新事業進出・ものづくり補助金の加点17項目と減点5項目|審査で有利・不利になる条件

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の加点項目は17種類、減点項目は5種類です(第1回公募要領3-1「審査項目」(8)(9))。認定・宣言の取得状況やこれまでの補助金利用歴によって、審査の有利・不利が大きく変わります。
- 加点はすべて申請締切日(2026年10月30日18:00)時点で満たしている必要があり、審査中や採択後に取得しても間に合いません
- パートナーシップ構築宣言・くるみん・えるぼし・健康経営優良法人・経営革新計画・事業継続力強化計画・DX認定は、取得そのものに数週間〜数年かかる認定・宣言系の加点です
- 減点は「賃上げ加点の未達」「過剰投資」「他の補助事業の事業化停滞」「補助金複数回利用」「基本要件未達」の5種類。過去に類似の大型補助金を使ったことがある事業者ほど、知らずに該当しているケースが少なくありません
制度全体(3つの枠・補助率・対象者・受給歴による対象外規定)はピラー記事で解説しています。この記事は審査で加点・減点になる条件だけに絞った各論です。認定取得の準備スケジュールは補助金の加点項目一覧と準備ガイドも参考にしてください。
まず確認:加点は「申請締切日時点で満たしている」必要がある
公募要領は加点項目の説明に先立ち、「加点項目は申請締切日時点で満たしている必要があります」と明記しています。パートナーシップ構築宣言のように数日で宣言できるものもあれば、経営革新計画やくるみん認定のように取得そのものに数か月〜数年かかるものもあるため、「採択されてから加点分の準備をする」という順番は成立しません。狙う加点があるなら、公募期間(2026年6月29日〜10月30日18:00)を待たずに、今の準備状況を棚卸しすることが第一歩です。
加点項目17種類の一覧表
| 加点項目 | 内容(要約) | 備考 |
|---|---|---|
| ①パートナーシップ構築宣言 | 令和8年1月1日更新のひな形で宣言を公表していること | 自社で宣言を公表するだけ |
| ②くるみん加点 | トライくるみん・くるみん・プラチナくるみんのいずれかの認定 | 取り方はこちら |
| ③えるぼし加点 | えるぼし1〜3段階・プラチナえるぼしのいずれかの認定 | 取り方はこちら |
| ④健康経営優良法人加点 | 健康経営優良法人2026に認定されていること | 取り方はこちら |
| ⑤再生事業者加点 | 中小企業活性化協議会等の支援で再生計画等を策定中・策定済(3年以内成立) | 該当有無は個別事情による |
| ⑥経営革新計画加点 | 申請締切日時点で有効な経営革新計画の承認 | 取り方はこちら |
| ⑦事業継続力強化計画加点 | 申請締切日時点で有効な(連携)事業継続力強化計画 | 取り方はこちら |
| ⑧DX認定加点 | 申請締切日時点で有効なDX認定 | 経済産業省のDX認定制度 |
| ⑨J-Startup/J-Startup地域版加点 | 選定事業者であること | 選定制のため新規取得は困難 |
| ⑩新規輸出1万者支援プログラム加点 | ポータルサイトで登録完了 | グローバル枠のみ対象 |
| ⑪日本の食輸出1万者支援プログラム加点 | ポータルサイトで登録完了 | グローバル枠のみ対象 |
| ⑫研究開発費・試験研究費計上加点 | 会計上の研究開発費/税務上の試験研究費を所定書類で計上・研究開発を推進 | 前期までの実績が必要 |
| ⑬技術情報管理認証制度加点 | 同制度の認証取得 | 認証取得には準備期間が必要 |
| ⑭成長加速マッチングサービス加点 | 会員登録+挑戦課題の登録 | 登録のみで対応可能 |
| ⑮アトツギ甲子園加点 | ピッチ大会への出場実績 | 大会スケジュールに依存 |
| ⑯地域別最低賃金引上げに係る加点 | 2024年10月〜2025年9月の間、地域別最低賃金以上〜2025年度改定後未満で雇用する従業員が全従業員の30%以上の月が3か月以上 | 賃金台帳から算定 |
| ⑰事業場内最低賃金引上げに係る加点 | 2025年7月と応募申請直近月を比較し、全国目安の63円以上を引き上げ | 賃金台帳から算定 |
(出典:第1回公募要領3-1(8)加点項目)
認定・宣言の取得に時間がかかる加点
パートナーシップ構築宣言(①)
「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトで宣言を公表するだけで対象になります。ただし公募要領は「令和8年1月1日に更新されたひな形」を利用した宣言であることを条件にしており、それ以前の古いひな形のまま宣言していると加点の対象にならない可能性があります。宣言内容を見直したことがない場合は、まずポータルサイトで現在のひな形との差分を確認してください。
くるみん・えるぼし(②③)と、加点とは別に効く基本要件
くるみん・えるぼし認定の取り方・段階ごとの取得期間はくるみん・えるぼし認定の取り方で解説しています。ここで見落としやすいのは、本補助金では加点とは別に、くるみん認定が基本要件の免除にも効くという点です。
- 本補助金は全申請者に「一般事業主行動計画(次世代法)の公表」を必須の基本要件として課しています(申請締切日時点で有効な計画を「両立支援のひろば」に公表。公表手続きに1〜2週間)。これはくるみん・えるぼしの加点とは無関係に、全員が満たす必要がある要件です
- さらに「子育て等に関する職場環境整備に向けた取り組み」も別の基本要件として課されていますが、「プラチナくるみん」「くるみん」「トライくるみん」のいずれかを取得している事業者はこの要件を免除されます
つまり、くるみん認定は「加点②」だけでなく「基本要件の免除」にも効く二重のメリットがあります。えるぼしにはこの免除規定はありません(公募要領原文で確認できるのはくるみんのみ)。
健康経営優良法人(④)
加点要件は「健康経営優良法人2026」に認定されていることと具体的な年度名で明記されており、「認定されていれば年度を問わない」という書き方ではありません。健康経営優良法人の取り方記事で解説している次の認定サイクルは「2027」ですが、本補助金第1回の加点対象として公募要領に明記されているのは2026認定です。2027認定がこの加点に使えるかどうかは公募要領の原文からは判断できないため、2026認定を持っていない事業者は、事務局または公募要領の改訂版で個別に確認してください。
経営革新計画(⑥)
都道府県ごとの承認期間の違いや申請前の注意点は経営革新計画の取り方記事で解説しています。同記事では愛知県が本補助金の締切から逆算して独自の申請締切(経営革新計画は9月30日)を設けている例も紹介しています。「申請締切日時点で有効」が条件のため、審査中の状態では加点対象になりません。
事業継続力強化計画(⑦)
取り方・標準45日の審査は事業継続力強化計画の取り方記事で解説しています。本加点は「(連携)事業継続力強化計画」と、単独版だけでなく複数社が連携する「連携事業継続力強化計画」も対象に含まれるのが特徴です。また、計画の記載内容として、社員や事業所の防災の取り組みだけでなく、自社が製造する災害対応製品等の供給体制構築についても盛り込めると公募要領が案内しています。防災製品・サービスを扱う事業者は、この点を計画に反映すると審査面でも一貫性が出やすくなります。
DX認定(⑧)
「申請締切日時点で有効なDX認定を取得している事業者」が加点対象です。DX認定は経済産業省が所管する制度で、公募要領内に詳細な取得要件の記載はないため、取得を検討する場合は制度所管省庁の案内を別途確認してください。
ポータル登録・実績で満たせる加点
J-Startup・輸出関連プログラム(⑨⑩⑪)
J-Startup・J-Startup地域版は選定制のため、加点目的で新規に狙うのは現実的ではありません。一方、新規輸出1万者支援プログラムと日本の食輸出1万者支援プログラムは、それぞれのポータルサイトで登録するだけで加点対象になります。ただし公募要領は⑩⑪について「グローバル枠に申請する場合のみ対象」と明記しており、革新的新製品・サービス枠・新事業進出枠では加点になりません。
成長加速マッチングサービス(⑭)
中小企業庁の「成長加速マッチングサービス」で会員登録し、挑戦課題を登録するだけで対象になります。すぐに着手できる加点の一つです。
アトツギ甲子園(⑮)
「アトツギ甲子園のピッチ大会に出場した事業者」が対象です。出場には大会自体のエントリー・選考スケジュールがあるため、公募締切に合わせて新規に出場するのは現実的ではありません。過去に出場実績がある事業者向けの加点と捉えるのが実務的です。
財務・取り組み実績で判定される加点
研究開発費・試験研究費計上(⑫)
「申請締切の前期までに、会計上の研究開発費または税務上の試験研究費を定められた書類において計上し、研究開発を推進している事業者」が対象です。前期の会計処理・税務処理が条件になるため、今期からの計上では間に合いません。
技術情報管理認証制度(⑬)
同制度の認証取得が条件です。認証取得には準備・審査期間が必要なため、他の認定系加点と同様に早めの着手が必要です。
最低賃金引上げ系の2項目(⑯⑰)
いずれも過去の一定期間の賃金水準を比較する加点で、これから新たに賃上げしても間に合いません。
- ⑯地域別最低賃金引上げに係る加点:2024年10月〜2025年9月の間で、地域別最低賃金以上〜2025年度改定後の地域別最低賃金未満で雇用していた従業員が、全従業員の30%以上となる月が3か月以上あること
- ⑰事業場内最低賃金引上げに係る加点:2025年7月と応募申請直近月の事業場内最低賃金を比較し、全国目安で示された63円以上を引き上げていること
いずれも自社の賃金台帳から遡って算定する必要があるため、加点を狙う場合は早めに人事・労務担当者に確認してください。⑯は地域別最低賃金引上げに係る補助率引上げの特例の対象外事業者でも単独で申請・獲得できますが、その場合でも基本要件(3)の事業場内最賃水準要件は免除されません(⑯を取っても③の基本要件は別途満たす必要があります)。
知らずに該当しやすい減点5項目
①賃上げ加点未達による18か月減点
中小企業庁が所管する補助金(ものづくり補助金・IT導入補助金・デジタル化・AI導入補助金・持続化補助金・事業承継M&A補助金・成長加速化補助金・事業再構築補助金・省力化投資補助金・Go-Tech事業。令和8年4月時点)で賃上げに関する加点を受けて採択されたにもかかわらず、加点項目要件を達成できなかった場合、事業化状況報告等で未達が報告されてから18か月間、本補助金への申請で正当な理由がない限り大幅に減点されます。この仕組み自体の詳しい解説は賃上げ加点と返還リスクの記事も参考にしてください(対象となる補助金の一覧は制度・時点ごとに規定されているため、本記事の一覧は本補助金の公募要領〔令和8年4月時点〕にもとづきます)。
②過剰投資の抑制
特定の期間に類似のテーマ・設備等に関する申請が集中している場合、一時的な流行による過剰投資と判断され、大幅な減点の対象になります。公募要領は対象となる具体的なテーマ・分野を列挙していないため、どのような投資が該当するかは公募要領からは判断できません。市場分析の根拠を自社固有のデータで具体的に示すことが、この減点を避けるうえでの基本になります。
③他の補助事業の事業化が進展していない事業者
過去に新事業進出補助金・事業再構築補助金・ものづくり補助金の交付を受けている場合、その補助事業の直近の事業化状況報告等における事業化段階が3段階以下だと減点されます。過去の補助事業がまだ十分に事業化(売上・利益化)できていない状態での新規申請は不利になる、という規定です。
④補助金複数回利用者
申請締切日時点を起点に過去3年間で、ものづくり補助金または新事業進出補助金の交付決定を1回受けている事業者は減点対象です。対象外になる事業者(ピラー記事)で解説している「16か月以内の採択・交付決定中は対象外」「過去3年で2回以上は対象外」という申請不可のラインとは別に、1回受給していれば対象外にはならないが減点にはなるという中間的な扱いがある点に注意してください。
⑤補助要件未達事業者
ものづくり補助金または新事業進出補助金の第1回公募以降に交付決定を受けて事業を実施したものの、基本要件(賃上げ要件・事業場内最賃水準要件)を達成できなかった事業者は減点対象です。
よくある質問
Q. 加点はいくつでも重ねて申請できますか?
公募要領には加点の合計数や配点上限についての明記はありません。該当する加点項目はすべて電子申請システム上で個別に選択・申請するのが基本ですが、各加点項目の配点(点数)自体は公募要領に記載がなく非公開のため、加点の多さが採択順位にどの程度影響するかは公募要領からは分かりません。
Q. くるみんや経営革新計画をこれから取得しても今回の締切に間に合いますか?
制度によります。パートナーシップ構築宣言やポータル登録系(成長加速マッチングサービス等)は数日で対応できますが、経営革新計画(都道府県により承認期間が異なる)やくるみん認定(実質2年半〜3年)は、10月30日の締切までに新規取得するのは一般的に間に合いません。今回間に合わない場合は、次回以降の公募や他の補助金の加点に向けて準備を進めるのが現実的です。準備の目安は各認定の個別記事、または加点項目一覧と準備ガイドを参照してください。
Q. 健康経営優良法人はどの年度の認定が対象ですか?
第1回公募要領が明記しているのは「健康経営優良法人2026」です。2027認定サイクルへの言及はないため、2026認定を持っていない場合は加点対象になるかを事務局に個別確認することをおすすめします。
Q. 減点されると不採択になりますか?
公募要領の文言は「大幅な減点を実施します」であり、この5項目について「不採択」と明記されているわけではありません。ただし審査は加点・減点を含めた総合評価で行われるため、実質的に採択の可能性を下げる要素になります。該当する場合は、事業計画書で減点分を上回る優位性・実現可能性を具体的に示すことが重要です。
Q. 過去にものづくり補助金を使ったことがあります。今回申請できますか?
申請できるかどうか(対象外規定)と、申請したときに減点されるかどうかは別の話です。過去3年以内に2回以上交付決定を受けている場合や、直近の交付決定中・採択後16か月以内の場合は対象外(ピラー記事)ですが、それに該当しない1回だけの利用歴でも、事業化段階や基本要件の達成状況によっては本記事の減点③④⑤の対象になり得ます。過去の交付決定通知書・事業化状況報告の内容を確認したうえで申請可否と減点リスクを整理することをおすすめします。
まとめ
- 加点項目は17種類、減点項目は5種類(第1回公募要領3-1(8)(9))
- 加点はすべて申請締切日時点で満たしている必要があり、認定系(くるみん・経営革新計画・BCP等)は数か月〜数年の準備期間を要する
- くるみん認定は加点だけでなく、「子育て等に関する職場環境整備」の基本要件を免除する効果もある
- 健康経営優良法人加点は「2026」年度認定と明記されており、2027認定での取り扱いは公募要領からは読み取れない
- 減点は賃上げ加点未達(18か月)・過剰投資・事業化停滞・複数回利用・基本要件未達の5種類。過去に類似の大型補助金を使ったことがある事業者ほど確認が必要
自社がどの加点・減点に該当しそうかは、補助金かんたん診断(無料・3分)や公式LINEでご相談ください。目的別の制度の探し方は目的から探すにまとめています。
参考(一次情報)
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト(中小企業基盤整備機構)——公募要領・様式のダウンロード
- 第1回公募要領(1.2版・令和8年8月)——1-3-1(基本要件)・3-1(8)(9)(加点・減点項目)(2026年8月25日確認)
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