宿泊業・不動産業・美容室・士業の事務所が使う予約管理・客室管理・賃貸管理・案件管理などのソフトは、IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金2026)の補助対象になり得ます。対象になるのは、IT導入支援事業者が事務局に登録したITツールです。客室の設備・美容機器・内装などは補助対象ではありません。

「旅館のサイトコントローラーは対象?」「美容室の予約システムを入れたい」「賃貸管理や士業の案件管理のソフトは使える?」というご相談は、業種によって確認する点が少しずつ違います。この記事では、デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)の公募要領の原文をもとに、4つの業種が何を、どの枠で導入できるかを整理します。当社の主な対象である通常枠とインボイス枠(インボイス対応類型)を中心に扱います。

  • 通常枠:公募要領の別紙2に、業種固有プロセスとして宿泊業「宿P-06」、不動産業「不P-06」、生活関連サービス業「生P-06」、専門・技術サービス業「専P-06」があります。予約受付台帳や無人チェックインは、全業種に共通のプロセス(共P-01)にも載っています
  • インボイス枠(インボイス対応類型):ソフトは、インボイス制度に対応し、「会計」「受発注」「決済」の機能を1種類以上含むものに限られます。予約管理や賃貸管理の機能だけでは、単独では要件を満たしません
  • 事業者の規模の判定が業種で違います。旅館業は従業員200人以下、それ以外のサービス業は100人以下です。インボイス枠で補助率が上がる小規模事業者は、宿泊業・娯楽業が20人以下、美容室や士業などは5人以下です
  • 通常枠で補助額が150万円以上になると、4プロセス以上と賃上げ要件が必須です
  • 事業者の側にも条件があります。インボイス枠は過去の交付決定歴、通常枠は12カ月制限などで、申請自体ができない場合があります(先に確認する)

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宿泊業・不動産業・美容室・士業はIT導入補助金で何を導入できる?の記事でわかる3つのこと:宿P・不P・生P・専P-06と予約管理(共P-01)の対象範囲、客室の設備・美容機器・内装・修繕工事が対象外になる理由、旅館業200人以下など、業種で違う規模と小規模事業者の判定
図解:宿泊業・不動産業・美容室・士業はIT導入補助金で何を導入できる?で最初に押さえたい3つのポイント

4業種で対象になるもの・ならないもの

4業種とも、登録されたソフトであれば通常枠の対象になり得ます。客室の設備、美容機器、内装、建物の修繕工事などは、通常枠でもインボイス枠でも対象外です。よく検討される導入物を公募要領の原文に沿って整理すると、次の表のとおりです。

導入したいもの通常枠インボイス枠(インボイス対応類型)
サイトコントローラー・チェックイン管理・部屋割りのソフト(宿泊業)対象になり得る(宿P-06)「会計」「受発注」「決済」の機能を含む登録ソフトなら対象になり得る。宿泊管理の機能だけでは要件を満たしません
賃貸管理・オーナー管理・物件情報管理のソフト(不動産業)対象になり得る(不P-06)同上
カルテ管理・予約管理のソフト(美容室など)対象になり得る(生P-06のカルテ管理、共P-01の予約受付台帳)同上
案件・契約管理、業務報告書・登記書類の作成ソフト(士業)対象になり得る(専P-06)同上
請求・入金管理、会計のソフト対象になり得る(共P-02、共P-04)「受発注」「会計」の機能として対象になり得る
POSレジのソフト(売店・美容室の会計など)対象になり得る(共P-02の決済)「決済」の機能として対象になり得る。レジ本体は上限20万円の枠を確認
客室の設備・美容機器・内装・建物の修繕工事対象外(補助対象はソフトウェア・オプション・役務のみ)対象外(機器として対象になるのは、PC・タブレット等とレジ・券売機に限られます)
フロントや店舗で使うPC・タブレット対象外会計・受発注・決済のいずれかのソフトとあわせて導入する場合、上限10万円の枠が使えるかを確認

この表は機能の分類を示したもので、特定の製品が対象になる保証ではありません。公募要領が定めるのは、どの機能がどのプロセスに分類されるかまでです。製品が補助対象になるかは、IT導入支援事業者が事務局に登録し、審査を通ったかで決まります。宿泊管理システム(PMS)のように製品の呼び名で考えるのではなく、その製品がどのプロセスで登録されているかで判断します。

申請できない事業者・使えない枠を先に確認

導入したいソフトが対象でも、申請する事業者が対象外に当たる場合は申請できません。4業種で特に確認が必要なのは、風俗営業等の規制に関する規定、複数の店舗や法人を持つ場合の「みなし同一法人」、過去の受給歴の3つです。

通常枠・インボイス枠に共通の対象外(公募要領 2-1-2)

公募要領2-1-2は、次のいずれかに該当する事業者を申請の対象外としています(抜粋)。

  • 発行済株式の総数の2分の1以上を同一の大企業が所有している事業者など、大企業との資本関係が深い事業者((1)①〜⑤)
  • 確定している(申告済みの)直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える事業者((1)⑥)
  • 「みなし同一法人」は1社のみしか申請できません((2))。親会社が議決権の50パーセント超を有する子会社がある場合や、個人が複数の会社のそれぞれの議決権を50パーセント超保有する場合が該当します。代表者及び住所が同じ法人、主要株主及び住所が同じ法人、実質的支配者が同じ法人も該当します。配偶者・親子など生計を同一にしている者は全て同一の個人として扱われ、過去に交付決定を受けた個人事業主が設立した法人も同様に扱われます(個人の事務所や美容室を法人成りした場合など)
  • IT導入支援事業者(構成員を含む)として登録されている、または登録しようとする事業者((3))
  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)第2条各項に規定する営業を営む事業者((5))
  • 過去1年において、労働関係法令違反により送検処分を受けている事業者((6))
  • 宗教法人、法人格のない任意団体(同窓会・PTA・サークルなど)((8)(9))

宿泊業に関係するのは(5)の括弧書きです。原文は次のとおりで、旅館業法の許可を受けて旅館業を営む事業者は、風営法第2条第1項第1号の営業を営んでいても、この対象外から除かれています。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条各項に規定する営業を営む事業者(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条1項1号に規定する営業を営む事業者のうち、旅館業法第3条第1項に規定する許可を受け旅館業を営むものを除く。)

除かれているのは第2条第1項第1号の営業だけです。ほかの号の営業もあわせて営んでいる場合は、申請前にIT導入支援事業者を通じて事務局に確認してください。

公募要領は、申請するすべての事業者に「製品・サービスの生産・提供など、生産活動に資する事業を行っていること」を求めています。不動産の賃貸を行う事業者も、導入するITツールが生産性向上に資するものであることが必要です。

申請の単位と回数、12カ月制限

  • 交付申請期間中、1法人・1個人事業主あたり1申請のみです(みなし同一法人の考え方を適用)。複数の旅館や美容室を別々の法人で経営していても、みなし同一法人に当たれば申請できるのは1社です。通常枠の公募要領は、同じ期間中に他の枠(インボイス枠〔インボイス対応類型・電子取引類型〕、セキュリティ対策推進枠)も申請し、交付決定・交付を受けることは可能としています
  • ただし、通常枠とインボイス枠の両方で申請している場合は、審査で減点措置の対象になります(公募要領 3-3(2)②)。複数申請で補助対象経費の二重計上が疑われると、交付決定の取消しや全額返還になる場合があります
  • IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者も減点の対象です。前回と同じ機能(会計・受発注・決済)を持つITツールを導入する場合は、さらに減点されます。IT導入補助金2024・2025で交付決定を受けたソフトウェアとプロセスが重複する場合も減点され、プロセスが完全に一致する場合は不採択です(公募要領 3-3(2)②)
  • IT導入補助金2025の通常枠および複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者は、交付決定日から12カ月以内は2026の通常枠で申請できません。グループ構成員も含みます

インボイス枠(インボイス対応類型)の対象外

インボイス枠の公募要領は、次の交付決定を受けた事業者を申請の対象外としています(2-1-2(4))。

  • IT導入補助金2022のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
  • IT導入補助金2023のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)・同(商流一括インボイス対応類型)
  • IT導入補助金2024・2025のインボイス枠

IT導入補助金2025の複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者(グループ構成員を含む)も、交付決定日から12カ月以内は2026のインボイス枠(インボイス対応類型)で申請できません。

過去の補助金でPOSレジや会計ソフトを入れた宿泊施設・美容室は、インボイス枠の対象外に当たる場合があります。その場合は通常枠を検討することになりますが、通常枠にも12カ月制限があります。再申請の対象外・減点一覧と通常枠とインボイス枠の選び方で先に確認してください。

事業者の規模:旅館業だけ従業員200人以下

申請できる中小企業・小規模事業者等の範囲は、業種ごとの資本金または常時使用する従業員数で決まります(公募要領 2-1-1(1))。4業種に関係する区分は次のとおりです。

業種分類定義(資本金の額又は出資の総額、または常時使用する従業員数)
旅館業5千万円以下の会社、または従業員200人以下の会社及び個人事業主
サービス業(ソフトウェア業又は情報処理サービス業、旅館業を除く)5千万円以下の会社、または従業員100人以下の会社及び個人事業主
その他の業種(上記以外)3億円以下の会社、または従業員300人以下の会社及び個人事業主

不動産業・美容室・士業がどの区分に当たるかは、公募要領の定義と、公募要領が示す総務省統計局(e-Stat)の日本標準産業分類で確かめます。旅館業だけは、ほかのサービス業より従業員数の上限が高く設定されています。

インボイス枠で補助率が上がる小規模事業者の定義は、業種で次のように分かれます。

小規模事業者の区分常時使用する従業員の数
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

旅館・ホテルは20人以下なら小規模事業者です。美容室や士業の事務所は宿泊業・娯楽業に当たらないため、5人以下で判定します。不動産業がどの区分に当たるかは、日本標準産業分類で確認してください。「常時使用する従業員」は、労働基準法第20条の「予め解雇の予告を必要とする者」を指し、会社役員と個人事業主は含みません。

税理士法人・行政書士法人などの士業法人は、公募要領の「過去のIT導入補助金において、申請を受け付けた主な組織形態」の一覧に名前がありません。ただし一覧の末尾は「等(順不同)」で、載っていない形態がすべて対象外という意味ではありません。個人で事務所を開いている士業は個人事業主として扱われますが、士業法人で申請を考える場合は、事前にIT導入支援事業者を通じて事務局に確認してください。

通常枠:業種固有プロセスと共通プロセスの数え方

通常枠のプロセス数の数え方の図解。主な項目:宿泊業は宿P、不動産業は不P、美容室などは生P、士業は専P-06、予約受付台帳・無人チェックインは共通プロセスの共P-01、補助額150万円未満は1プロセス以上で足りる、150万円以上は4プロセス以上と賃上げ要件が必須
図解:通常枠のプロセス数の数え方で押さえたいポイント

通常枠で必要なプロセスの数は補助額で変わり、5万円〜150万円未満は1プロセス以上、150万円〜450万円以下は4プロセス以上です(公募要領 2-3)。

補助額必要なプロセス数
5万円〜150万円未満1プロセス以上
150万円〜450万円以下4プロセス以上

プロセスとは、公募要領の別紙2で、ITツールの機能を業務ごとに分類した区分です。共通プロセス(共P-01〜共P-05)、業種固有プロセス(各業種P-06)、汎用プロセス(汎P-07)の7種類があります。

業種固有プロセス(宿P・不P・生P・専P)

別紙2が4業種の業種固有プロセスとして挙げている機能例を、原文の表記で整理します。

プロセス別紙2の機能例(原文)
宿P-06 宿泊業サイトコントローラー、チェックイン管理(鍵・本人確認・パスポート情報取得等)、ルームインジケータ(部屋割り・在室確認・清掃管理)、施設管理(宴会場、入浴施設等)、客室備品管理(貸し出し管理)、客室向けインフォメーションシステム(単なるコンテンツ配信のみは対象外)、調理・献立管理(メニュー・顧客の嗜好・アレルギー)、食材管理(発注・仕入・在庫)
不P-06 不動産業査定・査定額管理・物件査定・収支シミュレーション、不動産WEB接客(WEB・リモート内覧、IT重説)、契約管理(売買管理、賃貸管理、管理・業務委託)・重要事項説明、建物管理(清掃・設備の保守点検等)・長期修繕計画の策定・修繕工事の実施、オーナー管理(収支報告、入居状況報告、修繕点検、原状回復など)・テナント管理、土地・物件情報管理(物件情報、間取り・チラシ・動画・映像作成、マップ連動、ポータル連動)
生P-06 生活関連サービス業カルテ管理、日程表、工程表、プラン作成、施設管理(利用状況、混雑状況、風呂温度、入浴者数、電力量など)・設備管理(メンテナンス)・施設備品管理(貸し出し管理)、冠婚葬祭用デザインツール、ゴルフ場マスタ室管理、複数店舗対応・FC管理
専P-06 専門・技術サービス業案件・契約管理、実行予算管理、工程管理、進捗管理、調査、業務報告書作成、登記書類作成・管理、獣医向けカルテ・ワクチン接種管理、獣医向け診断画像管理、専用開発ツール(2D、3Dデザインツール等)

不P-06の「建物管理」「修繕工事の実施」は、建物の管理や修繕を管理するソフトの機能です。修繕工事そのものの費用は対象になりません。宿P-06の客室向けインフォメーションシステムは、「単なるコンテンツ配信のみは対象外」と注意書きがあります。

共通プロセスで数えられる機能

4業種でも、次の共通プロセスは数えられます。予約管理は業種固有プロセスではなく、共P-01に入っています。

プロセス4業種に関係する機能例(別紙2の原文)
共P-01 顧客対応・販売支援予約受付台帳、無人受付システム・無人チェックイン・順番発券機システム、CRM(顧客購買履歴及び対応履歴の全社共有・顧客分析・販促・アフターケア機能)、SFA
共P-02 決済・債権債務・資金回収決済(POSレジ、券売機システム、多通貨対応)、受注・売上請求管理、売掛・回収管理、発注・仕入管理、採算管理
共P-04 会計・財務・経営仕訳、総勘定元帳、財務三表、経費精算、法定調書・税務申告書作成、管理会計、経営分析(詳しくは会計ソフトの記事)
共P-05 総務・人事・給与・労務…出退勤申請・管理、シフト作成、給与計算、電子契約、ワークフロー(詳しくは勤怠管理・給与計算ソフトの記事)
汎P-07 汎用・自動化・分析ツール文書証憑管理ソフト、OCR、グループウェア、WEB会議システム、RPA、チャットボット。ただし汎用プロセスだけを持つITツールは単独では申請できず、共P-01〜各業種P-06と組み合わせると1プロセスとして数えられます

予約管理と無人チェックインには、別紙2に注意点が付いています。原文の要点は次のとおりです。

  • 予約受付台帳は、店舗側で予約を管理する機能が対象です。顧客側が利用・予約する画面や機能は該当しません。ただし、顧客側と店舗側の機能を切り分けられない場合は、顧客側の機能も対象です
  • 顧客側の予約画面を新しく制作する費用は、スクラッチ開発に当たるため対象外です
  • 無人受付・無人チェックイン・順番発券機は、ソフトウェアだけが対象です。ハードウェア部分は対象外で、ソフトとハードが一体で切り分けが難しい場合も対象外です
  • CRMは「単なる顧客情報を保有・表示する機能」が対象外です。美容室の顧客台帳などは、顧客分析や販促の機能を持つかで判断が分かれます

プロセス数の数え方と賃上げ要件

  • プロセス数は、ITツールの機能が「どのプロセスに分類されるか」で数えます。たとえば宿泊施設向けの製品が宿P-06(チェックイン管理)・共P-01(予約受付台帳)・共P-02(決済)にまたがる登録なら、3プロセスです。どのプロセスで登録されているかは、公式のITツール検索で確認できます
  • 150万円未満で申請する場合は、1プロセス以上の要件で足ります
  • 150万円以上で申請する場合は、4プロセス以上と賃上げ要件が必須です。賃上げ要件は、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3%以上と、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にすることです。7次締切(2026年12月1日)からは、1年後に1人当たり給与支給総額を3%以上向上させる要件も加わります(未達でも返還は求めないとされています)
  • IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けたことがある事業者は、150万円未満でも賃金引上げ計画が必須です。計画の水準は、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上です(公募要領 2-1-1(テ)(ト)(ナ))。7次締切からは、1年後に3.5%以上向上させる要件も加わります
  • 7次締切(2026年12月1日)からの公募要領では、上の賃上げ要件に「1年後に1人当たり給与支給総額を3%以上(交付決定歴のある事業者は3.5%以上)向上させること」が加わります。1年度目も達成・未達成を判断しますが、未達成でも補助金の返還は求めないとされています
  • 4業種では、業種固有プロセス(宿P・不P・生P・専P)、予約(共P-01)、決済・請求(共P-02)、会計(共P-04)を組み合わせる構成が考えられます。ただし、組み合わせられるかどうかは製品の登録内容で決まります

通常枠にハードウェアの区分はありません

通常枠の補助対象は、大分類Ⅰ「ソフトウェア」、大分類Ⅱ「オプション」、大分類Ⅲ「役務」の3つです。客室のスマートロック、自動チェックイン機の本体、美容機器、フロントのPCなどの機器は、通常枠の補助対象に含まれていません。ソフトのクラウド利用料は最大2年分、保守サポートは最大2年分が補助対象です。

補助率の2/3の条件

通常枠の補助率は1/2以内です。7次締切(2026年12月1日)からの公募要領(第7回公募以降)は、次の条件を満たす場合に2/3以内とする旨を定めています(原文)。

令和7年10月から令和8年9月の間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~令和8年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある場合は、2/3以内

受付を終了した6次締切(2026年10月30日)までの公募要領では、期間と基準が次のとおりでした(原文)。

令和6年10月から令和7年9月の間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~令和7年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある場合は、2/3以内

この2/3以内の補助率は、最低賃金に近い水準で働く従業員の割合で決まる措置で、賃上げ要件の達成とは別の基準です。パート・アルバイトの多い宿泊施設や美容室では当てはまる場合があるため、賃金台帳で月ごとの割合を確かめて判断します。

インボイス枠の要件と補助額:会計・受発注・決済の機能が必要

インボイス枠の要件と補助額の図解。主な項目:「会計」「受発注」「決済」の機能を1種類以上含むソフトが要件、1機能は〜50万円、2機能以上は〜350万円、小規模事業者は宿泊業が20人以下、美容室や士業は5人以下、PC・タブレット等は〜10万円、レジ・券売機は〜20万円
図解:インボイス枠の要件と補助額で押さえたいポイント

インボイス枠(インボイス対応類型)で対象になるソフトは、インボイス制度に対応し、「会計」「受発注」「決済」の機能を1種類以上含むものです。公募要領2-2(3)の原文は次のとおりです。

カテゴリー1(ソフトウェア)に区分されるもののうち、インボイス制度に対応しており、かつ「会計」「受発注」「決済」の機能を1種類以上含む必要がある

宿泊施設や美容室のPOSレジ(決済)、不動産業や士業の請求・会計の機能を持つ登録ソフトが、この要件に当たり得ます。補助額と補助率は次のとおりです(公募要領 2-3)。

項目補助額補助率
ソフト購入費・導入関連費(会計・受発注・決済のうち1機能)〜50万円3/4以内(小規模事業者は4/5以内)
ソフト購入費・導入関連費(会計・受発注・決済のうち2機能以上)〜350万円補助額50万円以下の部分は3/4以内(小規模事業者は4/5以内)、補助額50万円超の部分は2/3以内
PC・タブレット等〜10万円1/2以内
レジ・券売機〜20万円1/2以内

役務(導入設定、研修、保守サポートなど)の補助対象経費は200万円が上限です。オプション・役務・ハードウェアを申請できるのは、ソフトとあわせて交付申請する場合に限られます。ハードウェアだけを単独で申請することはできません(公募要領 2-2(3)(イ))。

ハードウェアには、公募要領2-2【補足2】に次の条件があります。

  • PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機は、「会計」「受発注」「決済」のいずれかの機能を持つソフトとあわせて導入する場合に限り対象です。購入先は、ソフトの購入先として選んだIT導入支援事業者に限られます
  • レジの用途で導入するタブレット等は、PC・タブレット等ではなく、POSレジ・モバイルPOSレジの区分で申請します(インボイス枠 2-2【補足2】)
  • POSレジ・モバイルPOSレジ・券売機は、「決済」機能を持つソフトで登録されたPOSレジシステムを使うための機器が対象です。付属品は、キャッシュドロワ、カスタマーディスプレイ、レシートプリンタ、自動釣銭機、カードリーダ、バーコード・QRコードリーダ、Wi-Fiルータ、運搬費に限られます
  • 価格は経済的合理性があり、市場価格を逸脱していないことが必要です

試算例:補助額の計算の仕方

以下は、公募要領の補助率・上限額の計算の仕方を示すための仮の金額での例です(実際の補助額は、登録された製品の価格・機能数・事業者の区分で変わります)。

仮定計算
従業員15人の旅館が、決済機能1つのPOSレジのソフト(補助対象経費40万円)を導入(インボイス枠)宿泊業は20人以下で小規模事業者のため4/5以内。40万円×4/5=32万円が上限の目安
従業員8人の美容室が、同じ条件のソフト(補助対象経費40万円)を導入(インボイス枠)美容室は5人以下でないと小規模事業者に当たらないため3/4以内。40万円×3/4=30万円が上限の目安
不動産会社が賃貸管理の登録ソフト(補助対象経費120万円)を導入(通常枠・補助率1/2以内)120万円×1/2=60万円が上限の目安。補助額が150万円未満なので1プロセス以上で足ります

同じ従業員数でも、宿泊業かどうかで小規模事業者に当たるかが変わる点に注意してください。補助金は事務局から補助事業者に直接支払われ、残りの費用は事業者が負担します。

補助対象外になる費用

公募要領は、次の費用を補助対象外としています(通常枠の公募要領 2-2(4))。

  • 補助事業者の顧客が実質負担する費用がITツール代金に含まれるもの(補助事業者にとっての売上原価に相当すると事務局が判断するもの)
  • 交通費、宿泊費
  • 補助金申請・報告にかかる申請代行費
  • 公租公課(消費税)
  • 交付申請時にITツールの利用金額が定められないもの
  • 対外的に無償で提供されているもの
  • リース・レンタル契約のITツール(サイバーセキュリティお助け隊サービスを除く)
  • 中古品
  • 交付決定前に購入したITツール

4業種では、次のような進め方で補助対象外になる例が起きやすくなります。

  • 予約サイトの掲載料・手数料のように、予約件数や売上で金額が変わる費用を見積に入れる(公募要領は「交付申請時において、ITツールの利用金額が定められないもの」を対象外としています)
  • 自社の予約ページや会員アプリを一から作る費用を混ぜる(顧客側画面の新規制作はスクラッチ開発に当たります)
  • 不動産のオーナーや入居者に請求する費用、士業の顧問先に実費として請求する費用を、ITツール代金に含める(顧客が実質負担する費用)
  • 交付決定前に、繁忙期に間に合わせようとソフトの契約や支払いを済ませてしまう

賃上げ要件・労働生産性の目標と加点項目

4業種で見落としやすいのは、過去の交付決定歴によって必須になる賃上げの計画と、労働生産性の目標です。加点項目の全体像は加点項目一覧で整理しています。

  • IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けたことがある事業者は、通常枠の150万円未満の申請でも、インボイス枠の申請でも、賃金引上げ計画が申請要件(必須)です。1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上の計画を策定し、従業員に表明します(通常枠 2-1-1(テ)、インボイス枠 2-1-1(ツ))。7次締切からは、1年後に3.5%以上向上させる要件も加わります。詳しくは賃上げ要件の記事で確認してください
  • 賃上げの計画は、従業員への表明まで行う必要があります。表明したと申告したのに実際は表明していないことが交付決定後に分かった場合、事務局は交付決定の取消しを行います。また、策定した賃金引上げ計画の目標を事業計画終了時点で達成できなかった場合(期間内に報告しなかった場合を含む)は、補助金の返還を求められます。1人当たり給与支給総額の目標が未達の場合は、全部の返還を求める場合があるとされています。ただし、付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として3年の事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は返還を求めません(通常枠・インボイス枠とも 2-1-1【補足1】)
  • 労働生産性の目標を満たす3年間の事業計画を策定する必要があります(通常枠 2-1-1(ク))。目標は、1年後に3%以上、事業計画期間の年平均成長率3%以上です。IT導入補助金2023の通常枠(A・B類型)・デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)、IT導入補助金2024・2025の通常枠・複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者は4%以上になります。この労働生産性の計画は通常枠の要件で、インボイス枠の公募要領にはありません。詳しくは労働生産性要件の記事をご覧ください

4業種で枠を選ぶ目安

業種固有の機能を中心に入れるなら通常枠、レジ・請求・会計をインボイス制度に対応させるならインボイス枠が目安です。

状況検討の方向
サイトコントローラー・賃貸管理・カルテ管理・案件管理など業種固有の機能を入れたい通常枠。宿P・不P・生P・専P-06を含む登録ソフトか、ITツール検索で確認
予約管理と会計・レジをまとめて入れ、補助額150万円以上で申請したい通常枠。4プロセス以上と賃上げ要件が必須
フロントや店舗のレジ、請求・会計をインボイス制度に対応させたいインボイス枠。「会計」「受発注」「決済」の機能を持つ登録ソフトが要件。レジ本体は上限20万円
客室の設備・美容機器・内装・修繕工事を入れたいこの補助金の対象外
過去にインボイス枠などで交付決定を受けているインボイス枠は対象外の場合あり。通常枠の12カ月制限なども確認

飲食を伴う宿泊施設は飲食店・小売店の記事、自社サイトや予約ページを検討している場合はホームページ・ECサイトの記事も参考になります。枠の考え方の全体像は通常枠とインボイス枠の選び方にまとめています。

申請の流れ:検討するときの確認手順

申請を検討するときは、申請できる事業者かどうかの確認から始め、次の順に進めます。交付決定までは、発注・契約・支払いをしないことが前提です。

  1. 申請できる事業者か確認する(対象外の事業者・12カ月制限。複数の店舗・法人を持つ場合は「みなし同一法人」も)。GビズIDプライムの取得と、SECURITY ACTION(一つ星または二つ星)の宣言も申請要件です。GビズIDプライムは申請方法によって発行までに日数がかかります(取得の手順はGビズIDプライムの取得方法)
  2. 業種と規模を確認する。旅館業は従業員200人以下、小規模事業者は宿泊業なら20人以下、美容室や士業は5人以下です
  3. 使う枠を決める。業種固有の機能を広くそろえるなら通常枠、レジ・請求・会計をインボイス制度に対応させるならインボイス枠です
  4. 導入したい製品が登録済みか、公式のITツール検索で確認する。どのプロセスに登録されているかも見ておきます
  5. 交付決定前に発注・契約・支払いをしない(交付決定前に購入したITツールは補助対象外)
  6. 見積書に、予約手数料など金額が決まらない費用、顧客側画面の制作費、リース契約、申請代行費が混ざっていないか確認する

補助額の試算は見積シミュレーターが使えます。登録の有無や対象になるかのご質問は、公式LINEでも受け付けています。当社は登録IT導入支援事業者として、デジタル化・AI導入補助金(通常枠・インボイス枠)の申請サポートを完全成功報酬で行っています。

実務で起きやすいつまずき

当社がご相談を受けるなかで、4業種の導入で起きやすいつまずきは次の4つです。

  • 予約サイトや予約アプリの「掲載料・手数料」を補助対象と考えていた。補助対象は、IT導入支援事業者が登録したITツールの導入費用です。件数や売上で金額が変わる費用は、交付申請時に利用金額が定まらないため、対象外になるおそれがあります
  • 客室のスマートロックや自動チェックイン機の本体も補助されると考えていた。通常枠はソフトウェアだけが対象で、インボイス枠の機器もPC・タブレット等とレジ・券売機に限られます
  • 小規模事業者の人数を、宿泊業と同じ20人で考えていた。美容室や士業の事務所は5人以下で判定します。補助率が4/5か3/4かが変わるため、従業員一覧で先に数えます
  • 店舗ごとに法人を分けていたので、店舗の数だけ申請できると考えていた。代表者及び住所が同じ法人などはみなし同一法人に当たり、申請できるのは1社です

締切日と交付決定日(2026年10月30日確認)

公表済みの締切日と交付決定日の図解。主な項目:1次〜6次は受付終了。7次は2026年12月1日(火)17:00締切、7次の交付決定は2027年1月19日予定、8次は2027年1月7日(木)17:00締切、8次の交付決定は2027年2月17日予定。9次以降は未公表、契約・発注は交付決定の後。締切当日の17:00を過ぎると申請できない
図解:公表済みの締切日と交付決定日で押さえたいポイント

デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型)は、公式の事業スケジュールで次の日程が公表されています。

締切回締切日時交付決定日事業実施期間・事業実績報告期限
1次締切分(受付終了)2026年5月12日(火)17:002026年6月18日(木)交付決定〜2026年12月25日(金)17:00(予定)
2次締切分(受付終了)2026年6月15日(月)17:002026年7月23日(木)交付決定〜2027年1月29日(金)17:00(予定)
3次締切分(受付終了)2026年7月21日(火)17:002026年9月2日(水)交付決定〜2027年2月26日(金)17:00(予定)
4次締切分(受付終了)2026年8月25日(火)17:002026年10月7日(水)交付決定〜2027年3月31日(水)17:00(予定)
5次締切分(受付終了)2026年9月29日(火)17:002026年11月9日(月)(予定)交付決定〜2027年4月30日(金)17:00(予定)
6次締切分(受付終了)2026年10月30日(金)17:002026年12月10日(木)(予定)交付決定〜2027年5月31日(月)17:00(予定)
7次締切分2026年12月1日(火)17:002027年1月19日(火)(予定)交付決定〜2027年7月30日(金)17:00(予定)
8次締切分2027年1月7日(木)17:002027年2月17日(水)(予定)交付決定〜2027年8月31日(火)17:00(予定)

7次締切分からは、補助率2/3の判定期間と賃上げ要件が上で説明したとおり変わります。8次締切分は2026年10月29日に追加公表されました。公式スケジュールは「確定している募集回のスケジュールのみ公表」とされているため、9次以降の有無・日程は公式サイトで確認してください。締切日の17:00をもって、申請マイページから申請できなくなります。

よくある質問

Q. 旅館のサイトコントローラーやチェックイン管理のソフトは対象ですか?

登録済みのソフトであれば、通常枠の対象になり得ます。別紙2の宿P-06に、サイトコントローラー、チェックイン管理、ルームインジケータ(部屋割り・在室確認・清掃管理)が機能例として載っています。インボイス枠で申請する場合は、「会計」「受発注」「決済」のいずれかの機能を含むことが必要です。

Q. 美容室の予約システムは対象ですか?

店舗側で予約を管理する機能を持つ登録ソフトであれば、通常枠の対象になり得ます。予約受付台帳は共P-01に分類され、顧客側が予約する画面や機能は原則として該当しません。顧客側の予約画面を新しく制作する費用は、スクラッチ開発に当たるため対象外です。

Q. 賃貸管理ソフトで、建物の修繕工事の費用も補助されますか?

修繕工事の費用は補助されません。不P-06の「建物管理」「長期修繕計画の策定、修繕工事の実施」は、建物の管理や修繕の計画を管理するソフトの機能です。補助対象は、登録されたソフトウェア・オプション・役務の導入費用に限られます。

Q. 税理士事務所や行政書士事務所も申請できますか?

個人で開業している事務所は、個人事業主として申請を検討できます。専P-06には案件・契約管理、業務報告書作成、登記書類作成・管理が載っています。士業法人は、公募要領の「申請を受け付けた主な組織形態」の一覧に名前がないため、申請前にIT導入支援事業者を通じて事務局に確認してください。

Q. 旅館と美容室で、小規模事業者の人数が違うのはなぜですか?

公募要領の小規模事業者の定義が、業種で分かれているためです。商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は常時使用する従業員5人以下、サービス業のうち宿泊業・娯楽業は20人以下です。インボイス枠では、小規模事業者に当たると補助額50万円以下の部分の補助率が3/4以内から4/5以内に上がります。

Q. 店舗ごとに法人を分けています。それぞれ申請できますか?

みなし同一法人に当たる場合は、1社しか申請できません。代表者及び住所が同じ法人、主要株主及び住所が同じ法人、実質的支配者が同じ法人などが該当します。本補助金を受けることを目的に、主要株主や出資比率を変更して申請することも認められません。

まとめ

  • 宿泊業は宿P-06、不動産業は不P-06、美容室などは生P-06、士業は専P-06に業種固有の機能例があり、予約管理は共P-01に入っています
  • 客室の設備・美容機器・内装・修繕工事は補助対象外です。インボイス枠の機器も、PC・タブレット等とレジ・券売機に限られます
  • インボイス枠は「会計」「受発注」「決済」の機能が要件で、予約管理や賃貸管理の機能だけでは単独で要件を満たしません
  • 規模の判定は業種で違い、旅館業は従業員200人以下、小規模事業者は宿泊業が20人以下・美容室や士業は5人以下です
  • 7次締切(2026年12月1日)からは、補助率2/3の判定期間と賃上げ要件が変わります

補助額の目安は見積シミュレーター、自社に合う制度は補助金かんたん診断で確認できます。業種別では製造業・建設業、医療・介護・保育の記事も、制度全体はデジタル化・AI導入補助金2026ガイドをご覧ください。デジタル化・AI導入補助金のご質問は公式LINEでも受け付けています。

参考(一次情報)

※本記事は2026年10月16日時点で確認した公募要領・公式サイトの原文にもとづいています。製品が補助対象かどうかは、ITツール検索の登録情報と事務局の判断によります。制度内容・スケジュールは変更される場合があるため、申請前に最新の公募要領をご確認ください。