デジタル化・AI導入補助金2026|通常枠とインボイス枠の選び方

業務システムや会計ソフトの導入で、通常枠とインボイス枠(インボイス対応類型)のどちらを選ぶべきか——判断の順番は「①過去の受給歴 → ②投資の中心領域 → ③賃上げ計画を実行できるか → ④申請後の義務の重さ」です。補助率の高低だけで決めると、申請できない枠を検討していたり、交付後に想定外の義務を負ったりします。
先に結論です。
- 過去にインボイス枠系(2022・2023のデジタル化基盤導入枠、2024・2025のインボイス枠)で交付決定を受けている → インボイス枠はそもそも申請対象外。通常枠のみが選択肢です(詳細)
- 会計・受発注・決済のソフト+パソコンやレジもまとめて導入したい → インボイス枠(補助率が高く、ハードも対象)
- 顧客対応・在庫管理・総務人事など業務システム全般を幅広く導入したい → 通常枠(対象範囲が広く、上限も高い)
- IT導入補助金2022〜2025のいずれかで交付決定を受けている → どちらの枠でも年平均3.5%の賃上げ計画が必須要件になります。未達の場合は補助金の返還を求められる規定があるため、計画を実行できるかまで含めて判断してください(詳細)
- 両方またがる投資をしたい → 原則どちらか1枠に絞るのが安全。理由は併願のリスクで解説します
また、見落とされがちですが申請後の義務も枠で違います。通常枠は導入後3年間毎年の効果報告が必要で、インボイス枠は1年度目と3年度目のみです(詳細)。「申請しやすさ」だけでなく「交付後の手間」まで比べて選ぶのが、当社が申請サポート(累計800件以上)でご案内している判断の仕方です。
以下、公募要領の原文にもとづいて、対象範囲・補助率・対象経費の年数・賃上げ要件・効果報告・加点・併願リスク・スケジュールまで整理します。それぞれの枠の詳細は完全ガイド・インボイス枠の完全解説、対象経費の全体像は対象経費の完全解説をご覧ください。
早見表:通常枠とインボイス枠の違い
| 項目 | 通常枠 | インボイス枠(インボイス対応類型) |
|---|---|---|
| 対象ソフトウェアの範囲 | 業務プロセス(顧客対応・決済・供給/物流・会計財務・総務人事等)を1種類以上(補助金申請額150万円以上は4種類以上)含む幅広いITツール | 会計・受発注・決済のいずれか1機能以上を持つ、インボイス制度対応のソフトに限定 |
| 補助金申請額 | 5万円〜450万円 | ソフト単体で50万円(1機能)/350万円(2機能以上) |
| 補助率 | 1/2以内(※1) | 補助額50万円以下の部分:3/4以内(小規模事業者は4/5以内)/補助額50万円超の部分:2/3以内(※2) |
| ハードウェア | 対象外 | 対象(PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機は10万円まで、レジ・券売機は20万円まで。ソフトとセットの場合のみ)。補助率は1/2以内 |
| クラウド利用料の補助対象 | 最大2年分 | 最大2年分 |
| 労働生産性の3年間の事業計画 | 必須(過去に通常枠系で交付決定を受けた事業者は目標が3%→4%に引き上げ。詳細) | 公募要領に規定なし |
| 賃上げの3年間の事業計画 | 補助金申請額150万円以上で必須。過去受給者は150万円未満でも必須(詳細) | 過去受給者(2022〜2025交付決定)は必須。それ以外は加点扱い(詳細) |
| 導入後の効果報告 | 1〜3年度目まで毎年(詳細) | 1年度目と3年度目のみ(2年度目は不要) |
| 申請回数 | 交付申請期間中、1法人・1個人事業主あたり1申請のみ | 交付申請期間中、1法人・1個人事業主あたり1申請のみ |
※1 通常枠の補助率は1/2以内が原則です。令和6年10月から令和7年9月までの間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~令和7年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある場合に限り2/3以内になります(いわゆる最低賃金近傍の事業者。適用を受けるには交付申請時に追加様式の提出が必要)。賃上げ要件を満たしたら補助率が上がる、という制度ではありません。
※2 インボイス枠の補助率は補助額に応じた二段構えです。補助額50万円超の部分は事業者規模によらず2/3以内になるため、350万円まで使い切る構成では平均補助率は3/4を下回ります。
対象範囲がもっとも大きな違いです。インボイス枠は会計・受発注・決済まわりに特化する代わりに補助率が高く、通常枠は対象が広い代わりに補助率は低めという設計になっています。
なお、インボイス枠には本記事で扱う「インボイス対応類型」のほかに、受発注ソフト関連の「電子取引類型」という別の類型もあります(類型ごとに公募要領が分かれています)。該当しそうな場合は公式サイトの公募要領でご確認ください。本記事および当社の申請サポートは、通常枠とインボイス枠(インボイス対応類型)を中心にしています。
その前に:過去の受給歴で「選べる枠」が決まる
補助率や対象範囲を比較する前に、そもそも自社がどちらの枠に申請できるのかを確認してください。過去にIT導入補助金の交付決定を受けている場合、枠選び以前に選択肢が消えることがあります。
インボイス枠は、過去にインボイス枠系で交付決定を受けていると申請そのものができません。 インボイス枠の公募要領「2-1-2 申請の対象外となる事業者」(4)は、次のいずれかで交付決定を受けた事業者を対象外と定めています。
- IT導入補助金2022 デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
- IT導入補助金2023 デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
- IT導入補助金2023 デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)
- IT導入補助金2024 インボイス枠
- IT導入補助金2025 インボイス枠
この場合、会計・受発注・決済まわりへの投資であってもインボイス枠は選べません。通常枠の対象になるITツールであれば、通常枠での申請を検討することになります。
一方の通常枠にも、期間限定の申請制限があります。IT導入補助金2025の通常枠または複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者(グループ構成員を含む)は、交付決定日から12カ月以内はデジタル化・AI導入補助金2026の通常枠に申請できません。同様に、2025の複数社連携IT導入枠の交付決定者は12カ月以内はインボイス枠(インボイス対応類型)にも申請できません(いずれも公募要領「申請単位と申請回数」の注記)。
| 過去の受給歴 | 通常枠 | インボイス枠(インボイス対応類型) |
|---|---|---|
| インボイス枠系(上記5つのいずれか) | 申請可(減点措置あり) | 申請できない(対象外) |
| 2025の通常枠 | 交付決定日から12カ月以内は申請不可。経過後は申請可(減点措置あり) | 申請可(減点措置あり) |
| 2025の複数社連携IT導入枠 | 交付決定日から12カ月以内は申請不可。経過後は申請可(減点措置あり) | 交付決定日から12カ月以内は申請不可。経過後は申請可(減点措置あり) |
| 受給歴なし | 申請可 | 申請可 |
なお、IT導入補助金2022から2025までの間にいずれかの枠で交付決定を受けている場合、枠を問わず審査上の減点措置がかかります(両枠の公募要領「3-3 交付申請の審査」②減点措置1))。さらに重要なのは、受給歴が賃上げ計画の必須化にも直結する点です。次の賃上げ要件の比較とあわせてご確認ください。再申請時の考え方は再申請と減点の解説でも整理しています。
対象範囲で選ぶ:まず投資の中心を確認する
過去の受給歴で選択肢が絞られていない前提で、次の判断の出発点は「今回のIT投資で一番お金をかけたい領域はどこか」です。
- 会計ソフト・受発注システム・決済端末など、インボイス対応が必要な業務が投資の中心 → インボイス枠が有利(補助率が高く、対象ソフトとセットならハードウェアも補助対象)
- 顧客対応(CRM・予約管理)、在庫・供給管理、総務・人事・給与、業種特化の業務システムなど、会計・受発注・決済以外の領域が投資の中心 → 通常枠一択(インボイス枠の対象外)
- 複数プロセスにまたがるITツール一式を導入したい → 通常枠(補助金申請額150万円以上なら4プロセス以上の要件を満たしやすい構成にする)
会計・受発注・決済のいずれの機能も持たないITツールは、インボイス枠の対象そのものになりません。まずは導入予定のツールが「会計・受発注・決済のどれかに該当するか」を、IT導入支援事業者に確認するのが最初のステップです。
ハードウェアの範囲と「どこで買うか」の制限
インボイス枠のハードウェアは、PC・タブレットだけではありません。公募要領のカテゴリー8はPC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機を対象とし、これらの運搬費も含みます。レジ用途はカテゴリー9(POSレジ・モバイルPOSレジ・券売機)の扱いです。
ただし、次の条件があります。
- 「会計」「受発注」「決済」のいずれかの機能を持つソフトウェアとあわせて導入する場合に限り対象。ハード単体では申請できません
- 対象は、導入するソフトを継続的に利用するために必要最低限の機器一式
- 購入先は、ソフトウェアの購入先として選定したIT導入支援事業者に限られます(コンソーシアム形態の場合は構成員を含む)。家電量販店やECサイトで別途購入した機器は補助対象になりません
- 価格に経済的合理性があること(市場価格から逸脱していると、事務局から説明を求められます)
「ソフトはA社から、パソコンは安いネット通販で」という買い方をすると、パソコン分は補助対象から外れます。ハードまで補助を受けたい場合は、ハードも取り扱うIT導入支援事業者を選ぶところから逆算してください。事業者選びの基準はIT導入支援事業者の選び方にまとめています。
対象経費の「年数」と「上限」も確認する
両枠に共通する対象経費のルールとして、経費の種類ごとに補助対象となる年数・金額の上限が決まっています。
| 経費の種類 | 補助対象の範囲 |
|---|---|
| クラウド利用料 | 最大2年分 |
| 保守サポート(カテゴリー7) | ソフトウェアの利用範囲内で最大2年分。1交付申請あたり1つのみ |
| 機能拡張オプション(カテゴリー2) | 最大1年分 |
| 役務(導入コンサルティング・導入設定・マニュアル作成・導入研修・保守サポートの合計) | 補助対象経費として200万円が上限 |
ここで注意したいのが、補助されるのは最大2年分でも、ITツールの活用義務は3年度目の効果報告まで続くことです。効果報告では「ITツールを継続的に活用していることを証する書類」の提出を求められ、導入したITツールを解約・利用停止した場合は補助事業の辞退手続きが必要になります。月額制のクラウドサービスを導入する場合、3年目以降の利用料は全額自己負担で使い続ける前提で資金計画を立ててください。対象経費の分類と考え方の全体像は対象経費の完全解説をご覧ください。
賃上げ要件の違い:過去受給者は3.5%の計画が必須になる
枠選びの実務でもっとも判断を左右するのが賃上げ要件です。「通常枠は賃上げが必要、インボイス枠は不要」といった単純な整理は正確ではなく、補助金申請額と過去の受給歴の組み合わせで決まります。
通常枠の賃上げ要件
| 補助金申請額 | IT導入補助金2022〜2025の交付決定なし | IT導入補助金2022〜2025のいずれかで交付決定あり |
|---|---|---|
| 150万円未満 | 必須ではない(加点として選択可) | 必須:1人当たり給与支給総額(非常勤を含む全従業員)の年平均成長率3.5%以上の3年間の計画+交付申請時点での従業員への表明 |
| 150万円以上 | 必須:給与支給総額の年平均成長率3%以上+事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする3年間の計画+従業員への表明 | 必須:給与支給総額の年平均成長率3.5%以上+事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上+従業員への表明 |
インボイス枠(インボイス対応類型)の賃上げ要件
| 過去の受給歴 | 要件 |
|---|---|
| IT導入補助金2022〜2025の交付決定なし | 必須ではない(加点として選択可) |
| IT導入補助金2022〜2025のいずれかで交付決定あり | 必須:給与支給総額の年平均成長率3.5%以上の3年間の計画+交付申請時点での従業員への表明(公募要領2-1-1 申請要件(ツ)) |
インボイス枠で3.5%が必須になるのは、実務上は「過去に通常枠などで受給した事業者」です(インボイス枠系の受給者はそもそも申請対象外のため)。「2回目だから慣れている」つもりで申請すると、初回にはなかった賃上げの必須要件が付いてくる——これが過去受給者の枠選びで見落とされやすいポイントです。
未達の場合は補助金の返還規定がある
必須要件として策定した賃上げ計画の目標が事業計画終了時点で達成できなかった場合(期間内に報告しなかった場合を含む)は、補助金の返還を求められます。返還額は補助金交付額が上限で、加算金・延滞金は含まれません。
ただし、返還が免除される条件は目標ごとに異なります。
- 1人当たり給与支給総額の目標(3%/3.5%の年平均成長率):付加価値額が増加しておらず、かつ3年の事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は、返還を求められません
- 事業場内最低賃金の目標(通常枠・補助金申請額150万円以上のみ):付加価値額増加率が年平均成長率1.5%に達しない場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は、返還を求められません。未達の場合の返還額は、補助金額を3年で按分し、未達となった年度以降の年数分を返還する計算です(1年目未達なら全額、2年目なら3分の2、3年目なら3分の1)
つまり賃上げ要件は「申請書に書けばよい目標」ではなく、3年間実行し、実績を報告し、未達なら返還リスクを負う約束です。人件費の増加を利益計画に織り込めるかを、枠選びの段階で検討してください。
なお、医療機関・薬局(保険医療機関・保険薬局)、介護保険の保険給付対象サービスを提供する介護サービス事業者、社会福祉事業・更生保護事業を行う事業者、学校等は、両枠ともこの賃上げ必須要件の適用外です。要件と加点の詳しい判定は賃上げ要件・加点の解説をご覧ください。
申請後の義務も違う:効果報告の頻度と内容
見積もりや申請書の段階では意識しづらいものの、交付後に確実に発生するのが効果報告です。ここに枠間で明確な差があります。
| 項目 | 通常枠 | インボイス枠(インボイス対応類型) |
|---|---|---|
| 報告が必要な年度 | 1年度目・2年度目・3年度目(毎年) | 1年度目・3年度目のみ(2年度目は報告不要と公募要領に明記) |
| 報告する内容 | 営業利益・人件費・減価償却費・総労働時間・1人当たり給与支給総額・事業場内最低賃金等の数値と、根拠となる決算書等の関係書類、ITツールの継続活用を証する書類 | インボイス制度への対応状況と、ITツールの継続活用を証する書類等(賃上げ要件が必須の事業者・賃上げ加点を受けた事業者は賃上げの実施状況も報告) |
| 効果報告期間の目安 | 1年度目2028年4月〜2029年1月、2年度目2029年4月〜2030年1月、3年度目2030年4月〜2031年1月 | 1年度目2028年4月〜2029年1月、3年度目2030年4月〜2031年1月 |
このほか両枠とも、事業計画期間前(ITツール導入後〜)にITツールの継続活用を証する書類の報告があります。
通常枠は労働生産性の事業計画が必須要件になっている分、その実績を毎年数値と決算書で報告する義務がセットです。インボイス枠は報告の回数も内容も軽く、「申請後の手間」という比較軸ではインボイス枠に分があります。交付決定後の手続き全体は交付決定後にやることで解説しています。
両方に申請(併願)するとどうなるか
まず制度上のルールを正確に押さえます。両枠とも申請は交付申請期間中、1法人・1個人事業主あたり1申請のみですが、これは同一枠内の話で、通常枠とインボイス枠(インボイス対応類型)を同時期に申請し、それぞれ交付を受けること自体は公募要領上「可能」と明記されています。「併願は禁止」ではありません。
ただし、可能であることと有利であることは別です。通常枠の公募要領「3-3 交付申請の審査」は、次のように定めています。
② 減点措置について 以下に該当する場合は、項目ごとに審査上の減点措置を講じる。
(中略)2)デジタル化・AI導入補助金2026において、インボイス枠(インボイス対応類型及び電子取引類型)で申請を行っている若しくは交付決定を受けた事業者
※ なお、(中略)選択されたITツールと同一の機能(会計・受発注・決済)を有するITツールを導入する場合は更なる減点を行う。
インボイス枠側の公募要領にも、対称の規定(通常枠で申請・交付決定を受けている場合は減点)があります。つまり、
- 通常枠とインボイス枠を同時期に申請すると、双方の審査で減点される(相互減点)
- 同じ機能(会計・受発注・決済)のツールを両方の枠で導入しようとすると、さらに減点が重なる
- IT導入補助金2024・2025の交付決定分とプロセスが完全に一致する場合は、それだけで不採択になる規定もあります
- 併願時は補助対象経費の二重計上(特にオプション・役務)が不正と判定されるリスクも公募要領が明示しており、発覚すれば交付決定の取消しと全額返還を求められる場合があります
したがって、「念のため両方出しておく」という申請は審査上不利になるだけで、実務上のメリットがほとんどありません。会計まわりと業務システム全般の両方に投資したい場合も、まずはどちらか一方の枠に投資の主眼を絞って申請し、もう一方は別の交付申請期間にずらすのが基本方針です。
加点項目も枠によって異なる
加点項目一覧(公募要領別紙)を整理すると、枠ごとに対象になる加点が異なります。
| 加点項目 | 通常枠 | インボイス枠(インボイス対応類型) |
|---|---|---|
| クラウド製品の選定 | ○ | — |
| インボイス制度対応製品の選定 | ○ | — |
| デジタル化セカンドオピニオンの実施(交付申請時点までに実施し、確認者との面談完了が条件) | ○(第3回公募回以降) | — |
| 交付申請時点でインボイス未登録・実績報告までに登録を約束 | — | ○ |
| 決済機能を有するクラウド製品の選定 | — | ○(第2回公募回のみ。第3回以降はスマートレジ加点に移行) |
| 「スマートレジ」の選定 | — | ○(第3回公募回以降) |
| サイバーセキュリティお助け隊サービスの選定 | ○ | ○ |
| 賃上げ計画・最低賃金状況・IT戦略ナビwith・健康経営優良法人・くるみん/えるぼし・成長加速マッチングサービス・省力化ナビ | ○ | ○(全枠共通) |
賃上げ関連やサイバーセキュリティお助け隊サービス・省力化ナビなどの汎用的な加点は共通ですが、枠固有の加点(クラウド製品・インボイス対応製品の選定やセカンドオピニオンは通常枠のみ、インボイス登録予定やスマートレジの選定はインボイス枠のみ)は狙って取れるかどうかが枠選びの判断材料にもなります。なお、加点はいずれも「選定していること」「実施していること」が要件で、検討しただけでは付きません。また「決済機能を有するクラウド製品の選定」は第2回公募回限定の加点だったため、これから申請する場合は対象外です。加点の全体像は申請を行う前に必要な手続き(公式)でも確認できます。
「インボイス未登録」加点には取消しリスクがある
前提として、交付申請時点でインボイス(適格請求書発行事業者)に未登録の免税事業者でも、インボイス対応類型への申請自体は可能です。この「交付申請時点でインボイス未登録・実績報告までに登録を約束」の加点は、そうした未登録の事業者が選択できるものです。
ただし、この加点は扱いに注意が必要です。公募要領には、実績報告日までにインボイス登録を行うことができなかった場合、または交付申請日よりも前にすでに登録を完了していた(登録年月日が交付申請日より前の)場合は、原則として交付決定の取消しとなり、補助金の交付を受けられないと明記されています。
つまりこの加点は「登録するつもり」で気軽に選ぶものではなく、実績報告日までに確実に登録手続きを完了できる場合にだけ選ぶべきものです。登録済みかどうかの認識違いでも取消し対象になり得るため、申請前に国税庁の登録状況を確認してから判断してください。
通常枠だけの追加要件:労働生産性の3年間の事業計画
通常枠を選ぶ場合、労働生産性を1年後3%・3年間の年平均で3%以上向上させる事業計画の策定が必須要件になります。公募要領を確認したかぎり、この要件はインボイス枠(インボイス対応類型)にはありません。
さらに、過去に通常枠系で交付決定を受けた事業者は目標値が引き上げられます。IT導入補助金2023の通常枠(A・B類型)もしくはデジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)、またはIT導入補助金2024・2025の通常枠もしくは複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者は、労働生産性を1年後に4%以上・3年間の年平均成長率で4%以上向上させる計画が必要です(通常枠公募要領 別紙1)。賃上げ要件と同じく、ここでも過去の受給歴が要件を重くする点に注意してください。
数値目標だけでなく「経営課題とツールの機能がマッチしているか」も審査対象になるため、通常枠は事業計画づくりの負荷がインボイス枠よりやや高くなります。さらに前述のとおり、この計画の実績は毎年の効果報告で数値と決算書により確認されます。申請時の負荷と申請後の義務が連動している、と捉えてください。
申請スケジュール:どちらの枠も同一日程
2026年9月1日時点で公表されている交付申請スケジュールは次のとおりです。通常枠とインボイス枠(インボイス対応類型)は同一日程で、どちらを選んでも締切は変わりません。
| 募集回 | 締切日 | 交付決定日 | 事業実績報告期限 | 状況(2026年9月1日時点) |
|---|---|---|---|---|
| 1次 | 2026年5月12日(火) | 2026年6月18日(木) | 2026年12月25日(金)(予定) | 受付終了 |
| 2次 | 2026年6月15日(月) | 2026年7月23日(木) | 2027年1月29日(金)(予定) | 受付終了 |
| 3次 | 2026年7月21日(火) | 2026年9月2日(水) | 2027年2月26日(金)(予定) | 受付終了 |
| 4次 | 2026年8月25日(火) | 2026年10月7日(水)(予定) | 2027年3月31日(水)(予定) | 受付終了 |
| 5次 | 2026年9月29日(火)17:00 | 2026年11月9日(月)(予定) | 2027年4月30日(金)17:00(予定) | 公表済み(次回) |
| 6次 | 2026年10月30日(金)17:00 | 2026年12月10日(木)(予定) | 2027年5月31日(月)17:00(予定) | 公表済み |
| 7次 | 2026年12月1日(火)17:00 | 2027年1月19日(火)(予定) | 2027年7月30日(金)17:00(予定) | 公表済み(現時点の最終公表回) |
各締切日の受付は当日17:00までです。公式サイトが公表しているのは確定済みの募集回のスケジュールのみで、現時点の最終公表回は7次です(8次以降は未公表・2026年9月1日時点)。これから準備を始める場合は5次(2026年9月29日締切)が現実的な目標で、gBizIDプライムの取得やIT導入支援事業者との商談を先行して進めておくと余裕を持てます。準備の手順は申請方法とスケジュールと必要書類の一覧にまとめています。
実務でよくある判断に迷うケース
当社の申請サポートでは、次のようなケースで枠選びの相談を受けることが多くあります。
- 会計ソフトと在庫管理システムを同時に入れたい:会計・受発注・決済への投資額が大きいならインボイス枠、在庫管理などそれ以外の業務システムへの投資額が大きいなら通常枠を軸に、優先度の低い方は次回以降の交付申請期間で検討するようご案内しています
- POSレジを導入したいが会計ソフトは今のままでよい:レジ単独ではインボイス枠の対象になりません(「決済」機能を持つ登録済みPOSレジソフトとのセットが条件)。まずレジ側が会計・受発注・決済のいずれかの機能を持つ登録ツールかどうかを確認します
- 3年前に通常枠で採択されたが、今回は会計ソフトを入れ替えたい:インボイス枠に申請自体はできますが、過去受給者として審査上の減点に加え、年平均3.5%の賃上げ計画が必須要件になります。人件費計画に織り込めるかを先に検討し、難しければ導入時期や投資規模の見直しも選択肢です
- 賃上げの約束はまだしたくない:受給歴がなければ、インボイス枠、または通常枠の補助金申請額150万円未満の申請では賃上げ計画は必須ではありません(加点として任意選択)。「賃上げ計画を出さない代わりに加点も取らない」構成は、返還リスクを負いたくない事業者には現実的な選び方です
- どちらの枠でも対象になりそうなツールを検討している:補助率・上限額(早見表を参照)に加えて、効果報告の負担まで含めて比較します。金額差が小さい場合、報告義務の軽いインボイス枠を選ぶ判断もあります
いずれのケースも、最終的にどちらの枠で申請するかはIT導入支援事業者との商談の中で確定します。迷った時点で早めに相談し、交付申請の締切に間に合うよう逆算するのが安全です。
よくある質問
Q. 会計ソフトと業務システムを同時に導入したい場合はどうすればいいですか?
投資額の大きい方の領域を軸に、通常枠かインボイス枠のどちらか一方に絞って申請するのが基本です。両方の枠に同時に申請すること自体は公募要領上可能ですが、相互に審査上の減点対象になります。優先度の低い方は、別の交付申請期間での申請を検討してください。
Q. 迷ったらどちらで申請すればいいですか?
まず過去の受給歴を確認してください。過去にインボイス枠系で交付決定を受けている場合、インボイス枠は申請対象外のため通常枠のみが選択肢になります。その制限がなければ、導入するツールが会計・受発注・決済のいずれかの機能を持つなら補助率が高いインボイス枠が有利なケースが多く、それ以外の業務システムが中心なら対象範囲の広い通常枠を検討してください。個別の構成での試算は見積もりシミュレーター(無料・30秒)でご確認いただけます。
Q. 前回インボイス枠で採択されました。今回もインボイス枠で申請できますか?
できません。IT導入補助金2022・2023のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型/商流一括インボイス対応類型)、2024・2025のインボイス枠で交付決定を受けた事業者は、公募要領「2-1-2 申請の対象外となる事業者」(4)により対象外と定められています。補助率や賃上げ要件の比較以前に、申請自体ができません。会計・受発注・決済まわりのツールであっても、通常枠の対象になるかをIT導入支援事業者にご確認ください。
Q. 過去にIT導入補助金を受けています。賃上げ計画は必須ですか?
IT導入補助金2022〜2025のいずれかで交付決定を受けている場合、インボイス枠では給与支給総額の年平均成長率3.5%以上の3年間の賃上げ計画と従業員への表明が必須要件です。通常枠でも、補助金申請額150万円未満なら3.5%の計画が、150万円以上なら3.5%+事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上とする計画が必須になります。目標未達の場合は補助金の返還を求められる規定があるため、賃上げ要件の詳細を必ず確認してください。なお、医療機関・介護サービス事業者・社会福祉事業者・学校等は適用外です。
Q. 通常枠の補助率は、賃上げ要件を満たせば2/3に上がりますか?
上がりません。通常枠の補助率2/3は、令和6年10月から令和7年9月までの間で「当該期間における地域別最低賃金以上~令和7年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある事業者(最低賃金近傍の事業者)に適用されるもので、賃上げ計画の策定・達成とは別の要件です。賃上げ要件が左右するのは補助率ではなく、賃上げ目標が必須要件か加点項目かの扱いです。
Q. 通常枠とインボイス枠に両方申請すると必ず不採択になりますか?
必ず不採択になるわけではありません。公募要領は同時期の申請・交付自体を可能と明記していますが、双方の審査で減点措置の対象になります。同一機能(会計・受発注・決済)のツールを両方で導入する場合はさらに減点され、IT導入補助金2024・2025の交付決定分とプロセスが完全に一致する場合は不採択になる規定もあります。審査上のリスクを踏まえたうえで判断してください。
Q. パソコンやプリンターはどこで購入しても補助対象になりますか?
なりません。インボイス枠のPC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機は、ソフトウェアの購入先として選定したIT導入支援事業者(コンソーシアム形態の場合は構成員を含む)からの購入に限り補助対象です。量販店やECサイトで自前調達した分は対象外になります。また、対象ソフトとセットで導入する場合の必要最低限の機器一式に限られ、通常枠ではハードウェアはそもそも補助対象外です。
Q. クラウド利用料は何年分まで補助されますか?
両枠とも最大2年分です。保守サポートもソフトウェアの利用範囲内で最大2年分、機能拡張オプションは最大1年分、役務(導入コンサルティング・導入設定等)は補助対象経費200万円が上限です。一方で、効果報告は3年度目まで続き、ITツールを解約・利用停止すると辞退手続きが必要になるため、3年目以降の利用料は自己負担で継続利用する前提で資金計画を立ててください。
Q. 導入予定のツールがどちらの枠の対象か分かりません。誰に確認すればいいですか?
登録ITツールがどのプロセス(会計・受発注・決済を含むかなど)に該当するかは、IT導入支援事業者が事務局への登録内容を把握しています。ツール名が決まっている場合は、公式LINEでお送りいただければ当社でも確認します。
Q. 加点項目が多い枠を選んだ方が採択されやすいですか?
加点項目の多さだけで採択が決まるわけではなく、審査は事業面・計画目標値・政策面など複数の観点でおこなわれます。加点は「取れるなら取っておく」もので、枠選びの主な判断基準はあくまで対象範囲と補助率、そして賃上げ要件・効果報告の負担です。なお、インボイス枠の「インボイス未登録・登録約束」加点には交付決定取消しのリスクがあるため、確実に登録できる場合にだけ選んでください。
まとめ
- 枠選びの前に過去の受給歴を確認する。インボイス枠系(2022・2023のデジタル化基盤導入枠、2024・2025のインボイス枠)の交付決定を受けているとインボイス枠は申請対象外、2025の通常枠・複数社連携IT導入枠なら交付決定日から12カ月間は通常枠に申請できない
- 通常枠は対象範囲が広く上限450万円まで、インボイス枠(インボイス対応類型)は会計・受発注・決済に特化する代わりに補助率が高く、プリンター・複合機を含むハードウェアも対象(ただし購入先はソフトと同じIT導入支援事業者に限る)
- 過去にIT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けていると、どちらの枠でも年平均3.5%の賃上げ計画が必須になり、未達の場合は補助金の返還規定がある
- クラウド利用料・保守サポートの補助は最大2年分だが、効果報告と活用義務は3年度目まで続く。報告頻度は通常枠が毎年、インボイス枠は1年度目と3年度目のみ
- 通常枠とインボイス枠の併願は制度上可能だが、相互に審査上の減点対象になる。原則どちらか1枠に絞る
- 通常枠には労働生産性の3年間の事業計画という追加の必須要件があり、その実績を毎年報告する
- 4次締切(2026年8月25日)は受付終了。公表済みの残る締切は5次・2026年9月29日、6次・10月30日、7次・12月1日で、これから準備するなら5次照準でgBizIDプライム取得などを先行させる。両枠とも同一日程
自社のケースでどちらが有利かは見積もりシミュレーターで試算できます。枠選びを含めた個別のご相談はLINEで無料相談、どの制度が使えるか全体を知りたい方は補助金かんたん診断もどうぞ(現在、当サイトでは募集中の補助金を355件掲載しています)。
参考(一次情報)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)(2026年8月25日確認)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(インボイス枠・インボイス対応類型)(2026年8月25日確認)
- 加点項目一覧(2026年8月25日確認)
- 事業スケジュール(2026年9月1日確認)
- 申請を行う前に必要な手続き(2026年8月25日確認)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト
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