デジタル化・AI導入補助金の交付決定後|実績報告の出し方と入金までの全手順

交付決定前に契約・発注・納品・支払いを行った場合、補助金を受けることはできません。そして交付決定は入金ではありません。実際にお金が振り込まれるのは、事業を完了して実績報告を提出し、事務局の確定検査を通過して「補助金確定内容の承認」を済ませたあと——目安として補助金額の確定から約1か月後です。
この記事だけで交付決定後の手続きがすべて分かるよう、次の内容を時系列で整理しました。
- 契約・発注は必ず「交付決定後」かつ全手続きの最初。順番を誤ると交付決定の取消しになる場合があります
- 支払いは銀行振込かクレジットカード1回払いのみ。現金払いは認められません
- 実績報告は申請マイページからIT導入支援事業者と共同で作成し、SMS認証のうえ提出します。添付ファイルは10MB未満のjpg・jpeg・png・pdfのみです
- 確定検査のあとに「補助金確定内容の承認」という必須手続きがあり、これを行わないと補助金額が確定せず交付されません
- 効果報告は入金後も数年にわたり続きます。導入日から1年未満でITツールの利用をやめると、事由を問わず返還の対象になります
通常枠の公募要領と事務局の「事業実施・実績報告マニュアル」を軸に、インボイス枠(インボイス対応類型)で規定が異なる箇所は都度注記します。申請前の流れは申請方法とスケジュールの記事、申請時にそろえる書類は必要書類チェックリスト、制度の全体像は制度ガイドをご覧ください。
全体の流れ:交付決定から入金・効果報告まで
交付決定を受けた申請者は「補助事業者」となり、そこから補助事業を開始できます。入金までの道のりを最初に俯瞰しておきましょう。
| 段階 | やること | 誰が |
|---|---|---|
| 1. 交付決定 | 通知を受け取る。ここから補助事業を開始できる | 事務局 → 補助事業者 |
| 2. 事業の実施 | ITツールの契約・発注 → 納品・導入 → 請求・支払い | 補助事業者/IT導入支援事業者 |
| 3. 実績報告 | 申請マイページで証憑をそろえ、共同作成のうえSMS認証して提出 | 補助事業者/IT導入支援事業者 |
| 4. 確定検査 | 事務局が手続きの順番や証憑を確認。不備があれば差戻し | 事務局 |
| 5. 補助金確定内容の承認 | 確定額を申請マイページで確認し、SMS認証で承認 | 補助事業者 |
| 6. 補助金の交付 | 登録した口座へ入金(確定から約1か月程度) | 事務局 → 補助事業者 |
| 7. 効果報告 | 生産性の数値などを報告(通常枠は事業計画期間前+3年度分) | 補助事業者/IT導入支援事業者 |
公募要領では補助事業の実施・実績報告期間を「交付決定日~6ヶ月間程度」としています。具体的な期限は募集回ごとに決まっています(後述)。
段階5の「補助金確定内容の承認」は見落とされがちですが、承認しない限り補助金は振り込まれません。実績報告を出して安心してしまい、事務局からの連絡に気づかないケースが実際にあります。この記事では段階3〜6を特に詳しく解説します。
最重要:3つの手続きの順番
公募要領は「事業実施」を次の3つを一連で行うことと定義しています。
| No. | 手続き | 注意点 |
|---|---|---|
| (1) | ITツールの契約、発注 | 交付決定前に契約・発注した場合は補助対象とならない |
| (2) | ITツールの納品、導入 | 納品日・納品内容・導入開始日に相違がないか確認する |
| (3) | ITツール代金の請求・支払い | 請求書と支払いが完了したことが分かる証憑を保管する |
ここで守るべきルールは2つです。
1つめ。「(1)契約、発注」は全ての手続きの中で先立って行われる必要があります。そのあとに続く「(2)納品、導入」と「(3)請求・支払い」の順番は問われません。
2つめ。ITツール代金の支払いの前に、必ずIT導入支援事業者から補助事業者へ請求が行われている必要があります。請求より先に払ってしまうと要件を満たしません。
公募要領は、実績報告後の確定検査で次の状態が確認された場合、補助金の交付が行えず、交付決定の取消しとなる場合があるとしています。
- 「(1)契約、発注」よりも先に「(2)納品、導入」「(3)請求・支払い」が行われていた
- ITツール代金の請求よりも先に支払いが行われていた
留意事項にも「交付決定前に契約、発注、納品、支払い等を行った場合は、補助金を受けることができない」と明記されています。交付決定の通知を待たずに動き出さないでください。
なお、実績報告が提出されるまでに、全てのITツールにおいて事業の実施が完了し、ITツールの利用・運用が開始されている必要があります。どの経費が補助対象になるかは対象経費の記事で整理しています。
支払い方法には制限があります
公募要領は、支払いの事実に関する客観性を担保するため、支払方法を原則、銀行振込及びクレジットカード1回払いのみとしています。その他の方法で支払った場合は補助金の交付を受けることができません。
| 支払方法 | 条件 |
|---|---|
| 銀行振込 | 補助事業者名義の口座から、IT導入支援事業者名義の口座へ振込。金融機関窓口やATMでも現金による支払いは認められない。口座振替も可(別途「口座振替依頼書」等が必要) |
| クレジットカード | 1回(一括)払いのみ。分割払い・リボ払いは不可。法人申請なら法人名義のカード、個人事業主なら代表者本人名義のカード |
留意事項では「補助事業者名義でない口座より支払っている場合、補助金を受けることはできない」とされています。代表者個人の口座から法人の支払いを立て替える、といった処理は避けてください。
実績報告は申請マイページから共同で作成します
事業(契約・納品・支払い)が完了したら、実績報告に進みます。ここからは事務局の「事業実施・実績報告マニュアル」に沿って、実際の提出手順を見ていきます。
実績報告は補助事業者が単独で完結する手続きではありません。マニュアルでは「実績報告は、補助事業者が開始した後に、IT導入支援事業者と共同で作成します。提出前に、補助事業者が最終確認を行います」と定められています。
提出までの9ステップ
| 手順 | 誰が | やること |
|---|---|---|
| 1 | 補助事業者 | 申請マイページにログインし、実績報告を開始する |
| 2 | 補助事業者 | 請求書・支払証憑などのファイルを添付する |
| 3 | 補助事業者 | 補助金の交付を受ける口座情報を入力する |
| 4 | 補助事業者 | 入力内容を確認し、IT導入支援事業者へ引き継ぐ |
| 5〜7 | IT導入支援事業者 | 契約・納品・支払いに関する情報をポータルで入力・確認する |
| 8 | 補助事業者 | 全体の入力内容を最終確認する |
| 9 | 補助事業者 | SMS認証を行い、提出する |
途中にIT導入支援事業者の入力工程(手順5〜7)が挟まるのがポイントです。自社の入力を終えても、IT導入支援事業者の作業が済むまで提出できません。期限ぎりぎりに着手すると、相手方の作業時間が確保できず間に合わないおそれがあります。当社が申請をサポートしてきた経験では、支払いが完了したらすぐ実績報告に着手し、IT導入支援事業者と「いつまでに入力するか」を先に合意しておく進め方が確実です。
添付ファイルの形式・サイズに注意
マニュアルでは、添付ファイルは10MB未満の「.jpg」「.jpeg」「.png」「.pdf」形式のみ対応とされています。
実務でつまずきやすいのは次の2点です。
- iPhoneで撮影した写真はHEIC形式になっていることがあり、そのままでは添付できません。設定を変更するか、jpgに変換してから添付してください
- 通帳や請求書をまとめてスキャンしたPDFは10MBを超えることがあります。ページを分けるか、解像度を調整して10MB未満に収めてください
実績報告で提出する書類と証憑の要件
実績報告で提出する証憑は次のとおりです。「用意したのに要件を満たしていなかった」が最も多い工程なので、細部の条件まで押さえてください。
| 必要な書類 | 要件・注意点 |
|---|---|
| 請求に係る書類 | IT導入支援事業者から補助事業者へ発行された請求書(詳細は下記) |
| 支払いに係る書類(銀行振込) | 振込明細書・振込受付書・利用明細書・インターネットバンキングの取引完了画面・通帳の表紙と該当ページなど。補助事業者側の書類のみが認められ、IT導入支援事業者の取引明細や領収証は認められない |
| 支払いに係る書類(クレカ) | クレジットカード会社発行の利用明細(支払日・支払元名・支払先名・支払金額・利用内容・引き落とし口座情報) |
| 補助金の交付を受ける口座情報 | 通帳の表紙+表紙裏面など。日本国内の口座に限る。キャッシュカードの提出は認められない |
| ITツールの利用を証する資料 | 導入したソフトウェア名が分かるキャプチャ、利用者が補助事業者であることが分かる画面のキャプチャなど |
| 実施実態資料(該当者のみ) | 大分類IIIの役務(導入コンサルティング・導入設定等)を導入した場合で、事務局から指示があった場合のみ提出 |
請求書は「一式」表記では通りません
請求書まわりはマニュアルで細かく要件が定められています。確定検査の差戻し理由になりやすいポイントです。
- 複数のITツールをまとめた「一式」表記は認められません。ITツールごとの明細が分かる請求書が必要です
- 値引きがある場合は、値引き後の単価が明確であることが必要です。合計から一括で値引きされていて各ツールの単価が分からない請求書は認められません
- 月額・年額で利用料金が定められているITツール(サブスクリプション型のソフトウェア等)は、請求書上で利用期間が確認できることが必要です。請求書に記載がない場合は、請求・支払内訳シートの備考欄に利用期間を記載します
請求書はIT導入支援事業者が発行するものですが、不備があって困るのは補助事業者側です。受け取った時点で「ツールごとに明細が分かれているか」「利用期間が書かれているか」を確認し、要件を満たしていなければ発行し直しを依頼してください。
振込証憑は「口座名義人が見えるか」で決まります
振込の証憑には、支払日・支払元口座情報(金融機関名・口座番号・口座名義人等)・支払先名・支払金額が必要で、振込が完了したことと利用した金融機関が分かる必要があります。
実務では、この「口座名義人が見えるかどうか」でつまずくことが多い部分です。ネットバンキングの完了画面は名義人が省略されることがあるので、支払い直後のスクリーンショットだけに頼らず、名義が確認できる明細を別途取得しておくと安全です。
インボイス枠(インボイス対応類型)は提出書類が追加されます
上の表は通常枠の書類です。インボイス枠の公募要領では、これに加えて次の提出が定められています。
- ハードウェアの購入に関する資料:納品書、導入・設置状況が分かる現物写真、対象物にラベルを添付した状況が分かる現物写真(複数台なら全台分)
- 従業員一覧:公募要領に定める小規模事業者に該当する場合、指定様式での提出が必要
- 適格請求書発行事業者の登録通知書(インボイス登録の加点を受ける場合・該当者のみ):実績報告までにインボイス登録を行い通知書を提出する必要があります。公募要領では、交付申請日から実績報告日までに登録を行うことができなかった場合には、原則として交付決定の取消しとなり、補助金の交付を受けることができないとされています。この加点を受けた事業者は登録のタイミングに特に注意してください
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インボイス枠の制度内容はインボイス枠の解説記事で詳しく整理しています。
募集回ごとの期限
事業実施期間と実績報告期限は募集回ごとに決まっています(通常枠・インボイス枠とも同じ日程です)。2026年9月時点で公表されている日程は次のとおりです。
| 締切回 | 締切日 | 交付決定日 | 事業実施期間・実績報告期限 |
|---|---|---|---|
| 1次 | 2026年5月12日 17:00 | 2026年6月18日 | 2026年12月25日 17:00(予定) |
| 2次 | 2026年6月15日 17:00 | 2026年7月23日 | 2027年1月29日 17:00(予定) |
| 3次 | 2026年7月21日 17:00 | 2026年9月2日 | 2027年2月26日 17:00(予定) |
| 4次 | 2026年8月25日 17:00 | 2026年10月7日(予定) | 2027年3月31日 17:00(予定) |
| 5次 | 2026年9月29日 17:00 | 2026年11月9日(予定) | 2027年4月30日 17:00(予定) |
| 6次 | 2026年10月30日 17:00 | 2026年12月10日(予定) | 2027年5月31日 17:00(予定) |
| 7次 | 2026年12月1日 17:00 | 2027年1月19日(予定) | 2027年7月30日 17:00(予定) |
事務局は「締切時間を過ぎた場合は、いかなる理由であっても受付対応は一切いたしかねます」としています。締切直前はアクセスが集中して画面遷移やSMS認証に通常より時間がかかる可能性があるとも案内されているので、余裕をもって提出してください。
前述のとおり実績報告にはIT導入支援事業者の入力工程が挟まるため、実質的な自社の作業期限は表の日付よりさらに手前と考えておくべきです。
確定検査と不備訂正(差戻し)
提出された実績報告は、事務局が確定検査を行います。手続きの順番(契約→納品→請求→支払い)、証憑の内容、金額などが交付決定の内容と合っているかを確認する工程です。
差戻しが来たら【実績報告情報編集】から訂正します
確定検査で確認事項・訂正事項があると、事務局から不備訂正の依頼(差戻し)があります。申請マイページの【実績報告情報編集】から該当箇所を訂正し、再提出してください。
ここで重要なのが期日です。マニュアルでは「不備訂正期日までに不備が解消しなかった場合は、交付決定の取消しとなり補助金の交付を受けることができません」とされています。差戻し=不採択ではありませんが、放置すれば補助金そのものを失います。
実務でよく見る差戻し理由は、この記事で挙げてきた要件の裏返しです。
- 振込明細に口座名義人が写っていない
- 請求書が一式表記でツールごとの明細が分からない
- サブスクリプション型ツールの利用期間が請求書から読み取れない
- 納品日や導入日が交付申請の内容と食い違っている
差戻しの内容によっては、IT導入支援事業者側の入力や請求書の再発行が必要になります。不備の連絡が来たら即日IT導入支援事業者へ共有し、どちらが何を直すかを切り分けて動いてください。期日直前の連携ミスが一番危険です。
「補助金確定内容の承認」をしないと入金されません
確定検査が完了すると、事務局から「補助金確定内容の承認」の依頼が届きます。申請マイページで確定検査の結果と交付される補助金額を確認し、SMS認証のうえ承認する手続きです。
マニュアルには「『補助金確定内容の承認』が行われない場合、補助金額が確定せず、交付されません」と明記されています。実績報告の提出はゴールではなく、このワンステップが残っていることを必ず覚えておいてください。実績報告を出したあとは気が抜けてしまい、事務局からの通知を見落とすケースが実際にあります。申請マイページを定期的に確認する担当者を決めておくと確実です。
入金は補助金額の確定から約1か月程度
承認を済ませて補助金額が確定すると、あとは入金を待つだけです。マニュアルでは「補助金の交付は、補助金額確定から約1か月程度で行われます」とされており、交付にあたって補助事業者側の追加対応はありません。
資金繰りの観点では、「交付決定→ツール代金の全額支払い→実績報告→確定検査→承認→約1か月後に入金」という時間軸になります。ITツール代金は一度自社で全額を立て替える前提で、支払いから入金まで数か月かかる場合があることを見込んで資金計画を立ててください。
なお、補助金の交付が完了するまでは、次に説明する事業実施効果報告を開始できません。
効果報告は入金後も数年にわたり続きます
以下はまず通常枠の規定です。事業終了後、生産性向上に係る数値目標に関する情報(営業利益、人件費、減価償却費、事業者当たりの総労働時間、1人当たり給与支給総額、事業場内最低賃金など)と、ITツールを継続的に活用していることを証する書類等を報告します。数値目標の根拠となる決算書及び関係書類の提出も求められます。
通常枠の効果報告スケジュール
| 年度 | 効果報告対象期間 | 効果報告期間 |
|---|---|---|
| 事業計画期間前 | ITツール導入後~ | 2027年3月~(受付スケジュールは順次公表) |
| 1年度目 | 交付申請時点の翌事業年度 | 2028年4月~2029年1月 |
| 2年度目 | 前年度の効果報告対象期間の翌事業年度 | 2029年4月~2030年1月 |
| 3年度目 | 前年度の効果報告対象期間の翌事業年度 | 2030年4月~2031年1月 |
事業計画期間前の効果報告では、ITツールを継続的に活用していることを証する書類等の報告のみを求められます。
インボイス枠は報告の内容・回数が異なります
インボイス枠(インボイス対応類型)の公募要領では、効果報告の規定が通常枠と次の点で異なります。
- 報告するのはインボイス制度への対応状況とITツールを継続的に活用していることを証する書類等です(賃上げの実施状況の報告が必要になるのは、賃上げ目標が必須となる事業者と、賃上げによる加点を受けた事業者)
- 2年度目の報告は不要です(事業計画期間前・1年度目・3年度目の3回)
- 3年度目の効果報告対象期間は「交付申請時点より決算期を3期経過した事業年度」と定義されています
導入から1年未満で利用をやめると返還対象です
見落とされがちな規定ですが、マニュアルでは、導入日から1年未満で補助事業者がITツールを利用しなくなった場合、または実績報告で提出した利用期間未満で利用しなくなった場合は、事由を問わず補助金の全部又は一部が返還の対象とされています(補助事業者の責めに帰することのできない場合を除く)。
「入金されたからもう解約してよい」ということにはなりません。効果報告の期間中はもちろん、少なくとも導入日から1年間(実績報告で1年超の利用期間を提出した場合はその期間)はITツールの利用を継続する前提で導入を計画してください。ツール選びの段階で長く使えるものを選ぶことが最大の防御策です。ベンダー・ツールの選び方はIT導入支援事業者の選び方の記事で解説しています。
辞退が必要になる場合
次に該当する場合は辞退の手続きが必要です。
- 本事業で導入したITツールを解約・利用停止した場合(複数導入したうちの一部の解約でも、辞退とみなす場合があります)
- 廃業、倒産、事業廃止、事業譲渡、吸収合併等により補助事業を取りやめた場合
なお、補助金を受け取る前(交付決定後から、実績報告を経て補助金の交付を受けるまで)に事業を中止する場合は「取下げ」であり、公募要領では取下げをした場合は次回以降の締切りまでに交付申請が可能とされています。補助金受領後の「辞退」とは扱いが異なります。
辞退した場合、交付規程に基づき交付された補助金の全部又は一部の返還が必要となる場合があります。返還が必要となる場合は、補助金受領の日から返還金納付の日までの日数に応じた加算金の納付が必要で、納付が遅れると延滞金が発生します。
さらに、賃上げ目標が必須となる事業者(一部の例外を除く)は、効果報告前および賃上げ目標の達成状況判定前に辞退すると、賃上げ目標の要件未達成とみなされ補助金の全額返還となります。賃上げ要件まわりは賃上げ加点と返還リスクの記事で詳しく整理しています。
未報告・未達の場合
賃上げ目標が必須となる申請で効果報告が期間内に提出されなかった場合や、公募要領の該当要件を満たさないことが効果報告で確認された場合、補助金の全部又は一部の返還を求められます。
また効果報告で事業実態がない、ITツールが導入されていない等の疑義が生じた場合は事務局から確認の連絡があり、補助事業が遂行されていないことが発覚した場合は交付決定の取消しや補助金の返還、是正措置要求などの対応がとられる場合があります。
取得財産の管理と書類の5年間保管
入金後の義務は効果報告だけではありません。財産管理と書類保管のルールも押さえておきましょう。
単価50万円以上のITツールは管理台帳が必要です
マニュアルの必要書類一覧では、取得したITツールの単価が50万円以上の場合、取得財産等管理台帳(交付規程様式第3)を備えて管理することとされています。通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型)のいずれも対象です。
なお、マニュアルの詳細ページでは、処分制限財産に該当するのは「取得価格(又は効用の増加価格)が単価50万円以上」「販売形態が『買取』」「所定のカテゴリーに該当する」の全条件を満たすITツールとされています。サブスクリプション型など買取でないツールは、単価50万円以上でも処分制限財産に該当しない場合があります。自社のツールが該当するかは、マニュアルの該当ページ(取得財産等管理台帳の項)で確認してください。
台帳は申請マイページの実績報告提出確認画面から自動出力できます。実績報告を提出するタイミングで出力し、他の証憑と一緒に保管しておくと、後述の検査対応で慌てずに済みます。
書類は年度終了後5年間保管します
留意事項では、事務局・中小機構が行う検査や会計検査院による会計検査に備え、補助対象事業に係る全ての書類等の情報を補助事業の完了(廃止の場合を含む)の日の属する年度終了後5年間保管し、閲覧・提出に協力しなければならないとされています。
対象として挙げられているのは、交付決定通知、契約書、注文書、納品書、導入通知書、請求書、振込受領書、領収書、役務の実施実態資料(業務日誌、勤怠管理簿)等です。
あわせて、補助対象事業に係る経理は本補助金以外の経理と明確に区別し、収支状況を会計帳簿によって明らかにしておくことが求められます。事務局及び中小機構は必要と認めるときは予告なく立入調査を行う場合があるとされています。
また、交付申請情報(住所や代表者名など)に変更が生じた場合は速やかに申請マイページから変更申請を行い、交付決定を受けた申請内容に変更が生じた場合(廃業、倒産、事業譲渡、変更等)は速やかにIT導入支援事業者へ共有し事務局へ報告する必要があります。
よくある質問
Q. 交付決定の前に見積もりや商談を進めてもいいですか?
商談やITツールの選定は問題ありません。公募要領で禁じられているのは交付決定前の「契約、発注、納品、支払い」です。むしろ交付申請はIT導入支援事業者との共同作成なので、申請前から商談を進めて事業計画を策定することが前提になっています。ただし、契約書や注文書の日付が交付決定日より前になっていないか、締結のタイミングは必ず確認してください。
Q. 実績報告は自社だけで完結できますか?
完結できません。実績報告は補助事業者が申請マイページで開始したあと、IT導入支援事業者と共同で作成する仕組みです。補助事業者が証憑添付と口座情報の入力を行い、IT導入支援事業者が契約・納品・支払いに関する情報を入力し、最後に補助事業者が最終確認とSMS認証を行って提出します。自社の作業を終えても相手方の入力が済むまで提出できないため、期限から逆算してIT導入支援事業者と作業スケジュールを共有しておいてください。
Q. 証憑はスマホで撮影した写真でも提出できますか?
形式と容量の条件を満たせば提出できます。添付ファイルは10MB未満の「.jpg」「.jpeg」「.png」「.pdf」形式のみ対応です。iPhoneの標準設定で撮影するとHEIC形式になることがあり、そのままでは添付できません。また、写真の場合は書類の文字や口座名義人がはっきり読み取れることが前提です。ぶれや見切れがあると差戻しの原因になるため、可能であればスキャンしたPDFをおすすめします。
Q. 補助金はいつ振り込まれますか?
実績報告の提出→事務局の確定検査→「補助金確定内容の承認」を経て補助金額が確定したあと、約1か月程度で登録口座に入金されます。交付決定の時点では入金されないため、ITツール代金は一度自社で全額を支払う資金が必要です。支払いから入金まで数か月かかる場合があることを踏まえて資金計画を立ててください。
Q. 「補助金確定内容の承認」の依頼が届きました。放置するとどうなりますか?
放置してはいけません。マニュアルでは、承認が行われない場合は補助金額が確定せず、交付されないとされています。申請マイページで確定検査の結果と補助金額を確認し、SMS認証のうえ承認してください。確定額に疑問がある場合は、承認前に事務局のコールセンター(0570-666-376)またはIT導入支援事業者へ確認するのが安全です。
Q. 実績報告が差し戻されました。どう対応すればいいですか?
申請マイページの【実績報告情報編集】から指摘箇所を訂正し、再提出します。差戻し自体は珍しいことではなく、この段階で補助金がなくなるわけではありません。ただし不備訂正期日までに解消しないと交付決定の取消しになります。請求書の再発行やIT導入支援事業者側の入力修正が必要な不備もあるため、連絡が来たらすぐ共有し、対応の分担を決めて動いてください。
Q. クレジットカードの分割払いにしてしまいました。どうなりますか?
公募要領はクレジットカード払いを「分割払いやリボルビング払い等ではなく、1回(一括)払いであること」と定めています。公募要領上は、この条件を満たさないその他の方法で支払いを行った場合、補助金の交付を受けることができないとされています。支払い前に必ず1回払いを選択してください。すでに支払ってしまった場合の実際の手続きは、事務局のコールセンター(0570-666-376)にご確認ください。
Q. 導入したツールを途中で解約したくなったら?
解約・利用停止した場合は辞退の手続きが必要です。複数のITツールを導入してそのうちの一部を解約する場合でも、実施している補助事業の辞退とみなす場合があるとされています。加えて、導入日から1年未満(または実績報告で提出した利用期間未満)で利用をやめた場合は、事由を問わず補助金の全部又は一部が返還の対象です。辞退すると加算金が発生する場合もあります。解約前に必ず事務局へ相談してください。
Q. 効果報告を忘れるとどうなりますか?
賃上げ目標が必須となる申請で効果報告が効果報告期間内に提出されなかった場合、補助金の全部又は一部の返還を求められます。効果報告は2027年3月ごろの事業計画期間前の報告に始まり、2031年1月まで年度をまたいで続くため(通常枠の場合。インボイス枠は2年度目の報告不要)、担当者の異動で引き継ぎ漏れが起きやすい部分です。交付決定の時点で報告スケジュールをカレンダーに登録しておくことをおすすめします。
なお、加点を受けたのに要件を達成できなかった場合は、未達が報告されてから18カ月の間、中小企業庁が所管する他の補助金への申請にあたって、正当な理由が認められない限り大幅に減点されます(災害等でやむを得ず達成できなかったと事務局が認めた場合は免除。詳しくは再申請で減点される条件)。
まとめ:入金までのチェックリスト
- 交付決定は入金ではない。補助金は実績報告→確定検査→「補助金確定内容の承認」のあと、確定から約1か月程度で振り込まれる
- 事業実施は「契約・発注 → 納品・導入 → 請求・支払い」。契約・発注が必ず先で、支払いは請求のあと。順番が違うと交付決定の取消しになる場合がある
- 支払いは銀行振込かクレジットカード1回払いのみ。現金は不可。補助事業者名義でない口座からの支払いは補助金を受けられない
- 実績報告は申請マイページでIT導入支援事業者と共同作成。添付は10MB未満のjpg・jpeg・png・pdfのみ。請求書は一式表記不可・サブスクは利用期間の明記が必要
- 差戻しが来たら【実績報告情報編集】から訂正。不備訂正期日を過ぎると交付決定の取消し
- 「補助金確定内容の承認」(SMS認証)を行わないと補助金額が確定せず入金されない
- 効果報告は通常枠で事業計画期間前+3年度分(インボイス枠は2年度目の報告不要)。補助金交付が完了するまで効果報告は開始できない
- 導入日から1年未満で利用をやめると事由を問わず返還対象。単価50万円以上のツールは取得財産等管理台帳で管理し、書類は年度終了後5年間保管する
当社はデジタル化・AI導入補助金2026の登録IT導入支援事業者(2026年8月19日時点の事務局公表「IT導入支援事業者(法人)採択一覧」に掲載)として、交付申請から実績報告・効果報告までの一連の手続きを800件以上サポートしてきました。補助額がいくらになるかは見積もりシミュレーターで試算できます。手続きの進め方で迷ったら公式LINEからご相談ください。自社に使える補助金を先に知りたい方は補助金かんたん診断(無料・3分)もご利用ください。
参考(一次情報)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領 通常枠(中小機構)——3-4 補助事業の実施及び実績報告、3-5 事業実施効果の報告、4. 留意事項
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領 インボイス枠(中小機構)——インボイス枠の実施・報告手続き
- デジタル化・AI導入補助金2026 事業実施・実績報告マニュアル(中小機構)——実績報告の操作手順、添付ファイル要件、不備訂正、補助金確定内容の承認、入金時期、取得財産等管理台帳
- 事業スケジュール(中小機構)——募集回ごとの交付決定日・事業実施期間・実績報告期限
- 新規申請・手続きフロー詳細(中小機構)——交付決定までのSTEP01〜05
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