クリニックの電子カルテ、薬局の電子薬歴、介護事業所のケアプラン・介護記録、保育園の登降園管理などのソフトは、IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金2026)の補助対象になり得ます。一方、医療機器・検査機器・介護ロボット・見守りセンサーなどの機器は補助対象ではありません。ソフトが対象になるのは、IT導入支援事業者が事務局に登録したITツールの場合です。

「医療法人でも申請できる?」「介護事業所は賃上げの要件をどう考えればよい?」というご相談では、事業者の範囲と賃上げ要件で迷う方が多くいらっしゃいます。この記事では、デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)の公募要領の原文をもとに、医療・介護・保育の事業者が何を、どの枠で導入できるかを整理します。当社の主な対象である通常枠とインボイス枠(インボイス対応類型)を中心に扱います。

  • 申請できる事業者:医療法人・社会福祉法人は「常時使用する従業員の数が300人以下」で、資本金の基準はありません。ただし小規模事業者には当たらないため、インボイス枠の4/5の補助率は使えません
  • 賃上げ要件:保険医療機関・保険薬局、介護保険の介護サービス事業者、社会福祉事業を行う事業者は、賃金引上げ計画の申請要件が適用外です。通常枠の150万円以上でも4プロセス以上は必要で、労働生産性の目標も残ります
  • 通常枠:公募要領の別紙2に、医療業「医P-06」、介護業「介P-06」、保育業「保P-06」の業種固有プロセスがあります。補助対象はソフトウェア・オプション・役務で、機器は含まれません
  • インボイス枠(インボイス対応類型):ソフトはインボイス制度に対応し、「会計」「受発注」「決済」の機能を1種類以上含むものに限られます。電子カルテや介護記録の機能だけでは要件を満たしません
  • 事業者の側にも条件があります。過去の交付決定歴や12カ月制限などで、申請自体ができない場合があります(先に確認する)

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医療・介護・保育はIT導入補助金で何を導入できる?の記事でわかる3つのこと:電子カルテ・介護記録・保育記録のソフトが対象になる条件、医療法人・社会福祉法人は従業員300人以下で、小規模事業者に当たらない、保険医療機関・介護サービス事業者は賃金引上げ計画の要件が適用外
図解:医療・介護・保育はIT導入補助金で何を導入できる?で最初に押さえたい3つのポイント

医療・介護・保育で対象になるもの・ならないもの

医療・介護・保育の業務ソフトは、登録されたITツールであれば通常枠の対象になり得ます。医療機器や介護ロボット、見守りセンサーなどの機器は、通常枠でもインボイス枠でも対象外です。よく検討される導入物を公募要領の原文に沿って整理すると、次の表のとおりです。

導入したいもの通常枠インボイス枠(インボイス対応類型)
電子カルテ・診療管理・オンライン診療のソフト対象になり得る(医P-06)「会計」「受発注」「決済」の機能を含む登録ソフトなら対象になり得る。診療管理の機能だけでは要件を満たしません
電子薬歴・訪問薬剤管理のソフト対象になり得る(医P-06)同上
ケアプラン作成・介護記録・サービス計画書のソフト対象になり得る(介P-06)同上
保育記録・登降園管理・連絡帳のソフト対象になり得る(保P-06)同上
予約受付台帳、受付システム・順番発券機のソフト対象になり得る(共P-01。ソフトウェア部分のみ)同上
勤怠・シフト作成・給与計算のソフト対象になり得る(共P-05)同上
会計・請求・窓口の決済(POSレジ)のソフト対象になり得る(共P-02、共P-04)「会計」「決済」機能として対象になり得る
医療機器・検査機器・介護ロボット・見守りセンサー・カメラ対象外(補助対象はソフトウェア・オプション・役務のみ)対象外(機器として対象になるのは、PC・タブレット等とレジ・券売機に限られます)
職員用のタブレットや事務用PC対象外会計・受発注・決済のいずれかのソフトとあわせて導入する場合、上限10万円の枠が使えるかを確認

この表は機能の分類を示したもので、特定の製品が対象になる保証ではありません。公募要領が定めるのは、どの機能がどのプロセスに分類されるかまでです。製品が補助対象になるかは、IT導入支援事業者が事務局に登録し、審査を通ったかで決まります。

医療業の機能例には、公募要領に次の注記があります(原文)。

医療分野のデータ標準化に向けた取組みが進められていることを踏まえ、厚生労働省標準規格に基づいたデータの共有や二次利用を円滑に行うことが可能なものである必要がある。

電子カルテなど医療業の業種固有プロセスで申請するソフトは、この条件に合う製品として登録されているかを、IT導入支援事業者に確認してください。

申請できる事業者:医療法人・社会福祉法人は「従業員300人以下」

医療法人・社会福祉法人は、常時使用する従業員の数が300人以下であれば、中小企業等として申請の対象になります(公募要領 2-1-1(1))。会社の場合と違い、資本金の基準はありません。主な組織形態ごとの定義は次のとおりです。

組織形態定義(公募要領 2-1-1(1))
医療法人、社会福祉法人常時使用する従業員の数が300人以下の者
学校法人常時使用する従業員の数が300人以下の者
特定非営利活動法人(NPO法人)、一般・公益の社団法人・財団法人会社の業種分類(①〜⑧)に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者
株式会社・合同会社などの会社、個人事業主業種分類(①〜⑧)ごとの資本金の額又は出資の総額、または常時使用する従業員数で判定

株式会社が運営する介護事業所や、個人で開業しているクリニックは、会社・個人事業主の業種分類で判定します。たとえばサービス業(ソフトウェア業又は情報処理サービス業、旅館業を除く)は、資本金5千万円以下または従業員100人以下です。その他の業種(①〜⑦以外)は、資本金3億円以下または従業員300人以下です。自社がどの業種分類に当たるかは、公募要領が示す総務省統計局(e-Stat)の日本標準産業分類で確かめます。

「常時使用する従業員」は、労働基準法第20条の「予め解雇の予告を必要とする者」を指し、会社役員と個人事業主は含みません。パートの職員が多い事業所は、誰が数に入るかを先に整理しておくと判定が早くなります。

医療法人・社会福祉法人・NPO法人は小規模事業者に当たりません

公募要領は、業種分類の⑨〜⑮に当たる組織形態の者は小規模事業者に該当しないとしています(原文)。

「中小企業等の定義」における業種分類⑨~⑮に規定する組織形態の者については、小規模事業者に該当しないものとする。

医療法人・社会福祉法人・学校法人・NPO法人・社団法人・財団法人は、従業員が少なくても小規模事業者ではありません。インボイス枠で50万円以下の部分の補助率が4/5以内になるのは小規模事業者だけなので、これらの法人は3/4以内で計算します。個人開業のクリニックや会社が運営する事業所は、従業員数によって小規模事業者に当たる場合があります(商業・サービス業は5人以下、製造業その他は20人以下など)。

申請の前提:生産活動に資する事業であること

公募要領は、申請するすべての事業者に次の前提を置いています(原文)。

本事業に申請する全ての事業者は、製品・サービスの生産・提供など、生産活動に資する事業を行っていることを前提とし、かつ申請・導入するITツールは、製品・サービスの生産・提供などの生産性向上に資するものであることが必要である。

医療・介護・保育のサービスを提供する事業で、その提供の生産性を上げるソフトを入れる、という説明が求められます。

申請できない事業者・使えない枠を先に確認

導入したいソフトが対象でも、申請する事業者が対象外に当たる場合は申請できません。医療・介護の法人で問題になりやすいのは、同じ代表者で複数の法人を運営している場合の「みなし同一法人」と、過去の受給歴です。

通常枠・インボイス枠に共通の対象外(公募要領 2-1-2)

公募要領2-1-2は、次のいずれかに該当する事業者を申請の対象外としています(抜粋)。

  • 発行済株式の総数の2分の1以上を同一の大企業が所有している事業者など、大企業との資本関係が深い事業者((1)①〜⑤)
  • 確定している(申告済みの)直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える事業者((1)⑥)
  • 「みなし同一法人」は1社のみしか申請できません((2))。親会社が議決権の50パーセント超を有する子会社がある場合や、個人が複数の会社のそれぞれの議決権を50パーセント超保有する場合が該当します。代表者及び住所が同じ法人、主要株主及び住所が同じ法人、実質的支配者が同じ法人の場合も該当します
  • IT導入支援事業者(構成員を含む)として登録されている、または登録しようとする事業者((3))
  • 過去1年において、労働関係法令違反により送検処分を受けている事業者((6))
  • 宗教法人、法人格のない任意団体(同窓会・PTA・サークルなど)((8)(9))

医療法人と、同じ理事長が代表を務めるMS法人(医療機関の事務などを請け負う会社)や介護の会社が同じ住所にある場合は、みなし同一法人に当たるかを先に確認してください。

申請の単位と回数、12カ月制限

  • 交付申請期間中、1法人・1個人事業主あたり1申請のみです(みなし同一法人の考え方を適用)。通常枠の公募要領は、同じ期間中に交付申請を受け付けている他の枠も申請し、交付決定・交付を受けることは可能としています。対象の枠は、インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)とセキュリティ対策推進枠です
  • ただし、通常枠とインボイス枠の両方で申請している場合は、審査で減点措置の対象になります(公募要領 3-3(2)②)。複数申請で補助対象経費の二重計上が疑われると、交付決定の取消しや全額返還になる場合があります
  • IT導入補助金2025の通常枠および複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者は、交付決定日から12カ月以内は2026の通常枠で申請できません。グループ構成員も含みます
  • 通常枠の審査では、IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者も減点の対象です。IT導入補助金2024・2025で交付決定を受けたソフトのプロセスと、今回のソフトのプロセスが重複する場合も減点され、完全に一致する場合は不採択です(公募要領 3-3(2)②)。以前に入れた介護ソフトや電子カルテの入れ替えを考えている場合は、先にプロセスの重なりを確認してください

インボイス枠(インボイス対応類型)の対象外

インボイス枠の公募要領は、次の交付決定を受けた事業者を申請の対象外としています(2-1-2(4))。

  • IT導入補助金2022のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
  • IT導入補助金2023のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)・同(商流一括インボイス対応類型)
  • IT導入補助金2024・2025のインボイス枠

IT導入補助金2025の複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者(グループ構成員を含む)は、交付決定日から12カ月以内は2026のインボイス枠(インボイス対応類型)でも申請できません。対象外になるかどうかは、導入したソフトの種類ではなく、上の枠で交付決定を受けたかどうかで決まります。たとえばIT導入補助金2024・2025のインボイス枠で会計・請求のソフトやレジを入れたクリニック・介護事業所は、2026のインボイス枠には申請できません。逆に、2024・2025の通常枠でレセプトと連動する会計ソフトを入れただけなら、この規定には当たりません。ただし、インボイス枠の審査では、IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者は減点の対象です。そこで選んだITツールと同じ機能(会計・受発注・決済)のITツールを導入する場合はさらに減点され、IT導入補助金2024・2025で交付決定を受けたソフトとプロセスが完全に一致する場合は不採択です(インボイス枠の公募要領 3-3(2)②)。詳しくは再申請の対象外・減点一覧で確認してください。

国の他の補助金と同じ経費は申請できません

公募要領は、申請要件として「国及び中小機構その他の独立行政法人の他の補助金等と重複する事業については、補助事業の対象として含んでいないこと」を求めています(通常枠 2-1-1(キ))。同じソフトの導入費用で国の別の補助金を受ける場合は、この補助金の対象に含められません。

保険医療機関・介護サービス事業者は賃金引上げ計画の要件が適用外

賃上げ要件の適用外で外れるもの・残るものの図解。主な項目:150万円以上の賃金引上げ計画は適用外、過去に交付決定を受けた事業者の3.5%の計画も適用外、150万円以上の4プロセス以上は必須のまま、通常枠の労働生産性の目標も必須のまま
図解:賃上げ要件の適用外で外れるもの・残るもので押さえたいポイント

保険医療機関・保険薬局や介護保険の介護サービス事業者などは、賃金引上げ計画の申請要件が適用外です(通常枠 2-1-1(ニ)、インボイス枠 2-1-1(テ))。適用外になる事業者は、公募要領で次の4つと定められています(原文)。

一 健康保険法、国民健康保険法、労災保険及び自賠責保険の対象となる医療等の社会保険医療の給付等を行う保険医療機関及び保険薬局
二 介護保険法に基づく保険給付の対象となる居宅サービスや施設サービスを提供する介護サービス事業者
三 社会福祉法に基づく第一種社会福祉事業、第二種社会福祉事業及び更生保護事業法に規定する更生保護事業を行う事業者
四 学校教育法に基づく学校、専修学校、修業年限が1年以上などの一定の要件を満たす各種学校

適用外になるのは、賃上げの計画を申請の必須要件とする規定です。どの規定が外れて、どの要件が残るかを整理すると次のとおりです。

要件一般の事業者上の4つに当たる事業者
通常枠で補助額150万円以上のときの賃金引上げ計画(1人当たり給与支給総額の年平均3%以上〔7次締切からは1年後3%以上も〕・事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上・従業員への表明)((ト))必須適用外
IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者の賃金引上げ計画(1人当たり給与支給総額の年平均3.5%以上など。7次締切からは1年後3.5%以上も)(通常枠(テ)(ナ)、インボイス枠(ツ))必須適用外
通常枠で補助額150万円以上のときの4プロセス以上必須必須(適用外の規定はない)
通常枠の労働生産性の目標(1年後3%以上・年平均成長率3%以上。過去の受給歴により4%以上)((ク))必須必須(適用外の規定はない)

なお、別紙1の表では、賃上げの「申請要件」の欄に適用外の注記が付き、「加点要件」の欄には付いていません。賃上げの加点を受けるかどうかは、申請要件とは別に判断します。加点の仕組みと未達のときの扱いは賃上げ加点と返還の記事で整理しています。

自由診療だけ・介護保険外のサービスだけの場合は要確認

適用外になるのは、上の4つの事業者です。保険診療を行わない自由診療だけのクリニックや、介護保険の給付の対象にならないサービスだけを提供する事業者は、文言上は一・二に当たりません。また、法人が複数の事業を営んでいて一部だけが該当する場合の扱いは、公募要領に書かれていません。自法人が当たるかどうかは、申請前にIT導入支援事業者を通じて事務局に確認してください。

通常枠:医療・介護・保育で使える機能とプロセスの数え方

通常枠で必要なプロセスの数は補助額で変わり、5万円〜150万円未満は1プロセス以上、150万円〜450万円以下は4プロセス以上です(公募要領 2-3)。

補助額必要なプロセス数
5万円〜150万円未満1プロセス以上
150万円〜450万円以下4プロセス以上

プロセスとは、公募要領の別紙2で、ITツールの機能を業務ごとに分類した区分です。共通プロセス(共P-01〜共P-05)、業種固有プロセス(各業種P-06)、汎用プロセス(汎P-07)の7種類があります。

業種固有プロセス(医P-06・介P-06・保P-06)

別紙2が挙げている医療業・介護業・保育業の機能例は、原文の表記で次のとおりです。

プロセス別紙2の機能例(原文)
医P-06 医療業電子薬歴、訪問診療・訪問薬剤管理(計画書・スケジュール・報告書作成、記録)、診療管理(症状・処置・処方・経過・カルテ記録等)、医療デジタル画像管理・閲覧・3Dデータ生成、オンライン診療システム、入院情報管理(病棟・病床管理)、NST支援(食事・栄養管理)、対象者状態管理(顔認証画像解析、入退室管理、センサーによる睡眠、脈拍、呼吸等の健康状態管理)、見守りシステム、ME機器管理、生体検査等管理(生体検査、健康診断等)、看護必要度分析、病院経営分析(DPCデータ分析)等
介P-06 介護業ケアプラン作成管理、サービス計画書・機能訓練計画策定管理、サービス担当者会議記録管理、給食・栄養ケア計画管理(調理、献立、栄養、衛生)、介護記録管理(服薬管理等)、診療管理(計画書、記録、報告書作成、スケジュール)、施設管理(居室・ベッド・施設・車両(配車計画含む。)・備品利用に関連する管理)、対象者状態管理(顔認証画像解析、入退室管理、センサーによる睡眠、脈拍、呼吸等の健康状態管理)、安否確認、見守りシステム、リハビリ・身体機能維持運動管理
保P-06 保育業保育教育計画策定管理、イベント企画、予定管理(遠足・運動会・消防訓練・予防接種等)、食育計画策定(献立・栄養価・アレルゲン管理)、保育記録管理(出欠、体調、保護者予定)、登降園管理、送迎バス位置情報連絡、連絡帳(園児・保護者間コミュニケーション)、園児状態管理(センサー・カメラ等による睡眠、呼吸、入退室等の状態管理)、見守りシステム

「見守りシステム」や「センサーによる…健康状態管理」が機能例にあっても、対象になるのはソフトウェアです。センサー・カメラ・ベッドなどの機器の購入費用は含まれません。

共通プロセスで数えられる機能

医療・介護・保育でも、次の共通プロセスは数えられます。

プロセス医療・介護・保育に関係する機能例(別紙2の原文)
共P-01 顧客対応・販売支援予約受付台帳(店舗側で予約を管理する機能が対象。顧客側画面を新規制作する費用はスクラッチ開発として対象外)、無人受付システム・無人チェックイン・順番発券機システム(医療業等で使用される順番発券機等も対象。ソフトウェアのみが対象で、ハードウェア部分は対象外)
共P-02 決済・債権債務・資金回収決済(POSレジ、券売機システム、多通貨対応)、発注・仕入管理、買掛・支払管理、受注・売上請求管理、売掛・回収管理
共P-03 供給・在庫・物流入出庫管理、実地棚卸管理、検品受入、在庫分析、在庫基準
共P-04 会計・財務・経営仕訳、総勘定元帳、財務三表、固定資産台帳・減価償却計算、経費精算(仕訳機能や会計ソフトへの連携機能がなく、費目と金額を入力・表示するだけのものは対象外)、管理会計、経営分析
共P-05 総務・人事・給与・労務…出退勤申請・管理、シフト作成(シフト希望収集、計画作成)、給与計算、人事基本台帳、社内向け研修ツール、電子契約、ワークフロー(詳しくは勤怠管理・給与計算ソフトの記事)
汎P-07 汎用・自動化・分析ツール文書証憑管理ソフト、OCR、ペーパーレス化ツール、グループウェア、社内チャットツール、WEB会議システム、RPA、チャットボット。ただし汎用プロセスだけを持つITツールは単独では申請できません

予約受付台帳の注意点は、「顧客側・店舗側で利用する機能の切り分けができない場合は、顧客側機能も対象とする」としています。患者・利用者が使う予約画面を一から作る費用は対象外です。

プロセス数の数え方と、医療・介護で多い組み合わせ

  • プロセス数は、ITツールの機能が「どのプロセスに分類されるか」で数えます。たとえば介護ソフトが介P-06(介護記録)と共P-05(シフト作成)にまたがる登録なら、2プロセスです。どのプロセスで登録されているかは、公式のITツール検索で確認できます
  • 150万円以上で申請する場合は、共P-01〜汎P-07のうち4種類以上が必要です。賃金引上げ計画が適用外の事業者でも、この要件は変わりません
  • 150万円未満で申請する場合は、共P-01〜各業種P-06のうち1種類以上で足ります
  • 医療・介護では、業種固有の記録・管理(医P-06・介P-06)、予約・受付(共P-01)、勤怠・シフト(共P-05)、会計(共P-04)を組み合わせる構成が考えられます。ただし、組み合わせられるかどうかは登録内容で決まります

通常枠にハードウェアの区分はありません

通常枠の補助対象は、大分類Ⅰ「ソフトウェア」、大分類Ⅱ「オプション」、大分類Ⅲ「役務」の3つです。医療機器、検査機器、介護ロボット、見守りセンサー、カメラ、受付の発券機の本体などは、通常枠の補助対象に含まれていません。

別紙2は、受付システムや順番発券機に「ソフトウェアのみが対象であり、ハードウェア部分は対象外とする。また、ソフトウェアとハードウェアが一体となっており、切り分けが困難な場合も対象外とする」という注意点を付けています。機器と一体になった製品は、見積の段階でソフトの費用が分かれているかを確認してください。

補助率の2/3の条件

通常枠の補助率は1/2以内です。7次締切(2026年12月1日)からの公募要領(第7回公募以降・2026年10月9日公開)は、次の条件を満たす場合に2/3以内とする旨を定めています(原文)。

令和7年10月から令和8年9月までの間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~令和8年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある場合は、2/3以内

受付を終了した6次締切(2026年10月30日)までの公募要領では、期間と基準が次のとおりでした(原文)。

令和6年10月から令和7年9月までの間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~令和7年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある場合は、2/3以内

この措置を受けるには、交付申請のときに「賃金状況報告シート(補助率引上げ・加点措置①用)」の提出が必要です。最低賃金に近い時給の職員が多い事業所は、賃金台帳で月ごとの割合を確かめてください。

インボイス枠の要件と補助額:会計・受発注・決済の機能が必要

インボイス枠(インボイス対応類型)で対象になるソフトは、インボイス制度に対応し、「会計」「受発注」「決済」の機能を1種類以上含むものです。公募要領2-2(3)の原文は次のとおりです。

カテゴリー1(ソフトウェア)に区分されるもののうち、インボイス制度に対応しており、かつ「会計」「受発注」「決済」の機能を1種類以上含む必要がある

医療・介護・保育では、会計ソフトや請求のソフト、窓口の決済(POSレジ)などがこの要件に当たり得ます。補助額と補助率をまとめると、次の表のとおりです(公募要領 2-3)。

項目補助額補助率
ソフト購入費・導入関連費(会計・受発注・決済のうち1機能)〜50万円3/4以内(小規模事業者は4/5以内)
ソフト購入費・導入関連費(会計・受発注・決済のうち2機能以上)〜350万円50万円以下の部分は3/4以内(小規模事業者は4/5以内)、50万円超の部分は2/3以内
PC・タブレット等〜10万円1/2以内
レジ・券売機〜20万円1/2以内

役務(導入設定、研修、保守サポートなど)の補助対象経費は200万円が上限です。オプション・役務・ハードウェアを申請できるのは、ソフトとあわせて交付申請する場合に限られます(公募要領 2-2(3)(イ))。

PC・タブレット等は、「会計」「受発注」「決済」のいずれかの機能を持つソフトとあわせて導入する場合に限り、対象になります。購入先も、ソフトの購入先として選んだIT導入支援事業者に限られます(公募要領 2-2【補足2】)。電子カルテや介護記録の機能だけを持つソフトを入れる場合は、この枠の要件を満たしません。

試算例:補助額の計算の仕方

以下は、公募要領の補助率・上限額の計算の仕方を示すための仮の金額での例です(実際の補助額は、登録された製品の価格・機能数・事業者の区分で変わります)。

仮定計算
医療法人のクリニックが、会計機能1つのソフト(補助対象経費40万円)を導入(インボイス枠)医療法人は小規模事業者に当たらないため、補助率は3/4以内。40万円×3/4=30万円が上限の目安
従業員5人以下の個人開業のクリニックで、小規模事業者に当たる場合に、同じ40万円のソフトを導入(インボイス枠)〜50万円の部分の補助率は4/5以内のため、40万円×4/5=32万円が上限の目安
社会福祉法人が、介護記録と勤怠・シフトの機能を持つ登録ソフト(補助対象経費200万円)を導入(通常枠・補助率1/2以内)200万円×1/2=100万円が上限の目安。150万円未満なので1プロセス以上で足ります
介護サービスを提供する会社が、補助対象経費320万円の登録ソフトを導入(通常枠・補助率1/2以内)320万円×1/2=160万円が上限の目安。150万円以上なので4プロセス以上が必要です。賃金引上げ計画の申請要件は適用外です

補助金は、事務局から補助事業者に直接支払われます。補助額は補助対象経費に補助率を乗じた額の合計で、残りの費用は事業者の負担です。

補助対象外になる費用

公募要領は、次の費用を補助対象外としています(通常枠の公募要領 2-2(4))。

  • 補助事業者の顧客が実質負担する費用がITツール代金に含まれるもの
  • 交通費、宿泊費
  • 補助金申請・報告にかかる申請代行費
  • 公租公課(消費税)
  • 交付申請時にITツールの利用金額が定められないもの
  • 対外的に無償で提供されているもの
  • リース・レンタル契約のITツール
  • 中古品
  • 交付決定前に購入したITツール

医療・介護・保育では、次のような進め方で補助対象外になる例が起きやすくなります。

  • 電子カルテや介護ソフトの更新時期が迫り、交付決定前に契約・支払いを済ませてしまう
  • 医療機器やセンサーとセットの見積で、ソフトの費用が分かれていない
  • リース契約の製品を選ぶ
  • 患者・利用者向けの予約画面を一から作る費用を見積に混ぜる

医療・介護・保育で枠を選ぶ目安

業種固有の記録・管理を中心に入れるなら通常枠、会計・請求・決済をインボイス制度に対応させるならインボイス枠が目安です。

状況検討の方向
電子カルテ・電子薬歴・介護記録・保育記録などを中心に入れたい通常枠。医P-06・介P-06・保P-06を含む登録ソフトか、ITツール検索で確認。補助額150万円以上は4プロセス以上が必須
会計・請求・窓口の決済をインボイス制度に対応させたいインボイス枠。「会計」「受発注」「決済」の機能を持つ登録ソフトであることが要件。医療法人・社会福祉法人の補助率は3/4以内
医療機器・介護ロボット・見守りセンサーを導入したいこの補助金の対象外。機器を対象にする別の制度を検討
過去にインボイス枠などで交付決定を受けているインボイス枠は対象外の場合あり。通常枠の12カ月制限などを確認

枠の考え方の全体像は通常枠とインボイス枠の選び方にまとめています。

申請の流れ:検討するときの確認手順

申請を検討するときの確認手順の図解。主な項目:医療法人・社会福祉法人は従業員300人以下かを確認する、賃金引上げ計画の要件が適用外になる事業者かを確認する、ITツール検索で製品の登録プロセスを確認する、交付決定前に発注・契約・支払いをしない
図解:申請を検討するときの確認手順で押さえたいポイント

申請を検討するときは、申請できる事業者かどうかの確認から始め、次の順に進めます。交付決定までは、発注・契約・支払いをしないことが前提です。

  1. 申請できる事業者か確認する(医療法人・社会福祉法人は従業員300人以下、対象外の事業者・12カ月制限、同じ代表者の法人がある場合は「みなし同一法人」も)
  2. 申請要件をそろえる。GビズIDプライムの取得、SECURITY ACTION(一つ星または二つ星)の宣言、申請直近月の事業場内最低賃金が地域別最低賃金以上であることが求められます(公募要領 2-1-1)。取得の手順はGビズIDプライムの取得方法をご覧ください
  3. 賃金引上げ計画の要件が適用外になる事業者(保険医療機関・介護サービス事業者など)に当たるかを確認する
  4. 使う枠を決め、導入したい製品が登録済みか、公式のITツール検索で確認する。業種固有プロセスや共通プロセスの何に登録されているかも見ておきます
  5. 交付決定前に発注・契約・支払いをしない(交付決定前に購入したITツールは補助対象外)
  6. 交付申請の書類を用意する

交付申請に必要な書類は、法人の場合、履歴事項全部証明書(発行から3カ月以内)、直近分の法人税の納税証明書(「その1」若しくは「その2」)、直近分の貸借対照表及び損益計算書の3種類です。公募要領は「代替書類は一切認められない」としています。法人税の申告をしていない法人の扱いは公募要領に書かれていないため、該当する場合は事前に事務局へ確認してください。

医療・介護の事業者が特に気を付けたいのは、提出書類の個人情報です。公募要領は「原則マイナンバー、保険者番号等の個人情報が記載されていない書類を提出すること」としています。添付する書類に患者・利用者の情報が載っていないかも確認してください。

補助額の試算は見積シミュレーターが使えます。登録の有無や対象になるかの確認は、公式LINEでも受け付けています。当社は登録IT導入支援事業者として、デジタル化・AI導入補助金(通常枠・インボイス枠)の申請サポートを完全成功報酬で行っています。

実務で起きやすいつまずき

当社がご相談を受けるなかで、医療・介護・保育の導入で起きやすいつまずきは次の4つです。

  • 「医療法人は従業員が少ないから小規模事業者」と考えて、インボイス枠の補助率を4/5で見込んでいた。医療法人・社会福祉法人は小規模事業者に当たらず、50万円以下の部分も3/4以内です
  • 「賃上げ要件が適用外」を「150万円以上でも要件がない」と受け取っていた。適用外になるのは賃金引上げ計画の申請要件で、4プロセス以上と労働生産性の目標は残ります
  • 見守りセンサーやカメラと一体の製品を、機器ごと補助される前提で見積もっていた。対象はソフトウェアで、切り分けが困難な製品は対象外です
  • 電子カルテの更新を先に契約していた。交付決定前に購入したITツールは補助対象外で、あとから補助対象に戻すことはできません

締切日と交付決定日(2026年10月14日確認)

デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型)の締切は、公式の事業スケジュールで次のとおり公表されています。両枠とも同じ日程です。

締切回締切日時交付決定日事業実施期間
6次締切分(受付終了)2026年10月30日(金)17:002026年12月10日(木)(予定)交付決定〜2027年5月31日(月)17:00(予定)
7次締切分2026年12月1日(火)17:002027年1月19日(火)(予定)交付決定〜2027年7月30日(金)17:00(予定)
8次締切分2027年1月7日(木)17:002027年2月17日(水)(予定)交付決定〜2027年8月31日(火)17:00(予定)

8次締切分は2026年10月29日に追加公表されました。公式スケジュールは「確定している募集回のスケジュールのみ公表」とされているため、9次以降の有無・日程は公式サイトで確認してください。締切日の17:00をもって、申請マイページから申請できなくなります。全募集回の一覧はスケジュールの記事にまとめています。

よくある質問

Q. 医療法人や社会福祉法人でも申請できますか?

はい、常時使用する従業員の数が300人以下であれば申請の対象です。医療法人・社会福祉法人には資本金の基準がありません。ただし小規模事業者には当たらないため、インボイス枠の50万円以下の部分の補助率は3/4以内になります。

Q. 電子カルテは対象になりますか?

登録済みのソフトであれば、通常枠の対象になり得ます。別紙2の医P-06に「診療管理(症状・処置・処方・経過・カルテ記録等)」が機能例として載っています。医療業の機能は、厚生労働省標準規格に基づいたデータの共有や二次利用を円滑に行えるものである必要があります。製品の登録状況は、ITツール検索で確認してください。

Q. 介護事業所は賃上げの要件を満たさなくても申請できますか?

介護保険法に基づく保険給付の対象となるサービスを提供する介護サービス事業者は、賃金引上げ計画の申請要件が適用外です。通常枠の150万円以上の申請も、過去に交付決定を受けた事業者の申請も含みます。ただし、150万円以上なら4プロセス以上が必要で、通常枠の労働生産性の目標も残ります。

Q. 見守りセンサーや介護ロボットの購入費用は補助されますか?

補助されません。通常枠の補助対象はソフトウェア・オプション・役務で、機器は含まれていません。見守りシステムのソフトウェアは介P-06の機能例にありますが、センサーやカメラなどのハードウェア部分は対象外です。インボイス枠の機器も、PC・タブレット等とレジ・券売機に限られます。

Q. 理事長が同じ医療法人とMS法人は、別々に申請できますか?

みなし同一法人に当たる場合は、1社しか申請できません。公募要領は、代表者及び住所が同じ法人や、実質的支配者が同じ法人などを「みなし同一法人」としています。本補助金を受けることを目的に主要株主や出資比率を変更して申請することも認められません。個別の判断は、IT導入支援事業者を通じて事務局に確認してください。

まとめ

  • 医療法人・社会福祉法人は従業員300人以下なら申請でき、資本金の基準はありません。小規模事業者には当たらないため、インボイス枠の補助率は3/4以内で計算します
  • 保険医療機関・保険薬局、介護サービス事業者、社会福祉事業を行う事業者は、賃金引上げ計画の申請要件が適用外です。4プロセス以上と労働生産性の目標は残ります
  • 医療業は医P-06、介護業は介P-06、保育業は保P-06に業種固有の機能例があります。対象はソフトウェアで、医療機器・介護ロボット・センサーは対象外です
  • インボイス枠は「会計」「受発注」「決済」の機能が要件で、電子カルテや介護記録の機能だけでは要件を満たしません
  • 交付決定前の契約・支払いをせず、提出書類に保険者番号などの個人情報が載っていないかも確認します

補助額の目安は見積シミュレーター、自社に合う制度は補助金かんたん診断で確認できます。対象経費の全体像はIT導入補助金の対象経費、支援事業者の選び方はIT導入支援事業者の選び方、制度全体はデジタル化・AI導入補助金2026ガイドをご覧ください。デジタル化・AI導入補助金のご質問は公式LINEでも受け付けています。

参考(一次情報)

※本記事は2026年10月14日時点で確認した公募要領・公式サイトの原文にもとづいています。製品が補助対象かどうかは、ITツール検索の登録情報と事務局の判断によります。制度内容・スケジュールは変更される場合があるため、申請前に最新の公募要領をご確認ください。