「前回もらったから、今回も申請できるだろう」——ここが最も危ないところです。デジタル化・AI導入補助金2026では、過去の受給歴が次の4つの形で申請に影響します。

  • 申請対象外(そもそも出せない)
  • 12カ月間は申請不可(時期を待てば出せる)
  • 審査上の減点(出せるが不利になる)
  • 申請要件の引き上げ(出せるが、労働生産性4パーセント・賃上げ3.5パーセントなど初回より高い目標を約束する必要がある)

このうち4つ目の「要件引き上げ」は見落とされがちですが、採択後の効果報告・返還にまで直結する、再申請組だけに課されるハードルです。しかも枠によってルールが違います。通常枠は減点で済むケースでも、インボイス枠では申請対象外になることがあります。

この記事では、公募要領の原文を根拠に「自分は出せるのか」「出せるなら何が初回と違うのか」「未達・辞退のときに何が起きるのか」までを一度に整理します(2026年8月時点の公募要領に基づきます。最新の条件は必ず公式サイトの公募要領でご確認ください)。

まず「そもそも出せるのかどうか」から確認してください。

まず確認:そもそも申請できない場合

インボイス枠は過去の受給歴で申請対象外になります

インボイス枠(インボイス対応類型)の公募要領は「2-1-2 申請の対象外となる事業者」で、次の事業者を申請の対象外としています。

IT導入補助金2022のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)又はIT導入補助金2023のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)若しくはデジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)又はIT導入補助金2024、IT導入補助金2025のインボイス枠の交付決定を受けた事業者

これは減点ではなく対象外です。該当する場合、期間をどれだけ空けてもインボイス枠には申請できません。過去にインボイス対応でこの補助金を使ったことがある事業者は、まずここを確認してください。インボイス枠の制度全体はインボイス枠の解説記事にまとめています。

12カ月以内は申請できない場合

過去の交付決定2026年に申請できない枠期間
IT導入補助金2025の通常枠及び複数社連携IT導入枠(グループ構成員を含む)デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠交付決定日から12カ月以内
IT導入補助金2025の複数社連携IT導入枠(グループ構成員を含む)デジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠(インボイス対応類型)交付決定日から12カ月以内

こちらは期間の制限なので、交付決定日から12カ月を過ぎれば申請できます。前回の交付決定通知の日付を確認してください。

注意していただきたいのは、「どの枠でも12カ月待てば再申請できる」わけではないという点です。12カ月の経過で解けるのは上の表の2パターンだけで、前節のインボイス枠の「申請対象外」は期間の経過では解けません。また、2025年の複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者は、2026年の通常枠だけでなくインボイス枠(インボイス対応類型)も12カ月制限の対象になります。枠ごとに別々のルールとして確認してください。

お助け隊サービス登録ツールは、過去に交付決定があると申請できません

両枠の公募要領は「申請単位」の注記で、次のように定めています。

「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の登録を受けたITツールについて、IT導入補助金2022、2023、2024及び2025において、いずれかの枠で交付決定を受けた場合又はデジタル化・AI導入補助金2026において、いずれかの枠で申請を行っている若しくは交付決定を受けた場合、本事業の申請を行うことはできない。

12カ月制限と違い、期間の経過では解けない制限です。過去にお助け隊サービス登録ツールで交付決定を受けている場合は、この規定に当たらないかを確認してください。

そのほかの申請対象外

受給歴とは別に、次のような事業者も申請対象外です(インボイス枠の例)。

  • 発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業・小規模事業者等
  • 発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している
  • 大企業の役員又は職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている
  • 確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える
  • 経済産業省又は中小機構から補助金交付等停止措置又は指名停止措置が講じられている

また「みなし同一法人」に該当する場合は1社のみでしか申請が認められません。親会社が議決権の50パーセント超を有する子会社が存在する場合、個人が複数の会社のそれぞれの議決権を50パーセント超を保有する場合、代表者及び住所が同じ法人などが該当します。過去に交付決定を受けた個人事業主が設立した法人についても同様の取扱いとされています。

なお公募要領は「本補助金を受けることを目的に、主要株主や出資比率を変更し申請することも認められない」としています。

2回目は申請要件そのものが上がります

申請自体はできるとしても、過去に交付決定を受けた事業者には初回申請者より高い目標が申請要件として課されます。減点と違って「不利になる」話ではなく、「約束する数字が変わる」話です。効果報告での未達は返還につながるため(後述)、再申請の意思決定では減点よりむしろこちらが重要だと当社は考えています。

労働生産性の目標が3パーセントから4パーセントに上がります(通常枠)

通常枠の申請要件は、労働生産性を1年後に3パーセント以上、事業計画期間で年平均成長率3パーセント以上向上させる事業計画の策定が基本です。ところが、次の交付決定を受けた事業者は目標値が引き上げられます。

  • IT導入補助金2023の通常枠(A・B類型)
  • IT導入補助金2023のデジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)
  • IT導入補助金2024・2025の通常枠
  • IT導入補助金2024・2025の複数社連携IT導入枠

通常枠の公募要領は、これらの事業者について次のように定めています。

1年後に労働生産性を3パーセント以上向上させること。ただし、IT導入補助金2023の通常枠(A・B類型)若しくはデジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)又はIT導入補助金2024、IT導入補助金2025の通常枠若しくは複数社連携IT導入枠の交付決定を受けた事業者については、労働生産性を1年後に4パーセント以上向上させること。
事業計画期間において、労働生産性の年平均成長率を3パーセント以上向上させること。ただし、IT導入補助金2023の通常枠(A・B類型)若しくはデジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)又はIT導入補助金2024、IT導入補助金2025の通常枠若しくは複数社連携IT導入枠の交付決定を受けた事業者については、労働生産性の年平均成長率を4パーセント以上向上させること。

整理すると次のとおりです。

労働生産性の目標初回申請者(上記の交付決定歴なし)上記の交付決定を受けた事業者
1年後の向上率3パーセント以上4パーセント以上
事業計画期間の年平均成長率3パーセント以上4パーセント以上

対象となる枠が限定されている点にも注意してください。たとえば2023年のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)だけを使った事業者は、上のリストに入っていないため4パーセントの対象ではありません。自分の交付決定が「どの年度の・どの枠か」で適用が分かれます。労働生産性の計算方法と事業計画の立て方は事業計画と生産性向上の記事で解説しています。

賃上げ要件は補助額150万円が分かれ目です(通常枠)

賃金引上げ計画の策定・表明は、申請する補助金額が150万円以上であれば交付決定歴の有無にかかわらず全員に課される申請要件です。IT導入補助金2022〜2025のいずれかで交付決定を受けた事業者は、これに加えて①150万円未満の申請でも賃上げ要件が課され②成長率の目標が引き上げられます(150万円未満で不要だった事業場内最低賃金要件が発生するわけではなく、あくまで成長率の数値が変わる点に注意してください)。

申請する補助金額交付決定歴なし(初回申請者)IT導入補助金2022〜2025のいずれかで交付決定済み
150万円未満賃上げ要件なし①1人当たり給与支給総額(非常勤を含む全従業員)の年平均成長率3.5パーセント以上の計画策定 ②交付申請時点で従業員に表明
150万円以上①同成長率3パーセント以上の計画策定 ②事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること ③交付申請時点で従業員に表明①同成長率3.5パーセント以上の計画策定 ②同③の事業場内最低賃金要件 ③交付申請時点で従業員に表明

公募要領の原文は次のとおりです(150万円以上を申請するIT導入補助金2022〜2025交付決定者に適用される条項)。

150万円以上の補助金を申請しようとする者であって、IT導入補助金2022からIT導入補助金2025までの間に交付決定を受けた事業者は、以下の要件を全て満たす、交付申請時点の翌事業年度以降3年間の事業計画を策定し、実行すること。
一 事業計画期間において、1人当たり給与支給総額(非常勤を含む全従業員)の年平均成長率を3.5パーセント(日本銀行が定める「物価安定の目標」+1.5パーセント)以上向上させること。
二 事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること。

なお150万円未満の申請では、上記のうち事業場内最低賃金の要件(二)はなく、給与支給総額の年平均成長率3.5パーセント以上(一)と表明のみが課されます。150万円未満なら事業場内最低賃金の要件はありません。パート・アルバイトの時給が最低賃金に近い事業者にとって、③の有無は達成難易度が大きく違います。補助額を150万円の手前に収める設計も、再申請では現実的な選択肢です。補助額の目安は見積もりシミュレーターで試算できます。

なお、この賃上げ要件の適用外となるのは、公募要領に列挙された医療機関・介護事業者・社会福祉法人・学校等の類型です。「小規模事業者だから適用されない」という区分ではありませんので、規模を理由に対象外と判断しないでください。該当するかどうかは公募要領(通常枠)の該当箇所でご確認ください。

もう1つ混同しやすいのが、申請要件としての賃上げと、加点としての賃上げは別物だという点です。加点はより高い水準の賃上げを表明して審査上有利になる仕組みで、取るかどうかを選べます。一方ここで説明した要件は、過去交付決定者には選択の余地がありません。加点の水準と取り方は賃上げ加点と返還リスクの記事をご覧ください。

インボイス枠も賃上げ計画と表明が申請要件です

インボイス枠(インボイス対応類型)でも、IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者は、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5パーセント以上とする賃上げ計画の策定・実行と、交付申請時点での従業員への表明が申請要件とされています(適用外の事業者を除く)。未達の場合の返還ルールと免除条件は後述の返還の章で整理します。

「表明した」と偽ると交付決定の取消しです

従業員への表明は交付申請時点で済ませている必要があります。通常枠の公募要領は、表明の虚偽についてこう定めています。

交付決定後に実際には表明していないことが発覚した場合、事務局は交付決定の取消しを行う。

申請画面で「表明した」にチェックを入れるだけなら簡単ですが、実際に表明していなければ交付決定そのものが取り消されます。朝礼・社内掲示・書面配布など、表明した事実と日付が残る形で行ってください。当社が申請をサポートする際も、表明の実施記録は必ず確認しています。

減点される5つの条件(通常枠)

対象外にも期間制限にも当たらない場合、次は減点の確認です。通常枠の公募要領は「以下に該当する場合は、項目ごとに審査上の減点措置を講じる」として5つを挙げています。

No.減点の対象
1)IT導入補助金2022からIT導入補助金2025までの間に交付決定を受けた事業者
2)デジタル化・AI導入補助金2026において、インボイス枠(インボイス対応類型及び電子取引類型)で申請を行っている若しくは交付決定を受けた事業者
3)IT導入補助金2024又はIT導入補助金2025において交付決定を受けたソフトウェアのプロセスと、今回導入するソフトウェアが有するプロセスが重複する事業者
4)IT導入補助金2024以降において賃金引上げ計画による加点を受けたうえで採択されたにも関わらず、申請した加点要件を達成できなかった事業者(やむを得ない理由によるものを除く)
5)中小企業庁が所管する他補助金において、賃金引上げ計画による加点を受けたうえで採択されたにも関わらず、申請した加点要件を達成できなかった事業者(やむを得ない理由によるものを除く)

5)の「他補助金」は、令和8年1月時点では次の制度が挙げられています。

  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(第17次公募以降)
  • 小規模事業者持続化補助金(第15回公募以降)
  • 事業承継・M&A補助金(旧事業承継・引継ぎ補助金)(第8次公募以降)
  • 成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)(令和6年度公募以降)
  • 事業再構築補助金(第12回公募)
  • 中小企業省力化投資補助事業(第1回公募以降)

インボイス枠にも対称の減点措置があります

インボイス枠(インボイス対応類型)の公募要領にも、同じ構造の減点措置1)〜5)が定められています。異なるのは2)だけで、鏡写しに「デジタル化・AI導入補助金2026において、通常枠で申請を行っている若しくは交付決定を受けた事業者」となります。同一機能(会計・受発注・決済)のITツールを導入する場合の更なる減点、プロセスが完全に一致する場合の不採択も、インボイス枠側に同旨の規定があります。過去に通常枠で受給した事業者がインボイス枠へ申請する場合も、減点なしにはなりません。

同じ機能のツールを入れると「更なる減点」

上の1)2)について、公募要領は注記でこう定めています。

なお、1)及び2)において選択されたITツールと同一の機能(会計・受発注・決済)を有するITツールを導入する場合は更なる減点を行う。

前回と同じ機能のツールを入れ直す構成が、最も不利になります。再申請では、前回カバーしなかった業務領域に広げる設計が要点になります。対象になる経費の範囲は対象経費の記事で確認してください。

減点ではなく「不採択」になる唯一の条件

減点措置の3)には、さらに重い注記が付いています。

なお、プロセスが完全に一致する場合、不採択とする。

IT導入補助金2024又は2025で交付決定を受けたソフトウェアのプロセスと、今回導入するソフトウェアのプロセスが完全に一致する場合は減点ではなく不採択です。プロセスが一部重複するだけなら減点にとどまります。

「重複=減点」「完全一致=不採択」——この境目を取り違えると、通らない申請に時間を使うことになります。前回のツールがどのプロセスで登録されていたかは、当時のIT導入支援事業者に確認するのが確実です。支援事業者の選び方・付き合い方はIT導入支援事業者の選び方の記事にまとめています。

加点を取って未達だと18カ月の影響が出ます

過去に加点を受けたのに要件を達成できなかった場合、影響はこの補助金の中だけにとどまりません。通常枠公募要領の【補足4】(インボイス枠では【補足5】に同旨の規定)はこう定めています。

加点を受けたうえで、本補助金で採択されたにも関わらず、申請した加点要件を達成できなかった場合は、効果報告において未達が報告されてから18カ月の間、中小企業庁が所管する補助金への申請にあたっては、正当な理由が認められない限り大幅に減点する。

対象となる補助金は、令和8年1月時点でものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、小規模事業者持続化補助金、事業承継・M&A補助金、成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)、事業再構築補助金(中小企業省力化投資補助事業を含む)とされています。

起算点は「効果報告において未達が報告されてから」です。交付決定日でも事業終了日でもありません。

ただし、震災・風水害・落雷・火災その他の災害を受け又は盗難にあったこと等により事業において著しい損失を受けたと認められる場合(国税通則法第46条)など、やむを得ず加点要件を達成できなかった場合はこの限りではないとされています。その場合は効果報告の提出時に理由を説明し、事務局がやむを得ないと認めた場合に限り減点が免除されます。

賃上げ加点の考え方は賃上げ加点と返還リスクの記事で詳しく整理しています。取れそうな加点を全部取りにいく前に、達成できる加点かどうかを見極めてください。

賃上げが未達だった場合の返還ルール

再申請で賃上げが要件化される以上、「もし達成できなかったら何が起きるのか」を知らずに申請するべきではありません。減点や18カ月とは別に、補助金そのものの返還が定められています。

返還額は交付額が上限、加算金は付きません(両枠共通)

賃金引上げ計画(給与支給総額)が事業計画終了時点で未達だった場合(効果報告を期間内に提出しなかった場合を含みます)、補助金の返還を求められます。ただし返還の範囲には上限があり、これは通常枠・インボイス枠の両方に共通です。

返還額は補助金交付額を上限とし、加算金・延滞金は含まないものとする。

つまり、賃上げ未達による返還で交付された額を超える金銭を求められることはありません。後述する「辞退」による返還と違い、加算金も付きません。もっとも、受け取った補助金を全額返すことになり得る点は同じです。「未達なら返せばいい」と軽く考えるのではなく、達成できる計画で申請することが大前提です。

期間内に効果報告を出さないだけでも未達扱いになる点は、実務上の落とし穴です。当社の申請サポートでも、採択後に効果報告の期限管理が抜けている事業者は少なくありません。交付決定後の手続き全体は交付決定後にやることの記事で確認してください。

赤字などの免除条件も両枠に明記されています

給与支給総額の未達については、返還を求めないケースが通常枠・インボイス枠の両方の公募要領に明記されています。

付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として3年の事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は、上記の補助金の返還を求めない。

業績が悪化して賃上げどころではなかった、という状況が一定の条件で救済される設計です。ただし「付加価値額が増加していない」かつ「3年の事業計画期間の過半数が営業利益赤字」という両方を満たす必要がある点に注意してください。片方だけでは免除の対象になりません。

150万円以上の通常枠申請では、最低賃金の未達は毎年度判定・按分返還です

通常枠に150万円以上で申請する場合の要件③(事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上に)は、上の給与支給総額とは別ルールで判定されます。通常枠の公募要領【補足1】は、効果報告時の直近月時点で事業場内最低賃金の増加目標が達成できていない場合、補助金の全部若しくは一部の返還を求めるとし、返還額は次のように未達となった年度に応じて按分されます。

  • 補助金の額を事業計画期間の年数(3年)で割り、目標未達年以降の年数を掛けた金額が返還額
  • 具体例:1年度目に未達なら全額、2年度目なら3分の2、3年度目なら3分の1

こちらの免除条件は給与支給総額のものと異なり、付加価値額増加率が年平均成長率1.5パーセントに達しない場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は返還を求めないとされています。150万円以上で申請する再申請組は、「事業計画終了時点で判定される給与支給総額」と「毎年度判定される事業場内最低賃金」の2本立てで返還リスクを管理する必要があります。

前回のツールを解約して再申請したい場合

再申請のご相談で意外に多いのが、「前回入れたツールが合わなかったので、解約して別のツールで出し直したい」というケースです。ここには返還よりも重いルールが潜んでいます。

ツールの解約・利用停止には辞退手続きが必要です

公募要領は、本事業において導入したITツールを解約・利用停止した場合は補助事業の辞退の手続きが必要としています。しかも、複数のITツールを導入してそのうちの一部を解約する場合であっても、補助事業の辞退とみなされる場合があると明記されています。「メインのソフトは使い続けるからオプションだけ解約」という判断も、事務局への確認なしに行うのは危険です。

辞退による返還には加算金が付きます

辞退した場合の返還は、賃上げ未達の返還と違って加算金の対象です。

補助金受領の日から返還金納付の日までの日数に応じ、加算金を納付する必要がある。また、納付が遅れた場合には延滞金が発生する。

補助金を受け取った日からの日数に応じて加算金が積み上がるため、受給から時間が経ってからの解約ほど負担が大きくなります

賃上げ必須の事業者は、辞退のタイミング次第で全額返還です

さらに重いのが、賃上げ目標が申請要件になっている事業者(適用外の類型を除く)の辞退です。

効果報告前及び賃上げ目標に定められた要件の達成状況判定前に辞退した場合、賃上げ目標の要件未達成とみなされ補助金の全額返還となるので留意すること。

再申請組の多くは賃上げが要件化されるため、この規定の対象になります。つまり「前回分を早めに辞退して、身軽になってから新ツールで再申請しよう」という発想は、賃上げ要件の未達成扱い→全額返還+加算金という最も高くつく結末になり得ます。前回分の扱いに迷ったら、解約の前に必ず事務局・IT導入支援事業者に確認してください。

4つの影響を整理します

区分意味代表例
申請対象外そもそも申請できない。期間経過でも解けないインボイス枠:2022・2023のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型。2023は商流一括インボイス対応類型も)、2024・2025のインボイス枠で交付決定を受けた事業者
期間制限一定期間を過ぎれば申請できる通常枠:IT導入補助金2025の通常枠・複数社連携IT導入枠の交付決定日から12カ月以内。インボイス枠:2025の複数社連携IT導入枠から12カ月以内
減点申請はできるが審査で不利になる通常枠・インボイス枠とも:2022〜2025に交付決定を受けた、もう一方の枠と併願している など5条件
不採択審査で通らない2024・2025で交付決定を受けたソフトウェアとプロセスが完全に一致する場合
要件引き上げ申請はできるが、初回より高い目標が申請要件になる通常枠:労働生産性1年後4パーセント以上・年平均4パーセント以上(対象の交付決定歴がある場合)、給与総額3.5パーセント以上の賃上げ計画+表明(150万円以上は最低賃金+30円も)。インボイス枠:賃上げ計画+表明

再申請を組み立てるときの順番

当社が再申請のご相談を受けるときは、次の順番で確認しています。

  1. 前回の交付決定通知を確認する — 年度・枠・交付決定日を特定します。対象外・12カ月ルール・要件引き上げのすべてがここから決まります
  2. 申請できる枠を絞る — インボイス枠は過去の受給歴で対象外になる場合があります。枠の違いは通常枠とインボイス枠の比較記事
  3. 引き上げ後の要件を達成できるか判断する — 労働生産性4パーセント、賃上げ3.5パーセント(150万円以上なら最低賃金+30円も)。達成の見込みが立たないなら、補助額を150万円未満に抑える設計や申請自体の見送りも選択肢です
  4. 前回導入したツールのプロセスを洗い出す — 完全一致なら不採択です。IT導入支援事業者と重複範囲を確認してください
  5. 同一機能(会計・受発注・決済)の重複を避ける — 更なる減点の対象です
  6. 達成できる加点だけを選ぶ — 未達は18カ月の減点につながります(加点項目一覧
  7. 前回分の解約・辞退は動く前に確認する — タイミングを誤ると全額返還+加算金です

交付申請期間中、1法人・1個人事業主当たり1申請のみです(交付決定についても同様)。ただし通常枠とインボイス枠・セキュリティ対策推進枠の併願自体は可能とされています。一方で、通常枠とインボイス枠を相互に併願する場合は減点措置の2)に当たります(セキュリティ対策推進枠との併願は減点条件には挙げられていません)。この点をふまえて、IT導入支援事業者と相談してください。また公募要領は、複数申請時の補助対象経費の二重計上など不適切な行為が疑われる場合、交付決定の取消し及び補助金の全額返還を求める場合があるとし、特にオプション・役務は二重計上となる可能性が非常に高いと注意しています。

申請から交付決定までの流れ全体は制度全体の解説記事必要書類の記事もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 前回不採択でした。すぐに再申請できますか?

不採択そのものによる期間制限や減点措置は、公募要領には定められていません。期間制限や減点の対象として挙げられているのは「交付決定を受けた事業者」です。ただし交付申請期間中は1法人・1個人事業主あたり1申請のみなので、同じ回に重ねて出すことはできません。次の締切回で出し直す形になります。募集回の日程は申請方法とスケジュールの記事をご覧ください。

Q. 不採択の理由は教えてもらえますか?

審査内容は教えてもらえません。公募要領は「採択・不採択に関わらず審査内容については開示しない」と明記しています。不採択理由については、2026年8月28日改訂で規定が変わり、「事務局から通知する事項以外は開示しない」という書き方になりました(以前は審査内容と同じく一律で開示しないという規定でした)。ただしこれは事務局側が任意に伝える範囲があり得るという意味で、申請者側から理由の開示を請求できる制度ではありません。したがって再申請では、①申請要件を1つずつ原文と突き合わせる、②事業計画の数値(労働生産性の根拠)を具体化する、③この記事で挙げた減点条件に当たっていないかを洗い出す——という自己点検で改善するのが現実的です。同じ内容のまま出し直しても結果は変わりにくいため、どこかを必ず変えて出すことをおすすめします。

Q. 減点されると必ず落ちますか?

減点は審査上の措置であり、公募要領は「項目ごとに審査上の減点措置を講じる」としています。不採択と明記されているのは「プロセスが完全に一致する場合」だけです。採否は審査によるため、減点があっても採択される可能性はありますし、減点がなくても採択が保証されるわけではありません。不利になる要素を減らす設計が現実的な対策になります。

Q. 2023年にデジタル化基盤導入枠を使いました。2026年は何に申請できますか?

インボイス枠(インボイス対応類型)は、2023年のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型・商流一括インボイス対応類型)の交付決定を受けていると申請対象外です。通常枠については、減点措置の1)「IT導入補助金2022から2025までの間に交付決定を受けた事業者」に当たるため減点はされますが申請自体は可能です(2025年の通常枠・複数社連携枠での交付決定から12カ月以内でなければ)。なお賃上げについては、2022〜2025の交付決定歴により3.5パーセント以上の計画策定・表明が申請要件になります(適用外の事業者を除く)。一方、労働生産性4パーセントの引き上げ対象は2023年では通常枠(A・B類型)と複数社連携IT導入類型に限られており、デジタル化基盤導入類型のみの場合は対象外です。ご自身のケースは公式LINEでもご相談いただけます。

Q. 前回の交付決定から12カ月が過ぎました。もう何の制限もありませんか?

12カ月の経過で解けるのは期間制限だけです。①2022〜2025の交付決定歴による減点、②要件引き上げ(労働生産性4パーセント・賃上げ3.5パーセント)、③インボイス枠の申請対象外、④プロセス完全一致の不採択は、いずれも期間の経過では消えません。「12カ月待てば白紙に戻る」と考えていると、要件未達や対象外での差し戻しにつながります。

Q. 賃上げ計画が達成できなかったら、いくら返すことになりますか?

給与支給総額の未達(期間内に効果報告を提出しなかった場合を含む)のとき補助金の返還を求められますが、返還額は補助金交付額が上限で、加算金・延滞金は含まれません(通常枠・インボイス枠共通)。また両枠とも、付加価値額が増加しておらず、かつ3年の事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は返還を求めないとされています。通常枠に150万円以上で申請した場合の事業場内最低賃金の未達は別ルールで、毎年度判定され、未達年度に応じて全額・3分の2・3分の1と按分返還になります(免除条件は付加価値額増加率が年平均1.5パーセントに達しない場合や天災等)。なお、これは「未達の返還」のルールです。辞退による返還は別で、日数に応じた加算金が付きます

Q. 前回導入したツールを解約して、新しいツールで再申請できますか?

解約の前に立ち止まってください。導入したITツールの解約・利用停止には辞退の手続きが必要で、一部解約でも辞退とみなされる場合があります。辞退の返還には補助金受領日からの日数に応じた加算金が付き、さらに賃上げ目標が必須の事業者が効果報告前・達成状況判定前に辞退すると要件未達成とみなされ全額返還です。新ツールでの再申請そのものは、対象外・期間制限・減点・プロセス重複のルールに沿って検討できますが、前回分の扱いを先に事務局・IT導入支援事業者へ確認するのが順番です。

Q. 従業員への表明は、申請画面でチェックするだけではだめですか?

だめです。交付申請時に「表明した」と申告しながら実際には表明していなかったことが交付決定後に発覚した場合、事務局は交付決定の取消しを行うと公募要領に明記されています。朝礼での説明、社内掲示、書面やチャットでの通知など、実施した事実と日付が残る方法で表明し、記録を保管してください。

Q. グループ会社で1社ずつ申請できますか?

「みなし同一法人」に該当する場合、1社のみでしか申請が認められません。親会社が議決権の50パーセント超を有する子会社、個人が複数の会社の議決権を50パーセント超保有する場合、代表者及び住所が同じ法人などが該当します。孫会社・ひ孫会社も同様の考え方です。配偶者・親子及びその他生計を同一にしている者は全て同一の個人として扱われます。

Q. 加点要件が未達になりそうです。どうすればいいですか?

災害等のやむを得ない事情がある場合は、効果報告の提出時に理由を説明することで、事務局がやむを得ないと認めた場合に限り減点が免除されます。未報告のまま放置するのが最も不利です。賃上げ目標が必須となる申請では、効果報告が期間内に提出されなかった場合に補助金の返還を求められます(交付決定後にやること)。

まとめ

  • 過去の受給歴は「対象外」「12カ月の期間制限」「減点」「要件引き上げ」の4つの形で効く。枠によって違う
  • インボイス枠は、2022・2023のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型。2023は商流一括インボイス対応類型も)/2024・2025のインボイス枠で交付決定を受けていると申請対象外。期間の経過では解けない
  • 通常枠は、IT導入補助金2025の通常枠・複数社連携IT導入枠の交付決定日から12カ月以内は申請できない
  • 対象の交付決定歴があると、通常枠の労働生産性目標は1年後4パーセント以上・年平均4パーセント以上に引き上げられる
  • 賃上げは150万円未満なら3.5パーセント+表明、150万円以上ならさらに事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上が申請要件になる
  • 減点は通常枠・インボイス枠とも5条件同一機能(会計・受発注・決済)のツールは更なる減点プロセス完全一致は不採択
  • 賃上げ未達(未報告含む)は返還。返還額は交付額が上限で加算金なし・赤字等の免除条件あり(両枠共通)。通常枠150万円以上の最低賃金要件は毎年度判定・未達年度に応じた按分返還
  • ツールの解約は辞退扱いになり得る。辞退の返還には加算金が付き、賃上げ必須の事業者が効果報告前に辞退すると全額返還
  • 加点を取って未達だと、未達が報告されてから18カ月、中小企業庁所管の他補助金でも大幅に減点される

当社は登録IT導入支援事業者(申請番号ITP04-0002803)として、これまで800件以上の申請をサポートしてきました。再申請は初回より確認事項が多く、判断を誤ると返還にまで波及します。補助額の目安は見積もりシミュレーターで試算できます。自社が申請できる枠を確認したい方は補助金かんたん診断(無料・3分)を、個別の事情のご相談は公式LINEをご利用ください。当サイトでは募集中の補助金355件の情報を毎週自動更新で掲載しています。

参考(一次情報)