新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の補助対象経費は、機械装置・システム構築費を中心とした最大12区分です。内訳は、グローバル枠12区分・新事業進出枠10区分・革新的新製品・サービス枠9区分です。何でも補助されるわけではなく、区分ごとに細かい条件と上限があり、申請枠によって使える区分も異なります。

  • 革新的新製品・サービス枠は機械装置・システム構築費が必須です。新事業進出枠・グローバル枠は、機械装置・システム構築費か建物費のいずれかが必須です
  • パソコン・車両・自社人件費・家賃など、定番の「対象外経費」が公募要領に列挙されています
  • 採択されても、応募時に計上した経費がすべて認められるわけではありません。交付審査・実績報告の段階で経費区分に該当しないと判断されると、その経費は補助対象外になります

制度全体(3つの枠・補助率・上限額・対象者)は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の解説記事で解説しています。この記事では、どの経費が・いくらまで・どんな条件で補助対象になるかに絞って説明します。

なお、経費を積み上げる前に、申請できるかどうかの確認が先です。事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金の受給歴があると、対象外になる場合があります。該当するのは、申請締切日起点で16か月以内の採択・実施中や、過去3年間に交付決定合計2回以上の場合です。詳しくは制度全体の解説記事の「対象外になる事業者」を先にご確認ください。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の対象経費の記事でわかる3つのこと:枠ごとに使える経費区分と、必ず計上する経費、パソコン・車両・人件費など計上できない経費、外注費1/4・専門家経費1/5など区分ごとの上限
図解:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の対象経費で最初に押さえたい3つのポイント

まず確認したい対象外経費:パソコン・車両・人件費など

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、事務用パソコンや車両、自社の人件費などは補助対象外です。公募要領1-6-2は、対象外経費を明文で列挙しています。経費を積み上げる前に、まず「入れられないもの」を押さえておくと手戻りがありません。当社がご相談を受けるなかでも、見積書に紛れ込みやすいのは次のような経費です。

  • 汎用性があり目的外使用になり得るもの:事務用パソコン、プリンタ、タブレット端末、スマートフォン、文書作成ソフトウェア、デジタル複合機、カメラ、書籍、家具家電等の購入費・レンタル費
  • 車両・船舶・航空機:自動車等車両(税法上の車両及び運搬具に該当しないものを除く)の購入費・修理費・車検費用・内装費
  • 自社の人件費・旅費(グローバル枠の海外旅費を除く)
  • 事務所等の家賃・保証金・敷金・仲介手数料・水道光熱費
  • 既存事業に活用する経費、既存事業と補助事業で共用される経費(「専ら補助事業のために使用される」が大原則です)
  • 不動産の購入費、構築物の購入費(建物費に付随する構築物は除く)、簡易建物(ビニールハウス・コンテナ・ドームハウス等)の購入費、株式の購入費
  • 消費税等の公租公課(経費は税抜きで考えます)、収入印紙、振込手数料、各種保険料、支払利息
  • 税務申告・決算書作成のための税理士・公認会計士費用、訴訟等の弁護士費用、登記・特許等の官公庁手数料
  • 事業計画書・申請書・報告書等の作成・提出に係る費用(申請代行費用も対象外です)
  • 再生可能エネルギーの発電を行うための発電設備と、その設備と一体不可分の附属設備(太陽光発電を行うためのソーラーパネル等)
  • 申請者と同一の代表者・役員が含まれる事業者、みなし同一事業者、資本関係がある事業者への支払い。同一事業者の部署間の支払い(社内発注・社内製造を含む)も対象外です
  • 経済産業省または中小機構から補助金交付等停止措置・指名停止措置を受けている事業者への支払い(停止措置期間外の発注を除く)
  • このほか、市場価格とかい離しているものや、公的な資金の用途として社会通念上不適切と認められる経費は、包括的に対象外です

再生可能エネルギーの設備は、FIT・FIPに関連して売電を行っている場合、関連費用が一切対象外です。蓄電池が対象になるのは、原文で「売電を行わない事業において、BCP等で法令上義務付けられている等、補助事業実施に必要不可欠と判断される場合においてのみ」とされています。「停電に備えたい」だけでは足りない可能性があります。計上を考える場合は、必要不可欠といえる根拠(法令上の義務付け等)を整理し、申請前に事務局へ確認してください。太陽光発電・蓄電池に使える補助金は、太陽光発電・蓄電池の補助金で解説しています。

さらに、計上した経費の大半が対象外だった場合は、経費の削除だけでは済まず、不採択・採択取消・交付決定取消になると明記されています。「とりあえず盛って、削られたら削られたで」という積み方は、この制度ではリスクが大きくなります。

また、間接・直接を問わず、国(独立行政法人等を含む)の他の制度で既に受給の対象となっている経費は計上できません。他の補助金との関係は、デジタル化・AI導入補助金との使い分け記事も参考にしてください。

枠別の必須経費:機械装置・システム構築費か建物費

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は設備投資等の支援が目的のため、事業化に必要不可欠な事業資産(有形・無形)が補助対象経費に含まれている必要があります。申請枠ごとの必須の経費区分は、次の表のとおりです。

申請枠必須の経費区分
革新的新製品・サービス枠機械装置・システム構築費(必須)
新事業進出枠機械装置・システム構築費 または 建物費
グローバル枠機械装置・システム構築費 または 建物費

建物費を使えるのは新事業進出枠とグローバル枠のみです。また、一過性の支出と認められる支出が補助対象経費の大半を占める場合は、支援対象になりません。

経費区分の一覧【枠別対応表】

経費区分ごとの上限の図解。主な項目:技術導入費・知的財産権等関連経費:補助対象経費総額の1/3まで、外注費は総額の1/4まで、専門家経費は1/5まで、広告宣伝・販売促進費:1年あたりの補助事業売上見込み額の5%まで、海外旅費・通訳翻訳費はグローバル枠のみ(通訳・翻訳費は30万円まで)
図解:経費区分ごとの上限で押さえたいポイント

経費区分ごとに、使える枠と区分ごとの上限をまとめると次の表のとおりです(◎は必須、○は計上可、×は対象外)。

経費区分革新枠新事業進出枠グローバル枠区分ごとの上限
機械装置・システム構築費◎必須○(建物費と択一必須)○(建物費と択一必須)—
建物費×○○—
運搬費○○○—
技術導入費○○○補助対象経費総額(税抜)の1/3
知的財産権等関連経費○○○同1/3
外注費○○○同1/4
専門家経費○○○同1/5
クラウドサービス利用費○○○—
原材料費○○○—
広告宣伝・販売促進費○○○事業計画期間1年あたりの補助事業売上高見込み額(税抜)の5%
海外旅費××○補助対象経費総額(税抜)の1/5
通訳・翻訳費××○30万円(税抜)

(出典:第1回公募要領1-2・1-6。革新枠=革新的新製品・サービス枠)

経費区分ごとの条件と注意点

主要な経費区分には、それぞれ固有の条件があります。計上する前に、区分ごとの条件を確認してください。

機械装置・システム構築費

  • 対象は「専ら補助事業のために使用される」機械装置、工具・器具、専用ソフトウェア・情報システム等の購入・製作・構築・借用と、それと一体の改良・据付け・運搬です
  • 単価10万円(税抜き)以上のものが対象です
  • 耐用年数省令の「機械及び装置」「器具及び備品」「工具」が対象で、「船舶」「航空機」「車両及び運搬具」は対象外です
  • 既存の機械装置・システム等の単なる置き換えは対象外です
  • 中古設備は、3者以上の古物商許可を持つ中古品流通事業者から、型式・年式が記載された相見積もりを取得している場合に対象になります
  • リース・レンタルは、交付決定後の契約が確認できるもので、補助事業実施期間分のみが対象です(期間を超える契約は按分)。リース会社への補助金交付を受けたい場合は、後述の共同申請を使います
  • 100万円(税抜き)以上のシステム構築費は、実績報告時に要件定義書(費用見積書を含む)または開発費用算出資料の提出が必要です
  • 据付けは「軽微なもの」に限られ、設置場所の整備工事や基礎工事の費用は含められません

建物費(新事業進出枠・グローバル枠のみ)

  • 対象は、補助事業のために使用される生産施設・加工施設・販売施設等の建設・改修です。建物の単なる購入や賃貸は対象外です
  • 建物の撤去費は、建設・改修の経費と併せて計上する場合のみ対象です(撤去費だけの計上は不可)
  • 建物に付随する構築物は、その建物に付属・隣接して一体的に使用され、建物より耐用年数が短いものだけが対象です
  • 入札または相見積もりが必要です
  • 補助事業で取得した建物を不動産賃貸等に転用することは、一切認められません。転用した場合は、残存簿価相当額等の国庫返納が必要になります

外注費・技術導入費・専門家経費の切り分け

外注費・技術導入費・専門家経費の3区分は、内容が紛れやすい区分です。しかも、支出先に同一の事業者(みなし同一事業者を含む)を重複して含めることができません。依頼内容ごとの計上先は次のとおりです。

  • 検査・加工・設計等の一部を外注するなら、外注費です(総額の1/4まで)。書面契約と、事業計画書への外注先の概要・選定理由の記載が必要です
  • 知的財産権等の導入は、技術導入費です(1/3まで。書面契約が必要)
  • 開発成果の事業化に伴う特許権等の取得手続き(弁理士への手続代行費用・外国出願の翻訳料等)は、知的財産権等関連経費です(1/3まで)
  • 技術指導や助言は、専門家経費です(1/5まで)
  • 機械装置・システム等の製作の外注は、外注費ではなく機械装置・システム構築費に計上します

知的財産権等関連経費では、日本の特許庁に納付する出願料・審査請求料・特許料等や、拒絶査定に対する審判請求・訴訟の費用は対象外です。開発成果に係る発明等でない場合や、補助事業実施期間内に出願手続きを完了していない場合も対象外です。一方、国際規格認証の取得費用は対象になります。

専門家経費は、補助事業の遂行に専門家の技術指導や助言が必要不可欠な場合が対象です。事業計画書には、専門家の概略・略歴と、技術指導や助言が必要不可欠である理由を具体的に書く必要があります(交付審査で必要性が認められないと対象外になる場合があります)。金額は「謝金単価に応じるか、依頼内容に応じた価格の妥当性を証明する複数の見積書を取得することが必要(ただし、1日1人につき5万円が上限)」です。謝金単価は次の3段階です。

  • 大学教授・弁護士・弁理士・公認会計士・医師:1日5万円以下
  • 准教授・技術士・中小企業診断士・ITコーディネータ:1日4万円以下
  • それ以外:1日2万円以下

単価表によらずに依頼する場合、見積書が1通だけではこの要件を満たしません。なお、事業計画書の作成支援者への経費は専門家経費の対象外です。

外注費では、外部に販売・レンタルするための量産品の加工や、申請者自身が行うべき手続きの代行は対象外です。一方、開発した製品・サービスのペネトレーションテストや脆弱性診断の外注費は対象になります(市販のウイルスソフト購入費は対象外)。

広告宣伝・販売促進費

  • 補助事業で製造・提供する製品等の広告作成・媒体掲載、PR用ウェブサイト構築、展示会出展等が対象です
  • 上限は「事業計画期間内の補助事業売上見込み額合計÷事業計画年数×5%」で計算します
  • 金額にかかわらず、複数者からの見積もりと、価格の妥当性を確認できる証憑が必要です
  • 100万円(税抜き)以上のウェブサイト構築費を計上する場合は、実績報告時に開発費用算出資料(作業単価・工数・担当者勤務記録等)の提出が必要です
  • 補助事業実施期間内に、広告が使用・掲載されること(ウェブサイトなら公開、展示会なら開催)が必要です。実績報告時には、成果物の写真等をすべて提出します
  • 自社の他製品や会社全体のPR広告は対象外です

クラウドサービス利用費・原材料費

  • クラウドは「専ら補助事業のために利用する」ものだけが対象で、自社の他事業と共有する場合は対象外です。サーバー購入費・サーバー自体のレンタル費も対象外です
  • クラウドの付帯経費として、ルータ使用料・プロバイダ契約料・通信料等は対象になります。ただし、パソコン・タブレット・スマートフォンの本体費用は対象外です
  • 原材料費は試作品開発用で、補助事業実施期間終了日までに使い切ることが原則です。未使用残存品は対象外で、受払簿の作成と仕損じ品等の保管(写真代用可)が必要です

採択後も経費は交付審査・実績報告で精査される

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、採択されても、応募時に計上した経費がすべて補助対象として認められるわけではありません。公募要領は、交付審査や実績報告時に経費区分に該当しないと判断される経費は補助対象外になると明記しています。実務では、次の4点を押さえてください。

  • 交付申請で経費を精査され、減額されます。減額で補助下限額(革新的新製品・サービス枠100万円、新事業進出枠・グローバル枠750万円)を下回ると採択取消になります(全額対象外の場合も同様)。交付決定額は採択時点の申請額を上回れず、応募時に計上していない経費を交付申請で新たに計上することもできません。下限ぎりぎりの計画では、対象外経費が混ざって減額されると、採択取消につながりかねません(公募要領 4-1「補助金の減額」)
  • 支払いは銀行振込が前提です。現金・手形・相殺・代引・ファクタリング等は対象外とされています(公募要領 4-1「支払い」。詳細は原文を確認してください)
  • 発注・契約は交付決定後が原則です(詳細は制度全体の解説記事のFAQを参照)
  • 証拠書類(見積書・契約書・要件定義書・受払簿・成果物写真等)の要求は、経費区分ごとに違います。計上する段階から、実績報告に必要な書類を逆算しておいてください。当社に寄せられるご相談でも、採択後に書類の不備で経費を落とす事例は決して珍しくありません

交付決定後の実績報告・確定検査の進め方は、交付決定後にやることで解説しています。

リース会社との共同申請

機械装置・システム構築費については、中小企業等とリース会社の共同申請により、リース会社に補助金を交付する方式が使えます。主な条件は次のとおりです。

  • 中小企業等が支払うリース料から、補助金相当分が減額されることが条件です。公益社団法人リース事業協会が確認した「リース料軽減計算書」の提出が必要です
  • 対象はファイナンス・リース取引のみで、リース会社は1つの共同申請につき1社です
  • 補助対象はリース会社が販売元に支払う購入費用で、中小企業等が支払うリース料そのものは補助対象外です
  • リース期間は、原則として処分制限期間を含むように設定する必要があります
  • リース会社からの発注・支払い先の選定では、相見積もりの取得を条件に、申請者と資本関係のある事業者等への支払いが例外的に認められています
  • 共同申請した中小企業等が、交付決定取消や補助対象要件の未達成で補助金返還の対象になった場合は、リース会社に交付済みの補助金もリース会社から返還を求められます
  • セール&リースバック取引・転リース取引は対象外です
  • 割賦契約はリースに含まれません。また、建物の取得でリース会社を利用する場合、建物取得費は補助対象になりません

よくある質問

Q. パソコンやタブレットは補助対象になりますか?

いいえ、事務用パソコン・タブレット・スマートフォンなど、汎用性があり目的外使用になり得るものは対象外です。購入費もレンタル費も対象外と明記されています。一方、専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの構築費や、専用の機械装置に組み込まれる制御用機器は、機械装置・システム構築費として対象になり得ます。判断に迷う機器は、用途と設置場所を整理したうえで事務局に確認してください。

Q. 消費税は補助対象に含まれますか?

いいえ、含まれません。消費税等の公租公課は対象外経費で、単価基準(機械装置10万円以上等)や区分上限も、すべて税抜きで判定されます。

Q. 建物を購入して新事業の店舗にする費用は対象になりますか?

いいえ、なりません。建物費の対象は建設・改修で、建物の単なる購入や賃貸は対象外です。また、建物費を使えるのは新事業進出枠・グローバル枠のみで、革新的新製品・サービス枠では計上できません。

Q. 従業員が開発作業をする分の人件費は計上できますか?

いいえ、できません。事業に係る自社の人件費・旅費は、対象外経費に列挙されています(グローバル枠の海外旅費のみ例外的に区分があります)。人件費への助成が必要な場合は、研修なら人材開発支援助成金など、雇用系助成金の検討になります。

Q. 対象経費のルールは「ものづくり補助金」時代と同じですか?

経費ルールの基準になるのは、本補助金の公募要領だけです。本補助金は2026年に始まった制度です。旧制度の解説記事やまとめサイトの情報で判断せず、必ず最新の公募要領1-6を確認してください。この記事は、第1回公募要領(1.3版・2026年9月28日改訂)にもとづいています。1.3版の改訂は賃上げ要件・賃上げ特例・補助対象者・添付書類の説明の補記や修正で、経費の章(1-6)は改訂対象に入っていません。

まとめ

  • 経費区分は最大12です。革新枠は機械装置・システム構築費が必須で、新事業進出枠・グローバル枠は機械装置か建物費のいずれかが必須です
  • 区分ごとに上限があります。技術導入費1/3・知財関連1/3・外注費1/4・専門家経費1/5・広告宣伝費は売上見込みの5%などです
  • パソコン・車両・自社人件費・家賃・消費税・申請代行費用などの対象外経費が、公募要領に明文で列挙されています
  • 採択されても経費が全額認められるとは限りません。交付審査・実績報告から逆算した経費計上と、証拠書類の準備が必要です

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参考(一次情報)