入れ日
  • 賃金締切日が定められている場合:雇入れ日の直後の賃金締切日の翌日(ただし賃金締切日に雇い入れられた場合は雇入れ日の翌日、賃金締切日の翌日に雇い入れられた場合は雇入れ日)

支給申請期間は、各支給対象期の末日の翌日から「2か月以内」です。期限を過ぎた場合についても、Q&Aは「時間に余裕をもって書類提出の準備をしていただくようお願いいたします」と述べるにとどまり、救済の記載はありません。

主な提出書類は次のとおりです。

  • 支給申請書(様式第3号)
  • 賃金台帳等
  • 出勤簿等
  • 対象者であることを証明するための書類
  • 雇用契約書または雇入れ通知書
  • 対象労働者雇用状況等申立書(様式第5号)
  • 支給要件確認申立書

就労継続支援A型事業所が利用する場合の特則

就労継続支援A型事業所が対象労働者をサービス利用者として雇い入れる場合は、離職割合による不支給要件が別に定められています。

  • 雇入れ日より前に本コースの支給決定の対象となった者のうち、雇入れ日から1年を経過する日(確認日A)が基準期間内にある者が5人以上いる場合です。それらの者が確認日Aの時点で離職している割合が25%を超えているときは、助成対象になりません
  • 同じく、助成対象期間の末日の翌日から1年を経過する日(確認日B)が基準期間内にある者が5人以上いる場合で、離職割合が25%を超えているときも助成対象になりません

基準期間は、対象労働者の雇入れ日の前後6か月間です。この離職割合には、原則として理由を問わずすべての離職が含まれます。ただし、次のような離職は除かれます。

  • 天災その他やむを得ない理由による解雇
  • 同一事業所に継続して2年以上(助成対象期間が3年の者は3年以上)雇用され、65歳以上の年齢で離職した者
  • A型事業所の支援を受けた一般就労への移行による離職 など

よくある質問

Q. ハローワークの求人に応募してきた人を採用しました。オンライン自主応募でしたが対象になりますか?

いいえ、対象になりません。厚生労働省のQ&Aは「ハローワークのオンライン自主応募の場合も助成対象となりません」と明記しています。対象になるのは職業紹介による雇入れです。

Q. 試用期間を設けている場合も対象になりますか?

試用期間があるだけで、直ちに対象外になるわけではありません。Q&Aは「試用期間を設けていることをもって、直ちに助成対象外となるものではありません」としています。ただし「第1期支給対象期間に係る支給申請時において試用期間が継続している場合や、試用期間と本採用後において雇用契約が別である場合などは、助成対象外となります」と条件が付いています。

Q. 60歳以上の方を採用すれば対象になりますか?

令和8年5月1日以降に紹介された場合、年齢だけでは要件を満たしません。60歳以上であることに加えて、紹介日においてハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けていることが必要です。

Q. 有期雇用で採用する予定ですが対象になりますか?

「対象労働者が望む限り更新できる契約」(自動更新)の場合のみ対象です。勤務成績等により更新の有無を判断する契約は対象になりません。あわせて、65歳以上に達するまで継続して雇用し、その雇用期間が継続して2年以上であることが確実と認められる必要があります。

Q. 半年前に希望退職を募集しました。影響はありますか?

影響する場合があります。支給要件に「採用日前後6か月間に事業主都合による解雇(勧奨退職を含む)をしていないこと」があるためです。影響するかは、希望退職に応じた方の離職日が採用日の前後6か月間に入るかと、その離職が事業主都合の離職として扱われたかで決まります。支給要領は、ここでいう「解雇等」を、雇用保険の資格喪失の確認で喪失原因「3」(事業主の都合による離職)と判断されるものとしています。また、同じ期間に特定受給資格者となる理由で離職した被保険者の数が、対象労働者の採用日における被保険者数の6%を超えていないことも要件です(離職者が3人以下の場合を除く)。採用を決める前に、離職者の離職日と離職理由の扱いを労働局・ハローワークに確認してください。

Q. トライアル雇用から継続雇用した場合はどうなりますか?

本助成金の一部を受給できる場合があります。パンフレットは「トライアル雇用助成金を活用し雇い入れた対象者(母子家庭の母等、父子家庭の父、中国残留邦人等永住帰国者及び障害者)をトライアル雇用終了後も引き続き継続して雇用する場合、本助成金の一部を受給できる場合があります」としています。具体的な取扱いは労働局・ハローワークに確認してください。トライアル雇用助成金そのものの要件(実施計画書は開始日から2週間以内、支給申請は終了日の翌日から2か月以内)はトライアル雇用助成金で解説しています。

まとめ:採用活動を始める前に相談する

  • ハローワーク等の職業紹介が必須です。直接募集・求人サイト・オンライン自主応募は、いずれも対象外です
  • 対象者だと知らずに雇い入れた場合も対象外です。事業主が対象労働者だと承知していることが必要です
  • 中小企業の支給額は60万円・120万円・240万円の3区分です(短時間は40万円・80万円)
  • 令和8年5月1日以降の紹介から、高年齢者は「就労に向けた個別支援を受けていること」が追加されました
  • 令和8年4月以降の申請分は、賃金台帳の提出がないと不支給です
  • 有期雇用は「対象労働者が望む限り更新できる契約」に限られます

雇用系の助成金は申請の順番を誤ると受けられません。自社が使える制度の整理は補助金かんたん診断やLINEでの無料相談をご利用ください。関連する制度はキャリアアップ助成金とは、65歳超雇用推進助成金とは、人材開発支援助成金とはでも解説しています。

参考(一次情報)