キャリアアップ助成金の賃金規定等共通化コースとは、パート・契約社員などの有期雇用労働者等に、正社員と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成・適用した事業主に支給される厚生労働省の助成金です。賃金規定等の作成・適用は、就業規則または労働協約により行います。支給額は1事業所あたり中小企業60万円・大企業45万円で、1回限りです。

同じく賃金規定等を扱う賃金規定等改定コースは、「有期雇用労働者等だけの基本給を3%以上上げる」制度です。これに対して本コースは、「正社員と同じ賃金の物差し(賃金規定等)を有期雇用労働者等にも適用する」制度で、狙いが異なります。押さえておきたいのは次の3点です。

  • 支給額は1事業所あたりの定額です(中小企業60万円・大企業45万円)。人数に応じて増える他コースと違い、1適用事業所につき1回限りの一時金です
  • 要件の核心は時給換算での比較です。共通化した区分(等級など)に格付けた有期雇用労働者等の時給が、同じ区分の正規雇用労働者を時給換算した額以上であることが必要です。月給制の正社員との比較方法は、細かく定められています
  • 手順は「正社員側の賃金規定等を先に(同時でも可)整備 → 共通の区分で賃金規定等を新設・適用 → 6か月運用 → 賃金支払日の翌日から2か月以内に申請」です。共通化した区分に正社員が1人もいない場合や、その正社員が休職等で共通化後の賃金を一度も受け取っていない場合は対象外になります。見落とされがちな点です

この記事は、厚生労働省のパンフレット(令和8年度版)・支給要領(令和8年4月8日付け)・Q&A(令和8年度版)の原文にもとづいて整理しました。対象外になるケースから、支給額・要件・時給換算の具体例・必要書類・申請の流れまで順に説明します。制度全体(全6コース)の位置づけはキャリアアップ助成金とは|全6コースの支給額一覧をご覧ください。当社は助成金の申請を提携の社会保険労務士と連携してご支援しており、ご相談の多いつまずきポイントも織り込んでいます。

キャリアアップ助成金 賃金規定等共通化コースとは【令和8年度】の記事でわかる3つのこと:支給額(1事業所60万円・1回限り)と改定コースとの違い、正社員の月給を時給に換算して比べる方法、対象外になるケースと、規定不備のときの救済規定
図解:キャリアアップ助成金 賃金規定等共通化コースとは【令和8年度】で最初に押さえたい3つのポイント

まず確認:対象外になる典型パターン

賃金規定等共通化コースでは、支給額や時給換算の計算方法より先に、そもそも申請できないケースを確認しておくと手戻りを防げます。当社がご相談を受けるなかでも、「共通化した等級に正社員が誰もいなかった」「時給換算したら正社員のほうが低かった」という相談があります。

事業主として受給できないケース(全コース共通)

  • 支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主(滞納の通知はされないため、申請前に自社で確認が必要です)
  • 支給申請日の前日から過去1年間に労働関係法令の違反を行った事業主
  • 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主
  • 暴力団と関わりのある事業主、暴力主義的破壊活動を行った・行う恐れがある団体等に属している事業主
  • 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主
  • 支給申請時または支給決定時に雇用保険適用事業所の事業主でない事業主(雇用保険被保険者数が0人の場合や事業所が廃止されている場合を含みます)

手順・運用で不支給になるケース(本コース固有)

  • 共通化した区分(等級など)に正規雇用労働者が1人も在籍していない場合、本コースの支給は受けられません。共通化を実施した時点で正社員が1人在籍していても、その正社員が産休・育休等で共通化後の賃金を一度も受け取っていない場合も、支給対象外です(Q&A③Q1)
  • 共通化した2区分のうち、有期雇用労働者等が比較対象となる正規雇用労働者より下の区分に格付けされている場合(詳しくは時給換算の章)
  • 正規雇用労働者に係る賃金規定等を、有期雇用労働者等の賃金規定等と同時またはそれ以前に導入していない(有期雇用労働者等の規定を先に作ることは認められません)
  • 有期雇用労働者等の時給が、共通化した区分の正規雇用労働者を時給換算した額を下回っている
  • 共通化後、対象労働者について基本給や定額で支給されている諸手当を減額した(実費弁償的な手当や毎月変動する手当も含めて減額はできません)
  • 支給申請の期限(6か月分の賃金支払日の翌日から2か月)を過ぎた

対象労働者として数えられないケース

  • 賃金規定等を共通化した日の前日から起算して3か月以上前から雇用されていない有期雇用労働者等
  • 共通化した区分に格付けられている正規雇用労働者と、同等またはそれ以上の区分に格付けられていない者
  • 共通化した日以降の6か月間、その事業所で雇用保険被保険者でない人
  • 事業主または取締役の3親等以内の親族(共通化した日の前日から起算して3か月前の日から支給申請時点までのいずれかの時点で該当する人)
  • 支給申請日において離職している人(本人都合の離職、天災等で事業継続が困難になった場合、本人の責めに帰すべき理由による解雇を除く)

正社員化コースにある「転換の前後に事業主都合の解雇があると不支給」という要件は、本コースの支給要領(4000番台)とパンフレットには規定されていません。ただし、対象労働者本人が支給申請日に離職していないことは要件なので注意してください。

他の助成金との併給調整

  • 65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)の支給を受けた事業主は、同一の対象労働者について本コースの支給を受けられません
  • 旧奨励金(均衡待遇・正社員化推進奨励金)のうち共通処遇制度の支給を受けた事業主、中小企業雇用安定化奨励金のうち共通処遇制度の支給を受けた事業主は、本コースの支給を受けられません
  • 賃金規定等改定コースや短時間労働者労働時間延長支援コースとの併給を制限する規定は、支給要領の併給調整(0503)に記載がありません(ただし対象労働者・対象経費が重複しない設計は必要です)

支給額:1事業所60万円(1回限り)

賃金規定等共通化コースの支給額は、1適用事業所あたりの定額です。他のコースの多くが「対象労働者1人あたり」で計算されるのとは異なり、企業規模ごとに次の金額が支給されます。

企業規模支給額
中小企業事業主60万円
大企業事業主45万円

(出典:キャリアアップ助成金支給要領〔令和8年4月8日付け〕4004、パンフレット令和8年度版P.44)

  • 1適用事業所あたり1回限りです(支給申請を取り下げたものを除く)。何人の有期雇用労働者等に適用しても、支給額は変わりません
  • 中小企業の範囲は、業種ごとに「資本金の額・出資の総額」または「常時雇用する労働者の数」のいずれかで判定します(支給申請時点)。小売業(飲食店を含む)は資本金5,000万円以下または50人以下、サービス業は5,000万円以下または100人以下です。卸売業は1億円以下または100人以下、その他の業種は3億円以下または300人以下です

対象となる人数が多い会社ほど、「1人あたりの実質単価」は下がります。本コースの費用対効果が高いのは、すでに正社員とパートの賃金テーブルが近い会社が、制度として整える場合です。逆に、賃金差が大きく是正コストが高い会社では、賃金規定等改定コース(対象人数分の支給・上限100人)との比較検討をおすすめします。

「賃金規定等の共通化」とは何をすることか

賃金規定等の共通化とは、正社員とパート等で賃金の決め方(賃金規定等)自体が別々になっている会社が、同じ区分(等級など)の物差しを両方に適用する取組です。パンフレットのイメージ(P.45)は、次のような賃金テーブルです。

区分正規雇用労働者有期雇用労働者等
6等級月給××万円—
5等級月給×▲万円—
4等級月給■■万円時給○○円
3等級月給▲▲万円時給□△円
2等級—時給×○円
1等級—時給×△円

上の例では、4等級・3等級が正社員・有期雇用労働者等の共通区分です。この区分で、「正規雇用労働者の月給を時給換算した額 ≦ 有期雇用労働者等の時給」が成り立っている必要があります。あわせて、各区分にどのような職務内容・スキルの人が格付けられるか(合理的な条件)を、就業規則または労働協約に明示することも要件です。

対象となる事業主の要件

対象となる事業主の主な要件の図解。主な項目:正社員の賃金規定等を、パート等の規定と同時かそれ以前に導入、区分をそれぞれ3区分以上設け、共通する区分を2区分以上設ける、共通区分のパート等の時給は、正社員の時給換算額と同額以上、全ての有期雇用労働者等と正社員に適用し、6か月以上運用
図解:対象となる事業主の主な要件で押さえたいポイント

賃金規定等共通化コースの事業主は、全コース共通の要件(①雇用保険適用事業所の事業主、②キャリアアップ管理者の配置、③キャリアアップ計画の作成・提出、④労働条件等を明らかにする書類の整備)を満たす必要があります。そのうえで、次の表の全てに該当することが必要です(支給要領4002)。

要件内容
① 賃金規定等の新設有期雇用労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに設け、区分に対応した基本給等の待遇を定めている
② 導入の順序正規雇用労働者に係る賃金規定等を、新たに作成する有期雇用労働者等の賃金規定等と同時またはそれ以前に導入している(有期雇用労働者等の規定が先行することは不可)
③ 区分数と共通区分賃金規定等の区分を有期雇用労働者等・正規雇用労働者についてそれぞれ3区分以上設け、かつ共通する区分を2区分以上設け、有期雇用労働者等1人以上と正規雇用労働者1人以上をそれぞれ共通化した区分に格付け、有期雇用労働者等を正規雇用労働者と同等以上の区分に格付けて適用している
④ 時給換算での比較共通化した区分における有期雇用労働者等の基本給など職務の内容に密接に関連する賃金の時間当たりの額を、正規雇用労働者に適用される同等区分の時間当たりの額と同額以上とする
⑤ 合理的条件の明示賃金規定等が適用されるための合理的な条件を就業規則または労働協約に明示している
⑥ 全員への適用当該賃金規定等を全ての有期雇用労働者等と正規雇用労働者に適用させている
⑦ 運用期間当該賃金規定等を6か月以上運用している
⑧ 減額の禁止適用を受ける全ての有期雇用労働者等・正規雇用労働者について、適用前と比べて基本給・定額の諸手当を減額していない

対象となる労働者の要件

賃金規定等共通化コースの対象労働者は、次の5つ全てに該当する有期雇用労働者等です(支給要領4003)。

  1. 賃金規定等を共通化した日の前日から起算して3か月以上前の日から共通化後6か月以上の期間継続して、支給対象事業主に雇用されている(勤務をした日数が11日未満の月は除く。有給休暇等の労働対価が全額支給された日は出勤日とみなす)
  2. 共通化した区分に格付けられている正規雇用労働者以上の区分に格付けられている
  3. 賃金規定等を共通化した日以降の6か月間、その事業所において雇用保険被保険者である
  4. 賃金規定等を新たに作成し適用した事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者
  5. 支給申請日において離職していない者

時給換算の計算方法(号俸がある場合も)

時給換算の計算方法の図解。主な項目:正社員の月給÷(1日の所定労働時間×月平均所定労働日数)、月平均所定労働日数=週の所定労働日数×52週÷12か月、パート等の時給が、正社員の時給換算額以上であること、号俸がある場合は、号俸ごとに1対1で対応させる
図解:時給換算の計算方法で押さえたいポイント

時給換算とは、正社員の1か月当たりの給与を「1日の所定労働時間×月平均所定労働日数」で割り、時給に直すことです。賃金規定等共通化コースで最も間違えやすいのが、月給制の正社員と時給制の有期雇用労働者等をどう比較するかです。Q&A③Q3・Q4の内容を整理します。

基本の換算式(Q&A③Q3)

正規雇用労働者の1か月当たりの給与 ÷(正規雇用労働者の1日の所定労働時間 × 月平均所定労働日数)= 正規雇用労働者の時給換算額
(月平均所定労働日数 = 週の所定労働日数 × 52週 ÷ 12か月)

有期雇用労働者等の時給は、この時給換算額以上になるように設定します(支給要領の「同額以上」の要件)。

等級の下に号俸がある場合(Q&A③Q4)

等級の下に号俸がある場合は、号俸ごとに賃金が決まります。そのため原則として、正規雇用労働者の号俸と有期雇用労働者等の時給を1対1で対応させる必要があります。その場合は各号俸を1つの等級とみなし、3区分(号俸)以上設け、2区分(号俸)以上共通化していれば支給対象になります。

パートが正社員より上位の等級に格付けられる場合

共通区分内で有期雇用労働者等が正規雇用労働者より上位の等級に格付けられる場合は、その上位区分でも助成対象になり得ます。Q&A③Q4が挙げる例(3等級と4等級を共通化したケース)を整理すると、次の表のとおりです。

正規雇用労働者の格付け等級有期雇用労働者等の格付け等級助成の可否
4等級4等級○
4等級3等級×
3等級4等級○
3等級3等級○

有期雇用労働者等が、比較対象となる正規雇用労働者と同じか、それより上の等級に格付けられていれば対象です。下の等級に格付けられていると、対象外になります。この場合、有期雇用労働者等が格付けられている等級(上の例では「4等級」)で正規雇用労働者の月給を時給換算し、有期雇用労働者等の時給がそれ以上になっているかを確認します。

共通化した2区分のうち一部にしか対象者がいない場合(Q&A③Q2)

共通化した2区分のうち一部にしか対象者がいない場合も、次のいずれかに該当すれば支給対象です。

  • 一方の区分に、対象となる有期雇用労働者等と比較対象となる正規雇用労働者がそれぞれ1名以上在籍している
  • 対象となる有期雇用労働者等が、比較対象となる正規雇用労働者が在籍する区分より上の区分に在籍している

逆に、対象となる有期雇用労働者等が正規雇用労働者の在籍する区分より下にいる場合は、その区分では支給対象になりません。

「共通化した日」と「適用」の意味(Q&A全コース共通事項Q5・Q9)

「共通化した日」とは、施行日ではなく適用日(共通化後の賃金が当日分から給与に反映される日)を指します。「適用」とは、制度を作っただけでなく、実際にその規定に基づく賃金が支給されていることを意味します。

申請の流れと申請期限(スケジュール例つき)

賃金規定等共通化コースの手順は、「正社員側の規定整備 → 共通の賃金規定等を新設・適用 → 6か月運用 → 支給申請」です。その前に、キャリアアップ計画の提出が必要です。

STEP1:キャリアアップ計画を作成し、共通化日の前日までに労働局へ提出

  • キャリアアップ管理者を決め、3年以上5年以内の計画期間を定めます。事業所の全ての労働者の代表から意見を聴くことも必要です
  • 提出期限は共通化日の前日までです。前日が行政機関の休日に当たる場合はその翌日までです

STEP2:正社員の賃金規定等を先に(または同時に)整備したうえで、共通の賃金規定等を新設・適用

  • 正規雇用労働者に係る賃金規定等を、有期雇用労働者等の賃金規定等と同時かそれより先に導入している必要があります
  • 常時10人以上を雇用する事業所は、規定の改定後速やかに(遅くとも支給申請前に)所轄の労働基準監督署へ届け出ます

STEP3:共通化後の賃金規定等で6か月分の賃金を支払う

  • 「適用」とは実際に共通化後の規定に基づく賃金が支給されていることを指します(Q&A全コース共通事項Q9)

STEP4:6か月分の賃金支払日の翌日から2か月以内に支給申請

次の表は、パンフレットP.45の例(賃金締切日が月末・翌月15日払いの企業)にもとづくスケジュールです。

日付出来事
4月1日賃金規定等共通化日
4月1日〜9月30日6か月分の賃金算定期間(9月30日が6か月目の賃金締切日)
10月15日6か月目の賃金支払日
10月16日〜12月15日支給申請期間(賃金支払日の翌日から起算して2か月以内)
  • 支給申請期間は、就業規則上の賃金支払日ではなく、実際に賃金が支給された日の翌日から起算します
  • 共通化した日が賃金締切日の翌日でない場合は、共通化した日以降の最初の賃金締切日後6か月分が対象です

支給申請の必要書類

賃金規定等共通化コースの支給申請で提出する主な書類は、次の表のとおりです(支給要領4006)。

書類主な確認事項
キャリアアップ助成金支給申請書(様式第3号)記入漏れがないか
賃金規定等共通化コース内訳(様式第3号・別添様式4)同上
支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)記入漏れがないか(確認項目で1つでも「いいえ」があると支給を受けられません)
管轄労働局長に受理されたキャリアアップ計画書(写)共通化日の前日までに受理されているか
共通化前後の就業規則または労働協約(写)共通化前の規定が無かった場合は、常時10人未満の事業所はその旨の申立書
賃金区分一覧表有期雇用労働者等・正規雇用労働者ごとに賃金規定等の区分を示していること
共通化した区分に格付けられた正規雇用労働者1人と対象労働者1人の共通化前後の雇用契約書等該当者が複数いる場合は任意の1人を選定
同上2名の賃金台帳等(共通化前3か月分・共通化後6か月分)出勤日数・労働時間が確認できない場合は出勤簿等も添付
事業主による確認書適用後6か月分の賃金(時間外手当等含む)が支給されていることの確認
事業所確認票(様式第4号)常時使用する労働者の数で中小企業事業主に該当する場合

添付書類は原本の写しでなければならず、見やすいように加工・転記して別途作成した書類は認められません。

規定不備で不支給になった場合の救済規定

いったん共通化した賃金規定等が支給要件を満たしていなかった場合、原則は不支給です。ただし賃金規定等共通化コースには、やり直しの規定があります(Q&A全コース共通事項Q11)。

キャリアアップ計画期間内に新たに設けた制度が支給要件を満たす制度ではなかった場合、都道府県労働局の助言指導を受けつつ、支給要件を満たす制度に改定した場合、その改定日を新たな措置日(要件を満たす制度導入日)とみなす。

このため、共通化した区分の設計に不備があっても、労働局の助言を受けて規定を改定すれば、改定日を新たな「共通化した日」として仕切り直せます。この場合、改定日以降の規定の適用から6か月分の賃金を支給した日から2か月以内に、あらためて支給申請ができます。一度失敗したら二度と使えない、というわけではありません。要件を満たしているか不安な段階で、労働局・社会保険労務士に確認しながら進めるのが安全です。

他のコース・制度との関係

  • 賃金規定等改定コース(有期雇用労働者等の基本給を3%以上増額改定するコース。1人あたり中小企業4万〜7万円、1年度100人まで)との違いは、目的です。「既存の賃金を底上げする」のが改定コース、「正社員と同じ物差しの賃金規定等を新たに作る」のが本コースです。両コースは支給要領上、併給を制限する規定がありません(0503)。詳細は賃金規定等改定コースの記事をご覧ください
  • 65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)の支給を受けた事業主は、同一の対象労働者について本コースの支給を受けられません
  • 賃金体系の整備とあわせて人材育成に取り組む場合は、人材開発支援助成金が候補です。雇用系助成金の使い分けはキャリアアップ助成金と人材開発支援助成金の違いにまとめています
  • キャリアアップ助成金は雇用保険法に基づく「助成金」で、事業計画の審査で採否を競う「補助金」とは性格が異なります。両者の違いは補助金と助成金の違いで解説しています

実務でつまずきやすいポイント

当社がご相談を受けるなかで最初に確認するのは、次の4点です。

  1. 共通化する区分に、正社員が実在するか。共通化した等級に正社員が1人もいない、または産休・育休等で共通化後の賃金を一度も受け取っていない場合は対象外です(Q&A③Q1)。制度設計の前に、「誰と誰を比べるか」を具体的な氏名レベルで確認します
  2. 時給換算した金額の大小関係。月給を時給に直すと、思ったより高くなることがあります。所定労働時間・月平均所定労働日数を正確に使って試算してから、区分設計を行ってください
  3. 導入の順序。正社員側の賃金規定等を有期雇用労働者等より後に整備すると、要件を満たしません。「まず正社員の規定を整理し、それに揃える形で有期雇用労働者等の規定を作る」順番を守ります
  4. 全員適用と6か月運用。一部の有期雇用労働者等だけに適用したり、6か月未満で申請したりすると対象外です。共通化後に降給・手当減額をしていないかも、あわせて確認します

助成金は後払いです。制度整備や賃金体系の見直しにあわせて設備投資や資金需要があれば、募集中273件の制度から自社に合うものを補助金かんたん診断で絞り込めます。「自社の賃金テーブルで要件を満たすか」といった個別のご質問は、LINEでも受け付けています。

よくある質問

Q. 共通化した等級に正社員が1人しかいません。それでも申請できますか?

はい、申請できます。ただし、その正社員が共通化後に一度も賃金の支払いを受けていない場合(産休・育休等でずっと不在の場合など)は支給対象外です(Q&A③Q1)。共通化した等級の正社員が、実際に共通化後の賃金を受け取っていることを確認してください。

Q. 正社員は月給制、パートは時給制です。どうやって金額を比較しますか?

正社員の月給を時給に換算し、その額以上にパートの時給を設定して比較します。具体的には、正規雇用労働者の1か月当たりの給与を、「1日の所定労働時間×月平均所定労働日数(週の所定労働日数×52週÷12か月)」で割って時給換算します(Q&A③Q3)。等級の下に号俸がある場合は、号俸ごとに1対1で対応させる必要があります(Q&A③Q4)。

Q. 共通化した区分の中で、パートが正社員より上位の等級に格付けられていても大丈夫ですか?

はい、対象になります。有期雇用労働者等が、比較対象となる正規雇用労働者と同じか、それより上の等級に格付けられていれば助成対象です。逆に、下の等級に格付けられている場合は対象外です(Q&A③Q4)。

Q. 賃金規定等を共通化しましたが、要件を満たしていなかったことが後で分かりました。もう申請できませんか?

キャリアアップ計画期間内であれば、規定を改定して申請し直す余地があります。都道府県労働局の助言指導を受けて要件を満たす制度に改定すると、その改定日が新たな「共通化した日」とみなされます。改定後の規定の適用から6か月分の賃金を支給した日から2か月以内に、あらためて支給申請ができます(Q&A全コース共通事項Q11)。

Q. 支給申請は何回できますか?

同一の対象適用事業所に対して1回限りです(支給要領0503)。人数に応じて追加申請できる制度ではありません。

Q. 賃金規定等改定コースとどちらを選べばよいですか?

対象人数と、正社員との賃金差で判断します。すでに正社員とパートの賃金テーブルが近い会社なら、1事業所60万円(大企業45万円)の本コースは費用対効果が高くなります。賃金差が大きく是正コストが高い会社では、対象人数分が支給される賃金規定等改定コース(上限100人)と比較してください。両コースの併給を制限する規定は、支給要領の併給調整(0503)にありません。

まとめ

  • 賃金規定等共通化コースは、有期雇用労働者等に正社員と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成・適用した事業主への助成です。1事業所あたり中小企業60万円・大企業45万円(1回限り)の定額支給です
  • 核心は時給換算での比較です。正社員の月給を時給に換算し、有期雇用労働者等の時給がそれ以上であることが必要です。号俸がある場合は、1対1対応が原則です
  • 共通化した区分に正社員が実在し、実際に賃金を受け取っていることが前提です。導入は正社員側の規定が先か同時で、全員への適用と6か月以上の運用が必要です
  • 手順は「計画提出(共通化日の前日まで)→ 正社員規定を先に整備→ 共通化・適用 → 6か月運用 → 賃金支払日の翌日から2か月以内に申請」です
  • 規定に不備があって不支給になっても、労働局の助言を受けて改定すれば、改定日を起点に再申請できる救済規定があります

自社の賃金テーブルでどの区分から共通化すべきかは、会社ごとに判断が分かれます。個別のご質問はLINEでも受け付けています。賃金制度の整備とあわせて使える補助金は、募集中273件から絞り込める補助金かんたん診断でご確認ください。

参考(一次情報)