令和8年度(2026年度)の業務改善助成金は、2026年9月1日から交付申請の受付が始まります。事業場内で最も低い時間給を50円以上引き上げ、あわせて生産性向上に資する設備投資などを行うと、その費用の一部(最大600万円)が助成される制度です。

  • 受付開始は2026年9月1日。申請期限は「申請事業場の都道府県で適用される令和8年度地域別最低賃金の発効日の前日」または「2026年11月30日」のいずれか早い日です(詳細
  • 助成率は事業場内最低賃金で決まります。1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4です。賃上げ額や設備の内容では変わりません(詳細
  • 助成上限額はコース(50円・70円・90円)×引き上げる労働者数で決まり、事業場規模30人未満の事業者は1人・2〜3人の区分だけ上限額が上乗せされます(詳細
  • 最大の落とし穴は順番です。賃上げは「交付申請の後」、設備の契約・納品・支払いは「交付決定の後」。交付決定前に発注や納品をすると、いかなる理由でも全額対象外になります(詳細
  • 申請できないケースが多い制度です。申請時点で事業場内最低賃金が改定後の地域別最低賃金以上、労働保険に未加入・保険料を滞納中、直近に解雇がある、労働基準監督署の是正勧告を受けている——いずれも申請できません(詳細

この記事は厚生労働省の交付要綱・交付要領・Q&A(いずれも令和8年度版)の原文にあたって作成しています。当社は補助金・助成金の申請サポートを800件以上行っており、その現場でつまずきやすい論点も併記しました。制度の全体像から知りたい方は補助金と助成金の違い、申請全般の流れは補助金申請の流れもあわせてご覧ください。

まず確認:申請できない事業者・事業場

業務改善助成金は「賃上げをすれば使える」制度ではありません。設備の検討より先に、自社が申請できるかを確認してください。ここを飛ばして設備の見積もりから動いた結果、申請そのものができなかったというご相談を毎年いただきます。

事業場の条件で申請できないケース

状況根拠
申請時点で、事業場で最も時間給が低い労働者(雇用保険被保険者)の賃金が改定後の地域別最低賃金額以上Q&A問3
労働者(従業員)がいない(役員のみの事業場など)厚生労働省「業務改善助成金」ページ
労働保険に未加入、または労働保険料を滞納中(滞納は、申請書提出日の属する年度の前年度より前の徴収金を継続して滞納している場合が不交付事由。交付決定までに納付した場合を除く)Q&A問4、交付要綱第4条第4項第七号
事業場に雇入れ後6か月を経過した労働者がいない(原則として設立から6か月以上の継続が必要)Q&A問5
同一年度内に同一事業場で既に申請している(申請は1事業場あたり年度1回まで)交付要領第2の6

「事業場内最低賃金」は事業場で最も低い時間給を指しますが、業務改善助成金では雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者の賃金で判断します。正社員だけを見てパート・アルバイトの時給を見落とすと、引き上げるべき労働者が漏れて不交付になります。

不交付事由に当たるケース

交付要綱第4条第4項は、次のいずれかに該当すると助成の対象としないと定めています。特に期間の取り方が独特なので、原文どおり押さえてください。

対象となる期間:様式第1号による申請書の提出日の前日から起算して6月前の日から、実績報告手続を行った日の前日または賃金額を引き上げてから6月を経過した日のいずれか遅い日まで

この期間中に次の事実が認められると不交付になります。

  • 当該事業場の労働者を解雇した場合(天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合、または労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇した場合を除く)、その者の非違によることなく勧奨を受けて労働者が退職した場合、または主として企業経営上の理由により退職を希望する労働者の募集を行い、労働者が退職した場合
  • 当該事業場の労働者の時間当たりの賃金額を引き下げた場合
  • 所定労働時間の短縮または所定労働日の減少(天災事変等や法定休暇の取得その他労働者の都合による場合を除く)を内容とする労働契約の変更を行い、月当たりの賃金額を引き下げた場合
  • 助成対象経費を対象として国または地方公共団体から補助金等の交付その他これに類する助成等を受けている場合

このほか、次も不交付事由です。

  • 過去に業務改善助成金の交付を受けた事業場で、その助成事業完了日以後の労働者の賃金額が、当該助成事業で定めた事業場内最低賃金額を下回っている場合
  • 申請書提出日の前日から起算して1年前の日から前記と同じ終期までの間に、労働関係法令に違反していることが明らか(司法処分等)となった場合。Q&A問49は、この期間に労働基準監督署から是正勧告を受けている場合は申請できないと明記しています
  • 過去5年以内に所轄労働局長から補助金等の決定の取消しその他これに準ずる処分を受けている場合
  • 申請書提出日の属する年度の前年度より前のいずれかの年・保険年度において、労働保険の徴収金を継続して滞納している場合(交付決定までに納付した場合を除く)
  • 申請手続または実績報告手続の時点で倒産している場合(再生手続・更生手続開始の申立てを行い事業活動を継続する見込みがある場合を除く)
  • 事業主等または役員等に暴力団員が該当する、もしくは暴力団員が経営に実質的に関与していると認められる場合、および暴力団関係者が経営に関与している事業場等であると知りながら、これを不当に利用するなどしていると認められる場合
  • 事業主等または役員等が、破壊活動防止法第4条に規定する暴力主義的破壊活動を行った、または行うおそれがある団体等に属している場合
  • 不正受給時の公表に同意していない、労働局から命じられた補正を期限までに行わない など

人員整理を予定している時期の申請は避けてください。申請の6か月前から、実績報告後まで解雇制限がかかる設計です。同じく解雇制限のあるキャリアアップ助成金 正社員化コースと考え方は共通ですが、対象期間の取り方は制度ごとに異なります。

そもそも「中小企業事業者」に当たるか

交付要綱第2条の定義です。資本金または労働者数のどちらかを満たせば該当します。

業種資本金・出資の総額常時使用する労働者数
一般(下記以外)3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下

ただし、次に当たると中小企業事業者から除かれます(いわゆるみなし大企業)。

  • 発行済株式の総数または出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している
  • 発行済株式の総数または出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している
  • 大企業の役員・職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている
  • 発行済株式の総数または出資価格の総額を、上記3つのいずれかに該当する者が所有している(持株会社を介した間接支配)
  • 上記3つのいずれかに該当する者の役員・職員を兼ねている者が、役員の全てを占めている
  • 確定している(申告済みの)直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える

(交付要綱第2条第2項一〜六号。上から4つ目・5つ目は持株会社などを介した間接支配のケースで、実務での該当は多くありません)

助成率は事業場内最低賃金だけで決まる

助成率の区分は「事業場内最低賃金がいくらか」という賃金水準の軸です。賃上げ額(コース)や設備の内容、企業規模では変わりません。

申請事業場の引上げ前の事業場内最低賃金助成率
1,050円未満5分の4(4/5)
1,050円以上4分の3(3/4)

(出典:交付要綱 別表第1 第3欄)

助成上限額はコース×引き上げる労働者数

上限額は「申請コース(賃上げ額)」と「引き上げる労働者数」の組み合わせで決まります。カッコ内の金額は事業場規模30人未満の事業者にのみ適用され、しかも1人・2〜3人の区分にしか設定されていません(4〜5人以上の区分は事業場規模にかかわらず同額です)。

引き上げる労働者数50円コース70円コース90円コース
1人30万円(40万円)40万円(50万円)90万円(100万円)
2〜3人40万円(70万円)50万円(100万円)150万円(240万円)
4〜5人70万円130万円270万円
6〜7人90万円180万円360万円
8人以上110万円230万円450万円

(出典:交付要綱 別表第1 第4欄・第5欄。カッコ内は事業場規模30人未満の事業者のみ対象)

各コースの引上げ額は「50円以上」「70円以上」「90円以上」です。

10人以上の区分は特例事業者だけ

引き上げる労働者数が10人以上の上限額区分は、特例事業者に限って使えます。一般の事業者は8人以上の区分が上限です。

引き上げる労働者数50円コース70円コース90円コース
10人以上(特例事業者のみ)130万円300万円600万円

(出典:交付要綱 別表第2)

「最大600万円」という数字は、特例事業者が90円コースで10人以上の賃金を引き上げた場合の上限額です。一般の事業者が到達できる上限は450万円である点に注意してください。

特例事業者の2要件

要件内容受けられる優遇
①賃金要件申請事業場の事業場内最低賃金が1,050円未満助成上限額の拡大(10人以上の区分)
②物価高騰等要件原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、申請前6か月間平均における利益率(売上高総利益率または売上高営業利益率)が前年同期に比べ3%ポイント以上低下助成上限額の拡大に加え、助成対象経費の拡大

②で申請する場合は、「物価高騰等要件に係る事業活動の状況に関する申出書」と証拠書類の提出が必要です。なお令和7年度から、この申出書の記入対象が「最近3か月間のうち任意の1月」から「最近6か月間平均」に変わりました(令和8年度も同じ扱いが継続しています)。

助成金額の計算方法

助成される金額は、設備投資等にかかった費用に助成率を掛けた額助成上限額を比べて、安い方です(1,000円未満は切り捨て)。

厚生労働省のリーフレットが示す計算例は次のとおりです。

  • 事業場内最低賃金が1,040円 → 助成率4/5
  • 8人の労働者を1,130円まで引上げ(90円コース)→ 助成上限額450万円
  • 設備投資などの額は600万円 → 600万円×4/5=480万円

480万円と450万円を比べて安い方が支給されるため、支給額は450万円です。設備費用を増やしても上限額は超えられません。

なお、同一事業主が複数の事業場で申請する場合、事業主単位の年間上限額は600万円です。申請と審査は事業場単位で行いますが、会社全体で600万円を超えて受給することはできません。

順番を間違えると全額対象外になる

この制度で最も事故が多いのが実施の順番です。賃上げと設備投資で、動いてよいタイミングが違います。

  1. 交付申請(2026年9月1日〜)
  2. 賃金引上げ——交付申請に実施。就業規則等の改正・適用をもって実施したことになります
  3. 交付決定——申請書が労働局に到達した日から起算して原則3か月以内に通知
  4. 設備の契約・納品・支払い——交付決定後から、交付決定の属する年度の1月31日まで
  5. 事業実績報告・支給申請——事業完了日から起算して1月を経過する日、または翌会計年度の4月10日のいずれか早い日まで
  6. 交付額の確定・入金

ここから読み取れる、実務上とても重要な事実が2つあります。

①賃上げは交付決定を待たずに実行することになります。賃金引上げの期限は「申請事業場の都道府県で適用される令和8年度地域別最低賃金の発効日の前日」で、交付決定の通知は申請書到達から原則3か月以内です。つまり多くのケースで、助成が受けられるか確定する前に賃上げを先に実行する順序になります。不交付になっても引き上げた賃金は戻せません。賃上げ自体を単独で維持できるかを、申請前に必ず検討してください。

②設備は交付決定前に1歩も動かせません。交付要領は「交付決定前に発生した費用。また、補助事業実施期間外に発生した費用」を対象外と定め、「いかなる理由であっても事前着手は認められません」と明記しています。Q&A問27も「導入機器等の納品や契約は、必ず交付決定後でなければならず、交付決定前に納品や契約された場合は助成を受けることはできません」としています。

「発注だけなら交付決定前でも問題ない」という解説を見かけますが、公式の一次情報にそうした例外は書かれていません。契約・納品・支払いのいずれも交付決定後に行ってください。この点は他の補助金でも共通の鉄則で、デジタル化・AI導入補助金の対象経費でも同じ扱いです。

賃上げのやり方にもルールがある

  • 2回に分けて(二段階で)引き上げることはできません。10月1日に1,050円→1,060円、11月1日に1,060円→1,100円と分けても、合算して50円引上げとは認められません(Q&A問18)
  • 引上げ後の事業場内最低賃金額と同額を就業規則等に定める必要があります
  • 賃金引上げは所定労働時間の短縮や所定労働日の減少を伴わないものである必要があります
  • 引き上げた賃金は、原則として事業実績報告書の提出日までに支払う必要があります。支払日の関係で間に合わない事情が生じたときは、労働局雇用環境・均等部(室)に相談する扱いです(Q&A問59)
  • 時間額に1円未満の端数が出る場合も、その賃金額を基準にコース区分の金額以上引き上げれば認められます(例:1,050円50銭→1,100円50銭以上で50円コース。Q&A問19)

「引き上げる労働者数」の数え方

上限額を左右する重要な数字です。次の2種類が算入できます。

  • 事業場内最低賃金である労働者
  • 上記の労働者の賃金を引き上げることにより、賃金額が追い抜かれる労働者

ただし、いずれも申請コースと同額以上の引上げが必要です。すでに引上げ後の事業場内最低賃金以上である労働者は算入できません。対象となるのは週所定労働時間20時間以上の雇用保険被保険者です(令和7年度から、引き上げる対象労働者は雇用保険被保険者が対象になりました。令和8年度も同じ扱いが継続しています)。

助成対象になる経費・ならない経費

助成対象経費の下限は10万円です。経費区分は交付要綱別表第3で、謝金、旅費、借損料、印刷製本費、原材料費、機械装置等購入費、造作費、経営コンサルティング経費、委託費と定められています。

対象となるのは「生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資等」です。厚生労働省のリーフレットが挙げる例は次のとおりです。

経費区分対象経費の例
機器・設備の導入POSレジシステム導入による在庫管理の短縮、リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
経営コンサルティング国家資格者による、顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直し
その他顧客管理情報のシステム化

対象外になる経費(交付要領 注7)

ここは競合の解説でも省略されがちですが、不採択・不支給の原因の多くがここに集中します。

  • 単なる経費削減を目的とした経費(例:LED電球への交換、通信費削減のためのプラン変更、資料作成の外注)
  • 快適化を図ることを目的とした職場環境の改善経費(例:動線確保に伴うレイアウト変更、エアコン設置、執務室の拡大、内装工事等の改築費用、机・椅子の増設、空調服)
  • 通常の事業活動に伴う経費(例:事務所借料、光熱費、従業員賃金、交際費、消耗品費、通信費、掃除機などの清掃用品、汎用事務機器購入費)
  • 広告宣伝費・販売促進費(パンフレット・動画・写真等の作成および媒体掲載、デジタルサイネージ、展示会の出展、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、ランディングページの作成、マーケティングツール活用など)
  • 建築物の構築に関する経費(工場建屋、構築物、簡易建物〔ビニールハウス、コンテナ、ドームハウス、室内の作業スペース等〕の取得費用や組み立て用部材)
  • 再生エネルギーに係る費用(太陽光発電のソーラーパネルなど)
  • 移動に要する費用(船舶、航空機等の購入費・修理費・車検費用)
  • 娯楽性・遊行性が高く、生産性向上または業務効率化に直接資すると認められない設備(全自動麻雀機、カラオケ機器、ゲーム機など)
  • 法令等で義務づけられたものの整備に係る経費、事業実施上必須となる資格の取得に係る経費
  • 交付決定前に発生した費用、補助事業実施期間外に発生した費用
  • 日本国外で実施する事業

「ホームページの作成・改修」「広告宣伝」を設備投資として申請したいというご相談は多いのですが、広告宣伝費・販売促進費は明示的に対象外です。設備投資の名目で通そうとせず、別の制度を検討してください。

パソコンは原則対象外。ただし例外が2つある

交付要領の「機械装置等購入費」は、機器・設備類(特種用途自動車以外の自動車、パソコン〔タブレット端末やスマートフォンおよびその周辺機器を含む〕は除く)の購入・製作・改良の費用と定義されています。つまり汎用のパソコンは原則として対象外です。ただし、原文には例外が2つ書かれています。

例外①:特定業務専用のシステムを稼働させる目的が明らかな場合

交付要領の注3は、パソコン等であっても「例えば、POSシステム、会計給与システム等、特定業務専用のシステムを稼働させるための目的で導入することが明らかである場合は助成対象とする場合がある」と定めています。Q&A問35も、業務用高機能プリンターの稼働にそのスペックが要求仕様として必要で、事務作業用の汎用パソコンでは対応できない場合に限り助成対象となり得る、としています。「パソコンだから」と諦める前に、専用システム稼働のための機器といえるかを確認してください。

例外②:特例事業者のうち②物価高騰等要件に該当する場合

この場合は、新規導入に限りパソコン等が助成対象になります(令和8年度申請分)。

助成対象経費一般事業者特例事業者(②物価高騰等要件)
生産性向上に資する設備投資等
PC・スマホ・タブレット等の端末と周辺機器の新規導入原則×(例外①に当たる場合を除く)

①賃金要件だけで特例事業者になる場合は、上限額の拡大は受けられても経費の拡大は受けられません。経費の拡大は②物価高騰等要件にのみ結びついている点に注意してください。

なお、汎用のパソコンを導入したい場合は、デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠(インボイス対応類型)のほうが素直です。あちらは対象ソフトとセットであればPC・タブレット・プリンター・複合機が10万円まで、レジ・券売機が20万円まで補助対象になります(インボイス枠の詳細)。

自動車は「8ナンバー」だけが対象

自動車は、特種用途自動車以外は助成対象外です。特種用途自動車とは、ナンバープレートの車種を表す数字が8で始まるものおよびこれに準ずると考えられるもの(福祉車両等)をいいます。令和7年度からは、それまで助成対象経費の特例となっていた自動車(特種用途自動車を除く)が助成対象外になりました(令和8年度も同じ扱いが継続しています)。

特種用途自動車を導入する場合、車両本体以外で対象になるのは通常装備、検査登録(届出)手続の代行費、車庫証明手続の代行費、納車費用等です。預かり法定費用、リサイクル料金、自動車取得税、自動車重量税、自賠責保険料、希望ナンバー交付手数料、オーディオ等のオプション装備は対象外です(Q&A問34)。

設備更新・自社施工の注意点

  • 同等性能の設備に入れ替えるだけでは対象になりません。老朽化・破損を機に、既存機器より高い能力を有する上級機器を導入し、生産性向上・労働能率の増進に資すると認められる場合に対象です。事業実施計画書に具体的な数値や客観的な根拠資料を示してください(Q&A問30)
  • 自社で施工・製造するものは原則対象外です。施工等に要する原材料費のみを事業費とする場合は対象になりますが、その場合も二者以上からの見積もりが必要です(Q&A問29)
  • 相互に関連しない複数の設備投資でも、それぞれが生産性向上・労働能率の増進に資するなら、合計額をもって申請できます(Q&A問28)

申請スケジュール:9月1日開始、締切は都道府県で違う

項目期間・期限
交付申請期間2026年9月1日〜「申請事業場の都道府県において適用される令和8年度地域別最低賃金の発効日の前日」または「2026年11月30日」のいずれか早い日まで
賃金引上げの実施期間交付申請後〜「申請事業場の都道府県において適用される令和8年度地域別最低賃金の発効日の前日」まで
交付決定の通知申請書が労働局に到達した日から起算して原則3か月以内
事業完了期限交付決定の属する年度の1月31日(設備の納品日・支払完了日・賃金引上げ日のうち最も遅い日)
事業実績報告・支給申請事業完了日から起算して1月を経過する日、または翌会計年度の4月10日いずれか早い日まで

(出典:交付要領 第2の3・第3の1、交付要綱 第6条・第13条)

締切は都道府県ごとに違います。地域別最低賃金の発効日は都道府県で異なるため、「全国一律◯月◯日」ではありません。自社の事業場がある都道府県の令和8年度地域別最低賃金の発効日を確認し、その前日から逆算してください。申請期間の末日が行政機関の閉庁日(土日祝、12月29日〜1月3日など)にあたる場合は、その翌開庁日が末日になります(Q&A問50)。

郵送の場合は消印ではなく労働局への到達日で判断されるため、簡易書留など記録が残る方法で余裕をもって発送してください。

事業完了期限の延長という救済がある

「1月31日までに納品・支払い・賃上げが終わらないから諦める」と決める前に、延長制度を確認してください。やむを得ない理由がある場合は、あらかじめ理由書を添えて申請すれば、事業完了期限を3月31日まで延長して交付決定を受けられます(交付要綱第5条第3項・第6条第4項)。厚生労働省が挙げる例は次のとおりです。

  • 導入機器等の納入日が、半導体不足など納入機器業者の都合により1月31日以降となる場合
  • 導入機器等の納入日が最短でも1月31日であるため、支払い日が2月1日以降となる場合

交付決定後に延長の必要が生じた場合も、管轄の労働局雇用環境・均等部(室)に相談する扱いです。

予算がなくなると期間内でも終了する

リーフレットは「予算の範囲内で交付するため、申請期間内に募集を終了する場合があります」と明記しています。締切日を目標にすると間に合わないおそれがあります。9月中の申請を目標に段取りを組んでください。

申請の流れと必要な手続き

  1. 事業場内最低賃金を確認する——雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者の中で最も低い時間給を確認します。改定後の地域別最低賃金以上なら申請できません
  2. 賃上げ計画と設備投資計画を立てる——コース(50円・70円・90円)と引き上げる労働者数を決め、上限額を確認します
  3. 見積もりを取る——助成対象経費の見積書を申請書に添付します。原材料費のみで申請する場合などは二者以上の見積もりが必要です
  4. 交付申請書(様式第1号)を提出する——事業場の所在地を管轄する都道府県労働局の担当部署へ、持参・郵送・電子申請(Jグランツ)で提出します
  5. 賃金を引き上げる——交付申請後、就業規則等を改正・適用します
  6. 交付決定を待つ——原則3か月以内に様式第2号で通知されます
  7. 設備を導入し支払う——契約・納品・支払いはすべて交付決定後、事業完了期限まで
  8. 状況報告(様式第8号)を提出する——賃金を引き上げてから、実績報告手続を行った日の前日または賃金引上げから6月を経過した日のいずれか遅い日までの実施状況を、それぞれの日から起算して1月以内に提出します
  9. 事業実績報告書(様式第9号)・支給申請書(様式第10号)を提出する
  10. 交付額の確定(様式第11号)と入金

8の状況報告は見落とされやすい手続きです。対象期間中に解雇等がなかったか、賃上げした労働者の賃金引下げがなかったかを、賃金台帳の写しを添えて確認する書類です(Q&A問61)。「入金されたら終わり」ではありません。

支払い方法にも決まりがあります。原則は振込払いです。クレジットカード・小切手・約束手形などで支払う場合、事業完了期日(原則1月31日、延長が認められた場合はその期限)までに口座から引き落とされていないと助成対象外になります(Q&A問60)。現金払いの場合は、預金通帳の写しだけでなく総勘定元帳・現金出納帳等の提出も必要です。

他の助成金・補助金との関係

同一の設備投資に対して国または地方公共団体から補助金等を受けている場合は、不交付事由(交付要綱第4条第4項第一号エ)に当たります。公益財団法人等からの助成も、同一の設備投資費用に対するものは「これに類する助成等」として併給できません(Q&A問48)。

一方で、助成対象が同一の設備投資等の費用でないものについては、併せて受けることができます。ただし他の助成金等と補助目的が重複する場合は併給調整の対象になることがあります(Q&A問47)。

特に注意したいのがキャリアアップ助成金との関係です。業務改善助成金で賃金引上げの対象とした労働者を、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の支給対象労働者としてカウントすることはできません(Q&A問47)。賃上げ系の助成金を重ねて狙う場合は、対象労働者を分けて設計する必要があります。雇用系助成金の使い分けはキャリアアップ助成金と人材開発支援助成金の違いでも整理しています。

なお、日本政策金融公庫の働き方改革推進支援資金は、事業場内最低賃金の引上げに取り組む事業者向けに設備資金・運転資金の融資を行っています。助成金は後払いのため、立替資金の手当てとして検討する余地があります。

よくある質問

Q. 過去に業務改善助成金を使ったことがありますが、また申請できますか?

できます。過去に活用した事業者も助成対象です。ただし同一年度内の同一事業場における申請は1回が上限です。また、前回の助成事業で定めた事業場内最低賃金額を、その完了日以後に下回っていると不交付事由に当たります。

Q. 事業場内最低賃金の唯一の対象労働者が退職してしまいました。どうなりますか?

退職の時期で扱いが変わります。賃金引上げ前の退職なら、他の労働者(雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者)を対象者にできる場合は事業計画変更申請書を提出します。それができない場合は事業廃止承認申請書の提出または申請の取下げが必要です。賃金引上げ後の退職なら、引上げ後から退職までの間に勤務し、それに応じた賃金が支払われていれば、日数にかかわらず助成対象になります(事業実績報告書に自己都合退職である旨を付記)。

Q. 会社全体で複数の事業場があります。まとめて申請できますか?

申請と審査は事業場単位です。工場と事務所が別々にあるなら、それぞれ申請します。ただし同一事業主が複数事業場で申請する場合、事業主単位の年間上限額は600万円です。

Q. 助成金はいつ入金されますか?

後払いです。事業完了後に事業実績報告と支給申請を行い、労働局の審査を経て交付額が確定してから支払われます。設備費用も引き上げた賃金もいったん自己資金で負担する前提で資金繰りを組んでください。

Q. 消費税を含めて10万円以上あれば、助成対象経費の下限を満たしますか?

満たしません。下限の10万円に消費税は含まれず、税抜価格で判断します。厚生労働省のQ&A問26は、税込104,500円(消費税率10%)でも税抜95,000円なので対象にならない、という例を挙げています。一方で、1つの価格が10万円未満の設備投資でも、他の生産性向上に資する設備投資と合わせた合計額が10万円以上になれば対象です。なお、助成金に係る消費税仕入控除税額が明らかな場合は、それを減額して交付申請する必要があります(交付要綱第5条第4項)。

まとめ

  • 令和8年度の業務改善助成金は2026年9月1日受付開始。締切は「都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日」か「11月30日」の早い方で、予算次第では期間内に募集終了もある
  • 助成率は事業場内最低賃金だけで決まる(1,050円未満は4/5、1,050円以上は3/4)。上限額はコース×引き上げる労働者数で決まり、カッコ内の上乗せは事業場規模30人未満かつ1人・2〜3人の区分だけ
  • 最大600万円は特例事業者が90円コースで10人以上を引き上げた場合の数字。一般の事業者の上限は450万円
  • 順番がすべて:賃上げは交付申請後、設備の契約・納品・支払いは交付決定後。事前着手はいかなる理由でも認められない
  • 賃上げは交付決定前に実行することになる(交付決定は申請書到達から原則3か月以内)。不交付でも賃上げは戻せないため、賃上げ単独で維持できるかを先に判断する
  • 申請前に、改定後の地域別最低賃金との比較・労働保険の加入と納付・直近の解雇の有無・是正勧告の有無を必ず確認する

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参考(一次情報)