「新事業進出補助金」も「ものづくり補助金」も、検索するとどちらも名前が出てくるのに中身がよくわからない——そんな声をよく聞きます。結論から言うと、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」は、新事業進出補助金の後継として2026年に新しく始まった大型補助金です。名称に「ものづくり・商業・サービス」を含みますが、従来のものづくり補助金の締切回は別途継続しています(詳しくは次章)。

まず要点を5行で:

  • 新製品・新サービス開発や新市場進出・海外展開への設備投資を、最大7,000万円(賃上げ特例適用で最大9,000万円)まで補助
  • 3つの申請枠があり、枠によって補助率・上限額・計上できる経費建物費は革新枠では使えない)が異なる
  • 基本要件は付加価値額などの数値3要件だけでなく、一般事業主行動計画の公表・子育て支援の取り組み・金融機関の確認書を含む6つ
  • 事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金の受給歴があると、申請できない場合がある対象外規定を最初に確認)
  • 第1回公募の申請締切は令和8年(2026年)10月30日(金)18:00。事業計画書は申請者自身の作成が必須で、口頭審査も本人対応のみ

自社が対象になるか分からない場合は、LINEで無料相談からお気軽にどうぞ。当サイトには募集中の補助金・助成金を355件掲載しています(毎週自動更新)。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは(旧「新事業進出補助金」「ものづくり補助金」との関係)

この補助金の事業目的は、公募要領で次のように定められています。

中小企業等が行う、技術的革新性のある製品・サービスの開発や既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制の強化を後押しすることで、中小企業等が企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげていくことを目的とします。

運営は独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)です。旧・単独制度だった「新事業進出補助金(中小企業新事業進出促進補助金)」は公募を終了しており、公式サイトでも「公募は終了いたしました」「新規の受付は『新事業進出・ものづくり商業サービス補助金』まで」と案内されています。一方、「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」は本稿執筆時点で従来どおり別途の締切回(22次・23次等)が続いており、両制度が完全に一本化されたわけではありません。「新事業進出補助金」「ものづくり補助金」のどちらで検索してこの記事にたどり着いた場合も、2026年に新規で申請できる大型補助金としてはこの「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」を確認するのが近道です。

なお、公募要領は公表後に改訂が重ねられており、2026年8月時点の最新は1.2版(2026年8月14日改訂)です。1.1版(2026年7月17日改訂)で公募期間が変更され、1.2版で加点項目が追加されました(詳細はスケジュール加点項目の章で解説します)。公募開始直後に書かれた解説記事には改訂前の情報が残っていることがあるため、日付や項目数は必ず最新版の公募要領で確認してください。

対象外になる事業者:他の大型補助金の受給歴に注意

枠や金額を見る前に、まずこの規定を確認してください。 公募要領は「補助対象外となる事業者」を34項目にわたって定めており、特に見落としやすいのが次の3点です。

  1. 申請締切日を起点にして16か月以内に、「事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進補助金)」「新事業進出補助金(中小企業新事業進出促進補助金)」「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業)」「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」のいずれかで補助金交付候補者として採択された事業者(採択を辞退した事業者を除く)、または申請締切日時点でこれらの交付決定を受けて補助事業実施中の事業者は対象外です。なお、これらの補助金に同時期に応募すること自体は可能ですが、複数採択された場合は交付を受ける補助金を1つだけ選ぶ必要があります
  2. 応募申請日を起点にして過去3年間に、「事業再構築補助金」「新事業進出補助金」「ものづくり補助金」の交付決定を合計で2回以上受けた事業者は対象外です
  3. 応募申請時点で従業員数が0名の事業者は対象外です。また、新規設立・創業後1年に満たない事業者は「新事業進出枠」に限り対象外です(最低1期分の決算書の提出が必要なため)

このほか、みなし大企業(発行済株式の2分の1以上を同一の大企業が所有している場合など)、直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者、法人格のない任意団体、宗教法人・政治団体なども対象外と定められています。過去に類似の大型補助金を利用したことがある事業者は、申請を検討する前にこの受給歴の条件を必ず確認してください。

期間制限の起点は「申請締切日」(16か月ルール)と「応募申請日」(過去3年・2回ルール)で異なります。交付決定日・採択日がどちらの期間に掛かるかで結論が変わるため、判定に迷う場合は公募要領の「補助対象外となる事業者」の項を原文で確認するか、LINEで無料相談にお問い合わせください。

3つの申請枠と補助率・補助上限額【比較表】

第1回公募要領では、「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3枠があります。上限額は従業員数の区分ごとに細かく分かれているため、自社の従業員数の行を確認してください(括弧内は賃上げ特例適用時の上限額、補助率の括弧内は地域別最低賃金引上げ特例適用時の率)。

革新的新製品・サービス枠(既存製品・サービスの改善ではなく、新製品・新サービス開発が対象。補助下限100万円)

従業員数補助上限額
1〜5人750万円(850万円)
6〜20人1,000万円(1,250万円)
21〜50人1,500万円(2,500万円)
51人以上2,500万円(3,500万円)

補助率:中小企業者 1/2(2/3)、小規模企業・小規模事業者・再生事業者 2/3。補助事業実施期間は交付決定日から10か月以内(ただし採択発表日から12か月以内)。

新事業進出枠(既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出が対象。補助下限750万円)

従業員数補助上限額
1〜20人2,500万円(3,000万円)
21〜50人4,000万円(5,000万円)
51〜100人5,500万円(7,000万円)
101人以上7,000万円(9,000万円)

補助率:中小企業者(小規模企業・小規模事業者・再生事業者含む)1/2(2/3)。補助事業実施期間は交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内)。

グローバル枠(海外市場開拓〈輸出〉に向けた国内製造等拠点の強化が対象。取引先主導の事業は対象外。補助下限750万円)

上限額は新事業進出枠と同じ表(1〜20人2,500万円〜101人以上7,000万円、賃上げ特例で3,000万円〜9,000万円)です。補助率は中小企業者(小規模企業・小規模事業者・再生事業者含む)2/3(地域別最低賃金引上げ特例は適用できません)。補助事業実施期間は交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内)。

3枠に共通する注意点として、「革新的新製品・サービス枠」は既存の製品・サービスの生産等のプロセスについて改善・向上を図る事業は補助対象外とされ、「新事業進出枠」は既存の製品等の製造量・提供量を増大させるだけの場合、過去に製造していた製品の再製造・製法変更のみ・商圏だけが違う場合などが【新事業進出枠に該当しない例】として公募要領に具体的に列挙されています。自社の計画がどちらの枠の要件に当てはまるかは、この「該当しない例」との照合が実務上のポイントです。

もう1つ、枠選びで見落とされがちなのが経費面の制約です。建物の建設・改修に投資したい場合、革新的新製品・サービス枠では建物費が経費区分に含まれていないため選べません。詳しくは補助対象経費の章で解説します。

対象者:中小企業者・小規模企業者の定義

対象者は、日本国内に本社および補助事業実施場所を有する中小企業者・小規模企業者/小規模事業者・特定事業者の一部などです。中小企業者の基準(会社又は個人が下表の資本金または常勤従業員数以下)は次のとおりです。

業種資本金常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業3億円300人
ゴム製品製造業(自動車・航空機用タイヤ等の一部を除く)3億円900人
卸売業1億円100人
サービス業(ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く)5,000万円100人
小売業5,000万円50人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業3億円300人
旅館業5,000万円200人
その他の業種3億円300人

中小企業者は、資本金・常勤従業員数のいずれか一方が上表の基準以下であれば対象になります。

小規模企業者・小規模事業者は常勤従業員数が製造業20人・商業サービス業5人(宿泊業・娯楽業は20人)以下の会社又は個人です。こちらは常勤従業員数のみで判定し、資本金の基準はありません。

基本要件は6つ:数値3要件+見落としやすい3要件

どの枠で申請する場合も、公募要領の基本要件をすべて満たす必要があります。数値目標の3要件だけを紹介する解説が多いのですが、第1回公募要領の基本要件は6つです。後半の3つ(ワークライフバランス・子育て等職場環境整備・金融機関)は申請直前に気づくと間に合わないことがあるため、早めに確認してください。

(1)〜(3)数値3要件:付加価値額・給与支給総額・事業場内最低賃金

3〜5年の事業計画で次の3つを満たす計画を立てます。未達成の場合は補助金の返還を求められる規定になっているため、達成できる見込みの目標値を設定することが重要です。

要件内容(要約)未達成時の扱い
付加価値額要件補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、付加価値額の年平均成長率が4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定し、これを達成すること
賃上げ要件(一人当たり給与支給総額)補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、一人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加する見込みの事業計画を策定し、これを達成すること目標値の未達成率に応じて補助金の一部返還(成長率がゼロ以下なら全額返還)
事業場内最賃水準要件補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、毎年、事業場内最低賃金が補助事業実施場所都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準であること未達成の年ごとに、補助金交付額を事業計画期間の年数で除した額を返還

付加価値額は「営業利益+人件費+減価償却費」で計算します。賃上げ要件(一人当たり給与支給総額)・最賃水準要件はいずれも、付加価値額要件が増加していない場合などに限り返還が一部免除される規定がありますが、3つとも達成を前提に事業計画を立てるのが基本です。

(4)ワークライフバランス要件:一般事業主行動計画の公表

次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を、申請締切日時点で有効な状態で厚生労働省のサイト「両立支援のひろば」に公表していることが求められます。従業員100人以下の企業は本来この計画の策定が義務ではないため、「うちは関係ない」と思い込みやすいのですが、この補助金では規模にかかわらず基本要件です。単なる事前手続きではなく、満たしていなければ申請要件を欠くことになります。

策定から公表までの手続きには1〜2週間程度かかります。当社が申請サポートで最初に確認する項目の1つで、締切直前に未公表と判明して慌てるケースが実際にあります。申請を検討し始めた時点で着手してください。

(5)子育て等職場環境整備要件:3つから1つ選択(くるみん認定で免除)

従業員の子育て支援等に関する取り組みとして、公募要領が示す選択肢(ライフデザインサービスの活用/家事支援・ベビーシッター等のサービスの活用/仕事と子育ての両立支援に関する既存制度の周知・啓発)から1つを選んで取り組むことが要件です。選択肢の正確な内容と証憑は公募要領でご確認ください。

なお、プラチナくるみん・くるみん・トライくるみんのいずれかの認定を取得している事業者はこの要件が免除されます。くるみん認定は他の補助金・助成金でも加点や要件緩和に使われることが増えているので、くるみん・えるぼし認定と補助金の関係もあわせてご覧ください。

(6)金融機関要件:借入で実施するなら「金融機関による確認書」が必須

補助事業を金融機関からの借入(資金提供)を受けて実施する場合は、資金提供元の金融機関から事業計画の確認を受け、「金融機関による確認書」を提出することが要件です。自己資金のみで実施する場合はこの確認書は不要です。

実務上の注意点が2つあります。第一に、金融機関側の確認・書類発行には時間がかかることがあるため、借入を予定しているなら事業計画の粗筋ができた段階で金融機関に相談を始めることです。第二に、後述のとおり確認書を発行した金融機関には補助事業の発注ができません採択後の流れ参照)。取引関係によっては影響があるため、先に把握しておいてください。

賃上げ特例:上限引き上げの条件と「引上げ分の全額返還」

各枠の表の括弧内の金額まで補助上限が引き上がる「賃上げ特例」は、任意で選択する特例措置です。適用は無条件ではなく、通常より高い賃上げ目標の達成が条件になります。

項目通常の基本要件賃上げ特例の適用条件
一人当たり給与支給総額年平均成長率+3.5%以上さらに+2.5%(合計で年平均成長率+6.0%以上
事業場内最低賃金地域別最低賃金+30円以上さらに+20円(地域別最低賃金+50円以上

2つの注意点があります。

  • 未達成の場合、「引上げ分の補助金交付額」の全額返還を求められます。公募要領の原文は「補助金交付額のうち賃上げ特例の適用による補助上限額引上げ分の額(以下、「引上げ分の補助金交付額」という。)の全額の返還を求めます」であり、返還の範囲は特例で上乗せされた部分です(補助金全体の全額返還ではありません)。とはいえ数百万円〜数千万円規模になり得るため、達成可能性は慎重に見積もってください
  • 各枠の(通常の)補助上限額に達しない場合は適用できません。 たとえば投資規模が小さく通常上限まで補助額が届かない計画では、特例を使う余地がそもそもありません。「上限まで使い切る投資計画かどうか」を先に確認するのが検討の順番です

当社の実務感覚では、賃上げ特例は「もともと高い賃上げを計画していた会社が上乗せを取りにいく」ための制度で、補助額を増やす目的で後から賃上げ目標を積み増すのは本末転倒です。年平均+6.0%の給与総額成長は5年続けると3割超の引き上げに相当します。返還リスクとセットで判断してください。

なお、各枠の補助率の括弧内に示した地域別最低賃金引上げ特例は、上の賃上げ特例(補助上限額の引き上げ)とは別に、補助率を引き上げる特例です。2024年10月〜2025年9月の間、地域別最低賃金以上〜2025年度改定の地域別最低賃金未満の水準で雇用している従業員が全従業員数の30%以上である月が3か月以上ある場合に適用でき、グローバル枠と、革新的新製品・サービス枠の小規模企業者等には適用されません。

補助対象経費:経費区分と費目ごとの上限【一覧表】

補助対象になる経費は公募要領で区分が決められており、区分にない経費は原則対象外です。さらに「枠によって使えない区分がある」「必ず計上しなければならない区分がある」「費目ごとに比率上限がある」という3層のルールがあり、ここを押さえずに事業計画を作ると経費の組み立てからやり直しになります。

枠ごとの必須経費:枠選びに直結するルール

  • 革新的新製品・サービス枠:機械装置・システム構築費の計上が必須です。また、この枠の経費区分に建物費は含まれていません
  • 新事業進出枠・グローバル枠:公募要領の原文どおり「機械装置・システム構築費又は建物費のいずれかが必ず補助対象経費に含まれていなければなりません」

つまり、店舗・工場の建設や大規模改修を伴う計画なら新事業進出枠またはグローバル枠、機械・システム中心の開発投資なら革新枠、という切り分けが経費面から先に決まることがあります。当社では枠の検討時に「何にいくら使うか」の経費リストを先に作ってもらい、必須経費・使えない経費の観点で枠を絞り込む進め方を勧めています。

経費区分と上限の一覧

経費区分上限・主な条件
機械装置・システム構築費単価10万円(税抜)以上のものが対象。船舶・航空機・車両運搬具は対象外
建物費新事業進出枠・グローバル枠のみ(革新枠は対象外)
運搬費運搬料・宅配・郵送料等(購入する機械装置等の運搬料は機械装置・システム構築費に計上)
技術導入費補助対象経費総額(税抜)の1/3が上限
知的財産権等関連経費補助対象経費総額(税抜)の1/3が上限
外注費補助対象経費総額(税抜)の1/4が上限
専門家経費補助対象経費総額(税抜)の1/5が上限。専門家謝金は1日1人5万円まで
クラウドサービス利用費対象条件の詳細は公募要領を参照
原材料費対象条件の詳細は公募要領を参照
広告宣伝・販売促進費補助事業の売上見込み額の5%が上限(下記の計算式)
海外旅費(グローバル枠のみ)補助対象経費総額(税抜)の1/5が上限
通訳・翻訳費(グローバル枠のみ)30万円が上限

広告宣伝・販売促進費の上限は、公募要領に計算式まで明記されています。

上限額=事業計画期間内の補助事業における売上見込み額合計÷事業計画年数×5%

売上計画と連動して上限が決まる仕組みなので、「販促に○百万円使いたい」が先にある場合は、売上計画との整合を確認してください。

実務上の注意点

  • 単価10万円(税抜)未満の機械装置等は対象外です。少額の備品を積み上げる計画は成立しません
  • 車両(車両運搬具)は経費にできません。配送用トラックや営業車を補助金で、という相談は多いのですが、この補助金では組み込めない前提で計画してください
  • パソコン・タブレット・スマートフォンなど汎用性が高く目的外使用になり得るものも対象外です(公募要領の対象外経費リスト参照)
  • 外注費1/4・専門家経費1/5などの比率上限は「補助対象経費総額」に対する割合なので、経費全体の構成を変えると上限額も動きます。経費表はExcel等で比率チェックを入れながら作るのが安全です
  • 対象外経費の全リストや各区分の細かい条件(対象となる契約形態・証憑など)は公募要領に列挙されています。判断に迷う費目は申請前に事務局へ確認してください

なお、投資の中心がITツール・ソフトウェア導入で規模が数十万〜数百万円程度なら、この補助金よりもデジタル化・AI導入補助金のほうが要件・手続きの負担と釣り合うケースが多くあります。当社は登録IT導入支援事業者(申請番号ITP04-0002803)として申請サポートを行っており、3分でできる見積シミュレーターで補助額の目安を確認できます。

審査のポイントと口頭審査

書面審査:事業計画の中身で決まる

審査は提出した事業計画書等にもとづいて行われ、申請要件を満たしているかの適格性に加え、事業計画の具体性・実現可能性や政策的意義などの観点で評価されます(審査項目の全文は公募要領に掲載されています)。

政策面の評価観点として特徴的なのが、経済社会の変化への対応です。公募要領は「関税による各産業への悪影響・中東情勢の緊迫化による原油由来製品・資材の供給途絶や高騰」といった具体的な変化への対応を評価の観点に挙げています。ただし、一般的なエネルギー価格の上昇や通常の物価高騰への対応はここに含まれないと整理されているため、「原材料が値上がりして苦しい」という一般論では評価につながりません。自社の事業がこれらの変化から具体的にどう影響を受け、補助事業でどう対応するのかを、事実ベースで書けるかどうかがポイントです。

口頭審査:オンライン15分・対応できるのは申請者本人のみ

書面審査に加えて、一定の審査基準を満たした事業者には必要に応じて口頭審査が実施されます。運用ルールが厳格なので、申請前に知っておいてください。

  • 実施方法はオンライン(1事業者15分程度)
  • 対応できるのは申請事業者自身のみ(個人事業主本人、法人代表者、取締役〈社外取締役を除く〉、応募時の労働者名簿に記載された担当者・経理担当者〈勤務実態がある者に限る〉)
  • 公募要領の原文どおり「事業計画作成支援者、経営コンサルタント、社外顧問等の申請事業者以外の方の対応や同席は一切認めません」。同席が確認された場合は不採択となる場合があると明記されています

つまり、支援機関やコンサルタントに計画づくりを任せきりにしていると、口頭審査で自分の言葉で説明できずに詰まります。当社が申請をサポートする場合も、事業計画は必ず経営者自身が内容を説明できる状態まで一緒に詰めます。これは審査対策である以前に、次章の「事業計画書は申請者自身が作成する」というルールの帰結でもあります。

申請方法:電子申請のみ・事業計画書は自社で作成

申請は電子申請システムでのみ受け付けられます(郵送・窓口持参は不可)。電子申請にはGビズIDプライムアカウントが必要で、発行に1週間程度かかります。

そして最も重要なルールが、事業計画書は申請者自身が作成しなければならないことです。外部の支援者から助言を受けること自体は認められていますが、公募要領は「作成自体を申請者以外が行うことは認められず、発覚した場合は不採択・採択取消・交付決定取消となります」と明記しています。「代行で丸投げできます」という誘い文句のサービスは、このルールに正面から抵触します。採択後に取消となれば補助金は受け取れず、投資だけが残ります。支援を受けるなら「助言・壁打ち・確認」の範囲で活用し、計画の中身は自社の言葉で書いてください。

申請全体の段取りは補助金申請の流れ5ステップで解説しています。

第1回公募のスケジュール

2026年8月時点で公表されている第1回公募のスケジュールは次のとおりです。

項目日程
公募開始令和8年6月29日(月)
申請受付開始令和8年9月30日(水)
申請締切令和8年10月30日(金)18:00(厳守)
補助金交付候補者の採択発表令和9年1月頃(予定)

1点、注意があります。この公募期間は1.1版(2026年7月17日改訂)で変更されたものです。当初の1.0版では受付開始8月31日・締切9月30日とされていたため、公募開始直後に書かれた解説記事には旧日程のまま残っているものがあります。約1か月後ろ倒しになった現行日程(受付9月30日・締切10月30日18:00)が正で、参照する際は必ず公募要領の最新版(表紙に版数と改訂日が記載されています)で確認してください。

申請までに必要な事前準備と目安の期間は次のとおりです。いずれも申請期限の延長は認められないと明記されているため、逆算して早めに着手してください。

  • GビズIDプライムアカウントの発行:1週間程度
  • 一般事業主行動計画の策定・公表(基本要件(4)):1〜2週間程度
  • 金融機関による確認書(借入で実施する場合・基本要件(6)):金融機関側の確認に時間がかかることがあるため、最優先で相談開始

交付決定後は、契約・発注・支払いのすべてを補助事業実施期間内に完了させる必要があり、実施期間の延長も原則認められません。

加点項目は17項目(1.2版で3項目追加)

審査では、パートナーシップ構築宣言・くるみん(次世代法の認定)・えるぼし(女性活躍推進法の認定)・健康経営優良法人・再生事業者に該当する事業者への加点項目が定められています。加点は全17項目、減点は全5項目です。

項目数には改訂履歴があります。当初の公募要領では加点は14項目でしたが、1.2版(2026年8月14日改訂)で技術情報管理認証制度・成長加速マッチングサービス・アトツギ甲子園の3項目が追加され、計17項目になりました。改訂前に書かれた記事では14項目のままのものがあるため、最新版で確認してください。それぞれの条件と減点の詳細は加点17項目と減点5項目の解説記事で個別に整理しています。

加点に使われる認定の多くは取得に数か月〜年単位かかるため、公募が始まってから動いても間に合いません。認定ごとの準備期間と取り方は補助金の加点項目一覧と準備ガイドにまとめているので、日頃の準備にお使いください。

採択後の流れと義務:採択はゴールではない

採択発表後にも期限付きの手続きと義務が連続します。ここでつまずくと採択が無効・取消になる規定があるため、採択後のカレンダーは申請前に把握しておいてください。

タイミングやること落とし穴
採択発表後事務局のオンライン説明会に参加(必須)参加しない場合「説明会最終開催日をもって、自動的に採択は無効」と公募要領に明記
採択発表から原則2か月以内交付申請期限までに申請がなければ採択取消
交付決定後契約・発注・支払い(すべて実施期間内に完了)交付決定前の契約・発注・支払いは補助対象外
発注時発注先1件当たりの見積額合計が50万円(税抜)以上なら3者以上の同一条件の相見積金融機関確認書を発行した金融機関、事業計画作成支援者への発注は不可
補助事業完了後5年間・計6回の事業化状況報告完了した日の属する年度の終了後が初回

実務でよくあるつまずきを3つ挙げます。

  1. 相見積の準備不足。 特注の機械や工事は「同一条件で3者から見積を取る」こと自体に時間がかかります。採択されてから探し始めると実施期間を圧迫するため、申請段階で相見積が取れる仕様書レベルまで発注内容を固めておくのが理想です
  2. 発注禁止先の見落とし。 事業計画づくりを手伝ってくれた会社にそのままシステム開発を発注する、確認書を出してくれた金融機関のリース関連会社に発注する——といった動きが規定に抵触し得ます。発注先の選定は利害関係の整理とセットで行ってください
  3. 報告義務の軽視。 補助事業が終わっても、5年間・計6回の事業化状況報告が続きます。担当者の退職で報告が途絶えないよう、社内の引き継ぎ体制まで含めて設計しておくことを勧めます

よくある質問

Q. 「新事業進出補助金」で調べていたのですが、この記事の制度と同じですか?

同じ系統の後継制度です。単独の「新事業進出補助金(中小企業新事業進出促進補助金)」は公募を終了しており、公式サイトでも本補助金への移行が案内されています。2026年に新規で申請できる制度としては、本記事の「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」を確認してください。

Q. 「ものづくり補助金」で調べていたのですが、この記事の制度と同じですか?

厳密には別の制度です。従来の「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」は本稿執筆時点で別途の締切回が続いており、本記事の「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」とは異なる公募要領・スケジュールで運用されています。どちらも中小機構が運営する大型の設備投資系補助金という点は共通しますが、対象外規定(受給歴の重複制限)は制度ごとに別に定められているため、申請の際はそれぞれの公募要領で確認してください。

Q. 個人事業主でも申請できますか?

公募要領の「中小企業者」「小規模企業者・小規模事業者」の基準は「会社又は個人」を対象にしているため、個人事業主も基準を満たせば対象です。ただし応募申請時点で従業員数が0名の事業者は対象外なので、一人で営んでいる場合は申請できません。

Q. 過去に事業再構築補助金を使ったことがあります。申請できますか?

申請締切日を起点に16か月以内に採択・実施中の場合や、応募申請日から過去3年間に事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金の交付決定を合計2回以上受けている場合は対象外です。該当するかどうかは採択日・交付決定日を基準に判定されるため、正確な時期はLINEで無料相談にお問い合わせいただくか、公募要領の「補助対象外となる事業者」で直接ご確認ください。

Q. 事業計画書の作成をコンサルタントや支援機関に任せられますか?

任せられません。事業計画書は申請者自身の作成が必須で、公募要領は作成自体の代行が発覚した場合「不採択・採択取消・交付決定取消」になると明記しています。外部支援者からの助言を受けることは認められているので、支援は「助言・確認」の範囲で活用してください。当社の申請サポートもこの前提で、経営者自身が計画を説明できる状態まで一緒に作り込む形をとっています。

Q. 口頭審査に社労士や顧問コンサルタントは同席できますか?

できません。口頭審査(オンライン・1事業者15分程度)に対応できるのは、個人事業主本人、法人代表者、取締役(社外取締役を除く)、応募時の労働者名簿に記載された担当者・経理担当者(勤務実態がある者に限る)のみで、事業計画作成支援者・経営コンサルタント・社外顧問等の対応や同席は一切認められていません。同席が確認された場合は不採択となる場合があると公募要領に明記されています。

Q. 賃上げ特例の目標が未達だったら、補助金は全額返還になりますか?

全額返還ではありません。返還を求められるのは「補助金交付額のうち賃上げ特例の適用による補助上限額引上げ分の額」の全額、つまり特例で上乗せされた部分です。ただし基本要件側の賃上げ要件(一人当たり給与支給総額)・最賃水準要件が未達の場合は別途の返還規定(一部返還等)があるため、賃上げ関連の目標は全体として達成可能な水準で設定してください。

Q. 自己資金だけで実施する場合も、金融機関の確認書は必要ですか?

不要です。金融機関要件は「金融機関から資金提供を受けて実施する場合」に、資金提供元の金融機関から事業計画の確認を受けることを求めるものです。自己資金のみで実施するなら確認書の提出はいりません。

Q. 店舗や工場の建設・改修費はどの枠でも補助対象になりますか?

なりません。建物費が経費区分に含まれるのは新事業進出枠とグローバル枠のみで、革新的新製品・サービス枠では対象外です。逆に新事業進出枠・グローバル枠では「機械装置・システム構築費または建物費のいずれか」の計上が必須です。建物投資の有無は枠選びに直結するため、経費リストを作ってから枠を決めてください。

Q. 交付決定前に発注してしまっても大丈夫ですか?

交付決定前の契約・発注・支払いは補助対象外です。採択の連絡を受けても、実際に発注してよいのは交付決定の後です。この基本ルールは補助金全般に共通するもので、補助金申請の流れ5ステップでも解説しています。

まとめ

  • 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、「新事業進出補助金」の後継として2026年に始まった大型補助金(「ものづくり補助金」は別途従来枠が継続)
  • 「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3枠。上限は従業員数区分ごとに最大7,000万円、賃上げ特例で最大9,000万円(特例は合計+6.0%の給与成長等が条件で、未達なら引上げ分は全額返還)
  • 事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金の受給歴があると、期間や回数によっては対象外。使い道を考える前に必ず確認する
  • 基本要件は数値3要件(付加価値額+4.0%・給与総額+3.5%・最賃+30円)に加え、一般事業主行動計画の公表・子育て等職場環境整備・金融機関確認書の計6つ
  • 経費は区分・費目上限・枠ごとの必須計上ルールがある。建物費は革新枠では使えず、新事業進出枠・グローバル枠は機械装置・システム構築費か建物費のいずれかが必須
  • 申請は電子申請のみ・事業計画書は自社で作成(代行は不採択・取消)。口頭審査も本人対応のみ
  • 第1回公募は令和8年10月30日18:00締切(1.1版で後ろ倒し後の日程)。GビズID・行動計画公表・金融機関確認書は数週間単位の準備が必要
  • 採択後もオンライン説明会(不参加で採択無効)・2か月以内の交付申請・50万円以上の相見積・5年間6回の報告と義務が続く

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参考(一次情報)