キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースとは、有期雇用労働者等の「賃金規定等」を3%以上増額改定し、実際に適用した事業主に支給される厚生労働省の助成金です。賃金規定等とは、就業規則や労働協約で賃金額を定めたもの(就業規則の条文・賃金規定・賃金テーブルなど)を指します。対象はパート・アルバイト・契約社員・派遣労働者といった有期雇用労働者等です。正社員転換を伴わない「賃上げだけ」で申請できる点が、正社員化コースとの違いです。押さえておきたいのは次の3点です。

  • 支給額は1人あたり中小企業4万〜7万円です(賃金引上げ率3%以上4%未満で4万円、6%以上で7万円。大企業は2.6万〜4.6万円)。1年度・1事業所あたり100人まで申請できます
  • 加算は2種類で、各20万円(大企業15万円)です。職務評価の手法を使って賃金規定等を改定した場合と、有期雇用労働者等に適用される昇給制度を新たに規定した場合が対象で、いずれも1事業所1回限りです
  • 手順の順番が大切です。賃金規定等を改定する日の前日までにキャリアアップ計画を労働局へ提出し、改定前の規定を3か月以上運用している必要があります。支給申請は、改定後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内です

この記事は、厚生労働省のパンフレット(令和8年度版)・支給要領(令和8年4月8日付け)・Q&A(令和8年7月29日版)の原文にもとづいて整理しました。対象外になるケースから、金額・要件・書類・申請の流れ・加算の取り方まで順に説明します。制度全体(全6コース)の位置づけはキャリアアップ助成金とは|全6コースの支給額一覧をご覧ください。当社は助成金の申請を提携の社会保険労務士と連携してご支援しており、ご相談の多いつまずきポイントも織り込んでいます。

なお、Q&A(令和8年7月29日版)は「令和8年4月1日から支給要件や支給額に大きな変更はありません」としています。令和8年4月8日の変更(情報公表加算の新設)は正社員化コースに関するもので、本コースの内容は変わっていません。

キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コースとは【令和8年度】の記事でわかる3つのこと:賃金引上げ率別の支給額(1人4万〜7万円)と加算、最低賃金の改定に合わせて賃上げするときの注意点、対象外になるケースと、申請の流れ・必要書類
図解:キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コースとは【令和8年度】で最初に押さえたい3つのポイント

まず確認:対象外になる典型パターン

賃金規定等改定コースでは、支給額や要件より先に、そもそも申請できない・対象人数に数えられないケースを確認しておくと手戻りを防げます。当社がご相談を受けるなかでも、「賃上げは済ませたのに計画届が後になっていた」「上げた人の一部が親族だった」という相談は珍しくありません。

事業主として受給できないケース(全コース共通)

  • 支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主(滞納の通知はされないため、申請前に自社で確認が必要です)
  • 支給申請日の前日から過去1年間に労働関係法令の違反を行った事業主
  • 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主
  • 暴力団と関わりのある事業主、暴力主義的破壊活動を行った・行う恐れがある団体等に属している事業主
  • 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主
  • 支給申請時または支給決定時に雇用保険適用事業所の事業主でない事業主(雇用保険被保険者数が0人の場合や事業所が廃止されている場合を含みます)

手順・運用で不支給になるケース(本コース固有)

  • 賃金規定等の改定日より後にキャリアアップ計画を提出した(計画は改定日の前日までに管轄労働局長に提出・受理されている必要があります。計画に不備があって再提出になった場合、再提出後の措置からしか対象になりません)
  • 改定前の賃金規定等を3か月以上運用していない(新たに規定を作る場合は、整備前3か月分の賃金支払状況を確認できることが必要です)
  • 基本給は3%以上上げたが、定額で支給している諸手当を減額した(実費弁償的な手当や毎月変動する手当も含めて減額はできません)
  • 正規雇用労働者の賃金規定等を減額改定した(有期雇用労働者等の増額改定と同時に正社員の規定を下げることは認められません)
  • 支給申請の期限(6か月分の賃金支払日の翌日から2か月)を過ぎた。期間外の申請は不受理です
  • 支給申請後に賃金の不足を追給して書類を差し替えようとした(支給申請時の書類で審査され、後からの追給・差替えでは支給対象事業主に該当しません)

対象労働者として数えられないケース

  • 賃金規定等を改定した日の前日から起算して3か月以上前から雇用されていない有期雇用労働者等(改定直前に入社した人は、規定の適用対象には含めますが助成対象の人数には数えません)
  • 増額改定前の基本給と比べて、実際に3%以上昇給していない人
  • 改定日の前日から起算して3か月前の日から支給申請日までの間に、合理的な理由なく基本給や定額の諸手当を減額された人
  • 改定日以降の6か月間、その事業所で雇用保険被保険者でない人
  • 事業主または取締役の3親等以内の親族(改定日の前日から起算して3か月前の日から支給申請時点までのいずれかの時点で該当する人)
  • 支給申請日において離職している人(本人都合の離職、天災等で事業継続が困難になった場合、本人の責めに帰すべき理由による解雇を除く)

正社員化コースにある「転換の前後に事業主都合の離職があると不支給」という要件は、本コースの支給要領(3000番台)とパンフレットには設けられていません。ただし、対象労働者本人が支給申請日に離職していないことは要件です。退職予定者を対象人数に入れないよう注意してください。

他の助成金との併給調整

  • 同じ労働者の同じ支給対象期間(賃金規定等の改定日から改定後6か月分の賃金を支給した日まで)に行った処遇改善について、短時間労働者労働時間延長支援コースとの重複支給はされません
  • 65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)の支給を受けた事業主は、同一の対象労働者について本コースの支給を受けられません
  • 業務改善助成金で賃金引上げの対象とした労働者を、本コースの支給対象労働者として数えることはできません

支給額と加算:1人4万〜7万円・加算各20万円

賃金引上げ率別の支給額(1人あたり)の図解。主な項目:3%以上4%未満:中小企業4万円・大企業2.6万円、4%以上5%未満:中小企業5万円・大企業3.3万円、5%以上6%未満:中小企業6.5万円・大企業4.3万円、6%以上:中小企業7万円・大企業4.6万円
図解:賃金引上げ率別の支給額(1人あたり)で押さえたいポイント

賃金規定等改定コースの1人あたりの支給額は、賃金引上げ率と企業規模で決まります。中小企業は4万〜7万円、大企業は2.6万〜4.6万円で、区分ごとの金額は次の表のとおりです。

賃金引上げ率中小企業大企業
3%以上4%未満4万円2.6万円
4%以上5%未満5万円3.3万円
5%以上6%未満6.5万円4.3万円
6%以上7万円4.6万円

(出典:キャリアアップ助成金支給要領〔令和8年4月8日付け〕3004、パンフレット令和8年度版P.36)

  • 同一支給申請年度における支給申請上限人数は、1適用事業所あたり合計100人までです(支給申請を取り下げたものを除く)
  • 厚生労働省のリーフレットの助成例では、中小企業がA部門で働くパートタイマー20人の基本給を6%以上引き上げた場合、7万円×20人=140万円が支給額です

加算は次の2種類で、いずれも1適用事業所あたり1回限りです。

加算の種類中小企業大企業
職務評価加算:職務評価の手法の活用により賃金規定等を増額改定した場合20万円15万円
昇給制度加算:有期雇用労働者等に適用される昇給制度を新たに規定した場合20万円15万円

たとえば中小企業がパート10人の基本給を5%引き上げ、あわせて職務評価と昇給制度の新設を行った場合、6.5万円×10人+20万円+20万円=105万円が計算上の支給額です(各要件を満たした場合)。

中小企業の範囲は、業種ごとに「資本金の額・出資の総額」または「常時雇用する労働者の数」のいずれかで判定します(支給申請時点)。小売業(飲食店を含む)は資本金5,000万円以下または50人以下、サービス業は5,000万円以下または100人以下です。卸売業は1億円以下または100人以下、その他の業種は3億円以下または300人以下です。資本金等のない事業主は、常時雇用する労働者の数で判定します。

「賃金規定等」と「3%以上増額改定」の意味

賃金規定等改定コースで最も誤解が多いのは、「実際に時給を3%上げた」だけでは足りない点です。就業規則や労働協約において賃金額の定めがある「賃金規定等」を増額改定し、それを適用する必要があります。

賃金規定等にあたるものとして、パンフレットP.36は次の例を挙げています。

  • 就業規則の条文(例:契約社員およびパートタイマーの賃金を○○のとおり定める)
  • 賃金規定(例:基本給は時給によって定める。○級:○○円、○級:○○円)
  • 賃金一覧表・賃金テーブル(例:1級○○円、2級○○円。「等級」のほか「見習い」「一般」「中堅」などの名称区分でも可)

支給要領3001では、「基本給」を次のように定義しています。原則として就業規則または労働協約において基本給として定められ、時間外労働手当や賞与等の算定基礎となっており、職務内容・本人の能力等によって決められるもの、です。手当だけを上げても対象になりません。

これまで賃金規定等がなかった会社も、新たに賃金規定等を作成して基本給を3%以上増額した場合は対象になります。この場合は、規定の整備前の賃金台帳等と比較して、基本給が3%以上増額していることを確認します(Q&A②Q1)。

3%の数え方では、次の4点に注意してください。

  1. 原則として、全ての等級を3%以上増額改定する必要があります。既存の賃金規定等を改定する場合、対象労働者が位置づけられていない等級も含めて、全て増額改定していることが必要です(パンフレットP.37)。合理的な区分によらずに等級ごとの引上げ率が異なる場合は、低い引上げ率の助成単価で支給額が決まります(Q&A②Q6)
  2. 一部の労働者だけを対象にする場合は、「合理的な区分」が必要です。雇用区分(正社員・パート・アルバイト等)ごとに賃金規定等がある場合、業務レベル(初級・中級・上級等)の区分がある場合、部門別などが認められます。年齢のみを理由に対象者を限定することは認められません。ただし、「60歳以上の定年後再雇用者(雇用区分:シニア)を除く」のように、雇用形態や職種による区分なら対象になり得ます(Q&A②Q3・Q4)
  3. 端数処理で3%を割り込まないようにしてください。Q&Aの例では、時給1,410円を3%増額すると1,452.3円になります。円未満を四捨五入して1,452円としたケースは、1,452÷1,410×100=102.98%で昇給率2.98%となり、要件を満たしません(Q&A②Q11)。時給の場合は、切り上げで設定するのが安全です
  4. 最低賃金との関係は、次の節で詳しく説明します。最低賃金に達するまでの増額分は、3%に含められません

最低賃金の改定に合わせて賃上げする場合

最低賃金の改定に合わせて賃上げする場合、新しい最低賃金に達するまでの増額分は3%に含めません。毎年10月前後の最低賃金改定に合わせて時給を上げる会社は多く、賃金規定等改定コースとの関係は実務で最も質問の多い論点です。支給要領3001の注記は次のとおりです。

最低賃金法(昭和34年法律第137号)第14条及び第19条に定める最低賃金の効力が生じた日以後に賃金規定等を増額した場合、当該最低賃金に達するまでの増額分は含めない。

このため、新しい最低賃金の発効日以後に「最低賃金に届くまで」上げた分はカウントされません。最低賃金を上回る部分の増額が3%以上でなければ、対象になりません。Q&A②Q5は、対象になる例とならない例を次の表のように整理しています。

区分内容
対象となり得る例新最低賃金の公示日以降、発効日の前日までに、最低賃金を下回る等級のみを3%以上増額改定した場合
対象となり得る例同じ期間に、最低賃金を下回る等級は最低賃金を上回るために5%、それ以外の等級は3%の賃上げを行った場合(それぞれの区分の助成単価と人数で支給額を決定)
対象とならない例新最低賃金の発効日以後に、最低賃金を下回る等級を新最低賃金まで引き上げたのみで、最低賃金を上回る部分の増額が3%に満たない場合
対象とならない例全ての等級を発効日以後に改定したが、最低賃金を下回る区分は新最低賃金まで引き上げたのみで、最低賃金を上回る部分の増額分が全ての等級で3%に満たない場合

最低賃金の改定に伴い、新最低賃金を下回ることになる等級のみを改定する場合も対象になります。ただし、その改定は各都道府県の新最低賃金の公示日以降、発効日の前日までに行う必要があります。発効日を過ぎてから慌てて上げると、最低賃金到達分が差し引かれて3%に届かないケースが出ます。最低賃金改定を機に申請を考えるなら、公示日から発効日までの短い期間に改定日を置く前提で、キャリアアップ計画を先に提出しておく段取りが必要です。

なお、事業所の定める基本給のみでは最低賃金を下回るものの、残業代や賞与等の算定基礎に含まれる手当と合算すると、最低賃金を上回っている場合があります。この場合は例外的に、基本給と当該手当を合算した「基本給相当額」で改定前後の増額を確認します。Q&A②Q2の例は、最低賃金1,050円、改定前基本給1,000円+地域手当60円=1,060円→改定後1,040円+60円=1,100円です。最低賃金を上回る基本給相当額で3%以上の増額が確認できるため、対象となり得るとされています。

対象となる労働者の要件

賃金規定等改定コースの対象労働者は、次の6つ全てに該当する有期雇用労働者等(有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者)です(支給要領3003)。

  1. 賃金規定等を増額改定した日の前日から起算して3か月以上前の日から、増額改定後6か月以上の期間継続して、支給対象事業主に雇用されている(勤務をした日数が11日未満の月は除く。ただし有給休暇等の労働対価が全額支給された日は出勤日とみなす)
  2. 就業規則または労働協約に定めるところにより増額改定した賃金規定等を適用され、かつ、増額改定前の基本給に比べて3%以上昇給している
  3. 改定日の前日から起算して3か月前の日から支給申請日までの間に、合理的な理由なく基本給および定額で支給されている諸手当を減額されていない
  4. 改定日以降の6か月間、その事業所において雇用保険被保険者である
  5. 事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者
  6. 支給申請日において離職していない者

引上げ率が労働者ごとに異なる場合は、合理的な理由に基づき区分されている場合のみ、一部の上位区分での増額改定と認められます。全員に3%以上の増額改定をしたものの、改定後の人事評価で降級した等によって増額率が3%を下回った人は、対象労働者から除いて助成を受けることができます。降級しても結果的に3%以上の増額なら、対象に含めて構いません。人事評価の規定や結果が分かる書類の追加提出が必要です(Q&A②Q7)。

休職・休業中の労働者については、勤務をした日が11日以上ある月の6か月分の賃金が、支給申請期間終了までに支払われていない場合があります。この場合は、その人を対象労働者数から除いて助成額を算定します。給与が満額支払われている場合は、通常の勤務をした日に含めます。後日6か月分の賃金が支払われれば、その人について別途支給申請ができます(Q&A②Q10)。

外国人労働者については、正社員化コースで対象外となる外国人技能実習生や特定技能1号の在留資格者も、賃金規定等改定コースを含む処遇改善支援のコースでは対象となり得ます(Q&A共通Q6の一覧表)。

対象となる事業主の要件

賃金規定等改定コースの事業主には、まず全コース共通の要件として次の5つが必要です。

  1. 雇用保険適用事業所の事業主であること
  2. 事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いていること(複数の事業所および労働者代表との兼任はできません)
  3. 事業所ごとに対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長に提出していること
  4. 対象労働者の労働条件・勤務状況・賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにできること
  5. 計画期間内に取組を実施していること

そのうえで、本コースの支給対象事業主は次の表の全てに該当する必要があります(支給要領3002)。

要件内容
① 賃金規定等の作成有期雇用労働者等(改定日の前日から起算して3か月以内に雇用された者を含む)に適用される賃金規定等を作成している
② 3%以上の増額改定と適用賃金規定等(原則として全ての等級)を3%以上増額改定し、その規定に属する有期雇用労働者等に適用して昇給を実施した。新たに整備する場合は整備前に比べ3%以上増額していること。一部の賃金規定等のみ改定する場合は、その他の有期雇用労働者等の賃金規定等を減額改定していないこと。正規雇用労働者等の賃金規定等を減額改定していないこと
③ 改定前の運用期間増額改定前の賃金規定等を3か月以上運用していた(新たに整備する場合は、整備前3か月分の有期雇用労働者等への賃金支払状況が確認できる)
④ 改定後の運用期間増額改定後の賃金規定等を6か月以上運用し、対象労働者について定額で支給されている諸手当(名称を問わず、実費弁償的なものや毎月変動が見込まれる手当も含む)を減額していない
⑤ 職務評価加算を受ける場合有期雇用労働者等および正規雇用労働者を対象に職務評価を実施した(詳細)
⑥ 昇給制度加算を受ける場合キャリアアップ計画期間中に、雇用する全ての有期雇用労働者等に適用される昇給制度を新たに規定した

Q&A②Q9のとおり、正規雇用労働者の賃金規定等を増額改定する必要はありません(減額はできません)。また、同一年度内に複数回の改定を行う場合、増額改定の対象となる賃金規定等は「改定前3か月、改定後は支給申請日まで」運用している必要があります。

たとえば職種別に、まず事務職の基本給のみを改定し、翌月に現場職のみを改定した場合です。この場合は雇用形態・職種別の区分ごとに継続運用を確認し、それぞれ6か月分の賃金支払後に申請できます(Q&A②Q12・Q13)。

申請の流れと申請期限(スケジュール例つき)

申請の流れと申請期限の図解。主な項目:改定日の前日までに、キャリアアップ計画を労働局へ提出、賃金規定等を3%以上増額改定し、就業規則等を整備、改定後の賃金規定等で6か月分の賃金を支払う、賃金支払日の翌日から2か月以内に支給申請
図解:申請の流れと申請期限で押さえたいポイント

賃金規定等改定コースの手順は「計画の提出 → 賃金規定等の改定 → 6か月運用 → 支給申請」の4段階で、順番を入れ替えると不支給になります。

STEP1:キャリアアップ計画を作成し、改定日の前日までに労働局へ提出

  • キャリアアップ管理者を決め、3年以上5年以内の計画期間を定めます。計画対象者・目標・期間・事業主が行う取組は、コースに沿って記載します。事業所の全ての労働者の代表から意見を聴くことも必要です(パンフレットP.10)
  • 提出期限はコース実施日(賃金規定等の改定日)の前日までです。前日が行政機関の休日に当たる場合は、その翌日までとされています。ただし厚生労働省は、「コース実施日の1か月前など、余裕を持って提出」するよう案内しています
  • 計画の内容を変更する場合(コースの追加など)は、「キャリアアップ計画書(変更届)」の提出が必要です。既に提出したコース内の取組内容のみを変える場合は不要です

STEP2:賃金規定等を3%以上増額改定し、就業規則等を整備する

  • 就業規則は従業員に周知した日付で効力を持つため、原則、発効日と施行日は同日付けにします
  • 常時10人以上を雇用する事業所は、改定後速やかに(遅くとも支給申請前に)所轄の労働基準監督署へ届け出ます。賃金一覧表など就業規則の附則のみの改定でも、届出が必要です(Q&A共通Q10)。届出義務のある変更を申請日までに届け出ていない場合は、原則不支給です
  • 労働者が10人未満で就業規則の作成義務がない事業所も、本助成金では労働者が確認できる客観的な規定が必要です。就業規則または労働協約を作成して労働者に明示し、①支給申請前に監督署へ届け出るか、②周知実施について事業主と労働者代表の氏名等を記載した申立書を添付します(Q&A共通Q2)

STEP3:改定後の賃金規定等で6か月分の賃金を支払う

  • 「適用」とは、制度の導入だけでなく、実際に改定後の規定に基づく賃金が支給されていることを指します(Q&A共通Q9)
  • 賃金規定等の改定日が賃金締切日の翌日でない場合は、改定日以降の最初の賃金締切日後6か月分が対象です。時間外手当を翌月に別途支給している場合は、6か月分の時間外手当が支給される日を「賃金を支給した日」とします

STEP4:6か月分の賃金支払日の翌日から2か月以内に支給申請

次の表は、パンフレットP.38の例(賃金締切日が月末・翌月15日払いの企業)にもとづくスケジュールです。

日付出来事
3月31日まで(改定日の前日まで)改定前の賃金規定等を3か月以上運用(キャリアアップ計画は3月31日までに提出・受理)
4月1日賃金規定等の改定日(賃金規定等の増額を適用した日)
4月1日〜9月30日6か月分の賃金算定期間(9月30日が6か月目の賃金締切日)
10月15日6か月目の賃金支払日
10月16日〜12月15日支給申請期間(賃金支払日の翌日から起算して2か月以内)
  • 支給申請期間は、就業規則上の賃金支払日ではなく、実際に賃金が支給された日の翌日から起算します。金融機関の休日で前倒し支給した場合は、その前倒し日が基準です(Q&A共通Q7)
  • 支給申請期間の末日が行政機関の休日に当たる場合は、その翌日が末日とみなされます。天災その他やむを得ない理由で期間内に申請できなかった場合は、理由がやんだ後1か月以内に、理由を記した書面を添えて申請できます(支給要領0601)
  • 郵送でも提出できますが、到着日が申請期間内である必要があります

電子申請を使う場合

「雇用関係助成金ポータル」(GビズIDでログイン)から、計画の届出と支給申請ができます。電子申請の場合は、コースごとにキャリアアップ計画書を作成します。最初に電子申請で計画書を提出していないと、ポータル上に支給申請画面が表示されません。

既に紙で計画を出している場合も、まだ取組を講じていなければ、改定日の前日までに電子で新たに計画書を提出すれば支給申請も電子で行えます(既に取組を講じている分は紙で申請します)。

支給申請の必要書類

賃金規定等改定コースの支給申請で提出する書類は、次の表のとおりです(パンフレットP.39〜40、支給要領3006)。

区分書類主な確認事項
申請書類キャリアアップ助成金支給申請書(様式第3号)記入漏れがないか
申請書類賃金規定等改定コース内訳(様式第3号・別添様式3)同上
申請書類支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)問4〜16に「いいえ」がある場合は支給を受けられない
申請書類支払方法・受取人住所届(未登録または口座変更の場合のみ)通帳の写し等の添付
添付書類管轄労働局長に受理されたキャリアアップ計画書(写)(変更届がある場合はそれも。電子申請の場合は不要)改定日の前日までに受理されているか
添付書類改定前後の就業規則または労働協約等(写)(新たに整備した場合は改定前の賃金規定等は不要)労働基準監督署の受理印、10人未満は申立書、改定前後で基本給が3%以上増額しているか
添付書類対象労働者の改定前後の雇用契約書または労働条件通知書等(写)有期雇用労働者等であるか、増額改定が確認できるか
添付書類対象労働者の改定前後の賃金台帳等(写)改定前3か月分、改定後6か月分(勤務した日数が11日以上の月が6か月に達するまで)
添付書類出勤簿またはタイムカード等(写)賃金台帳で出勤日数・労働時間数を確認できない場合のみ
添付書類賃金台帳等に関する確認書適用後6か月分の賃金が支給されていることを、事業主が対象労働者全員に確認しているか
条件に応じて委任状(原本)代理人が申請する場合
条件に応じて事業所確認票(様式第4号)常時雇用する労働者の数で中小企業事業主であることを証明する場合
条件に応じて職務評価を実施したことが分かる書類、職務評価結果を踏まえて賃金規定等を改定したことが分かる書類職務評価加算を受ける場合(正規雇用労働者の職務評価も必要)
条件に応じて昇給制度を新たに規定する前後の就業規則昇給制度加算を受ける場合

添付書類は原本の写しでなければならず、見やすいように原本を加工・転記して別途作成した書類は認められません。社会保険労務士等の代理人が加工した場合も同様です。原本と相違する内容が提出されると、不正受給となる場合があります(Q&A共通Q1)。労働局が必要と認める書類の提出を求められることもあります。

加算を取るときの注意点:職務評価と昇給制度

職務評価加算(20万円・大企業15万円)は、要件の解釈を誤って加算を受けられないケースが起こりやすい加算です。パンフレットP.41が挙げる6つのポイントを、そのまま押さえておいてください。

  1. 賃金規定等の改定より前(同日可)に職務評価を実施する。改定後に実施しても加算対象になりません
  2. 職務の内容・大きさを評価する。「勤務態度」「積極性・責任感」など労働者個人に対する評価は人事評価・能力評価であり、職務評価ではありません。人事考課など職務評価以外の手法を組み合わせる場合は、それぞれの賃金規定等への反映方法が明確になっている必要があります
  3. 職務評価に基づいて各等級の格付けを決定する。「昇給試験○点未満=1等級」のように職務の大きさに関わらず等級が決まる仕組みは、職務評価結果を反映したとは言えません
  4. 職務評価結果と賃金テーブルの相関関係を示す。職務評価結果・等級格付け・賃金額を並べて賃金規定等に記載するか、賃金決定の考え方が分かる別資料を作成します
  5. 手法は「要素別点数法」「単純比較法」「要素比較法」「分類法」のいずれでも構いません。ただし単純比較法・分類法では職務分析(職務内容や責任の程度を職務説明書に整理)が必要です。要素別点数法では、ウェイトを原則同一事業所内で共通にします
  6. 正規雇用労働者の職務評価も実施する。有期雇用労働者等だけを評価した場合は、加算対象になりません

職務評価は、厚生労働省の「働き方改革推進支援センター」で無料の窓口相談を受けられます。要素別点数法の流れは、「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル」(厚生労働省)に沿って進めるのが確実です。

昇給制度加算(20万円・大企業15万円)は、賃金規定等の改定時に併せて、雇用する全ての有期雇用労働者等に係る昇給制度を、キャリアアップ計画期間中に新たに規定した場合の加算です。ここでいう昇給制度は、正規雇用労働者に適用される昇給制度に準じた制度です。一部の労働者にしか適用されない制度では要件を満たしません。

賃金規定等を増額改定した日と昇給制度を新たに規定した日は、同一のキャリアアップ計画期間に含まれている必要があります(Q&A共通Q5)。パンフレットP.43には、「昇給は、勤務成績その他が良好な労働者について、毎年○月○日をもって行うものとする」といった就業規則の規定例が示されています。

他のコース・制度との関係

  • 正社員化コースとの関係:同じ事業所で正社員転換と賃上げの両方に取り組むことは可能です。支給要領の併給調整(0503)に、本コースと正社員化コースの間の制限は記載されていません。ただし、正社員化コースは転換後6か月の賃金を転換前6か月と比べて3%以上増額することが要件で、比較の仕方が異なります
  • 賃金規定等共通化コース(正規雇用労働者と共通の賃金規定等を新たに作成・適用した場合、1事業所60万円・大企業45万円)は別のコースです。「有期雇用労働者等の基本給を上げる」のが本コース、「正社員と共通の職務等に応じた賃金規定等を作る」のが共通化コースです
  • 短時間労働者労働時間延長支援コースとは、同じ労働者・同じ支給対象期間の処遇改善について併給されません
  • 業務改善助成金(事業場内最低賃金の引上げ+設備投資)と組み合わせる場合は、対象労働者を分けて設計する必要があります。詳細は業務改善助成金の記事をご覧ください
  • 研修とセットで人材育成に取り組む場合は、人材開発支援助成金が候補です。雇用系助成金の使い分けはキャリアアップ助成金と人材開発支援助成金の違いにまとめています

キャリアアップ助成金は雇用保険法に基づく「助成金」です。事業計画の審査で採否を競う「補助金」とは性格が異なり、支給要件を満たしているかを書類で確認する仕組みです。ただし労働局ではコンサルタントの実施や事前審査は行われないため(パンフレットP.11)、要件の達成状況は支給申請の前に事業主側で確認する必要があります。両者の違いは補助金と助成金の違いで解説しています。

実務でつまずきやすいポイント

当社がご相談を受けるなかで最初に確認するのは、次の5点です。

  1. 賃金規定等の「有無」と「運用期間」。口頭や個別の雇用契約書だけで時給を決めている会社は、まず賃金規定等を作るところから始まります。新規作成でも対象になりますが、整備前3か月分の賃金支払状況が確認できることが条件です
  2. 改定日の設定と計画届のタイミング。最低賃金改定に合わせるなら、公示日〜発効日前日の間に改定日を置き、その前日までに計画を提出しなければなりません。計画の受理に不備があると再提出後の措置からしか対象にならないため、1か月前を目安に提出します
  3. 全等級・端数・諸手当の3点チェック。対象者がいない等級も含めて全等級を3%以上上げているか、円未満の端数処理で2.98%になっていないか、定額の諸手当を減らしていないかを確認します。この3つのどれかで不支給になる相談が目立ちます
  4. 賃金台帳・出勤簿の整備。改定前3か月・改定後6か月の台帳で、出勤日数と労働時間が確認できる状態にしておきます。勤務日数11日未満の月は6か月に数えないため、シフトが少ない人は申請時期がずれることがあります
  5. 加算の順番。職務評価は改定より前に実施し、正社員も対象に含めます。昇給制度は「全ての有期雇用労働者等」に適用される規定として、計画期間中に新設します

助成金は後払いです。人件費の増額分は、自社で先に負担する前提で資金繰りを組んでください。賃上げに伴う設備投資や資金需要があれば、募集中273件の制度から自社に合うものを補助金かんたん診断で絞り込めます。「自社の賃金テーブルで要件を満たすか」「最低賃金改定とどう組み合わせるか」といった個別のご質問は、LINEでも受け付けています。

よくある質問

Q. これまで賃金規定がなく、時給は個別に決めていました。今から規定を作って上げても対象になりますか?

はい、対象になります。これまで賃金規定等がなく、新たに賃金規定等を作成して対象労働者の賃金を3%以上増額した場合も支給対象です。その場合は、規定の整備前の賃金台帳等と比較して基本給が3%以上増額していることを確認します(Q&A②Q1)。ただし、整備前3か月分の有期雇用労働者等への賃金支払状況が確認できることが事業主要件です。

Q. パートの一部だけ時給を上げたい場合はどうなりますか?

雇用形態別・職種別・部門別など、合理的な理由に基づく区分であれば助成対象です(例:事務職の賃金規定等のみを改定)。年齢のみを理由に対象者を限定することは認められません(Q&A②Q3・Q4)。なお、一部の賃金規定等のみを改定する場合は、その他の有期雇用労働者等の賃金規定等を減額改定していないことが必要です。

Q. 正社員の給与も3%上げないと申請できませんか?

いいえ、その必要はありません。本コースの要件は、有期雇用労働者等の基本給に係る賃金規定等の増額改定です。正規雇用労働者の賃金規定等については、必ずしも増額改定する必要はありません(Q&A②Q9)。ただし、有期雇用労働者等の増額改定時に、正規雇用労働者等の賃金規定等を減額改定していないことが要件です(支給要領3002ロ※3)。

Q. 10月の最低賃金改定に合わせて時給を上げる予定です。対象になりますか?

条件付きで対象になります。最低賃金の改定に伴い、新最低賃金を下回ることになる等級のみを3%以上増額改定した場合も支給を受けられます。ただし、各都道府県の新最低賃金の公示日以降、発効日の前日までに改定する必要があります。発効日以後に新最低賃金まで引き上げたのみで、最低賃金を上回る部分の増額が3%に満たない場合は対象になりません(Q&A②Q5、支給要領3001※2)。

Q. 支給申請は1年に何回できますか?上限はありますか?

上限は人数で定められており、同一支給申請年度における1適用事業所あたり合計100人までです(取り下げたものを除く)。職務評価加算と昇給制度加算は、それぞれ同一の事業所に対して1回限りです(支給要領3004・0503)。

同一年度内に複数回の改定を行う場合は、改定前3か月・改定後は支給申請日まで賃金規定等を運用していることが必要です。職種別に月をずらして改定した場合は、それぞれ6か月分の賃金支払後に申請できます(Q&A②Q12)。

Q. 申請から入金までどれくらいかかりますか?

当社が確認した範囲のパンフレット・Q&Aには、審査期間の目安は示されていません。パンフレットは「支給申請書等の内容によっては、審査に時間がかかることがあります」としています。支給・不支給決定は、行政不服審査法上の不服申立ての対象にならない点にも注意してください。入金時期を前提に資金繰りを組まず、賃上げ分の人件費は自社で先に負担できる計画にしておくことをおすすめします。

まとめ

  • 賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者等の基本給を定める賃金規定等を3%以上増額改定して適用した事業主への助成です。1人あたり中小企業4万〜7万円(引上げ率で4段階)で、1年度・1事業所100人までです
  • 職務評価加算・昇給制度加算は各20万円(大企業15万円)で、1事業所1回限りです。職務評価は改定より前に、正社員も含めて実施します
  • 順番は「計画提出(改定日の前日まで)→ 改定 → 6か月運用 → 賃金支払日の翌日から2か月以内に申請」です。改定前の規定を3か月以上運用していることも要件です
  • 全等級を3%以上上げる、端数で2.98%にしない、定額の諸手当を減らさない、の3点を守ります。最低賃金到達分はカウントされないため、最低賃金改定に合わせるなら公示日〜発効日前日に改定します
  • 対象労働者は、改定日の3か月以上前から雇用され、6か月間雇用保険被保険者で、3親等以内の親族でなく、支給申請日に離職していない人です。改定直前の入社者や退職予定者は人数に入りません

自社の賃金テーブルでいくら受け取れるか、最低賃金改定とどう組み合わせるかは、会社ごとに判断が分かれます。個別のご質問はLINEでも受け付けています。賃上げとあわせて使える補助金は、募集中273件から絞り込める補助金かんたん診断でご確認ください。

参考(一次情報)