運送業・倉庫などの物流事業者・卸売業が使う配車・運行管理・在庫・受発注などのソフトは、補助対象になり得ます。制度は、IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金2026)です。対象になるのは、IT導入支援事業者が事務局に登録したITツールです。トラックなどの車両、デジタル式運行記録計(デジタコ)やドライブレコーダーなどの車載器、ハンディターミナルは、この補助金の対象になりません。

「配車システムは対象?」「デジタコも一緒に買える?」「卸の受発注システムはどの枠?」というご相談は、業種によって確認する点が違います。この記事では、デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)の公募要領の原文をもとに、運送業・物流・卸売業が何を、どの枠で導入できるかを整理します。当社の主な対象である通常枠とインボイス枠(インボイス対応類型)を中心に扱います。

  • 通常枠:公募要領の別紙2に、業種固有プロセスとして運輸業「運P-06」(運行管理・人員管理・配車・庸車管理・車両管理)と卸売業「卸P-06」(MD支援・貿易管理・トレーサビリティ管理など)があります。入出庫・在庫・配送計画は全業種に共通の「共P-03 供給・在庫・物流」です
  • インボイス枠(インボイス対応類型):ソフトは、インボイス制度に対応し、「会計」「受発注」「決済」の機能を1種類以上含むものに限られます。配車や運行管理の機能だけでは、単独では要件を満たしません
  • 事業者の規模の判定が業種で違います。運輸業は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下です
  • 通常枠で補助額が150万円以上になると、4プロセス以上と賃上げ要件が必須です
  • 事業者の側にも条件があります。インボイス枠は過去の交付決定歴、通常枠は12カ月制限などで、申請自体ができない場合があります(先に確認する)

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運送業・物流・卸売業はIT導入補助金で何を導入できる?の記事でわかる3つのこと:運P-06・卸P-06と在庫・配送計画(共P-03)の対象範囲、車両・デジタコなどの車載器・ハンディターミナルが対象外になる理由、運輸業は300人以下・卸売業は100人以下など、業種で違う規模の判定
図解:運送業・物流・卸売業はIT導入補助金で何を導入できる?で最初に押さえたい3つのポイント

運送業・物流・卸売業で対象になるもの・ならないもの

3業種とも、登録されたソフトであれば通常枠の対象になり得ます。車両・車載器・倉庫の設備や工事は、通常枠でもインボイス枠でも対象外です。よく検討される導入物を公募要領の原文に沿って整理すると、次の表のとおりです。

導入したいもの通常枠インボイス枠(インボイス対応類型)
配車計画・庸車手配のソフト(運送業)対象になり得る(運P-06)「会計」「受発注」「決済」の機能を含む登録ソフトなら対象になり得る。配車の機能だけでは要件を満たしません
運行管理(運行計画・運転日報・走行履歴・位置情報)のソフト対象になり得る(運P-06)同上
乗務員台帳・乗務割り・車両台帳・点検整備の管理ソフト対象になり得る(運P-06)同上
入出庫・ロケーション・棚卸・在庫管理のソフト(倉庫・卸売業)対象になり得る(共P-03)同上
納品管理・配送計画・配送業者管理のソフト対象になり得る(共P-03)同上
受発注・仕入・売上請求のソフト(卸売業など)対象になり得る(共P-02)「受発注」の機能として対象になり得る
貿易書類作成・通関手配、トレーサビリティ管理のソフト(卸売業)対象になり得る(卸P-06)「会計」「受発注」「決済」の機能を含むかを確認
会計・請求書のソフト対象になり得る(共P-04、共P-02)「会計」の機能として対象になり得る
トラックなどの車両、デジタコ・ドライブレコーダーなどの車載器、倉庫の設備・工事対象外(補助対象はソフトウェア・オプション・役務のみ)対象外(機器として対象になるのは、PC・タブレット等とレジ・券売機に限られます)
事務所や乗務員が使うPC・タブレット対象外会計・受発注・決済のいずれかのソフトとあわせて導入する場合、上限10万円の枠が使えるかを確認

この表は機能の分類を示したもので、特定の製品が対象になる保証ではありません。公募要領が定めるのは、どの機能がどのプロセスに分類されるかまでです。製品が補助対象になるかは、IT導入支援事業者が事務局に登録し、審査を通ったかで決まります。「動態管理システム」「WMS」のように製品の呼び名で考えるのではなく、その製品がどのプロセスで登録されているかで判断します。

申請できない事業者・使えない枠を先に確認

導入したいソフトが対象でも、申請する事業者が対象外に当たる場合は申請できません。3業種で特に確認が必要なのは、大企業との資本関係、グループ会社がある場合の「みなし同一法人」、過去の受給歴の3つです。

通常枠・インボイス枠に共通の対象外(公募要領 2-1-2)

公募要領2-1-2は、次のいずれかに該当する事業者を申請の対象外としています(抜粋)。

  • 発行済株式の総数の2分の1以上を同一の大企業が所有している事業者など、大企業との資本関係が深い事業者((1)①〜⑤)。荷主や元請の大手企業が出資している運送会社、大手メーカーの販売子会社などは、出資比率と役員の兼任を確認します
  • 確定している(申告済みの)直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える事業者((1)⑥)
  • 「みなし同一法人」は1社のみしか申請できません((2))。親会社が議決権の50パーセント超を有する子会社がある場合や、個人が複数の会社のそれぞれの議決権を50パーセント超保有する場合が該当します。代表者及び住所が同じ法人、主要株主及び住所が同じ法人、実質的支配者が同じ法人も該当します。配偶者・親子など生計を同一にしている者は全て同一の個人として扱われ、過去に交付決定を受けた個人事業主が設立した法人も同様に扱われます
  • IT導入支援事業者(構成員を含む)として登録されている、または登録しようとする事業者((3))
  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)第2条各項に規定する営業を営む事業者((5))
  • 過去1年において、労働関係法令違反により送検処分を受けている事業者((6))
  • 宗教法人、法人格のない任意団体(同窓会・PTA・サークルなど)((8)(9))

公募要領は、申請するすべての事業者に「製品・サービスの生産・提供など、生産活動に資する事業を行っていること」を求めています。導入するITツールも、生産性向上に資するものであることが必要です。

申請の単位と回数、12カ月制限

  • 交付申請期間中、1法人・1個人事業主あたり1申請のみです(みなし同一法人の考え方を適用)。運送会社と倉庫会社を別法人にしていても、みなし同一法人に当たれば申請できるのは1社です。通常枠の公募要領は、同じ期間中に他の枠(インボイス枠〔インボイス対応類型・電子取引類型〕、セキュリティ対策推進枠)も申請し、交付決定・交付を受けることは可能としています
  • ただし、デジタル化・AI導入補助金2026でもう一方の枠(通常枠から見ればインボイス枠〔インボイス対応類型・電子取引類型〕、インボイス枠から見れば通常枠)に申請している、または交付決定を受けている場合は、審査で減点措置の対象になります(公募要領 3-3(2)②)。複数申請で補助対象経費の二重計上が疑われると、交付決定の取消しや全額返還になる場合があります
  • IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者も減点の対象です。前回と同じ機能(会計・受発注・決済)を持つITツールを導入する場合は、さらに減点されます。IT導入補助金2024・2025で交付決定を受けたソフトウェアとプロセスが重複する場合も減点され、プロセスが完全に一致する場合は不採択です(公募要領 3-3(2)②)
  • IT導入補助金2024以降で賃金引上げ計画の加点を受けて採択され、加点要件を達成できなかった事業者も減点の対象です。やむを得ない理由によるものは除きます
  • IT導入補助金2025の通常枠および複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者は、交付決定日から12カ月以内は2026の通常枠で申請できません。グループ構成員も含みます

インボイス枠(インボイス対応類型)の対象外

インボイス枠の公募要領は、次の交付決定を受けた事業者を申請の対象外としています(2-1-2(4))。

  • IT導入補助金2022のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
  • IT導入補助金2023のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)・同(商流一括インボイス対応類型)
  • IT導入補助金2024・2025のインボイス枠

IT導入補助金2025の複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者(グループ構成員を含む)も、交付決定日から12カ月以内は2026のインボイス枠(インボイス対応類型)で申請できません。

過去の補助金で会計ソフトや受発注ソフトを入れた卸売業・運送会社は、インボイス枠の対象外に当たる場合があります。その場合は通常枠を検討することになりますが、通常枠にも12カ月制限があります。再申請の対象外・減点一覧と通常枠とインボイス枠の選び方で先に確認してください。

事業者の規模:運輸業は300人以下、卸売業は100人以下

申請できる中小企業・小規模事業者等の範囲は、業種ごとの資本金または常時使用する従業員数で決まります(公募要領 2-1-1(1))。3業種に関係する区分は次のとおりです。

業種分類定義(資本金の額又は出資の総額、または常時使用する従業員数)
製造業(ゴム製品製造業を除く)、建設業、運輸業3億円以下の会社、または従業員300人以下の会社及び個人事業主
卸売業1億円以下の会社、または従業員100人以下の会社及び個人事業主
その他の業種(上記以外)3億円以下の会社、または従業員300人以下の会社及び個人事業主

資本金と従業員数は「または」の関係なので、どちらか一方を満たせば中小企業等に当たります。たとえば資本金5,000万円・従業員150人の卸売業の会社は、従業員数は100人を超えますが、資本金が1億円以下なので対象です。資本金2億円・従業員150人の卸売業の会社は、両方とも基準を超えるので対象外です。

倉庫業や運送取次などがどの区分に当たるかは、公募要領の定義で確かめます。総務省統計局(e-Stat)の日本標準産業分類も参考になります(公募要領は、別紙2の業種固有プロセスの業種区分について、この分類を参照するよう示しています)。運送と卸売の両方を営む場合にどちらの基準で判定するかは、公募要領に個別の定めが見当たらないため、IT導入支援事業者を通じて事務局に確認してください。

インボイス枠で補助率が上がる小規模事業者の定義は、公募要領で次の3区分です。

小規模事業者の区分常時使用する従業員の数
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

公募要領は、運輸業や卸売業がこの3区分のどれに当たるかを個別には書いていません。従業員5人以下ならどの区分でも小規模事業者に当たり、20人を超えればどの区分にも当たりません。6〜20人の運送会社・卸売業の会社は区分によって結果が変わるため、IT導入支援事業者を通じて事務局に確認してから補助額を見積もってください。「常時使用する従業員」は、労働基準法第20条の「予め解雇の予告を必要とする者」を指し、会社役員と個人事業主は含みません。

通常枠:業種固有プロセスと共通プロセスの数え方

通常枠のプロセス数の数え方の図解。主な項目:運送業は運P-06(運行管理・配車・庸車管理・車両管理)、卸売業は卸P-06、入出庫・在庫・配送計画は共P-03、補助額150万円未満は1プロセス以上で足りる、150万円以上は4プロセス以上と賃上げ要件が必須
図解:通常枠のプロセス数の数え方で押さえたいポイント

通常枠で必要なプロセスの数は補助額で変わり、5万円〜150万円未満は1プロセス以上、150万円〜450万円以下は4プロセス以上です(公募要領 2-3)。

補助額必要なプロセス数
5万円〜150万円未満1プロセス以上
150万円〜450万円以下4プロセス以上

プロセスとは、公募要領の別紙2で、ITツールの機能を業務ごとに分類した区分です。共通プロセス(共P-01〜共P-05)、業種固有プロセス(各業種P-06)、汎用プロセス(汎P-07)の7種類があります。

業種固有プロセス(運P-06・卸P-06)

別紙2が運輸業と卸売業の業種固有プロセスとして挙げている機能例を、原文の表記で整理します。

プロセス別紙2の機能例(原文)
運P-06 運輸業運行管理(運行計画、運転基準図、運行経路、位置情報、運転日報、走行履歴、運行指示書)、人員管理(乗務員台帳、乗務割り、健康状態、業務日報)、配車・庸車管理(配車計画・配車状況、庸車手配)、車両管理(車両台帳、点検、整備、修理、事故履歴、リース残高)
卸P-06 卸売業MD支援(売れ筋商品分析、棚割管理、販促予測・商品タグツール)、貿易管理(貿易書類作成、コレポン、輸送・通関手配)、品質管理(保管期限、保管状態管理等)、受託管理、催事管理、キャンペーン管理、トレーサビリティ管理、FC・代理店・販売店管理(本部機能/支店運営・売上状況、支店機能/本部報告機能、バックマージン(リベート管理))、リスクアセスメント

運P-06の「位置情報」「走行履歴」は、ソフトが持つ機能の分類です。位置情報を取るための車載器や通信機器の購入費が補助されるという意味ではありません。運P-06の「車両管理」も、車両台帳や点検・整備の記録を管理する機能で、車両の購入費や修理費は対象外です。

共通プロセスで数えられる機能

物流と卸売では、次の共通プロセスがよく使われます。入出庫や在庫、配送計画は業種固有プロセスではなく、共P-03に入っています。

プロセス3業種に関係する機能例(別紙2の原文)
共P-01 顧客対応・販売支援SFA(見込客情報、案件情報、商談進捗、営業販促活動、営業実績管理等)、CRM(顧客購買履歴及び対応履歴全社共有・顧客分析・販促・アフターケア機能)、予約受付台帳
共P-02 決済・債権債務・資金回収発注・仕入管理、買掛・支払管理、受注・売上請求管理、売掛・回収管理、電子記録債権・手形管理、採算管理(売上分析、粗利管理)
共P-03 供給・在庫・物流取引条件管理(取引先、納入条件)、ロケーション管理、入出庫管理、実地棚卸管理、検品受入、在庫分析、在庫基準、納品管理(納品先、納品期限、納品商品、配送状況確認等)、配送業者管理、配送計画、納品手続処理
共P-04 会計・財務・経営仕訳、総勘定元帳、財務三表、経費精算、法定調書・税務申告書作成、管理会計、経営分析(詳しくは会計ソフトの記事)
共P-05 総務・人事・給与・労務…出退勤申請・管理、シフト作成、36協定・長時間労働等への規制対応、給与計算、電子契約、ワークフロー(詳しくは勤怠管理・給与計算ソフトの記事)
汎P-07 汎用・自動化・分析ツール文書証憑管理ソフト、OCR、グループウェア、WEB会議システム、RPA、チャットボット。ただし汎用プロセスだけを持つITツールは単独では申請できず、共P-01〜各業種P-06と組み合わせると1プロセスとして数えられます

別紙2には、共P-01のSFAとCRMについて注意点が付いています。SFAは「単なる営業活動の情報を保有・表示する機能」、CRMは「単なる顧客情報を保有・表示する機能」が対象外です。卸売業の営業管理や得意先管理のソフトは、営業力の強化や顧客分析・販促の機能を持つかで判断が分かれます。

プロセス数の数え方と賃上げ要件

  • プロセス数は、ITツールの機能が「どのプロセスに分類されるか」で数えます。たとえば運送会社向けの製品が運P-06(配車・運行管理)・共P-02(売上請求管理)・共P-03(配送計画)にまたがる登録なら、3プロセスです。どのプロセスで登録されているかは、公式のITツール検索で確認できます
  • 150万円未満で申請する場合は、1プロセス以上の要件で足ります
  • 150万円以上で申請する場合は、4プロセス以上と賃上げ要件が必須です。賃上げ要件は、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3%以上と、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にすることです
  • IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けたことがある事業者は、150万円未満でも賃金引上げ計画が必須です。計画の水準は、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上です(公募要領 2-1-1(テ)(ト)(ナ))
  • 7次締切(2026年12月1日)からの公募要領(第7回公募以降)では、上の賃上げ要件に「1年後に1人当たり給与支給総額を3%以上(交付決定歴のある事業者は3.5%以上)向上させること」が加わります。1年度目も達成・未達成を判断しますが、未達成でも補助金の返還は求めないとされています
  • 運送業では、運P-06(配車・運行管理)、共P-02(請求)、共P-03(配送計画)、共P-05(勤怠・シフト)を組み合わせる構成が考えられます。卸売業では、共P-02(受発注・仕入)、共P-03(在庫)、共P-04(会計)、卸P-06(MD支援・トレーサビリティ)の組み合わせが考えられます。ただし、組み合わせられるかどうかは製品の登録内容で決まります

通常枠にハードウェアの区分はありません

通常枠の補助対象は、大分類Ⅰ「ソフトウェア」、大分類Ⅱ「オプション」、大分類Ⅲ「役務」の3つです。車載器、ハンディターミナル、倉庫の機器、事務所のPCなどの機器は、通常枠の補助対象に含まれていません。ソフトのクラウド利用料は最大2年分、オプションの機能拡張は最大1年分、保守サポートは最大2年分が補助対象です。役務(導入コンサルティング・導入設定・保守サポートなど)の補助対象経費は200万円が上限です。

補助率の2/3の条件

通常枠の補助率は1/2以内です。7次締切(2026年12月1日)からの公募要領(第7回公募以降)は、次の条件を満たす場合に2/3以内とする旨を定めています(原文)。

令和7年10月から令和8年9月の間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~令和8年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある場合は、2/3以内

受付を終了した6次締切(2026年10月30日)までの公募要領では、期間と基準が次のとおりでした(原文)。

令和6年10月から令和7年9月の間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~令和7年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある場合は、2/3以内

この2/3以内の補助率は、最低賃金に近い水準で働く従業員の割合で決まる措置で、賃上げ要件の達成とは別の基準です。倉庫の作業員や仕分けのパート・アルバイトが多い事業者では当てはまる場合があるため、賃金台帳で月ごとの割合を確かめて判断します。

インボイス枠の要件と補助額:会計・受発注・決済の機能が必要

インボイス枠の要件と補助額の図解。主な項目:「会計」「受発注」「決済」の機能を1種類以上含むソフトが要件、1機能は〜50万円、2機能以上は〜350万円、補助率は補助額50万円で区切る(50万円超の部分は2/3以内)、PC・タブレット等は〜10万円。車載器・ハンディターミナルは対象外
図解:インボイス枠の要件と補助額で押さえたいポイント

インボイス枠(インボイス対応類型)で対象になるソフトは、インボイス制度に対応し、「会計」「受発注」「決済」の機能を1種類以上含むものです。公募要領2-2(3)の原文は次のとおりです。

カテゴリー1(ソフトウェア)に区分されるもののうち、インボイス制度に対応しており、かつ「会計」「受発注」「決済」の機能を1種類以上含む必要がある

卸売業の受発注・請求のソフトや、運送会社の運賃請求・会計の機能を持つ登録ソフトが、この要件に当たり得ます。補助額と補助率は次のとおりです(公募要領 2-3)。

項目補助額補助率
ソフト購入費・導入関連費(会計・受発注・決済のうち1機能)〜50万円3/4以内(小規模事業者は4/5以内)
ソフト購入費・導入関連費(会計・受発注・決済のうち2機能以上)〜350万円補助額50万円以下の部分は3/4以内(小規模事業者は4/5以内)、補助額50万円超の部分は2/3以内
PC・タブレット等〜10万円1/2以内
レジ・券売機〜20万円1/2以内

役務(導入設定、研修、保守サポートなど)の補助対象経費は200万円が上限です。オプション・役務・ハードウェアを申請できるのは、ソフトとあわせて交付申請する場合に限られます。ハードウェアだけを単独で申請することはできません(公募要領 2-2(3)(イ))。

ハードウェアには、公募要領2-2【補足2】に次の条件があります。運送業・物流・卸売業で確認したいのは、乗務員や倉庫で使う端末がこの範囲に入るかどうかです。

  • PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機は、「会計」「受発注」「決済」のいずれかの機能を持つソフトとあわせて導入する場合に限り対象です。対象は、そのソフトを継続的に利用するのに「必要最低限の機器一式」です
  • 購入先は、ソフトの購入先として選んだIT導入支援事業者に限られます
  • プリンター・スキャナーは、「文書の印刷あるいはスキャン機能を主とし、一般的にプリンター・複合機と呼称される製品」が対象です。バーコードを読み取るハンディターミナルや、車両に取り付ける機器は、この列挙に入っていません
  • 価格は経済的合理性があり、市場価格を逸脱していないことが必要です

試算例:補助額の計算の仕方

以下は、公募要領の補助率・上限額の計算の仕方を示すための仮の金額での例です(実際の補助額は、登録された製品の価格・機能数・事業者の区分で変わります)。

仮定計算
従業員4人の卸売業の会社が、受発注の機能1つの登録ソフト(補助対象経費40万円)を導入(インボイス枠)従業員5人以下なので、どの区分でも小規模事業者に当たり4/5以内。40万円×4/5=32万円が上限の目安
従業員40人の運送会社が、会計・受発注の2機能を持つ登録ソフト(補助対象経費120万円)を導入(インボイス枠)小規模事業者に当たらないため、補助額50万円以下の部分は3/4以内、50万円超の部分は2/3以内。経費約66.7万円×3/4=50万円、残りの経費約53.3万円×2/3=約35.6万円で、合計約85.6万円が上限の目安
運送会社が配車・運行管理の登録ソフト(補助対象経費120万円)を導入(通常枠・補助率1/2以内)120万円×1/2=60万円が上限の目安。補助額が150万円未満なので1プロセス以上で足ります

インボイス枠の補助率の段階は、経費ではなく「補助額50万円」で区切ります。経費50万円までを3/4で計算すると、補助額を少なく見積もってしまいます。補助金は事務局から補助事業者に直接支払われ、残りの費用は事業者が負担します。

補助対象外になる費用

公募要領は、次の費用を補助対象外としています(通常枠・インボイス枠の公募要領 2-2(4))。

  • 補助事業者の顧客が実質負担する費用がITツール代金に含まれるもの(補助事業者にとっての売上原価に相当すると事務局が判断するもの)
  • 交通費、宿泊費
  • 補助金申請・報告にかかる申請代行費
  • 公租公課(消費税)
  • 交付申請時にITツールの利用金額が定められないもの
  • 対外的に無償で提供されているもの
  • リース・レンタル契約のITツール(サイバーセキュリティお助け隊サービスを除く)
  • 中古品
  • 交付決定前に購入したITツール

3業種では、次のような進め方で補助対象外になる例が起きやすくなります。

  • 車両の台数や配送件数で月額が変わるソフトで、交付申請時に利用金額を確定させていない。公募要領は「交付申請時において、ITツールの利用金額が定められないもの」を対象外としています
  • 車載器や端末をリース・レンタル契約でまとめて導入し、ソフトの費用も同じ契約に含めている(リース・レンタル契約のITツールは対象外です)
  • 荷主や取引先に請求する費用を、ITツール代金に含める(顧客が実質負担する費用)
  • 交付決定前に、繁忙期や法令対応の時期に間に合わせようとソフトの契約や支払いを済ませてしまう

車両・車載器など、この補助金の対象外のものに使える制度

デジタコやドライブレコーダーなどの車載器、配車・動態管理と荷主側のシステムを組み合わせた取組には、国土交通省の別の補助事業があります。ただし2026年度(令和8年度)の受付は、2026年10月23日時点の公式の掲載でいずれも終了しています。

制度対象(公式の掲載)2026年10月23日時点の状況
事故防止対策支援推進事業(国土交通省 物流・自動車局)「デジタル式運行記録計及び映像記録型ドライブレコーダーの導入支援」「過労運転防止に資する機器導入のための支援」など。令和8年7月31日から実施公式ページに「運行管理の高度化/過労運転防止/健康起因事故防止の3施策の受付を終了いたしました」と掲載
トラック輸送省エネ化推進事業(国土交通省・資源エネルギー庁連携)トラック事業者と荷主等との連携による、車両動態管理システム・予約受付システム等の輸送効率化システムや、ダブル連結トラック・スワップボディコンテナ車両の導入3次公募の受付は令和8年8月31日(月)10:00〜9月9日(水)16:00で、終了

どちらも、補助率・上限額・対象事業者はそれぞれの公募要領で決まり、年度によって変わります。次年度の公募は公式ページで確認してください。公募要領は、国や独立行政法人の他の補助金等と重複する事業を補助事業の対象に含めないことを申請要件にしています(2-1-1(2)(キ))。IT導入補助金のソフトと同じ取組で別の補助金を使う場合は、対象にする事業と費用の範囲を分けて整理しておきます。

賃上げ要件・労働生産性の目標と加点項目

3業種で見落としやすいのは、過去の交付決定歴によって必須になる賃上げの計画と、労働生産性の目標です。加点項目の全体像は加点項目一覧で整理しています。

  • IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けたことがある事業者は、賃金引上げ計画が申請要件(必須)です。通常枠の150万円未満の申請でも、インボイス枠の申請でも同じです。1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上の計画を策定し、従業員に表明します(通常枠・インボイス枠とも 2-1-1)。7次締切からは、1年後に3.5%以上向上させる要件も加わります。詳しくは賃上げ要件の記事で確認してください
  • 賃上げの計画は、従業員への表明まで行う必要があります。表明したと申告したのに実際は表明していないことが交付決定後に分かった場合、事務局は交付決定の取消しを行います。また、賃上げ要件を事業計画終了時点で達成できなかった場合(期間内に報告しなかった場合を含む)は、補助金の返還を求められます。1人当たり給与支給総額の目標が未達の場合は、全部の返還を求める場合があるとされています。ただし、付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として3年の事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は返還を求めません(2-1-1【補足1】)
  • 通常枠で150万円以上を申請した場合は、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にする要件も返還の対象です。効果報告時の直近月で未達なら、補助金の全部または一部の返還を求められます。返還額は、補助金の額を3年で割り、未達となった年以降の年数を掛けた金額です(1年度目で未達なら全額)。付加価値額増加率が年平均成長率1.5%に達しない場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は、返還を求めません(通常枠 2-1-1【補足1】ケース1)
  • 労働生産性の目標を満たす3年間の事業計画を策定する必要があります(通常枠 2-1-1(ク))。目標は、1年後に3%以上、事業計画期間の年平均成長率3%以上です。IT導入補助金2023の通常枠(A・B類型)・デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)、IT導入補助金2024・2025の通常枠・複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者は4%以上になります。この労働生産性の計画は通常枠の要件で、インボイス枠の公募要領にはありません。詳しくは労働生産性要件の記事をご覧ください

3業種で枠を選ぶ目安

配車・運行管理・在庫など業種や物流の機能を中心に入れるなら通常枠、受発注・請求・会計をインボイス制度に対応させるならインボイス枠が目安です。

状況検討の方向
配車・運行管理・乗務員管理・車両台帳のソフトを入れたい(運送業)通常枠。運P-06を含む登録ソフトか、ITツール検索で確認
入出庫・在庫・配送計画のソフトを入れたい(倉庫・卸売業)通常枠。共P-03を含む登録ソフトか確認
配車・在庫と請求・会計をまとめて入れ、補助額150万円以上で申請したい通常枠。4プロセス以上と賃上げ要件が必須
受発注・請求・会計をインボイス制度に対応させたい(卸売業・運送業の運賃請求など)インボイス枠。「会計」「受発注」「決済」の機能を持つ登録ソフトが要件。PC・タブレットは上限10万円
車両・車載器・ハンディターミナル・倉庫の設備を入れたいこの補助金の対象外。国土交通省の補助事業などを確認
過去にインボイス枠などで交付決定を受けているインボイス枠は対象外の場合あり。通常枠の12カ月制限なども確認

製造と卸売を兼ねる事業者は製造業・建設業の記事、小売店も営む事業者は飲食店・小売店の記事も参考になります。枠の考え方の全体像は通常枠とインボイス枠の選び方にまとめています。

申請の流れ:検討するときの確認手順

申請を検討するときの確認手順の図解。主な項目:対象外の事業者・みなし同一法人・12カ月制限を確認する、業種と規模を確認し、通常枠かインボイス枠かを決める、製品の登録とプロセスをITツール検索で確認する、交付決定前に発注・契約・支払いをしない
図解:申請を検討するときの確認手順で押さえたいポイント

申請を検討するときは、申請できる事業者かどうかの確認から始め、次の順に進めます。交付決定までは、発注・契約・支払いをしないことが前提です。

  1. 申請できる事業者か確認する(対象外の事業者・12カ月制限。グループ会社がある場合は「みなし同一法人」も)。GビズIDプライムの取得と、SECURITY ACTION(一つ星または二つ星)の宣言も申請要件です。GビズIDプライムは申請方法によって発行までに日数がかかります(取得の手順はGビズIDプライムの取得方法)
  2. 業種と規模を確認する。運輸業は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下です
  3. 使う枠を決める。配車・運行管理・在庫を中心に入れるなら通常枠、受発注・請求・会計をインボイス制度に対応させるならインボイス枠です
  4. 導入したい製品が登録済みか、公式のITツール検索で確認する。どのプロセスに登録されているかも見ておきます
  5. 交付決定前に発注・契約・支払いをしない(交付決定前に購入したITツールは補助対象外)
  6. 見積書に、利用金額が決まらない従量課金、リース契約、車載器、申請代行費が混ざっていないか確認する

補助額の試算は見積シミュレーターが使えます。登録の有無や対象になるかのご質問は、公式LINEでも受け付けています。当社は登録IT導入支援事業者として、デジタル化・AI導入補助金(通常枠・インボイス枠)の申請サポートを完全成功報酬で行っています。

実務で起きやすいつまずき

当社がご相談を受けるなかで、3業種の導入で起きやすいつまずきは次の4つです。

  • 動態管理のソフトと一緒に、車載器や通信端末も補助されると考えていた。通常枠はソフトウェアだけが対象で、インボイス枠の機器もPC・タブレット等とレジ・券売機に限られます
  • 倉庫のハンディターミナルを「スキャナー」として申請できると考えていた。インボイス枠のスキャナーは、文書のスキャン機能を主とする、一般的にプリンター・複合機と呼ばれる製品です
  • 運送会社と倉庫会社、卸の会社をグループで分けていたので、会社の数だけ申請できると考えていた。代表者及び住所が同じ法人などはみなし同一法人に当たり、申請できるのは1社です
  • 車両台数に応じた月額のソフトで、申請時に台数を決めていなかった。交付申請時に利用金額が定まらない費用は対象外になるおそれがあるため、導入する台数と期間を見積の段階で決めておきます

締切日と交付決定日(2026年10月23日確認)

デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型)は、公式の事業スケジュールで次の日程が公表されています。

締切回締切日時交付決定日事業実施期間・事業実績報告期限
6次締切分(受付終了)2026年10月30日(金)17:002026年12月10日(木)(予定)交付決定〜2027年5月31日(月)17:00(予定)
7次締切分2026年12月1日(火)17:002027年1月19日(火)(予定)交付決定〜2027年7月30日(金)17:00(予定)
8次締切分2027年1月7日(木)17:002027年2月17日(水)(予定)交付決定〜2027年8月31日(火)17:00(予定)

1次〜5次締切分は受付を終了しています。7次締切分からは、補助率2/3の判定期間と賃上げ要件が上で説明したとおり変わります。8次締切分は2026年10月29日に追加公表されました。公式スケジュールは「確定している募集回のスケジュールのみ公表」とされているため、9次以降の有無・日程は公式サイトで確認してください。締切日の17:00をもって、申請マイページから申請できなくなります。全募集回の日程はスケジュールの記事にまとめています。

よくある質問

Q. 運送会社の配車システムや運行管理システムは対象ですか?

登録済みのソフトであれば、通常枠の対象になり得ます。別紙2の運P-06に、運行管理(運行計画・運転日報・走行履歴など)と配車・庸車管理(配車計画・配車状況、庸車手配)が機能例として載っています。インボイス枠で申請する場合は、「会計」「受発注」「決済」のいずれかの機能を含むことが必要です。

Q. デジタコやドライブレコーダーも一緒に補助されますか?

いいえ、この補助金では補助されません。通常枠の補助対象はソフトウェア・オプション・役務の3つで、インボイス枠の機器もPC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機とレジ・券売機に限られます。車載器の導入支援は国土交通省の事故防止対策支援推進事業が扱っており、2026年度は受付を終了したと公式ページに掲載されています。

Q. 倉庫管理システム(WMS)は対象ですか?

入出庫・ロケーション・棚卸・在庫の機能を持つ登録ソフトであれば、通常枠の対象になり得ます。これらは共P-03(供給・在庫・物流)の機能例です。倉庫で使うハンディターミナルや搬送機器などの機器は、補助対象になりません。

Q. 卸売業の受発注システムはインボイス枠と通常枠のどちらですか?

インボイス制度に対応した受発注の機能を持つ登録ソフトなら、インボイス枠の対象になり得ます。受発注の機能は通常枠でも共P-02として数えられるため、在庫やMD支援などの機能もまとめて入れる場合は通常枠も候補です。過去の交付決定歴によってはインボイス枠で申請できないため、申請できない事業者を先に確認してください。

Q. 従業員15人の運送会社は小規模事業者ですか?

公募要領だけでは決められません。小規模事業者の区分は「商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)5人以下」「製造業その他20人以下」などです。運輸業がどの区分に当たるかは、個別に書かれていません。インボイス枠の補助率(3/4以内か4/5以内か)が変わるので、IT導入支援事業者を通じて事務局に確認してください。

Q. グループで運送会社と倉庫会社を分けています。それぞれ申請できますか?

みなし同一法人に当たる場合は、1社しか申請できません。親会社が議決権の50パーセント超を有する子会社がある場合や、代表者及び住所が同じ法人などが該当します。本補助金を受けることを目的に、主要株主や出資比率を変更して申請することも認められません。

まとめ

  • 業種固有の機能例は、運送業が運P-06(運行管理・人員管理・配車・庸車管理・車両管理)、卸売業が卸P-06(MD支援・貿易管理など)です。入出庫・在庫・配送計画は共P-03に入っています
  • 車両・デジタコなどの車載器・ハンディターミナル・倉庫の設備は補助対象外です。インボイス枠の機器も、PC・タブレット等とレジ・券売機に限られます
  • インボイス枠は「会計」「受発注」「決済」の機能が要件で、配車や運行管理の機能だけでは単独で要件を満たしません
  • 規模の判定は業種で違い、運輸業は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下です
  • 7次締切(2026年12月1日)からは、補助率2/3の判定期間と賃上げ要件が変わります

補助額の目安は見積シミュレーター、自社に合う制度は補助金かんたん診断で確認できます。業種別では製造業・建設業、宿泊業・不動産業・美容室・士業の記事も、制度全体はデジタル化・AI導入補助金2026ガイドをご覧ください。デジタル化・AI導入補助金のご質問は公式LINEでも受け付けています。

参考(一次情報)

※本記事は2026年10月23日時点で確認した公募要領・公式サイトの原文にもとづいています。製品が補助対象かどうかは、ITツール検索の登録情報と事務局の判断によります。制度内容・スケジュールは変更される場合があるため、申請前に最新の公募要領をご確認ください。